ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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34『女好き、山登りを決意する』

ワポル事件の翌日ーーー。

 

「しっかし、あのワポルとかいうやつ何だったのかねェ。聞いた事もねェのにあんなすげェ船持ってたろ?」

 

「さぁ?余程のバカだと思うよ。流石にもう攻撃してくることはないと思うけど」

 

「イリスちゃんのいう通りだ、気にすんなウソップ。…さ、イリスちゃん、見張りは交代するからナミさんの下へ」

 

「ありがとうサンジ、助かるよ」

 

そう言い残してナミさんの眠る部屋へと向かう。

その時、部屋の扉が開いて中からビビ王女が出てきた。

 

「やぁビビ王女、あったかそうだね」

 

「ふふ、イリスさんもね」

 

ここ最近ずっと寒い日が続いているので、みんな厚着をしているのだ。

いきなり冬が到来したかのような気温の変化に偉大なる航路(グランドライン)の恐ろしさを再度痛感する。

 

「ここまで寒い日が続いてるってことは、島が近い証拠よ」

 

「へぇ…気候が安定してるから?」

 

「そう。偉大なる航路(グランドライン)は夏島、春島、秋島、冬島に分かれてて、その4つの島に挟まれてるこの海はそのせいで常に気候が安定しない。…だけど、今安定してるって事はつまり、その4つのうちどれかの島に近付いてるって事なの」

 

なる程ね、じゃあ今回は冬島に近付いてるって訳か。

…ナミさんの体調を考えると、出来れば春か秋が良かったけどそうも言ってらんないか。

 

「ビビ王女、改めて昨日はありがとね。ナミさんの為に決断してくれて…本当に助かるよ」

 

「ううん、友達を見捨てて国民の命を救っても…きっと私は誇れないから」

 

「…ぷっ…はは!ビビ王女は、本当に素敵な女性だよね!嫁にきてよ本当に」

 

「…私にイリスさんを満足させられるような財力はないけど?」

 

「そのおっぱいがあれば充分だよ!」

 

途端に顔を真っ赤にして歩いてったビビ王女を見て、流石にやり過ぎたか、と反省。

…でもビビ王女、良いよね。ハーレム女王を目指してる者としては無視できない可愛さだよ。

 

「ナミさーん、体調はどうですかっと…」

 

扉を開けて中に入る。

中ではミキータとゾロが居たが、私が入ってきた事で気を利かせてくれたのか部屋から出て行った。

 

「…イリス?」

 

「うん、私だよナミさん」

 

横の椅子に腰掛け、ナミさんの手を握った。

…だいぶ熱いな…また熱上がったのか…?

 

「航海は…大丈夫……?」

 

「全然へっちゃらだよ、…とは、言えないかな。やっぱりナミさんが居ないと全然わかんないや。だから、早く良くなってね」

 

「ふふ…ええ。…やっぱり、あんたが居ると…落ち着くわ…」

 

「そ、そうかな、そう言ってもらえると、すっごく嬉しいね…はは」

 

何だこの素直な爆弾兵器は。

危ない、キュン死ぬ。殺されるゥ!!

 

「……ん、外が騒がしいね、…あ、島を見つけたって騒いでるよナミさん。もう少しの辛抱だよ」

 

外からルフィの嬉しそうな声が聞こえてくる。

ナミさんも聞こえたのか、少し頰を緩ませた。…いや、その顔は自分の病気が治る事が嬉しかったんじゃなくていつものルフィらしさについ笑ったって顔でしょ。本当にアーロンパークの時から、いや初めて会った時からそうだったけど自分の事は二の次だよね。

 

「イリスは、外に行って島を見てこなくてもいいの…?」

 

「島もいいけど、私はナミさんが1番だよ。そういうのはキャプテンに任せよう!」

 

冬島が気にならない訳でもないけど、ナミさんの体調の方がずっと気にかかるよ。

 

「だから今は寝ててね、私がここに居るから」

 

「……うん」

 

そう言って眠るナミさんの頭に腕を伸ばして撫でた。

うくくく、身長のせいで体を伸ばさないと届かないのがキツい!

 

 

 

 

数分後、船が目的の島へ到着したのか揺れが止まった。

…それにしては、何か雰囲気がおかしいな…?静かすぎる。

 

「……っ、銃声…!?」

 

外から一発、弾けるような音が聞こえた。

この一味に銃をわざわざ使う人なんていないし、ワポルのようなバカが乗り込んできたのか…?

 

それからまた数分後、部屋にミキータが入ってきた。後ろには左腕から血を流しているビビ王女もいた。

 

「ビビ王女…!その傷は…?」

 

「何でもない、そこで転んだの。それよりイリスさん、島についたわよ」

 

「ナミちゃんを背負うわ、私に任せて」

 

それを聞いてすぐ様ナミさんを起こすと、とにかく体を冷やさないようにあったかくさせてミキータに背負ってもらう。

気持ちで言えば、私が背負っていきたいけれど、…くそ、身長くれよ誰か…!

 

 

 

–––––––––––

 

 

 

「ここが、我々の村だ」

 

「おおー、雪国って感じだー」

 

国の守備隊のような人達に連れられ、私達はこの島の村まで案内された。

ゾロとカルーは船で留守番である。

 

「何か…前の世界でも見たことない動物が一杯いるな、なにあのカバマンモス…」

 

「前の世界?」

 

「んん″ッ、何でもないよ、前に住んでた島のこと」

 

あはは、と首をかしがるビビに言葉を濁した。

 

「じゃあみんなご苦労さん、見張り以外は仕事に戻ってくれ」

 

その中のリーダー格の人が周りに指示を出す。

仕事に戻れって…見張り以外はみんな民間人だったのか…。海賊がきて村総出で迎えるってのは、そら何とも警戒心の強いことで。

 

「やあドルトン君、2日後の選挙は楽しみだな。みんな君に投票すると言っとるよ」

 

「と…とんでもないっ!!私などっ!私は罪深い男です…!!」

 

リーダー格の男の名はドルトンというらしい。かなりの大男だ。

そんな彼に連れられ、ナミさんを連れた私達は彼の家へと案内してもらった。

 

 

「そこのベッドを使ってくれ、今部屋を暖める」

 

「ありがとうございます…!」

 

ミキータがそっとナミさんをベッドに寝かせて、布団を被した。

 

「申し遅れたが、私の名はドルトン、この島の護衛をしている。我々の手荒な歓迎を許してくれ」

 

「手荒な歓迎?」

 

「なな、何でもないのよイリスさん」

 

「そうだぞイリス、お前が知る事は何もない、いやむしろ頼むから大人しくしててくれ」

 

何故か慌ててビビ王女とウソップが言うので、詮索しても致し方ないと結論づけて流した。

 

「熱はどれくらいあるんだ?」

 

「直近で測ったのが、42度…!平熱より6度も上がってるの…!」

 

ビビ王女の答えにドルトンは息を飲む。これ以上上がれば、本当に命に関わる問題なのだ。

 

「この島の医者は?」

 

「…この島には、先に船で見た君達には話したが“魔女”しかいない」

 

「その“魔女”ってのはどこにいんだよ?」

 

サンジの質問にドルトンさんは窓の外を指さす。

 

「窓の外に山が見えるだろう?あの山々の名はドラムロッキー。真ん中の1番高い山の頂上に城が見えるか?今や、王のいない城だ…」

 

軽く視力倍加を使って見ると、確かにくっきりと筒状の山の上に城が建っているのが見えた。

 

「まさか、あの城に?」

 

「その通りだ。人々が魔女と呼ぶこの国唯一の医者、“Dr.くれは”があの城に住んでいる…」

 

「よりによって何であんな遠いとこに…。じゃあすぐに呼んでくれ!急患なんだ!」

 

「そうしたくとも通信手段がない」

 

えぇ…。聞いたサンジも唖然としてるよ。

 

「医者としての腕は確かなんだが、少々変わり者のバアさんでね…もう140近い高齢だ」

 

「ひゃ…140!?そっちが大丈夫か!?」

 

ギネスに載るんじゃない?この世界には無いけど!

 

「この国の人達は病気やケガをどうしてるの!?」

 

ビビ王女の尤もな質問にドルトンは頷く。

 

「彼女は気まぐれに山を降りてくる、そして患者を探し処置を施しては、報酬にその家の欲しい物をありったけ奪って帰っていく」

 

「話を聞くにとんでもない人みたいだけど、その人はどうやってあんなとこからここに?」

 

「妙な噂なんだが…月夜の晩に彼女がそりに乗って空を駆け降りてくる所を数名が目撃したという話だ。それこそ、彼女が魔女と呼ばれる所以だ。…それに、見たこともない奇妙な生き物と一緒に居たという者もいる」

 

「ぐあっ!魔女と雪男だと!?いると思ったんだこの島を見た時からよォ!…ああどうか出くわしません様に!!」

 

転がるウソップを無視して話を続ける。

 

「大体よ、国中で医者が1人なんておかしすぎるぜ!」

 

「…話はわかった。だったら私が…は無理だから、私達がナミさんをあの城まで連れて行けばいいんだよね?」

 

「い、イリスちゃん、正気か!?そんな事すればナミさんの症状は悪化…いや、誤って登る途中落下でもしたらお終いだぜ…!?」

 

「分かってる。…良く聞いて、メンバーは私とルフィとサンジとミキータ。この4人であの山を登りナミさんを城まで連れて行く。そんないつ降りてくるか定かでもないおばあちゃんを待ってらんないよ」

 

「…キャハハっ、私は賛成よイリスちゃん。私が背負っていけばいいんでしょう?」

 

「ミキータまで…!ナミさんへの負担は大きいのよ!?」

 

それは、その通りだ。

…だけど、例えばここでじっとその医者を待つとして果たしてその医者はいつここに現れるの?明日にはくる?それとも1週間、果てに1ヶ月…?

…バカバカしい。

 

「何があろうと、ナミさんはあそこまで連れて行く。天運に任せてなんかられないよ…そうでしょナミさん?」

 

「…はぁ…はぁ……イリスが決めた事なら、どんな事だろうと、ついて行くわよ……よろしく、あなた…」

 

うっすらと目を開けたナミさんが手を伸ばすのでギュッとその手を握り締めた。

…あなたって…ナミさん顔赤いけどそれ熱だけじゃないよね?目も逸らしてるし恥ずかしがってるよね??…でも、燃えてきた…!!それにちょっと興奮しちゃった…。

 

 

 

そして、ミキータがナミさんを背負いビビ王女が更にその上から紐で括り上げて外に出る。ここまでしておけば、誤って落とす様な事もないだろう。

何かあってもこのメンバーだ、万が一にもナミさんに危険が及ぶ事はない…!

 

「…本気なら止めるつもりはないが、せめて反対側の山から登るといい、ここからのコースには“ラパーン”がいる…!肉食の凶暴なうさぎだ…集団に出くわしたら命は無いぞ!」

 

「大丈夫、急いでるから最短コースでいく」

 

「うさぎ?平気だろ」

 

「あぁ、蹴る」

 

頼もしいなこの2人。

 

「それじゃあ、行こう!先頭は2人に任せた、真ん中はミキータお願い!後ろから私がついてくよ!」

 

「「おう(ええ)!!」」

 

そうして、私達は走り出した。

Dr.くれは…魔女がどうとか、奇妙な生き物がなんとか…腕が確かならそんな噂はどうだっていい!一刻も早く、ナミさんを治療して貰わないと…いい加減に私が心配死するっての!!!

 

 




どうしてもミキータの役目が他作品様と被ってしまう…。
でもミキータはどうしても一味に入れたくて入れたくて…!!この辺の設定を考えるのは、やはり二次創作ならではの苦悩がありますね…。

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