ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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36『女好き、トナカイを勧誘する』

「やめろォ人間!!おれはお前らなんか嫌いなんだ!!」

 

バタバタと暴れるぬいぐるみを押さえ込んで料理しようとするルフィとサンジをミキータが呆れた目で見ている構図なんて、この先一生お目にかかれないんだろうなぁ。

 

「あいつが何かって?名前はチョッパー、ただの青っ鼻のトナカイさ」

 

「トナカイは喋らないわよ!」

 

ナミさんのツッコミが刺さる。そりゃそうだ、喋る動物などこの世界でも見たことない。

 

「…ただし、」

 

そこでDr.くれはは言葉を区切る。

 

チョッパーは、その体格差ゆえ…というかサンジとルフィの馬鹿力が原因で抜け出すことが出来ないでいたのだが…。

 

「やめろこの…!!」

 

「え…!」

 

突然体を大きく変形させてまるで人のような姿になったチョッパーが、戸惑う2人の頭を殴って床に叩きつけて逃走した。

…いやあれトナカイでもぬいぐるみでもないでしょ。

 

「『ヒトヒトの実』を食べて、“人の能力”を持っちまっただけさ。あいつにゃあ、あたしの“医術”の全てを叩き込んであるんだよ」

 

へぇ…じゃあ船医になれるじゃん!!勧誘するしかないでしょ!

 

「ちょっとさっきのトナカイ探してくるよ、みんなはナミさんをお願い」

 

「…ちょっと、私はあんたがいればそれだけでいいんだけど」

 

私がう、と言葉に詰まると、ナミさんはコロッと表情を一変させてくすくす笑う。

 

「冗談よ、何か気になることでもあるんでしょ?早く行かないと見失うわよ」

 

「な、ナミさん〜!」

 

布団に潜り直してウインクするナミさんにほろりと涙を流してチョッパーを追いかけた。気になることっていうか…何でチョッパーの事を私が知っているかもしれないと思ったのか確かめたいだけなんだけどね。

 

 

 

 

「おーい!」

 

「また新しい人間か!いい加減にしろ!」

 

「違うって!私は別にさっきの人達みたいに取って食おうだなんて思ってないから!」

 

「信用できるか!」

 

「してもらわないと話も出来ないじゃん!」

 

そうやって追いかけ回して数分、チョッパーを行き止まりまで追い込んだ。壁に背をつけてこちらを警戒するチョッパー…だから食べないってば。

最初に見た時のちっこい姿に戻ってるから、警戒はされてるけどまだ話す余地はありそう。

 

「私はイリス、ただの女好きだよ。食べないから話をしようよ、何で喋ることが出来るのかとかさ」

 

「嘘じゃないだろうな、ただの女好きとか、怪しさしかないけど」

 

「大丈夫大丈夫、それにその時はさっき2人にしたように殴ればいいじゃん、私1人余裕でしょ」

 

「人間だろうと女を殴れるか!」

 

結構紳士的なトナカイだね…。

 

「ヒトヒトの実を食べたって?だから喋れるの?」

 

「…ドクトリーヌから聞いたのか?」

 

ドクトリーヌ?Dr.くれはの事だろうか。

私はチョッパーの横で壁にもたれ掛かりながら片膝を立てるように座る。

 

「そうだ、おれはヒトヒトの実を食べたから喋ることが出来るんだ。…でもそれだけだ、トナカイでもないし人間でもないバケモノだよ」

 

「自分の事をバケモノ呼ばわり?」

 

「事実だ」

 

しゅんと俯いてしまった。やっぱり…知ってるんだよね、この子。

 

「まぁ、チョッパーがバケモノだとかはどうでもいいんだけど、チョッパーって海賊に興味ある?」

 

「…!!ねェよバカ!!バカ!ねェよ!」

 

慌てすぎでしょ。うーむ、この反応からして興味あるのは間違いないし、しかもこんな個性的なキャラだ……もしかしたら麦わらの一味かもしれないね。

 

「何でこの城でDr.くれはの助手みたいな真似してるの?」

 

「みたいじゃなくて、その通りだよ、おれはドクトリーヌの助手だ。何でって言われれば……、」

 

そこまで言ってまた顔を俯かせてしまった。

…これ、聞いちゃダメな質問だったか。

 

「ごめん、言いづらいなら…」

 

「……尊敬する人が亡くなって、その人の代わりにドクトリーヌがおれの面倒を見てくれてるんだ」

 

「!…そっか」

 

あんまり深くは聞かない方が良さそうだね。

うーん、一味に誘ってみるか。

 

「私達の仲間になってよ、またいつ誰かが病に倒れるかもわかんないし…チョッパーが居てくれれば心強いんだけど」

 

「おれがお前らの仲間に!?バカ言え、おれはトナカイだぞ、人間なんかと一緒にいられるか!」

 

「でも、バケモノなんでしょ?私も船長も、何なら船員みんなバケモノだよ。女の子達はバケモノ染みて可愛いし、サンジやゾロは強すぎてバケモノだし、私とルフィは悪魔の実を食べてるからチョッパーと同じバケモノ!…どう?トナカイだとか人間だとかどうでもいいでしょ?」

 

「お前も悪魔の実を食ったのか…!…でも、だめだ、おれは…」

 

自分に自信が無いんだろうな…チョッパーからはそんな感じがする。

例えばチョッパーの青っ鼻が生まれた時からの話ならば、それはトナカイとして通常では無いし…ヒトヒトの実を食べてからはトナカイでも人間でもなくなってしまって…差別でも受けてきたんだろうか。だとしたらチョッパーのこの態度も全て納得できる。

 

「所でさ、チョッパー…話変えて申し訳ないんだけど……さっきから何か寒くない?」

 

実は部屋を出てからというもの、城内にいると言うのに外とあまり変わらない気温に戸惑ってたんだよねぇ。

所々雪が積もってるし……いやおかしくない?ここ外じゃないよね?

 

「ああ、扉に雪鳥(スノウバード)の巣があるんだ、雛もいるから閉めれなくて…寒かったよな、ごめん」

 

なるほど、閉めちゃったら巣が落ちるからか。

 

「それでこんな寒いのに我慢してるんだね。…バケモノって自分では言ってるけど、そんな優しいバケモノなら是非仲間に欲しいよ、ルフィも絶対そう言うと思う」

 

「…………。……!!!この臭いは…!!?」

 

「えっ!ちょっ!!」

 

考え込むように帽子をギュッと押さえ込んだかと思うと、急にチョッパーはくんくん鼻を動かして走り出した。

完全な鹿状態に変形して走っておりかなりの速さだ。10倍で追いかけてるから振り切られはしないけど…。

 

「大変だよドクトリーヌ!」

 

思ってたより早くこの部屋に戻ってきたな。…あれ、ナミさんまた起きてる、熱が悪化したらどうするの!

それに残りの3人はどこ?特にミキータは?

 

「ドクトリーヌ、ワポルが…帰って来た!」

 

「………、そうかい」

 

「…………ワポル?」

 

Dr.くれははチョッパーの報告を聞いて目を瞑り絞り出すように言ったが、私とナミさんはその名前に少しだけ聞き覚えがあり首を捻った。

 

「悪いね2人共、ちょっくら用事が出来たよ。…ガキンチョ、小娘をしっかり守ってやりな」

 

「…お前、さっきの返事だけど…やっぱりおれはここに残るよ、…誘ってくれて嬉しかった、じゃあ」

 

それだけ言ってチョッパーとDr.くれはは部屋を出て行った。

残された私とナミさんは何が何だか分からないと言った風に…いや風じゃなくて分かってないんだけど?いきなりどしたの?

 

「イリス、あんたもしかしてチョッパーをあのメンバーに誘ったの?」

 

「ナミさんもしかしてとんでもない勘違いしてない?“海賊”の仲間には誘ったよ?うん」

 

海賊のね。決してハーレムメンバーには誘ってないよ?私は女好きだからね。

 

「ワポルってあれじゃない?私が寝込んでる時に追っ払ったっていう海賊」

 

「ああ、鉄顎かぁ!」

 

復活早いな、結構ボコボコにしたと思ったんだけど…手足くらい折っておくべきだったかな?

 

「仲のいい旧友との再会…って訳じゃ無さそうだったわね」

 

「そりゃ、あんないい人達が鉄顎の友なわけないじゃん。…って事は、敵?私行った方が良いのかな?」

 

でも、ナミさんを1人にはしたくないし…。

 

「さみィ!上着忘れて来た!!」

 

「あれ、ルフィ」

 

ナミさんを置いて行くのもなぁ、と考えてるとルフィが部屋に入ってきた。この部屋はまだあったかいから上着を脱いでたのか…そりゃその格好で外出たら寒いでしょ。

 

「どうしたのルフィ、散歩?」

 

「ケンカ。デカ口がきてよ」

 

「ああ、なるほど、じゃあ任せるよ…あ、ついでにミキータを呼んどいてくれる?」

 

「おう!」

 

自分の上着を羽織って走って出て行くルフィに手を振りベッドに座る。

ルフィが居るなら他2人も居るだろう、チョッパーも弱くは無さそうだしワポルは弱いから心配はいらないね。

私の目の届かない場所にいると心配なのは嫁のミキータくらいだし、彼女はルフィに呼んでもらったから懸念は無し!と。

 

「ミキータが来たら今の内に部屋から出ましょ、ドクトリーヌに見つかったらまたなに言われるかわかんないもの」

 

「チョッパーさえ仲間にすればそれで大丈夫だけど…一歩間違えれば死ぬ程の病気を患ってたんだよ?ゆっくりしとかなくていいの?」

 

「あんた、これ以上ビビを待たせて悲しませたいの?私はもう大丈夫、先を急がなきゃね。それにそのチョッパーが仲間になればいいだけでしょ、ルフィなら上手くやるわよ」

 

納得は出来ないけど…確かにビビ王女が懸念してるアラバスタ王国反乱まで日が残されていないし…それどころかもう既に紛争が起こっててもおかしくないんだよね…。

 

「キャハハ、何の話かしら?」

 

ミキータが部屋にやってきて、私達の話に首を傾げる。

 

「ここから逃げるわよって話。…乗る?」

 

「ナミちゃんはもう少し自分の体も大事にした方がいいわよ?」

 

ナミさんのセリフに今きたばかりのミキータも呆れがちである。

 

 

 

「ん?」

 

爆発音が聞こえて耳を澄ませる。

大砲か何かを撃って着弾した音だよね、しかも城の上の方。

その後、更にもう一回同じ音が上から聞こえてきた。

 

「なに?今の」

 

「わかんない、城が攻撃されてるのかな…?」

 

だとするならば、ここでのんびりしているのも危ないのかもしれないのか。

…うーん、でも外寒いからあんまりナミさんを出したくないんだよね。

 

「……よし、じゃあとにかく今はこの部屋から、いや城から脱出してルフィ達の様子を見に行こう、こんな所に居ていつ天井が降ってくるかもわかんないし。ただし、ナミさんは厚着をしっかりよろしくね」

 

「ええ、ごめんねイリス、我儘なこと言って」

 

「嫁の我儘なら、出来るだけ聞くよ、勿論ミキータも」

 

「キャハハハ、なら一刻も早くトナカイちゃんを仲間にしましょう。そうしないとナミちゃんをここから解放できないのよね」

 

その通り、ナミさんをここから連れ出すには最低限医者が必要だ。ナミさんはいなくても出発したいって言うだろうけど…こればかりはダメだ。

 

「そうと決まれば早いとこ出ましょ、大丈夫よイリス、あんたがいれば万が一ワポルと遭遇しても何とかなる…でしょ?」

 

「うう、そうかもしれないけど凄く心配なんだから、私から絶対離れないでね」

 

「当然っ」

 

そうして私達は、城からの脱出を試みる第一歩としてまずは部屋を出た。

さっきも言ったけどナミさんはもこもこダウンのような厚着をしてもらってるし、マフラーも装着、手袋も当然してる完全装備だ。寒さ対策は現状況で最高の仕上がりである。

 

「まっはっは!!」

 

「げっ、いきなりかい」

 

部屋から出た途端、ワポルに見つかってしまった。

…ていうか普通に城の中来てるし、セキュリティガバ過ぎじゃない?

 

 

 




作中出てきた大砲の着弾音2発は、原作通りルフィが「ほらな、折れねェ」って言ってるめちゃかっこいいシーンが城外で繰り広げられてたからですね。
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