ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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35『女好き、城到着』

「あぁーこれがラパーンか!」

 

私はうんうんと納得した様に頷く。

 

「白くてデケェから白熊だよ、間違いねェ!」

 

「いやラパーンだっつってんだろ、うさぎだよさっき言ってた」

 

サンジの突っ込みにそうだったか?と首を傾げるルフィ。やはりまともに話を聞いてなかったなこやつ。

 

「キャハハ…それで、どうするの?」

 

「うーーーん、……とにかく逃げながら前へ!」

 

「逃げながらっても…この数はどうなんだ」

 

サンジが軽くボヤく。それもその筈、何故なら今私達の目の前には無数の巨大兎、ラパーンがいるのだ。

雪は吹雪いてるし、足元はその雪で沈み歩きづらい。

 

「今は一刻も早く城へ行かなきゃ…。どうしても避けられないうさぎだけ蹴散らして前へ進もう」

 

「確かに、イリスちゃんの言う通りだ…!行くぞルフィ、とにかく邪魔する奴だけ倒しながら進め!」

 

「おう!」

 

ダッと一斉に走り出した。

ミキータに攻撃をしかけようとした奴を最優先に撃破し、前へ前へと進む。

私にサンジ、ルフィも動けるのだから、正直巨大兎とは言っても大した脅威じゃないね。

 

「ゴムゴムの〜!銃乱打(ガトリング)!!」

 

10倍灰(じゅうばいばい)去柳薇(さよなら)連打ァ!!」

 

腹肉(フランシュ)シュート!!!」

 

多分このうさぎも弱くはないんだろうけど、如何せん相手が悪い。

私達が通る道を塞ぐうさぎ達は軒並み蹴散らされてミキータは快適に前へ進む。

 

次第に私達を狙うラパーン達は減り、姿が見えなくなった。

 

「よし、居なくなった…!急ごう!」

 

「いや待ってイリスちゃん、上だ…!いつの間にか俺達より上にいる…!!」

 

「何やってんだ?あいつら」

 

私達が目指してる先の道なき雪道の上で、ラパーン達が揃って飛び跳ねその巨体を雪に連続で叩きつけていた。

…い、いや、ちょっと待って、あんな数のラパーンが一斉にこんな所で飛び跳ねたら……っ!!

 

「う、うそでしょ…っ」

 

「やりやがったあのクソうさぎ共…!」

 

「キャハハっ……いや、笑えないわね、これは…!」

 

「…っ、雪崩が来るッ!!」

 

その言葉と同時に、ラパーンの起こした雪崩が上から一気に崩れてきた。

ちょぉ!?何て規模だよ!こんなの私達だけじゃなくて下の村まで…いや、なんなら雪崩起こしたラパーンも埋もれるでしょ!

 

「早く逃げるぞ!どこでもいいから高いとこへ急ぐんだ!」

 

「……いや、私に考えがある…!!」

 

考えというか、出来ればしたくなかったんだけど……!!仕方ない、このままじゃナミさんを城まで連れて行くのが遅れてしまうし、何よりみんなが危ないんだ…!!

 

「イリス!どうしたらいい!?」

 

迫り来る雪崩に気持ちを焦らせながらルフィが叫ぶ。

 

「お願いだから絶対こっちを見ないで!ナミさんとミキータは……いややっぱり見ないで!わかった!?見ないでね!!フリじゃないからね!!」

 

「キャハハ、何をするかはわかんないけど、わかったわ、絶対見ない」

 

「あぁ、勿論俺もだ」

 

「うん、ありがとう…!」

 

みんなが私に背を向けて目を瞑ってくれたので、急いで服を脱ぐ(・・・・)

全裸だ、こんな雪の中、幼児体型とは言え19歳が全裸だ!!泣きたい…けどナミさんの為だ!!!いやでもごめんやっぱ涙出てきた!!

 

「はぁ!!」

 

みんなを掴んで、ぐぐ、と私の体が大きくなっていく。

雪崩に耐える為に上にも横にも10倍した。巨大太っちょ全裸19歳の完成だ!お願いだから誰も見ないでほんとに!!

 

服を脱いだ理由は服まで10倍できないから、ほんとに肝心な時に不便だなこの能力!!

 

「い、イリスちゃん、今どうなってるの!?」

 

「な、なんでもない!」

 

「おーイリス、何か声デカくねェか!?」

 

「気のせい!!」

 

羞恥とか尊厳とか絵面とかちょっと人として大事な物を秒単位で失ってはいるが、準備は整った…!!

 

そして、遂に雪崩が私の体に衝突する。

うぐぐ…!私の体を10倍して体重はかなり増えているし、更に10倍で重くしてある今はちょっとやそっとでは動かないよ!その上私自身のパワーで踏ん張ってるんだから、いくら雪崩だろうとやり過ごすのは訳ない…!

 

「ふゥ…!!…っ、ぐ」

 

でもやっぱ冷たい!!やばいよ!冷たい!!ていうか痛い!!

 

うぐおお、と耐えに耐えて雪崩を何とかやり過ごした。

収まった瞬間に巨大化は解除し、ちゃっちゃと服を着る。

 

「はぁ…ふぅ…よし、もういいよみんな、行こう!」

 

「え?雪崩はどうなったんだ…?」

 

「何とかなったんだからいいじゃん!早く行こう!」

 

サンジの背中を叩いて先を促した。いや、もう忘れさせてよ、黒歴史だよこんなの。

 

 

 

そして、ついに目指していた筒状の山の下まで辿り着いた。

まるで巨大な大木みたいな山で、山登りというよりはロッククライミング的な登り方になりそうだ。

 

「よし、登るか!」

 

「待って、ここからはミキータの事をルフィが背負った方が早いよ」

 

方法としては、ミキータの能力で自分自身とナミさんの体重を一キロにする。そしてルフィに捕まれば何の抵抗もなくロッククライミングができるという訳だ。

 

「って訳、わかった?」

 

「おれがミキータをおぶればいいんだろ、わかった!」

 

「キャハハ、お願いねキャプテン。…でもどうせならイリスちゃんにおぶって貰いたかったわ」

 

「低身長でごめんなさい!…サンジと私は後から行こう、無いとは思うけどもしルフィが落ちてきた時の保険としてね」

 

サンジが頷いたのを皮切りに、ルフィはミキータとナミさんを背負って登っていく。

ゴムの特性を充分に活かし、腕を伸ばしたり縮めたりして凄い速さで登っていった。

 

「私達も急ごう、ていうかルフィ…その登り方はナミさんに対する負荷が重いよ!ちょっとはゆっくり登って!ゆっくり急いで!」

 

ルフィを追いかけるように私達も急いで登り始めた。

指の固さを10倍にして山肌に手を突き刺すだけで持ち場は完成するので、かなり楽に登れる。

 

そのままひょいひょい登っていくと、わりとすぐに頂上まで辿り着いた。

 

「結構早く着いたね、よかった…これでやっとナミさんを診て貰える!」

 

みんなで走って城の門まで向かう。ドンドンと慌しくノックすると、多分この人がくれは何だろうなって感じのおばあちゃんが出てきた。

…いやでも140…?年寄りには見えるけど、そこまでか…??服装も若々しいし。

 

「お前達は何者だい?まさか山を登ってきたってのかい!?」

 

「そのまさかなんだけど、急患なの!お願いDr.くれは、報酬ならいくらでも出すからナミさんの病気を治して下さい…!!」

 

「!まさか、そいつを運んで来たのかい?…こりゃ驚いたね。……、その通りあたしゃDr.くれはさ。良いだろう、小娘の病気を診てやる」

 

その言葉にみんなで顔を見合ってほっとひと息ついた。

…はぁー、とにかく、これで一安心かなぁ…。

 

 

 

***

 

 

 

「ナミさん!起きたって!?」

 

「イリス!」

 

治療が終わり、ナミさんの意識も戻ったと聞いて私は急いで部屋に向かった。

 

「ガキんちょ、起きたけどまだ病人だよ、騒ぐと悪化するだろうね…ヒッヒッヒ」

 

「あ、ナミさんごめん……、でもガキんちょ言うな、19歳だからねこれでも!」

 

…でも、確かにナミさんはここ最近の中では1番穏やかな顔つきをしている。熱もかなり下がってると見ていいよね!

 

「あぁ良かったナミさん…!」

 

「ありがとねイリス、お陰で随分楽になったわ…。ビビにもお礼言わないとね」

 

ビビ王女の決断があったからこそ、強情なナミさんをこの島に連れてくることが出来たからね!

 

「ほんとありがとうございますDr.くれは!流石若々しい見た目を維持してるだけある!」

 

「ほう、嬉しいじゃないか。だけど診たのはあたしじゃないからお礼は返しておくよ」

 

え、でもこの島に医者は1人しかいないって話じゃ…?

 

「まぁいいか。それで、原因とかわかったの?」

 

「ああ、それはこいつさ」

 

ぐい、とナミさんの服をめくり上げてお腹の肌を露出させるDr.くれは。

 

「ちょ、ダメだって、何か服着たままそれされちゃうとすっごく厭らしい!えっち!」

 

暗い部屋でなら裸すら見せ合ってるけど…こんな明るい所で、そんな…えっちじゃん!雪山のアレ?なにそれ?知らない。

 

「こいつは何を言ってるんだい?」

 

「気にしないで、たまに暴走するの…それで、これは一体…?」

 

はしゃぐ私を華麗にスルーして、お腹の何かに噛まれたか刺されたかの跡を見るナミさん。少しは反応してよ!

 

「こいつは“ケスチア”、高温多湿の密林に住んでる有毒のダニさ。コイツに刺されると刺し口から細菌が入っちまって、体の中に5日間(・・・)潜伏して人を苦しめ続ける。40度以下にゃ下がらない高熱・重感染・心筋炎・動脈炎・脳炎!。刺し口の進行から見て今日は感染から3日目ってとこか…並の苦しみじゃなかった筈だが…放っといても5日経てば楽になれた…ヒッヒッヒ…」

 

「?」

 

「放っておいたら、お前は2日後には死んでたからさ」

 

「はァ!!?」

 

ガバっとナミさんに抱き付いて頰を擦り寄せる。ばかばかばか!死ぬとか言わないでよほんとに怖い!!

 

「“5日病”と言ってね…!ケスチアは100年も前に絶滅したと聞いてたが…一応抗生剤を持ってて役に立ったよ。お前達一体どこから来たんだい、太古の島でも散歩してたのかい?ヒッヒッヒ…まさかそんなことは…」

 

「あ」

 

「心当たりがあんのかい、呆れた小娘だ」

 

心当たりなら、私もある。

リトルガーデンだ。あそこは、この世界でも絶滅している筈の生物がそこかしこに存在していたし…その最たる例が恐竜だ。

でもそんなダニがいる島で100年も生活してたドリーとブロギーは何なの?巨人族は平気なの?

 

「でもまさか死にかけてたなんて…。よかった、死んじゃったらせっかくあんたの正妻になれたのも無駄になるとこだったわね」

 

「私はナミさんが居なくなったらこの世界滅ぼすよ、とりあえず虫は皆殺しかな」

 

「お前達はいちいちスケールが大きい話をするね」

 

そりゃ、ナミさんに関わることだもん。

 

「どうもありがとうDr.くれは。熱さえ下がればもういいわ、後は勝手に治るんでしょ?」

 

「甘いねお前は…病気をナメてる!本来なら治療を始めて完了まで10日はかかる病気だ。またあの苦しみを繰り返して死んじまいたいんなら話は別だがね、あたしの薬でも3日は大人しくしてて貰うよ!」

 

「3日なんてとんでもない!私達は先を急いで…!」

 

その瞬間、Dr.くれはは腰からナイフを取り出してナミさんに向かって突き出した。

殺意は全く感じられないから寸止めの脅しでもするんだろうけど、何であれ…。

 

「ちょっと、人の嫁に何するの?」

 

「ほう…ただのガキンチョじゃなさそうだね」

 

彼女の腕を掴んで止めた私は、力が抜けた事を確認して手を離す。

 

「ナミさんの命を救ってくれたことには感謝するけど…、どんな理由があれ、私の嫁に武器を向けるのは許さない」

 

「…ヒッヒッヒ…なかなか面白いガキンチョだ、良い目をしてるね。…小娘!お前の相方ならしっかり手綱を握っておくことだ」

 

「えっ、あ、うん」

 

戸惑いながらも頷くナミさんは、何だか可愛かった。

…あ、違う、いつも可愛いかったね、失敬失敬。

 

 

ドンッ!!

 

「ギャーーーー!!助けてェ!!」

 

「ん?」

 

突然勢いよく部屋の扉が開いたと思うと、外から帽子を被った鹿?かトナカイかの喋るぬいぐるみ?を追っ掛けてサンジとルフィが入ってきた。ミキータはその後ろで呆れ顔だ。

 

「ルフィ、サンジくん…ミキータも、…それと、何なの?あの鼻の青い…喋る鹿のぬいぐるみ」

 

やっぱりそう思うよね。

……何だろ、このぬいぐるみ見覚えあるな、めっちゃある。

 

うーーん、と頭を悩ませる。何かきっかけがあれば思い出せそう何だけど…。

 

……しかしこのぬいぐるみ、可愛いな。

 

…いや女の子的なあれじゃなく、ぬいぐるみに対する可愛いね!

 

 


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