ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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24『女好き、クジラの想いを知る』

 

ゾロたちがルフィと残り二人を引き上げた時には、既にクジラは大人しくなっていた。

クジラが暴れ出したと同時に出口から外に出たクロッカスさんが何かしたのかもしれない。

 

「ーーーで?あなた達は何?」

 

「……!」

 

とりあえず美女の方に顔を近づけて尋ねる。何だその顔は。子供がどうして海賊の中に?みたいな顔を止めろ!何でわかるかって?もう見慣れたからだよ!!

 

「私達と同じで飲まれたのかな?なら目的は同じ何だけど…」

 

「…ぐ、こうなったら仕方がない!強引に抜け出すぞ!ミス・ウェンズデー!」

 

「ええ!Mr.9!」

 

ガチャ、と二人は持っていたバズーカを構えた。

 

「そういうの良いから、ふん!!」

 

両手でむんずとバズーカを片方ずつで掴み、お互いをぶつけて銃口を粉々に砕く。

 

「なにっ!その体のどこにそれだけの力が!?」

 

「く…我々の捕鯨も此処までか…!」

 

「捕鯨はここまででいいけど、私の捕美女は終わってないんだからそっちの水色髪美女だけは置いてってよね」

 

「は?」

 

Mr.9と呼ばれた男の目が点になる。

いや、このミス・ウェンズデーとかいう水曜日美女、本当に美女なんだよね。ナミさんと同格と言っても過言ではない程の顔の良さだ。

このよく分からないくるくるした服の見た目から見てあり得ないことだけど、実はお姫様とか言われたら絶対嫁にするよ。

 

目的は捕鯨だった事が分かったけれど、それから先の個人に関する情報などは何が何でも話そうとしなかったのでクロッカスさんが戻ってくるまで待つことにした。何か知ってるかもしれないからね。

 

 

***

 

 

「ーーこのクジラは、アイランドクジラ。西の海(ウエストブルー)にのみ生息する世界一デカい種のクジラだ、名前は“ラブーン”」

 

案外早く戻ってきたクロッカスさんに、クジラやその他諸々の情報を聞きたい私達はまず彼の胃袋内での拠点であり、一番最初に私達が確認した鉄の島にやってきていた。

何故鉄かと言えば、それは勿論胃液対策だ。つまりこのまま中でのんびりしているとメリー号がかなり危ない。

 

「こいつらは近くの町のゴロツキだ…。ラブーンの肉を狙っている。そりゃあコイツを捕えれば町の2、3年分の食糧にはなるからな。だか、そんなことは私がさせん!こいつ(・・・)赤い土の大陸(レッドライン)にぶつかり続けるのにも、リヴァース・マウンテンに向かって吠え続けるのにも訳がある」

 

「訳…」

 

ーークロッカスさんの話によれば、昔この双子岬に気のいい海賊達がリヴァース・マウンテンを下ってきた時、その船を追う様に偉大なる航路(グランドライン)へやってきた小さなクジラがラブーンだった。

西の海(ウエストブルー)ではその海賊達と旅をしていたらしいが、流石に偉大なる航路(グランドライン)ともなると危険も相応に伴う。海賊達はそれを懸念してラブーンを置いてきたつもりだったのだが、ラブーンは着いてきてしまったのだ。

本来、アイランドクジラは仲間と群れを成して泳ぐ動物だが、ラブーンにとっての仲間とは、その海賊達だった。

 

私達はルフィの機転や、少しの運もあって船へのダメージは最小限だったがその海賊達は船が故障してしまったらしく、その修理に数ヶ月停泊している内にクロッカスさんも彼らと仲良くなっていたのだ。

 

そして出発の日、クロッカスさんは船長にある頼み事をされたと言う。

 

「『ラブーンをここで2、3年預かっててくれないか、必ず世界を一周しここへ戻るまでは、さ』…とな。ラブーンもそれを理解し私達は待った。この場所でずっとな」

 

「だから吠え続けてるの…?体をぶつけて壁の向こうに…」

 

ナミさんが理解はしたけれど納得は行ってないという表情を浮かべる。

それは、そうだ。その話なら、赤い土の大陸(レッドライン)に頭をぶつける理由や、吠え続ける理由がない。

 

「そうだ…。ーーもう、50年も前の話になる…。」

 

「!!」

 

……つまり、それってーーー。

 

「まだ聞きたければ話てやってもいいが、その前にまずここを出た方がいいだろう。外まで案内しよう」

 

「あぁ、メリー号が溶けちまう!」

 

「…く、そんな話を聞いたら、もう捕鯨何て言えないわね、Mr.9!」

 

「全くだ、ミス・ウェンズデー!」

 

「てめェらのその呼び名…どっかで聞いたことあるんだがなァ…」

 

ゾロが首を捻っているが、結局メリー号と共にクジラの外に出ても思い出すことはなかった。

 

 

「しっかし、50年かァ…随分待たせるんだなー、その海賊達も」

 

双子岬の灯台下で、私達は少し遅めの昼食を取ることにした。

ルフィの呑気な声にサンジが答える。

 

「ルフィ、ここは偉大なる航路(グランドライン)。海賊達の………。……、ともかく、2、3年で戻ると言ったのに50年も帰ってないってことは…もう…」

 

私は、前世が平和な国だった事もあり死という概念に弱い。

こういう事がそこら中に散らばっているのが偉大なる航路(グランドライン)なのかと考えると少し気が滅入りそうだ。…ナミさんを見て落ち着こう。

 

「だが、事実は想像より残酷なものだ。…彼らは逃げ出したのだ、この偉大なる航路(グランドライン)からな。確かな筋の情報で確認済みだ」

 

「…!このクジラを置いて…!?でも逃げるには凪の帯(カームベルト)を通らなきゃ…!」

 

「そうとも…故に生死すら不明。だが、例え生きていたとしても二度とここへは戻るまい。季節・天候・海流・風向き…全てがデタラメにめぐり、一切の常識が通用しないのがこの海。偉大なる航路(グランドライン)の恐怖はたちまち弱い心を支配する」

 

「ーーそして心の弱いそいつらは、てめェの命惜しさに落とし前もつけず、この海からとっととズラかったって訳だ」

 

酷い話ではあるが、それが偉大なる航路(グランドライン)なのだろう。好意的に取れば、それこそ一度凪の帯(カームベルト)を生還してまたリヴァース・マウンテンから双子岬へと向かうつもりだったのかもしれない。

 

そして、その事をクロッカスさんはラブーンに包み隠さず伝えた。帰ってくるかどうかも分からない海賊達を、ずっと待ち続けるであろうラブーンを見ていられなかったのだ。

だが、ラブーンはその話を受け入れる事が出来なかった。ラブーンがリヴァース・マウンテンに向かって吠え始めたのも、赤い土の大陸(レッドライン)に体をぶつけ出したのもそれからだった。

まるで今にも彼らは、あの壁の向こうから帰って来るんだと主張するかの様に…。

 

「待つ意味を無くすから、私の言葉を拒む。待つ意味(・・・・)を失う事が何より怖いのだ」

 

「…故郷には、もう帰れないもんね。あなた達の捕鯨は随分と残酷だね?」

 

「いいいえ!滅相もない、流石にもうこのクジラを捕ろうとは思わんよ、そうだろうミス・ウェンズデー」

 

「え、ええ、Mr.9…。私、自分が恥ずかしいわ…」

 

根っからの悪って訳ではないのか。むしろ、この話を聞いて考えを改めて、その上反省までしているのだからいい人達なのかも。綺麗だし。

 

「うおおおおおお!!」

 

「あれ、ルフィ。何してるんだろ」

 

ちょっと目を離した隙に、ルフィはメリー号のメインマストをへし折ってそれを持ち、ラブーンを登っていく。

凄い、ほぼ90度の壁を登ってるんだけど…。

 

「ゴムゴムのォオオオ!!生け花!!!」

 

「る、ルフィーーッ!!?」

 

天辺まで登り切ったかと思うと、あろうことかそのメインマストをラブーンの傷口に突き刺す。いや、ちょっと…!

 

「「何やっとんじゃお前ーーーーっ!!!」」

 

そこからは、ラブーンとルフィの激しい戦いが始まった。

私達ですら驚いているのだから、ルフィの突発的な行動になれていないクロッカスさんやMr.9、美女ウェンズデーは白目を向いていても仕方のない事だろう。

 

ルフィが殴り、ラブーンが仕返しに頭突く。それを数回繰り返して…ルフィが言った。

 

「ーー引き分けだ!!」

 

「…?」

 

ラブーンは攻撃をやめ、不思議そうに顔を捻る。

 

「おれは強いだろ!おれとお前の勝負はまだ付いてないから、おれ達はまた戦わなきゃならないんだ!お前の仲間は死んだけど(・・・・・・・・・・・)、おれはお前のライバルだ!おれ達が偉大なる航路(グランドライン)を一周したら、またお前に会いに来るから…そしたらまたケンカしよう!!」

 

「……ルフィ」

 

ラブーンは雄叫びを上げる。リヴァース・マウンテンに向かって吠えていたのとは明らかに違う、歓喜の雄叫びだった。

ルフィは、ラブーンに待つ意味を作ってあげたのだ。死んだ仲間達に代わって、ライバルとして。

 

「麦わらの人、良い人ね」

 

「そうやって言えるあなたもね。さ、ルフィ、最後の仕上げだよ」

 

私はそうやってルフィにペンキの入ったバケツを渡すと、すぐに意図を汲み取ってラブーンの額に麦わらの一味のドクロマークを描いた。

ルフィの描いたお世辞にも上手いとは言えない絵だけど、ルフィとラブーンがご満悦なので良しとしよう。

 

「これがおれとお前の戦いの約束だ!また頭をぶつけてそのマークを消すんじゃねェぞ!」

 

これで、長い間縛られていたラブーンは解放された。

もっとも、本当の意味での解放は私達が偉大なる航路(グランドライン)を一周してからになるだろうけど。

 

 

 

 

そうして、私達は双子岬を発った。

まさかこんなに早く出会いが訪れるとは思ってなかったけれど、悪くない出会いだったよね。

 

そして、もう一つ。

これはナミさんがクロッカスさんに聞いた事なのだが、偉大なる航路(グランドライン)は羅針盤が使えない。と言うのも、偉大なる航路(グランドライン)にある島々が鉱物を多く含んでいるせいでこの海全域に磁気異常をきたしているからだ。

更に海流や天候なども恒常性がなく、何も知らずに海へ出れば確実に死ぬらしいのだが、それを解決するのが…『記録指針(ログポース)』と呼ばれる磁気を記録出来る特殊な羅針盤だ。

 

球状のガラス細工の中に、字盤もなく針だけが付いている記録指針(ログポース)は、島と島とが引き合う磁気をこの記録指針(ログポース)に記憶させて次の島への進路とする。

 

まともに己の位置すら掴めないこの海では、記録指針(ログポース)の示す磁気の記録のみが頼りになる。

始めはリヴァース・マウンテンから出る7本の磁気から1本を選べるけれど、例えどこの磁気を選んでも最後は1本の航路に繋がり…『ラフテル』へと辿り着く。

ラフテルとは、偉大なる航路(グランドライン)の最終地点であり歴史上にもその島を確認したのは海賊王の一団だけ、という伝説の島のことだ。

 

そして、その話をしたのは2日程前の事だ。今航海をしているに当たってそんな貴重な『記録指針(ログポース)』はどうしたのかと言うと…。

 

「いやー、助かるよ二人共。まさか記録指針(ログポース)を貸してくれるだけじゃなくて島まで連れてってくれるなんて」

 

「いいの、ラブーンを殺そうとした罪を軽くすることは出来ないけど、あなた達がまたあそこへ帰る為の手助けなら出来るから」

 

「ふむふむ…嫁にくる?」

 

「えっ?」

 

とまぁ、そういう訳で二人はウイスキーピークという島へ行きたいらしく、そのついでに私達もそこまで連れて行ってくれるとの事だ。

 

「思ってたより話が分かる子じゃない。イリス、分かってるわね」

 

「おーけーナミさん。ミス・ウェンズデーは私が必ず嫁にしてみせる!」

 

「えっ?えっ?」

 

はっはっは、何の話をしているのかいまいち状況が掴めていないようだね。

 

「所で話は変わるけど、さっきから船についてきてる鳥とラッコは知り合い?」

 

「「え…」」

 

二人の顔が引きつる。

直後、二人目掛けて鳥がプレゼント箱の様な物を落とすと…その箱は二人を巻き込んで爆発を起こした。

 

「なっ!だ、大丈夫二人共!?」

 

「にゃろ!ゴムゴムの(ピストル)!」

 

ルフィが直ぐに攻撃を仕掛けるが、流石に空を逃げ回る鳥には当たらず逃げていった…。

爆発に直撃した二人のうち、Mr.9が咄嗟に庇ったのかミス・ウェンズデーの方はまだ軽傷だったが意識は失っている。

 

「とにかく手当てしよう。あの鳥とラッコは今度見たらブッ飛ばす。美女になんて事してくれんの」

 

「じゃあイリス、お願いね。私はまだ中に帰れそうもないから島に着いたら呼びにいくわ」

 

なんたって双子岬を発ってから雪だとか雷だとな晴天だとか繰り返してるもんね… 偉大なる航路(グランドライン)恐るべし…。

 

私は二人を担いで船内へ入る。

手当てをする際少しだけウェンズデーのおっぱいを触るのを忘れない。うーん、これはまたいい弾力だ。ナミさんの素晴らしいおっぱいとも少し違った手触りだ。

 

…ゴホン。

眠っている美女を前に我慢できるかね?無理だよね。うん仕方ない。犯罪じゃないよ、合法だよ。

 

そうしてる間に、メリー号は偉大なる航路(グランドライン)初となる島、ウイスキーピークに到着した。

二人共まだ気絶したままだけど…大丈夫なんだろうか。この島の人なんだよね…怒られなきゃいいんだけど…。

 


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