ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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243『女好き、2度目の邂逅』

「なんか、兵士達には悪い事しちゃったなぁ」

 

と、言葉にする程は思ってもない事を口にしながら私は城内を忍び歩く。

結局、地下牢を脱出する為に行った事が兵士達の殲滅だったのだから私の脳筋っぷりにはほとほと呆れ返る……って、自分の事だけどね?

対大勢はジェルマでも経験したけど、あの時と違って敵さんは私が封じられてると思い込んでいるのもあったから奇襲を仕掛けやすかったんだよね、いやぁ、ホントウニモウシワケナイ。

 

「後は気付かれない様にブルックの所まで行くだけ……!」

 

今更隠密行動に意味があるのかどうかはともかく!

 

「こっそり、こっそ……っぐェ!?」

 

「シー、だ、よ」

 

壁に背をつけて移動していたその時、丁度背後にあった扉がいきなり開き、私の首根っこを掴んで中に引き摺り込んできた。

更にそれを行った人物を見て瞬時に戦闘モードへ移ろうとしたが、“そっち"の人格だと気付いてほっと一息つく。

 

「え……と、レイ、だよね?」

 

「そう。久しぶりだ、ね」

 

久しぶり……なのかな?そんなに前でもない気がするけど。

ていうかなんでレイがここに居るの?

 

「どうしてこんな所に?」

 

突然の事でいつも以上に頭が回らず、思っている事をそのまま口に出して問いかけるが、レイは困った様に眉を下げると静かに首を横に振った。

 

「ごめん、ね。わたしも良く分からなく、て」

 

「あー……」

 

そういえば安城さんの匙加減次第で外の状況が分かったり分からなかったりするって言ってたね。

 

「でも、少し早すぎる、の。いつもな、ら、まだわたし、は、活動出来ないか、ら」

 

「それは、レイが体を動かせる様になるのがって事だよね?」

 

「そ、う」

 

うーん……いつもより早い交代か、ここに居るのと何か関係があるのかな。

 

「そういえば、安城さんの仲間は近くに居ないの?ほら、リリーって人とかさ」

 

「あの人たち、は、もう帰ってると思う、よ。ワノ国、の、更に向こう側、に、拠点があるか、ら」

 

「ふむ……」

 

ワノ国の更に向こう、か。じゃあ進行方向はこのままで良いわけだ。

向こうが先に仕掛けて来ようが来まいが関係ないって事だね。それなら分かりやすくて良かったよ。

 

「多分、アンジョウはわたし、が、あなた達に情報をながしたこ、と、気付いて、る」

 

「……その上体の主導権も渡してきたってとこを見るに、泳がされてる可能性が高いって事かな」

 

「う、ん。でも、アンジョウ、は、わたしと同じ、で、外の情報を取り込めな、い」

 

安城さんがレイに対して意識的に外を覗かせないという事が出来る様に、レイも同じ事が出来るという訳だ。

だとしたら泳がせる意味も薄そうだけど……何か裏があるのだろうか。

 

「……きっと、遊んで、る。わたしも、イリス達のこと、も、脅威とおもってな、いか、ら」

 

「ふぅん?」

 

「だか、ら、わたし、も、遠慮しない、よ」

 

あまりに舐められてる事実に少しムッとしていると、不意にレイが軽く微笑んで舌をべ、とイタズラっぽく出してきた。

……そ、そういう表情も出来るんだ、くっ、可愛いじゃん……!

 

「……ん?遠慮しないって、何が?」

 

「アンジョウ、の、思惑……話せるか、ら」

 

「思惑?それって、私達にいつ攻撃を仕掛けてくるか……ってこと?」

 

「あ……ごめん、ね、そこまでのこと、は、分からなく、て。ただ、この地で、の、話になる、の」

 

つまり、安城さんはこのホールケーキアイランドで何か私達に何か仕掛けているって事?

その上、それをバラされても構わないって思ってるくらい遊んでると……。

やっぱり腹は立つけど、せっかくレイが情報を持って来てくれたんだし……ここは安城さんの手のひらの上で転がされてあげるとしよう。

 

「ここだけでも分かるのはすっごく助かるよ!それで、どういう話?」

 

「ありがと、う……。じゃあ、話す、ね」

 

そう言ってレイは語り出す。私達がこの島に来る少し前、安城さん達がこの地に足を踏み入れていた事。そしてそこでビッグ・マムと対面し、とある契約を結んだ事を。

 

そして、その契約はというと……。

 

「能力向上?安城さんの能力で、って事だよね」

 

どうも、ビッグ・マム陣営の誰か1人を安城さんの能力で強化し、その人を後にやってくる私達麦わらの一味にぶつけるといった内容だった。

 

でもそれ、安城さん達にはなんのメリットも無い話の様にも思えるけどね。別にビッグ・マムに手を貸さなくとも十分にやり合える力を保有しているし、それにビッグ・マム側と結託して私達を潰しにかかってきてる訳でも無さそうだから。

 

「なんでそんな回りくどい事したの?」

 

「……イリス、あなたへ、の、嫌がら、せ」

 

「はい?」

 

「正確に、は、イリスじゃな、い、イリス、に」

 

つまり王華にって事だよね。相変わらずイリス()に対する興味は無い様で。

 

「でも、結局、は、イリスへの嫌がらせになる、よ。強化された人、は、かなら、ず、イリスと戦う事になるか、ら」

 

「本人の意思とか関係なく?」

 

「う、ん。前に話し、た、リリーの力、で」

 

確か、操る能力、だっけ。

それで操って、私と無理矢理戦わせるって事か……。

 

「因みに、それって誰を強化してるのかっていうのは分かるの?」

 

「う、ん。分かる、よ」

 

おお、正直ダメ元で聞いてみたんだけど本当に分かっちゃうんだ。メタな言い方しちゃうと、ここでは分かんなくて後々判明するとかが良くあるパターンなんだけどね。流石にそんな事にはならなかったか。

 

「名前し、か、分からないけ、ど……」

 

「名前が分かれば十分だよ!後は頑張って探しておくから!」

 

「ありがと、う。──ビッグ・マム、は、言って、た。この子の力、を、解放させてやってほし、い、って」

 

解放……、眠ってる力を無理矢理起こす様なイメージ、で良いのかな。

またまたメタ読みするけど、眠ってる力が覚醒って凄く強くなるんだよね。ていうか、私も初めて女王化した時とかそんな感じだったし。

だとするとあれか、ナミさんが言ってたなんたら将星の誰かなのかな?

 

「名前、は、プリン。シャーロット……プリン」

 

「ああ、プリンちゃんね、なるほど。……。…………、はい?」

 

「?」

 

え?プリンちゃんって……え、プリンちゃんだよね?

だ、だって、昨日会ったけど、全然そんな素振りなかったし……。

 

「私、知ってるよ……?そのプリンちゃんって女の子……。でも、そんな強力そうな気配じゃなかったし……」

 

「それ、は、本人の意思、で、操作が出来る、よ。まだ、リリー、に、操られてないな、ら。……それよ、り、会った……の?」

 

「会ったし……話もしたよ!全然そんな素振り見せなかったし……襲っても来なかった!何かの間違いじゃない?それか、プリンって名前の人がもう1人居るとか……!」

 

「……プリン、は、女の子、で……髪を結んで、て、おでこにも目があ、る、女の子だ、よ」

 

み、三つ目かぁ。はー、なんだ、やっぱりプリンちゃんじゃ無さそうだね。だってプリンちゃんのおでこには目は無かった……、

……いや。

いや、いやいやちょっと待って。

 

「そういえば……」

 

プリンちゃんは私が嫁にすると決めた女性だ。目を閉じ、真っ暗な脳裏にその麗しい顔を思い浮かべる事なんて造作もない事である。

だけど、その思い浮かべたプリンちゃんの顔……更にはその額って……。

 

「……髪で、見えない、よね」

 

そうだ……そうだった……!私はまだ、1度もプリンちゃんの額を見てないんだ……!

という事は、もしかしたら本当にプリンちゃんが強化されてて、私と戦わなくちゃいけない人かもしれないって事なの……?

 

ん?でも待てよイリス!もし本当にそうなら、プリンちゃんの額には俗に言う“第三の目"があるって事だよね?それを強化したとして……どうなるだろう?

いやいや、そんな事はどうだって良いはず。肝心なのはどう強くなるのかじゃなくて、プリンちゃんが完全に敵になってしまうかもしれないという事だ。

 

「イリス……?もしかし、て、ともだ、ち?」

 

「ううん、もっと上だよ。まだまだ一方通行だけど」

 

だからといってプリンちゃんと戦うのは嫌だ。自分の意思で向かってくるのなら良いよ、拳で語り合うのも近道ではあるからね。

だけど、そうじゃないのならそんな戦いに意味なんて無い。操ってるやつと合わせる拳なんて持ち合わせちゃいないしさ。

 

 


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