ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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237『女好き、ジェルマとの交渉』

「じゃ、一気にカタをつけちゃうよ!」

 

ポッ、と王華の人差し指に淡い光が灯り、それをゆっくりと兵士達に向けた。

 

連覇銃(レンハガン)!」

 

直後、王華の指からマシンガンの様に覇銃(ハガン)が放出され、完璧に調整された威力で1人1人兵士の数を減らして行く。

連続で覇銃(ハガン)を撃つだけなら当然私も出来るが、これだけの量となると流石に難しい。更に驚きなのが、何100発と撃ち続けているにも関わらず未だに流れ弾が無い事だ。つまり、1発も外していない。

 

基本は力で解決しようとする私には到底出来はしない芸当で、ジェルマの兵士達を気絶させる程度の威力を保ちながら行われる正に神業と言うやつを軽々とやってのける彼女には本当に度肝を抜かされるというかなんというか。

 

王華程スピーディーには無理だけど、私も同じく覇銃(ハガン)を撃ち続けていたので気が付けば兵士は全員床に倒れ伏していた。立っているのはイチジ、ヨンジ、レイジュのみとなり、最早足の踏み場すら無い状態だ。

 

「ここまでやっておいてアレだけど、ジェルマがお茶会に参加しないと間違いなく原作とは違う展開になるよね」

 

「本当に今更じゃん。そこら中に倒れてる人達、大半は王華がやったんだけど?」

 

ここまで来て、漸くイチジとヨンジは表情を強張らせた。さっきの話を聞く限りだと彼らに『恐怖』の感情は無いだろうから、今感じているのは『困惑』だろうか。囲んで叩けば勝てると甘く見積もっていたんだろうけどね、レイジュはそこまで驚いてないどころか、こうなるのを分かっていたかの様に落ち着いた表情だけど。

 

「で、どうするの?まだやる?」

 

「ふ、勿論よ。私達は誇り高きジェルマの戦士、例えこの身朽ちようとも、刺し違えてでも敵は排除するわ」

 

絶対思ってないよねこの人!戦闘を継続させて私と王華にやられる気満々だよね!

まぁ、そもそもレイジュに手を出す気は無いんだけど。

 

……とは言っても、どうしたものかな。別に私はジェルマを潰したい訳では無いし、ただコゼットちゃんが受けた仕打ちに対する落とし前を付けさせたかっただけで。

だから最初ジャッジに話した条件さえ呑んでくれればそれで良かったんだけど……期待は裏切られたからね。

でも恐らく指示を出したのだろうジャッジはそこで既にノびてるし、この件に関してもこれ以上どうこうする必要は無いというか。

 

「んー……じゃあ、レイジュの身が朽ちちゃうのは嫌だから、戦いはここまでにしようか」

 

「何……?」

 

「だから、見逃してあげるって事。それともイチジはまだ私と戦うつもり?だったら相手してあげるよ、ジェルマは間違いなく崩壊するけどね」

 

「……」

 

「ただ」

 

続く私の言葉にイチジは眉をピクリと動かした。戦闘自体はこれ以上行うつもりはないけれど、私が最初に提案した事だけは実行するからその事を一応伝えないといけない……という事もないかもだけど。

 

「コゼットちゃん……というか、あなた達がメシ炊きと呼ぶ人達はみんな連れて行くから。それとレイジュ、あなたも私と来て。それから最後に、5億ベリーちょうだい」

 

「おい、それは何の冗談だ?纏めて告げるにしては余りにも私達の損害が大き過ぎるだろう。メシ炊き程度なら構わないが、レイジュと金は別だ。親父が何と言ったかは知らないが、5億ベリーなどという大金をホイホイ渡せるものか」

 

ヨンジはそう言うが、責任者であるジャッジは5億ベリーの事を“その程度"と言った。そもそも私に渡す気などサラサラ無かったからそう言い回したのかもしれないが、言われたものは言われたのだ。私はこうして生きているのでジャッジが言っていた『渡す相手が居ない』という状況にも陥っていない。

ジャッジは自分の言葉で自分の首を絞めたのだ。私がその言葉を聞いた以上、証拠なぞ無くとも責任者の発言には責任がついて回る。1度は承諾した内容なんだ、今更無理だと言われる筋合いはない。

 

「5億ベリーを渡して助かるのと、それを渋って滅ぼされるのと、あなた達はどっちを選ぶの?ま、私はどっちでも良いよ。むしろそのまま状況を顧みず、先の事を見据えず、ただただ王家としてのプライドのみで私の提案を突っぱねて立ち向かってくれた方が私としては嬉しいけど。だってその場合はこの城にある全ての財産をもらって行くから5億ベリーどころじゃないし」

 

「……女王、その案には私の意思が入っていない様だけれど、女好きともあろうあなたが無理矢理嫌がる私を連れて行くのかしら?」

 

「まー、ついてきてくれないなら嫁になってくれるだけで良いよ」

 

「……あなたの嫁は務まらないと言った筈よ」

 

「務まる務まらないは関係無くてさ、私はただあなたが欲しいだけだよ、レイジュ」

 

私の嫁に相応しい人を選んでいるんじゃなく、私が嫁になって欲しいと思った人を口説いてるんだから。

 

「嫁になってくれる“だけ"だと?レイジュは我が国の王女、そう簡単な話ではない」

 

「ふーん」

 

そんな難しい顔で言われてもねぇ、イチジさん。私にとって王女様を嫁にもらうなんて珍しい事じゃ無いし、簡単な話ではないと言われても……。

確かに今までも簡単かと言われると違うかもしれないけど、王女がどうこうって理由で断るのはやめて欲しいというか。

 

「じゃあもう本当にジェルマ潰す?そしたらレイジュも王女じゃないよね?」

 

「……、」

 

「……あー、割り込んで良いのか判断に困るんだけど、ちょっと良いかな?」

 

と、ここで王華が頬を掻きながら手を上げた。場の雰囲気にそぐわないのほほんとした雰囲気は、彼女が私同様にこの場において絶対的な力を有している事を意味している。

 

「イリスはコゼットを攻撃された事で視野が狭くなっちゃってるから私の意見だけを言うね?だけど、私は結局この世界においてイリスの判断を尊重するから、今から私が何を言おうとイリスが頷かない事には意味が無いって事だけ頭に置いておいてね」

 

「どうしたの?視野が狭くなってるのは事実だけど、これ以上ここにコゼットちゃんは置いておけないでしょ?レイジュとお金は欲だけど」

 

「うん、だからその欲、ちょっと閉まっちゃおうか」

 

ん?つまり、レイジュとお金は諦めてコゼットちゃんだけに絞れって事?

王華は確かにアホかもしれないけど、意味もなくこの様な事を言う人でも無いだろう。何か考えがあるとは思うけど……ぶっちゃけこの欲は片付けたくない、特にレイジュ。

 

「まず、私達はジェルマの兵力を奪うべきでは無いんだよ。むしろここで見逃して、代わりにある条件を突き付けなくちゃならないの」

 

「条件って?」

 

「……安城さんの事だよ。近々安城さんは仕掛けてくるって話をしたでしょ?協力も必要だって事も。だったらジェルマは潰しちゃダメ、ここで見逃して安城さんとの決戦で活躍して貰わないと」

 

……あ、あれか!そういえば話してたね、それ。

安城さんに支配されたレイも救わなくちゃいけないし、そうなると確かにジェルマを潰すのも、軍資金である5億ベリーを奪うのも、要の1つであるレイジュを連れて行くのもダメな気がしてきた。

 

「……でも、レイジュには嫁はなって欲しいんだけど」

 

「それはこれから口説いていけばいいじゃん。いきなりグイグイ行ったって振り向いてくれる訳ないよ、ちょっと今回は焦り過ぎてるんじゃない?イリス」

 

「……むぅ」

 

それを言われれば、そうかもしれない。

だけど……仕方ない所もあるよね?そもそもコゼットちゃんに手を出すのが悪いんだし、私の視野が狭くなるのは当然じゃない?

 

うぐぐ、と唸る私をよそに、王華はイチジ達と話を一歩先に進めようとしていた。簡単に言えば、今ちらっと話した『対安城』について。

 

「色々あって私達はあの狂神と近々戦わなくちゃならないんだけど、今の戦力だとちょっと物足りないんだよね。でもやるからには絶対に勝ちたいし……と、言う事で、あなた達ジェルマも戦力になってくれない?」

 

「……簡単に言うな、滅びゆく国とはいえ、我々は誇り高きジェルマの一族。延命の為に我々の武力を貸し出すなど……ふん、見苦しいとは思わないか?」

 

「だから、私達はそもそもジェルマを滅ぼしたい訳じゃないんだって。来たる時にあなた達の戦力を借りたいだけで」

 

「ならばこう言おうか?我々の武力とは即ちこの国の価値だ。買いたいのならば、それこそ金が発生する。見逃す代わりに……という話ならば我々は滅びを選ぶ。だが、お前達が金で我々を買うというのなら話は別だ」

 

えーっと、つまり生き永らえる事に意味は無いけど、金を貰えるのなら動く、という事?

……悲しみとか、そう言った方面の感情が欠落しているのはこういう所にも影響が出てくるらしい。自分達の死よりも『ジェルマ』としての利益を優先する。自らの命に無頓着と言えば良いのかな?

戦闘に悲しみや恐怖は邪魔だと思ったのかどうかは知らないけど、そう言う側面もあるから人は強くなれるのに。必要無い感情なんて無いと私は思うけどな。

 

「……はぁ、王華、確かにジェルマの戦力は捨てがたいけどさ、相手がそんな調子なら別に要らなくない?仕掛けて来たのはそっちなんだから私達が譲歩する必要なんてないと思うんだけど。私、コゼットちゃんをあんな目に遭わせた事……本気で怒ってるからね?」

 

「確かにあれはやり過ぎだけど、実行したのはニジだけの筈でしょ?そのニジには十分やり返したし、これ以上はやり過ぎだよ。……ごめん、イリスには酷な事言ってるけど」

 

そう言って申し訳なさそうな顔をする王華に少し罪悪感が湧いた。王華が謝る必要は無いのに、私がいつまでも引き摺ってるから……。

更に、そう思ってはいても未だに許す事は出来てないし……というか、許せる訳が無い。いくら罪悪感を覚えようとも許せないものは許せないのだ。うん、仕方ない、ごめん王華。

 

「──それなら、こうするのはどうかしら?」

 

「な……っ!?」

 

突然、落ち着きのある耳触りの良い声が聞こえたと思ったら、イチジとヨンジの背後で青白い『巨大な口』が開いた。鋭い牙を持った目も鼻も無いそれは2人を頭から呑み込み、ゆっくりと咀嚼する。

 

「ちょっ……!」

 

だが、私達が慌てる前にそのアギトは2人を解放し、静かに霧となって消え去った。

それと同時に王華の肩を“彼女"がぽん、と叩く。

 

「本当に、あなたもこっちに来たのね……王華」

 

「えっ……沙彩!?」

 

緑髪を靡かせた美女……沙彩がそこに居た。

彼女が生み出していたらしい先程のアギトに喰われた2人は咀嚼されていたにも関わらず無傷の様で、自らの身に異変が無いか調べている。

 

「こうするのはどうかしらって、何かしたの?沙彩」

 

「何も?ただ、意味ありげな登場は格好いいでしょう?」

 

格好いい……かなぁ??

それに、どうしてここに沙彩が居るんだろう。私がここに居るって事はまだ外に漏れてないと思うんだけど。

まさか、ここに侵入する時既にバレてたとか……!?

 

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