ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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25『女好き、眠る』

「ナミさん、島に着いたって?」

 

「ええ…何とかね」

 

幾度も変わる天候や、その度に荒れる不規則な海流に翻弄されながらも流石はナミさん、無事に偉大なる航路(グランドライン)1本目の航海を終える事が出来た。

 

「ごめんね、何も手伝えなくて…」

 

「仕方ないでしょ、二人があの様子じゃあね」

 

うぅ…天使だ、天使がいるよぅ…。

 

「それにしてもあの島…凄くデカいサボテンが何個もあるね、あれも偉大なる航路(グランドライン)故かな」

 

「さぁね、何にせよ言ってみれば分かるわよ。正面に川もあるし…そこを通れば船で内陸まで行けるでしょ」

 

「そうだぞイリス!早く行こう!」

 

ルフィが急かす。わくわくを全身で現してる彼とは対照的に、ウソップは例の如く震えているのだけど。

 

「バ…バケモノとかいんじゃねェだろうか…!?」

 

「可能性はいくらでもある。ここは偉大なる航路(グランドライン)だ」

 

「ウソップは心配性だなぁ、その時は逃げればいいんだよ」

 

私が軽く答えると、ナミさんがちょっと待ったと会話を止める。

 

「私達にはこの島に滞在しなきゃならない時間があるって事を忘れない様に」

 

「へ?」

 

なんかあったっけ?と首を傾げると、ナミさんにコツン、と額を軽く小突かれた。何だ今の、熟年夫婦か!?

 

「この記録指針(ログポース)にこの島の磁力を記録しなきゃ、次の島へ進みようがないのよ!それぞれの島で『記録(ログ)』の溜まる早さは違うから…『数時間』でいい島もあれば、『数日』掛かる島もある」

 

あー、そういえばクロッカスさんがそんなこと言ってた気がする。

航海に関する事は殆どをナミさんに任せっきりなのでその辺もぶっちゃけ適当にしか聞いてなかった…。

 

「お…おいみんな聞いてくれ…!きゅ…急に、急に持病の『島に入ってはいけない病』が」

 

「じゃ、入るけど、いい?」

 

「いや…おい、島に入ってはいけ」

 

「逃げ回る用意と戦う準備を忘れないで」

 

ウソップの弱音はみんなで聞き流して霧でよく見えない島の川を伝い内陸へ向かう。

…何だ、凄く大勢の人の声が聞こえる。

 

やがて、霧の向こうへと船を進めると確かに人が大勢川沿いに集まっていた。

 

『ようこそ!!歓迎の町、ウイスキーピークへ!!』

 

海賊だぁ!

ようこそ!

偉大なる航路(グランドライン)へようこそ!

 

…などなど、姿がハッキリと見える様になった瞬間にそんな声が聞こえた。

…え、歓迎の町?…いや、私達海賊ですけども。

 

「何だ、化け物どころか歓迎されてるぞおれ達」

 

「どうなってんだ…!?」

 

良く分からないが、凄く歓迎されている。

メリー号が島の内部へ進むのと同じように人々もついてきているようだ。

 

「クラッカーの音が凄いね……あ!可愛い娘も一杯いる!」

 

「何!?イリスちゃんどこだ…?ま、マジじゃねェか、ここは、楽園か…?」

 

そうしてメリー号を丁度いい停船位置に止め、みんなで偉大なる航路(グランドライン)初の島へ降り立った。

ウソップの持病は快く歓迎された事で治療されたようだ、良かったよかった。

 

「いら"っ…!ゴホン!マーマーマーマ〜♪いらっしゃい、私の名はイガラッポイ。驚かれた事でしょうがここは酒造と音楽の盛んな町、ウイスキーピーク、もてなしは我が町の誇りなのです。自慢の酒なら海のように沢山ございます。あなた方のここまでの冒険の話を肴に、宴の席を設けさせては頂けまぜっ…ゴホン!マーマ〜♪…頂けませんか…!」

 

「おぉ」

 

島へ降りた直後、町長を名乗るイガラッポイという男の方が挨拶にきた。

それにしてもこの町長、髪の毛巻きすぎである。

 

「「喜んで〜〜!!」」

 

ルフィとウソップとサンジはそれぞれ飯、冒険譚、女に釣られて快く引き受けた。そうだ、ミス・ウェンズデーの事も言っておかねば。

 

「町長さん、ミス・ウェンズデーと、Mr.9って人知ってる?」

 

「!…ええ、それは島の住人ですよ、どうかじっ…ゴホン!マ〜♪どうかしましたか?」

 

「それが…鳥とラッコに爆弾落とされてしまって…。いや、何言ってるのかは分からないかもしれないけど…」

 

「なっ!ビっ……コホン、ミス・ウェンズデーとMr.9が…。では町長として、私が責任を持って傷の手当てをみましょう」

 

…ほっ、良かった。私達がやったのかと疑われるかと思ったけど、杞憂だったか。

 

すぐに二人を町長さんに引き渡すと、彼はテキパキと指示を出して二人を何処かへ連れて行かせた。対応が迅速だ!

 

「ねぇ、所でこの島の『記録(ログ)』はどれくらいで溜まるの?」

 

「ログ?そんな堅苦しい話はさておき、旅の疲れを癒して下さい!」

 

…?何かその言い回しに違和感を感じるな。

ナミさんとゾロも同じような事を思ったのか、ぴくりと眉を動かした。

 

「さァみんな、宴の準備を!冒険者達にもてなしの歌を!!」

 

「わ」

 

イガラッポイがナミさんの肩を抱き寄せて町の人々にそう宣言する。

…何をして?

 

…ナミさんの肩を抱き寄せて…?

 

「てめェこの巻き髪ゴリラがァーーーッ!!」

 

「ぐふぉっ!?」

 

「「ちょ、町長ーーーッ!?」」

 

油断も隙もあったもんじゃないよ!

私に腹を蹴飛ばされて吹き飛んで行った町長を見て、町の人々が目を飛び出させて驚く。

 

「人の女に気安く触んな!次は無いからね!」

 

「おいイリス!肉が食えなくなったらどうすんだ!」

 

「ごめん、けど勝手に体が動いちゃったの!」

 

「そっか、じゃあ仕方ねェ」

 

「「仕方ねェの!?」」

 

ガビーンとオーバーにリアクションしてくれる町人達。漫才でもしてる気になってきた…。

 

「…ゴホッ、ガホッ…こ、これは、し、失礼しました…貴女の恋人でしたか…ゲホ!」

 

「嫁ね」

 

「よ、嫁で…はは」

 

本気では無いとはいえ、そこそこ頑丈だったイガラッポイ。

割と血塗れだけど話は分かる人っぽいから許してあげよう。

 

「おっさん気を付けろよ、こいつはナミの事となると抑えが効かないんだ」

 

「そ…そのようで、では改めて…宴を…」

 

そんな感じで歓迎の宴が開催された。

 

 

***

 

 

月が出たーー。

ウイスキーピークの歓迎の宴はまだ続く。

 

どんちゃんどんちゃんと明るい音楽が町中を包む。

私達に対する宴はまだまだ止まる事を知らなかった。

 

「やーん、クール〜、綺麗〜」

「身体は小柄でも、滲み出るオーラが他とは違うわ〜」

 

「ふ…そうでしょ?」

 

ふぁさ、と前髪をかき上げて調子に乗ってるのは何を隠そう、私だ!

周りではウソップが冒険譚(嘘)を語ったり、ゾロやナミさんが酒の飲み比べで競ったり、ルフィが追加注文しすぎてコックが倒れたり、私と同じように女を侍らせてるサンジがいた。

 

「ねーェ、イリスさんって19なんでしょー?お酒飲まないのー?」

 

なんか、そこら辺の常識は前世のままだから私がお酒を嗜むのはちょっと抵抗があってまだ一度も口にしたことはない。

ルフィ達は全く気にせず飲んでるんだし…こっちの世界だと問題無いのかな?…なら、ちょっとくらい貰っても…。

 

「じゃあ、ちょっとだけ…」

 

「ちょっととは言わず、イッキに行かないの〜?あたし達、イリスさんのカッコいい所見た〜い!」

 

「「見た〜いっ!!」」

 

ジョッキ一杯に入れられたビールを目の前に置かれる。

……じ、人生初酒…!い、頂いても…!!?

 

「…っ!行きます…!!」

 

ゴク!ゴク!とイッキに呷る。お、結構いけるかも!思ってたよりは苦いし、変な味はするけど…悪くはない!

よーし、これなら、まだあと何杯でもいけるぞーー!!

 

「ぐーーー…」

 

心とは裏腹に、私は速攻で落ちていた…。

 

周りではルフィを除いて全員飲み倒れ、ルフィは食い倒れて眠るーー。

 

満足げに眠る私達を見つめて…イガラッポイは呟いた。

 

「良い夢を…冒険者達よ…。今宵も、月光に踊るサボテン岩が美しい…。だが、次に目を覚ました時が、お前達の最後だ」

 

私は、違和感は感じつつも見破る事はできなかったが…この島の住人は皆賞金稼ぎだったのだ。

…イガラッポイ…Mr.8は、上手く事が運んだ様子に軽く口角を上げるのであった…。

 

 

 

 

そして、ここからはイリスの意識が無い状態の物語である。

 


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