「ブロギー師匠!」
「巨人のおっさん!!」
私達がMr.5を追うと、ブロギーとドリーが決闘していた場所へ出た。
ドリーはブロギーの斧で斬られ横たわり、ぴくりとも動かない。そのブロギーは体を倒され地面にろうで縛り付けられていた。しかも用心深く両手両足にろうで出来た巨大な剣を突き立てられ地面に縫い付けられている。
「ろうって事は…、Mr.3か!!」
「何だ…やかましいのがきたガネ」
「お前か!!Mr.3ってのは!」
私の声に男が反応する。
ルフィが指を指す男を見ると、確かにそいつはMr.3だった。
いや、だって掛けてる眼鏡も3っぽいフレームだし…髪型も頭上で3って形作ってるし…狙ってる?
「ほう…よく私がMr.3だと見破った…!褒めてやるガネ」
「オイルフィ、イリス、この柱壊してくれねェか?」
「え?ゾロ!?」
なんかブロギーの近くにでかい柱とその柱に1本だけろうそくが付いてるなーと思ってたら、そのろうそくはどうやらゾロだったようだ。というか柱もろうで出来てた。
えー…ゾロが捕まってんのかい。こりゃ、ろう人形に引っ掛かったな。
「…っ!?まさか、あれは…!」
「どうしたのイリスさん!!」
「あの子がミス・ゴールデンウィーク…!?……私が相手する」
ゴキ、と首を鳴らして1歩前に出る。ミス・ゴールデンウィークは後頭部で2つに三つ編みして束ねたおさげ髪型で、小柄なりんごほっぺが可愛い女の子だった。大きめの帽子を被ってるのも似合ってていいね!ちなみに小柄とはいえ私よりは大きいけどね?ちくしょうが。
「イリスさん…!気をつけて、カラーズトラップは本当に危険よ!」
「あー、大丈夫よビビ。まともに戦う気なんてないわ、
バレたか。
その通り、私が嫁候補と戦える筈など無い!ちょっとお話したいだけです。
ルフィはMr.3を。Mr.5はどうにでもなるだろうし…ゾロも何とか助けられるでしょ。
…まぁ、人数も戦力も充分あるからなぁ。
「…Mr.5は私に任せて貰えないかしら。私がMr.5を倒せば…気持ちにちゃんと区切りが付きそうなのよ」
「おう、好きにしろ!」
そういうミキータに、ルフィは掌を拳で殴りながら言った。
「じゃあおれらはゾロ救出だな!ナミ!ビビ!カルー!行けるか…!?」
「ええ、カルーは?傷はもう平気なの?」
「クエッ!」
「私も大丈夫。それより早くしないとまずいかも」
ナミさんがゾロを見上げると、彼の体が徐々にろうで固められて行く所だった。そしてそれはブロギーも同じだ。
「フハハハハ!!今更気付いても遅いガネ!そいつはこの私の究極
生身の人間が中に入ったろう人形とか呪われそうで怖いでしょ…!
「…ま、そっちは任せるよ」
ひらひら、と手を振ってミス・ゴールデンウィークの元へ辿り着く。
彼女はもうすぐ戦闘が始まるというのにシートを敷いてぺたんと座り煎餅を食べていた。
「美味しそうだね、私にも頂戴」
「ん。…戦わないの?」
「あんがと。あむ…んー、あなたが戦うなら戦うよ」
煎餅を受け取り、隣にどかっと座った。
「…いや、やめておくわ、勝てそうにないもの」
「ははは、見る目あるね。そうだよ、あなた達は絶対に負ける」
何度も言うけど戦力差がね…。
本来のONE PIECEの世界でどうだったかは忘れたけど…絶対ここまで戦力揃ってなかった筈だよ。
「どうするつもり?私達を海軍に突き出す?」
「馬鹿言わないでよ。何で私があなたを海軍に?そうするくらいなら嫁に来て欲しいくらいだよ、可愛いし」
「…可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、一応敵よ、私達」
そんな事言われても。
そうやってのんびり座りながらみんなの戦いを見る。丁度ミキータとMr.5のバトルが始まろうとしていた。
「は…、まさか、てめェが我が社を裏切るだけじゃなくこの俺に楯突くとはな…、ミス・バレンタイン」
「キャハハッ、我ながらバカだと思うわ…、けど後悔はしてない。だから、あなたを倒すのはケジメでもあるのよ」
「ケジメだと?…ハッハハハッ!!何をバカな事を言ってる!?そもそもてめェが俺に勝てる訳ねェだろ」
「さぁ?それはどうかしらね」
お互いピリピリと緊張が走ってるようだ。
…そりゃそうか、パートナーだった訳だし。
「てめェの能力じゃァ、俺には指一本触れる事すら出来ねェだろ!
「前から思ってたけどね、ソレ…汚いわよッ!」
Mr.5のハナクソ爆弾をふわりと上空に飛んで避けるミキータ。
体重を1キロまで落としているからこそ、風に乗って宙に漂う事ができる彼女の特権回避法だろう。
「ハッ、それがてめェの弱点なのさ、避ける事が出来ても次へ繋がらねェ!そこから俺へどう攻撃する?無理だろう!」
そう言って、空のミキータに向かってハナクソ爆弾を放つが、ミキータは今度は自身の体重を増やす事で地へと落下し避けた。
「無理でもやるしかないでしょ」
相変わらず、いつもの笑みは絶やさないがその頰に冷や汗を流すミキータ。
何か武器でもあれば違うんだろうが、なにせあるのは空を漂う用の傘だけだ。
「1万キロプレス!」
ふわりとMr.5の上へ飛び上がって、1万キロの重量で落下するも難なく避けられる。
「連続1万キロプレス!」
再度浮かび上がり、落下、飛んで、落下を繰り返すも地面に穴が空いていくだけでMr.5には擦りもしなかった。
ミキータには決定的な弱点があるのだ。…それが今正に起きている攻撃範囲の少なさである。
確かに当たればかなりのダメージとなるのだろう彼女の攻撃は、体を少し捻ってやれば躱せるくらいの範囲のものでしかない。
「何度やろうと同じ事だ!
「っ…は…っ!」
「ミキータ…!」
躱された所を上手く突かれ、蹴りと同時にMr.5の足が爆発しミキータをジャングルまで飛ばす。
Mr.5はそれに追撃をかける為追いかけていく。
「ぐっ…!い、ち万キロ、ギロチン!」
飛ばされながら、足を振り上げて迫り来るMr.5に踵落としを放つもやはり簡単に避けられてしまった。
「何度も言わせるな!
「ッ!!?」
爆撃を纏った拳に貫かれ、ミキータは更に吹き飛び木に激突して止まる。
その服は所々が爆発により破れており、こんな時に言うのも何だけどエロい。
「…今からでも遅くはねェ、戻れミス・バレンタイン」
「っ…ふぅ。…キャハハ…!どうせすぐ潰れる会社に戻るくらいなら、将来有望なかっこいい人についてくわ…!」
「そうか…残念だ」
よろめきながらも立ち上がるミキータに、Mr.5は銃を取り出す。
能力は使えなくとも盾くらいにはなるかと助けに行こうとした時、遠くのミキータにキッと目で制された。
…何があろうとも助けに来るなという事、なのかな…。じゃあ、私はミキータを信じて待つとしよう。
「この銃に見覚えはあるだろう?連射可能なリボルバーだ…俺が使えば弾要らずのな」
「究極能力だっけ?そうね、鼻空想よりはマシなんじゃないの」
ダッと木々の間を駆け出すミキータ。
Mr.5やミキータの口振りからして、あの銃は彼の切り札のような物なのだろうか。
「走れば当たらねェとでも思ったか!」
ミキータに向かって銃を乱射するも、その銃口からは弾が出ていない。
「ね、ゴールデンウィーク。あれは何で空砲なの?」
「あれは、Mr.5が言うには自身の究極能力よ。銃弾の代わりに彼の息を吹き込めば、その息さえも爆弾に変わる」
はえー、つまり、不可視の爆破弾の完成って訳だ。
だからミキータはああして咄嗟に走り回って狙わせないようにしたんだね。
「いつまで逃げられるか、見物だな」
「キャハハハ、そのセリフは決まって敗者が使うモノよッ!」
不可視の爆破弾を銃口から逸れる事で避けているミキータ。避けた事で後ろに生えていた木の根本が爆発を起こしてグラリと倒れる。
彼女はそれを身を翻して避け、落ちた木の枝を拾った。
「ほう、
Mr.5が懐を漁ると、先の物と全く同じのもう1丁のリボルバーが姿を見せた。
「2丁拳銃…!?あなたが持っていたのはそっちの銃だけの筈じゃ…!」
「その通りだ。こいつはてめェや“女好き”を狩る為にわざわざ最速で取り寄せてもらったのさ。もはやそんな棒切れ1つをどれだけ振り回そうが…意味ねェぞ」
「くっ!」
元々連射可能だった銃が2丁に増え更に手数が増したMr.5の猛攻。
何とか木を盾にしたり空へ逃げたりを繰り返すも、彼の弾は不可視だ。いつまでも避け続けられる訳がない。
「これで終いだ…!
「このぉ…ッ!」
それでも避け続け、Mr.5の弾丸の雨を掻い潜るミキータ。
そして彼の息の装填が空になるまで逃げ切る事に成功するが…。
「俺は終いだと言った筈だぜ」
「っ…!?しまった…!」
ミキータが避け続けた事により、Mr.5の爆破弾は全て木へと直撃したのだ。結果、彼女の周りに生えていた木はその衝撃に耐えきれず…ミキータの元へ一斉に倒れていく。唯一、正面にだけは木が倒れてきていないので避ける事は出来るが…そこにはMr.5が銃に息を装填して待ち構えていた。
「ーーーーッ!!」
その場から動く事の出来ないミキータの元へ、無慈悲にも木が倒れ込んだ。急いで駆け寄って助けてあげたい…、でも、それは彼女の望む事じゃない筈だ…。私が今出来ることは…信じて待つ事だけ…!だよね、ミキータ…?
「ーーーほォ、能力のキャパを越えたか。この土壇場でやるじゃねェか、流石は元俺のパートナーだ」
「キャハ…!この戦い、負ける訳には行かないのよ…っ!」
やはり、彼女は木に押し潰されてなどいなかった。
自分を潰さんとする木の重量を全て1キロに変えているのだ。そしてそれはMr.5が言うには、ミキータの能力限界量を越えているらしい。
「だが、対象に触れていないと効果を発揮しないのは変わらずのようだな、その状態じゃろくに動けねェだろ」
その通り、ミキータは木に触れて重量を操作している。
例えば今なんかは手で2本の木を、肩や背中などを利用して更に多くの木を支えている。
つまり、自分に押しかかっている木のどれか1本だろうと手を離せば、それだけじゃなくとも少しでも体勢を崩せばその瞬間木は本来の質量を取り戻しミキータへと襲いかかるという訳だ。
「せめてもの情けだ、楽に殺してやる」
悠々とした足取りでミキータの前へと立ったMr.5が、少し顔を俯かせる。ふむ、彼にもパートナーを思う心は残されていた訳だ。
残されていたというより、元々落ちるとこまで落ちてなかっただけか。
「“全身起爆”…!!」
「キャハッ、それは、流石に死ぬわね!」
全身起爆。その名の通りだろう…そして彼の口振りからしてミキータが即死するだろう威力なのは間違いない。
「いいのかしら、助けに行かなくて」
「いいの、今助けに行ったら嫌われちゃうじゃん」
だよね、とドンと構えてミキータを見ると、彼女は私の方を見てこくりと頷いた。
「はぁッ!1万キロウォールド!」
ミキータは抑えていた木を一本だけ両腕に抱えて前へ置く。そうなればどうなるのかはさっきも説明した通り重量が戻った周りの木がミキータへと倒れてくる訳だが…。
「…ッ!こいつ…!」
木がミキータを潰す前に、Mr.5の全身起爆が炸裂した。
彼の周りにある木は吹き飛び、Mr.5を中心にクレーターが出来上がる程だ。
「…キャハハ、残念ね、私は死んでないわよ」
ミキータを潰さんとした木諸共彼は吹き飛ばしてしまった為彼女は無事だった。そしてミキータの前に防御壁として置いた木で爆発を防ぎ…こうして彼女は立っている。
少しでもタイミングがズレていれば…木に潰されるかガードが間に合わず爆発にやられていたか…、どちらにせよかなりの度胸がいる行動だったのは間違いない。
流石に服はもうボロボロエッチだし、木と共にミキータ自身も爆風で飛ばされはしたのだが。
「確かに木の棒なんかじゃあなたを倒すのは無理だったわね。…じゃあ、これをプレゼントしてあげるわ、受け取ってね!」
彼女は抱える大木をポイとMr.5へ投げた。
それは、ミキータだからこそ持つ事の許された大重量の大木。それが彼女の手を離れたということは…。
「ま、待て…!そんな物をこっちに投げるな!」
「キャハハハっ!もう投げたわ!攻撃範囲が狭い?結構よ!潰されなさいっ!」
「うごっ…ぐぁあああッ!!?」
ドゴォンッ!!と大きな衝撃が響き渡る。
辺りに舞う砂埃が晴れた時、そこには大木に下半身を敷かれたMr.5と、その前に立つミキータがいた。
「……まさか、俺がてめェに負けるとはな…」
「キャハハ、初めから私を殺す気何て無かったでしょ、あなた。本気の爆発より大分弱かったじゃない」
傘を肩に担いでミキータが言う。
「…は、うるせェな…。長い付き合いだろ、紙切れ1つの指令で…簡単に殺せるような間柄か?…最後に1つ…聞かせてくれ」
「なに?」
「…てめェの本心はーーーーーどっちなんだ」
「……何の事かしら?本心も何も…今私はあの子の嫁で…あなた達の敵よ」
「は……そりゃ、難儀なもんだ…。だったら、後悔するんじゃねェぞ。てめェの選んだ道は…」
「わかってるわ。…ジェム、またみんなで…ご飯でも食べましょう」
じゃあね。とミキータが言ったと同時に、Mr.5は軽く笑って意識を失った。
「……驚いたわ、まさかMr.5が負けるなんて」
「何か武器を持てば、ミキータは見違えるくらい強くなるって証明だね」
信じていたとはいえ、緊張はしていたからか今どっと力が抜けたよ。
…さて、ミキータは勝利した事だし、残りの勝負はどうなってるかな、とルフィの方を見ると…。
「ゴムゴムのーーッ!バズーカッ!!」
「ぐへェ…!?」
丁度終わったとこみたいだ。あ、Mr.3が飛んでって星になった…。
何というか、ルフィの体に傷がないし…余裕だったんだろうな。
ウソップ達の方もろうに火薬星をぶつけて熱で溶かす事で、ゾロ救出を達成していた。
…あれっ、となると残ってるの私だけじゃん!!
ちなみにMr.3がキャンドルチャンピオンを使わなかったのは、ミス・ゴールデンウィークがイリスに捕まって(笑)いたからです。