「ーー立派だった!」
「ナミ、ログは!」
「だ…大丈夫、もう溜まってる」
「そいつを連れてこい!船を出す!!」
イガラムの乗る船が
イリスも流石に目が覚めたのか、ミキータの肩を叩いて地面に降りる。
「あなた!急いで、私達が見つかったら水の泡でしょ!?」
そんな中、沈む船をジッと見つめるビビにミキータが声を掛ける。
だが、ビビはイガラムの名前を叫ぶ事は無く必死に己の唇を血が出る程噛み締めて耐えていた。
「!!……ごめんなさい、あなたにとって私は憎むべき相手の1人…!出過ぎたマネなのは分かってる、でも、だからってこのまま見捨てられないわ!あなたはちゃんとアラバスタへ送り届けてみせるから…!」
「あんた…!」
ビビをぎゅっと抱きしめて言うミキータ。そのどちらも強い意志の下で行動を起こしているのだ。
ナミはそんな2人を見て、改めて彼女達に対する認識を改めるのであった…。
***
「行くぞ!!」
「舵を川上へ!少し上れば支流があるわ、少しでも早く航路に乗れる!」
そして、一味を乗せた船はウイスキーピークを出た。
船に乗ったと同時に、イリスは女部屋へと籠り眠る。本人も今はとにかく酔いを覚ます事が大事だと思ったからだ。
…だが、そんな時にメリー号へ侵入者が現れる。
その者の名は『ミス・オールサンデー』。どれだけ休みたいんだと言うような名前の彼女は、先程イガラムの船を襲撃した張本人だったのだ。
その立場は
彼女はMr.0、ボスクロコダイルのパートナーであり、実際にクロコダイルの正体を知っていたのは彼女だけでビビ達は彼女を尾行する事でその正体を突き止める事ができたのだ。
だけどその尾行は彼女によってわざとさせられた物であり、ビビ達が追われる様になったのも彼女の告げ口故だ。
そんな彼女は去り際、次にこの船が行き着く島が“リトルガーデン”だと言う。そこで一味は全滅すると言って去っていった…。
––––––––––––
と言うのをさっきナミさんから聞きました。
私がぐーすかと寝ている間にだいぶ大事な話をしていたようで、しかもよりにもよってそのオールサンデーとか言う休みたい欲求に駆られすぎな名前の副社長の女性はかなり美しい見た目なのだとか!(サンジ談)
そして現在、そのリトルガーデンへと到着した所であります。
丸々1日がっぽり寝ていた為航海の手伝いを全く出来なかった私にはお酒禁止令が出されました。ゾロとナミさんから。
「イリスちゃん!起きたのね、調子はどう?」
「あ…うん、平気!ごめんねミキータ、何というか…」
「キャハハ!なーに言ってるのよ、あなたが謝る事何て無いわ、私が好きにしてる事よ。…それに、何かあれば守ってくれるんじゃなかったのぉ?まさか、お酒の勢いに任せて言っただけとか?」
「そんなことない!!守るよ!」
ミキータの気遣いに涙が出そうになるよ…。いやほんと、酔ってる間の記憶とか全部残ってるんだけど、私ヤバイ奴だよね完全に。
ビビ王女にも後で一言謝っておかないと…。距離を取られたら口説けなくなるし!
「おーいイリス、守るならついでにおれの事も守ってくれよ、こんなジャングルじゃ絶対やべェの出てくるぜ」
「頑張ってねー」
ひらひらとウソップに手を振って返す。
だけど彼の言う通りこのリトルガーデンは生い茂るジャングルのような島だった。前世で言えばアマゾン的な?
遠くには獣の鳴き声のような声が響き、地面から生えている木も天高く聳えている。何処にもリトル要素など無い。
船はウイスキーピーク同様、まずは島に入って川沿いに内陸へ進む。
「見てよ、こんな植物、私図鑑でも見たことないわ」
「リトルガーデン…聞いた事はあるけれど、実際に来たのは初めてね」
ナミさんが不安げにするのに対してミキータとビビ王女は少しワクワクしてるような感じだった。
ミキータに関しては本人の戦闘能力もあるのだろうけど、ビビ王女まで同じような反応をするのは意外だった。まぁ、よくよく考えてみれば
ある程度船を進めると、突然火山が噴火したかのような音が全身に響いてきた。
それと同時に船の近くの陸に虎が姿を見せるもその体は血塗れでどすんと倒れた。
「普通じゃないわっ!絶対普通じゃない!何で“
あ、こっちの世界でも虎ってそういう認識なんだ。じゃあライオンは百獣の王なのかな。いやー、こっちの世界じゃライオン程度じゃ王にはなれないでしょ。だって私が見たライオンってリッチー(バギー海賊団モージの猛獣)だし、弱いし。
「でもここわくわくするなー、私が居た島も似たようなとこだったけどここまでジャングルっぽく無かったし…色んな動物が居そう!」
「ちょ、ちょっと待ってよイリス、まさか行くなんて言わないでしょうね!?」
「いやー、私が言わなくても、ほら」
ルフィを指差すと、彼はうきうきといった感じでサンジに弁当を要求していた。完全に探検する気満々だ。
「ねぇ、私も一緒に行っていい?」
「おう、来い来い!」
「あんたまで何言うの!?」
ビビ王女までついていくと言い出したので、ナミさんは静かに涙を流していた。うーん、可愛い。
「キャハハ、王女様がいくなら私も行くわ。護衛くらい必要でしょ」
「ええ、心強いわ、……ありがとう」
「…!!え、ええ!任せて!」
うーん、こっちも尊い…。なんていうか絵面がいい。写真撮りたい。
その後、ゾロとサンジも『肉何キロ狩れたか勝負』とか言って島へと入って行ってしまった。彼らは食料調達の仕事があるから無意味にはならないし、あの様子じゃお互い張り合ってとんでもない大物でも仕留めてくるでしょ。
「じゃ、私は残るか、ウソップじゃ頼りないし」
「何だとゴラ!ありがとうございます!!」
本当は私も探検したいんだけど、ナミさんを置いていく訳にもいかないし…。
ビビ王女はミキータやペット…?なのかカルーという巨大カルガモ、それにルフィまで一緒についてるのだから心配はいらないだろう。
「ん〜〜、でも、リトルガーデン…。何か本で読んだ記憶があるのよね」
「リトルガーデンなんて言うくらいだから、何かちっちゃいのかな」
「でもよォ、周りのどこ見ても巨大植物しかないぜ?」
それはそうだけど。
「ちょっと調べてくる、最近読んだ気がするのよね……。…あ」
「ん?どうしたのナミさん」
隣のナミさんを見ると、顔から汗をだらだら流していた。
ぎこちなくこっちを見たかと思うと、リトルガーデンが何なのかを思い出したという。
「…『
「なるほど…その住人達って、あんな感じ?」
「イイイイヤァァァァァ!!?」
私が指を差す方へウソップが顔を向け叫んだ。
そこには、周りに聳える木々と同じくらいの高さの巨人がこの船に近付いてきていたからだ。
私は咄嗟に構えて、すぐに戦える様にする。
近づく度にその足音は大きくなり、その巨体には歩きづらいだろうジャングルを木などお構いなしにへし折りながらこちらへ進んでくる。
やがて目の前へとやってきた時、その巨体は口を開いた。
「俺はブロギー、酒を持っているか?」
近くで見るとその大きさがよく分かる。…いや、デカすぎるわ。
「持ってるよ、でもその体じゃ足しにはなんないだろうけどね」
「構わん、構わん。少しでもあるなら良いんだ」
ニカ、とブロギーと言う巨人族は船に顔を近づけて笑う。
「ぬあっ!?」
「「ギャーーーーッ!?」」
目の前で当然声を上げたブロギーに2人は声を荒げて叫ぶ。
ブロギーの背後を見ると、その背中をティラノサウルス風の恐竜が噛み付いていた。
だが、ブロギーはそんな恐竜の首を持ってた斧で一刀両断してしまう。とんでもないパワーだな…。
「我こそが!エルバフ最強の戦士!!ブロギーだ!ガバババババ!!肉も取れた!もてなすぞ!客人よ!!」
「ほんと?やったねナミさん、今回は裏も無く単純にもてなしてくれるんじゃない?」
「あ、あああんたね、この巨人を見て何とも思わないわけ!?」
「そうだぞイリス、悪いことは言わねェ死んだフリをしよう」
ナミさんは可愛いが、ウソップは何とも情けない…。
そんな彼も、いざとなればその奥に秘められた勇気を見せるのだから本当は凄い人なんだけど。
「悪い人には見えないよ、それにナミさんは絶対守るから、ね?」
「……絶対よ」
「オイおれは?」
そうして、私達はブロギーの案内のもとに彼の家へと招待された。
家と言っても何やら巨大な岩の穴ボコの中に寝ぐらがあるだけの簡易的な物だが。
そこで先程狩った恐竜を捌き、焼き上がった肉をどすんと私達の前へ置いた。
その肉一つを取ってもサイズがバカでかい。私達3人よりでかい。
「さァ焼けたぞ!食え!」
「いただきまーす」
「あんた良く食べれるわね…」
だって美味しそうだし…。あ、美味しい。
「ブロギーさん、1つ質問してもいいですか…?」
「ん?どうした娘」
「こ、この島の
「1年だ。まァゆっくりしていけ!ガババババババ!!」
ナミさんの質問にブロギーが答える。
い…1年か。それは、何ともまぁ気長な話になってきたぞ。
「それは何とも、気長な話だけれど…そういえばこの島ってブロギーの他に人はいないの?」
「あァ、1人だけいるぞ」
こんな大きな島で2人だけって…。まぁ、この巨体からすれば私達から見て大きな島と思う物も庭感覚で闊歩できるんだろう。だからこその『リトルガーデン』。
「奴とはこの島で決闘をしているのだ。もうかれこれ100年はなるか!てんで
「ひゃ…100年も…!」
ウソップが戦慄する。いや、私もナミさんもだ。
ブロギーに言わせれば、巨人族は通常の人間の3倍は長生きするとの事だが…つまり私達で言うところの大体30年…一つの島で殺し合いをしているということだろう。
その時、ドオン!と音が聞こえた。これはさっき船でいる時も聞いた音で、あの時思った通り大きな山が噴火した様だった。
「さて…じゃあ行くか、…ん?なに、この噴火の音は決闘の合図なのだ!いつしかお決まりになっちまった」
そう言って歩いて行ったブロギーの顔は、100年も争い続けてる相手の元へ赴く様な表情ではなかった。
まるで、これから楽しいことが起こるのだとでも言うかのように楽しそうな顔で行くので私達は言葉を失ってしまう。
…そうか、これは誇りだ。
彼らにとって、戦う理由などいらないのだ。
ただどちらが強いかを競い合う…その為の、お互いの
…それは何とも、その巨体に似合う大きな志だと思ったのだった。