ONE PIECEで百合るのはなかなか難しいですけど、上手く百合ればそのポテンシャルは計り知れない作品なのです。
もっと流行れ。
「ナミさーん、これでいいですか?」
「うん、バッチリ、流石ね」
ナミさんの指示で海賊旗を取っ払う。
流石にマストまで外すわけにもいかず、そこはペンキで塗りつぶした。
今の状況を説明しよう。
さっきナミさんの前…というか胸の中で大号泣をかましてしまった私は、見事にナミさんに惚れたのだ!
ハーレムを目指しているのはもう伝えているので、ナミさんは正妻に迎えますよ!って言ったら流石に殴られた、痛い。
あと何で敬語かというと、これはもう敬っているからに他ならない!ナミさんは聞いた話では18歳で年下らしいけど、知らない!見ず知らずのガキみたいな19歳相手にあんな優しい態度が取れるなんて、そんなの尊敬しちゃうでしょうが!!
で、何故一緒に行動しているかというと、それはナミさんが航海術を持ってない私の為にナミさんの目的の島まで案内してくれることになったからだ!
「よっと…、ナミさん!肩揉みますよ!ついでに胸も!」
「はいはい、肩だけお願い」
「胸だけ?」
「あ、やっぱり両方やらなくていいわ」
「喜んで、肩揉みさせて頂きます」
ナミさんを椅子に座らせて肩を揉む。
ごくり、これが美人の肌……ごくり。
「ぐへへ…気持ちいい〜…」
「いや、なんであんたが気持ちよくなってんのよ!」
だって、私の肌とナミさんの肌が…うひっ。もう辛抱たまらん!
匂いを嗅ぐだけなら…!
「……ごくり、…」
あともう少しで髪まで…あ、ともうちょい〜〜。
ガン!という音と共に唐突に船首あたりから海賊が三人現れた。
…なに?こいつら。
「ちょ、な、何あいつら…知り合い?」
「知ってますよねナミさん、私にナミさん以外の知り合いって言ったら今頃島で路頭に迷ってる連中以外居ませんよ」
「じゃあ、あいつらは?」
「普通に海賊ですかね」
急いで立ち上がったナミさんは私を庇うように前に出る。
うわ…かっこいい、惚れた。
「おい、今すぐ金目の物を全て差し出せ、そうすれば命だけは助けてやる」
「おれ達ァ、あの海賊『道化のバギー』様の一味のモンだ」
「素直に従ったほうが身の為だぜ」
ナミさんに庇ってもらうっていう素敵なシチュエーションをもっと味わいたいところだけど…、こいつら、私のセクハラタイムを邪魔したからな。
「ナミさん、私に任せて」
「え?大丈夫なの?」
何やら心配そうだけど、見るからに弱そうだし大丈夫でしょ。
ーーーーーーーー
「あっはっはっはっはーーっ、あなたが悪魔の実の能力者さんだとはつゆ知らずっ!失礼しましたっ!」
案の定瞬殺だった。先程の態度はどこへやら、身体中あざだらけになって正座しながらへこへこ頭を下げている。
「よっ、と」
私は手頃な木材を船から抉り取って海に投げ捨てた。
「なにしてるの?」
「あ、ナミさん、ちょっと待ってくださいね、すぐ片付きます」
三人の襟を引っ掴んでさっき木材を捨てた所までいくと、三人は慌てて動揺し出した。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!流石にこんな仕打ちはねぇだろ!?」
「本当に死んじまうよッ!!」
「だからそう思って浮き輪代わりになりそうなやつ用意してあげたよね、じゃあね」
ぽい、と三人を海へ放り投げた。おー、水しぶきすごいなー。
「あんた…結構えげつないとこあんのね」
「私の至福を邪魔したのは彼らですので、当然の報いかと」
「手を下した本人が言っちゃうんだ…」
呆れながら笑うナミさんも素敵だーっ!
「…あっ、見えた!ほら、見てみて」
目的の島を見つけたのか声を上げたナミさんが双眼鏡を貸してくれた。
そのまま従って覗くと確かに島が見える。
「あんた、こうやって他の島を、しかも無人島以外を見るのなんて初めてでしょ?きっと沢山人がいるわよ〜」
「美人もいますか?」
「私以上はいないかも」
「それは当たり前です」
なんて他愛のない会話を繰り返しながら島へたどり着いた私達は、何とか港に船を止めることに成功する。
そのまま先に船から降りてナミさんの手を取ってエスコートした。客観的に見れば仲良し姉妹組ってところかって喧しわい!
「じゃ、私こっちに用があるから。あんたはあっちにまっすぐ迎えば小さな村があるから、そこに行きなさい」
「え?イヤですよ、なんでナミさんと別行動しないといけないんですか?」
「それは…乙女の秘密!なーに?あんたは私が触れて欲しくないとこまで勝手に触れるの〜?」
うぐ、絶対に何かあるんだろうけど…こうまで言われては…。
「私はもともと泥棒、あんたにはあんたの生き方があるでしょうに…ほら、さっさと行く!」
「は、はい!」
釈然としない思いを抱きながら、ナミさんが指差す方へ走る。
去り際に「今後そっちの村の人たちが言うまでこっちに来ちゃダメだから」と何やらよくわからない念を押された。
……ま。
「素直に聞くわけないけど」
ある程度の距離を走った所で足を止めて百八十度方向転換する。
ナミさんは知らんな、私のナミさん依存度を。
「……流石にもういないか」
先程ナミさんと別れた道を、視力倍加で確認するも既にナミさんはいなかった。
「ふー。やれやれ、ハーレム女王の道は遠いな、正妻にすら逃げられてちゃ話にならないよね」
ともすれば勝手に正妻認定されているナミさんが一番の被害者かもしれないことは黙っておこう。
何はともあれこの島での目的は決まった。それはもちろん、この島で今後も暮らしていくために島の人たちへ挨拶をしていくことではない。
ナミさんと、今後も行動を共にする権利を本人から勝ち取ることだ。
そしてそのままナミさんが向かった寂れた町の方へ走る。
途中で人をくわえた鳥が空を飛んでいた気がしたけど…多分気のせいだろう。
よし、と決意を固めた所で町から爆発音が聞こえた。
「何で町の中で爆発が…、ナミさん、絶対何か知ってるよね」
もう!と来た道を逆走して音がする方へ走る。
能力を使用した爆速ダッシュである、汎用性高くて便利だ〜。
爆発の震源地まではすぐたどり着くことが出来たが、そこには海賊らしき人達が数人倒れてるだけだった。
というより、この町…ゴーストタウンなのかな?町人がいそうな気配しないんだけど…。
だから海賊が住み着いちゃって、ナミさんはこっちに来るな的なことを言ってたのかもしれないな。
「来ちゃったから意味なくなったね、すみませんナミ『うおおおおおーーーーーーっ!!!』うわぁっ!?なに、なに!?」
突然の雄叫びにびくっと身を震わせる。
あの酒場からかな?…ってうわ、よく見たら凄い数の…海賊?かな、なんか居るんだけど!
…あれだけ人がいれば、ナミさんを探す手掛かりにはなるかもしれない。
私はまさに一瞬のうちに酒場にたどり着いて、屋上で騒いでいるらしい人達の様子を伺う。
「…ナミさん本人いたーー……」
宴会でもしてるのか、どんちゃん騒ぎの海賊にナミさんも混ざっている。
あ、あんな美人が混ざったらまずい!私のナミさんが海賊に取られる!それだけは許さんぞ!!
あとは、檻に麦わら帽子を被った男の人もいるようだ。
…うーん、麦わら帽子か…、なんかONE PIECEに関係あったと思うんだけど…。
関係あるどころではないというのはここだけの話。
「野郎共!!特製バギー玉準〜〜〜備っ!!」
「うおおおおおおっ!!」
「うわ…なに?バギー玉?バギーって、さっきの海賊の…道化って言ってたし、もしかしてあのピエロっぽい人がバギーなのかな?」
そうこうしてる間にも準備は進んで、バギー玉という名の大砲を民家に向けた。
ちょっ、誰も居ないんだよね?いや居たとしてもそれはやっちゃダメなのでは…。
なんて思ってる間にもバギー玉は発射された。
「ーーーー、な、にこれ」
言葉を失うとは、まさにこの事だろう。
隣り合わせの民家を何棟も貫通して、果てまで到達する威力…、あんなもの、私の十倍ですら受け止めきれない。
状況はその間にも変化していき、いつの間にやら先程の大砲は檻に捕まっている麦わらの少年へと向けられていた。
点火役は…ナミさん?
『撃ーてっ!撃ーてっ!撃ーてっ!』
状況はよくわからないけど、あの麦わらを殺そうとしてるのは確かだ。
ナミさんは、動かない。いや、動けないのかもしれない。
次第に痺れを切らした船員の一人がマッチに火を付けて導火線に火をつけようとした時、
ガン!!!と三節棍…とでも言えばいいのか、素早く三つの棒をつなぎ合わせて一つの長い武器を作り上げたナミさんは、火をつけようとした人の後頭部を殴りつけて昏倒させた。
「…しまった、ついやっちゃった、やばい、みたいな顔してて可愛い」
「ナミ!てめェどういうつもりだァ!!せっかくこのおれが部下に迎え入れてやろうってのに!!あァ!!?」
バギーが凄い怒ってる。本物の海賊がキレた時の迫力って凄いな。
「なんだ、お前今さらおれを助けてくれたのか?」
「バカ言わないで!勢いでやっちゃったのよ!!……たとえマネ事でも、私は非道な海賊と同類にはなりたくなかったから!!…私の大切な人の命を奪った…大嫌いな海賊と同類には!!」
そっか…、だから海賊専門の泥棒なんだ。
って、まずい!導火線に火がついちゃってる!間に合ってたんだ!
ナミさんもそれに気づいたようだ、…もう!ここは腹を括って、大砲の前にでも出てみるかーーー。
だけど、ナミさんはやっぱりナミさんだった。
導火線についた火を、自分の両手で握って消化したのだ。
私の気分が盛り上がってきたのを感じる。だってそうだ、美人で、性格もよくて、スタイル抜群って…。
「…やっぱり、絶対、ナミさんは正妻だァあーーーーッッ!!!」
両手が塞がって背中もガラ空きのナミさんに、報復しようとしてるのか斬りかかる五人のうち二人を蹴り飛ばす。
残りの三人は、どこからともなく現れた緑髪の剣士が止めてくれたから私は二人だけで済んだのだ。
「えっ…あ、あんたは…!?」
「お呼びじゃないって?でも助けに来ましたよ、ナミさん」
私の夢は、ハーレム女王。
こんな所で正妻にすると決めた女性を、逃がしてたまるか!!!
これが私の、生き方だから!!