ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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3『女好き、猛獣使いに挑む』

「ナミさん、文句は後で聞きます、今は下がってて」

 

「なんだ、ガキのくせにやるじゃねェか」

 

一緒にナミさんを庇った緑髪の剣士が私のことを興味深そうに見る。

 

「実は19歳ですー!ガキって言うな!気持ちはわかるけど!」

 

「はぁ?」

 

何やら怪訝そうな顔だな、ちくしょう。

 

「ゾロォ!!」

 

「お前なァ、何遊んでんだルフィ…!鳥に連れてかれて見つけてみりゃ今度は檻の中か、アホ!」

 

緑髪の剣士がゾロと名乗った途端、周りがざわつき始めた。

ゾロ…ん?ルフィ…ナミ?

 

…あれ、もしかしてONE PIECEの初期メンバーじゃね?

 

ここに来て核心を見た私である。

 

バギーがゾロと聞いた途端、さらに強気になって喧嘩を売っている。

ゾロも売り言葉に買い言葉で二人は戦うような流れになっていた。

 

「ちょっと、私を忘れないで欲しいんだけどね」

 

「あァ?おい、誰か軽く相手してやれ、殺しても構わねェ!」

 

私の周りに五人集まる。

全員剣を持ってるようだけど…多分意味ないよそれ。

 

ゾロとバギーの戦いが始まったと同時に、こっちの五人も攻撃を仕掛けてきた。

私が五人を迎え撃つよりも早くゾロの方は決着がついたようだ。バラバラにきっててちょっとグロい…血が出てないのが不思議だけど。

 

「船長倒されたけど、余裕だね」

 

「へへ、まァな」

 

「でも、私を前にしても余裕でいるのはどうかと思うよ、現にあなた以外はもうダウンしてるけど?」

 

「はっ?」

 

一番先頭にいた人が慌てて周囲を確認すると、四人が地面に伏していた。

もちろん倍加を駆使した早技だ。

 

「い、いつのまに…!」

 

「瞬く間…ってね、流石に痛いか。でも、私はこれでも怒ってるからね、許して欲しいかな」

 

なんたって、こいつら一味はナミさんを殺そうとしたのだ。

 

「よっ!」

 

最後の一人も軽く殴って昏倒させ、ゾロの方を見ると…。

 

「え!?」

 

さっきバラバラになってた筈の腕が、まるで独立しているかのようにゾロの脇腹へナイフを突き刺していた。

周りの奴らはその光景を見て大爆笑している。

 

「バラバラの実…」

 

倒れてた筈のバギーの体が、集まるようにして復元されていく。

 

「それが、おれの食った悪魔の実の名だ!!おれは斬っても斬れないバラバラ人間なのさ!!」

 

「体がくっついた…!あの子の能力を見てもまだちょっと疑ってたけど、まさか本当に悪魔の実が実在したなんて…!!」

 

急所は外れたか?でも、相当深手を負ってるのは一目瞭然だ。

くっ、同じ悪魔の実の能力者に…私は対抗できるか?

 

「後ろから刺すなんて卑怯だぞ!!デカッ鼻ァ!!」

 

「バカっ、それだけは言っちゃ…!」

 

不意打ちにルフィが怒ってバギーを罵倒するのをナミさんが止めようとしたが一歩遅かった。

 

「誰がデカッ鼻だァああ!!!」

 

あぁ、気にしてるんだな、わかるよ、コンプレックスは誰にでもある!

 

だけどそんなことを言ってる場合でもない、バギーはルフィに向かってナイフを掴んだ右手を飛ばし、ルフィの顔に直撃させた。

だけど、ルフィはそんなナイフを歯で噛んで受け止めていた。そんなことってある?

 

「お前は必ず、ブッ飛ばすからな!!」

 

檻の中に閉じ込められているにも関わらず、全信頼をおいてしまいそうになる程の気迫だ。

 

「ぶあーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!ブッ飛ばすだァ!!?終いにゃ笑うぞ!!てめェら四人この場で死ぬんだ!!」

 

「はっはっはっはっはっ!!死んでたまるかっ!!」

 

「この状況でどうブッ飛べばいいんだおれは!?野郎ども!笑っておしまいっ…ぶへぁ〜〜ッッ!!?」

 

「「「えーーッ!!?バギー船長がブッ飛んだァ〜〜ッッ!?」」」

 

私が思いっきり殴り飛ばし、綺麗に放物線を描いて飛んでいくバギーを見上げて頷く。うむ、これぞ人間大砲、なんちて。

 

「ゾロ!今のうちだ!」

 

「了解…!」

 

ルフィの掛け声でゾロは大砲の銃口をひっくり返す。

ルフィに向けられていた大砲が、丁度反対を向いたことでバギー一味を狙い撃つ形となった。

 

「ぎいやーーーーっ!!?大砲がこっち向いたァーーーーっ!!!」

 

「ナミさん!点火を」

 

「え、うん…っ」

 

うんって、可愛いかよ。

 

ナミさんが点火させた導火線は今度は止める人などいない。

倍加ですぐナミさんの近くに避難して爆風からナミさんを守る位置に立った。

直後に本日二回目バギー玉が放たれる。やっぱり物凄い威力で、あたり一面が砂埃で覆われた。

 

「今のうちだ……!ところでお前ら、誰だ」

 

「私…泥棒よ」

 

「私はイリス、ハーレム女王になる女!正妻はナミさん!」

 

「ちょっと話がややこしくなるから黙ってて」

 

大人しくしておこう、しゅん。

 

「そっちはウチの航海士だ、お前は誰だ?しらねェやつだ」

 

「バッカじゃないのまだ言ってんの!?そんなこと言うひまあったら自分がその檻から出る方法考えたら!?」

 

「あーそりゃそうだ、そうする」

 

確かに、普通ならこうして砂埃で相手の視界を防いだ所でルフィが檻から出ないことには逃亡すらできないのだ。

バギーと真剣勝負ってなればさっきの不意打ちのように上手くいくかわからないし。

 

「あと!ナミさんはあなたの航海士じゃなくて私の嫁っいたぁ!」

 

「あんたはいい加減懲りろ!」

 

ナミさんの愛のゲンコツが私の脳天に注がれたようだ。いたい。

 

「でも、ナミさん、その点については問題ないですよ、ね?ゾロ」

 

「いきなり人を呼び捨てかよガキ、まぁ、そういうこった」

 

ルフィの檻をぐっと掴んで肩に担ぐ。うぐぉ、十倍にしてても重たい…!

 

「お前ちっさいのに力あるな〜」

 

「ちっさいは余計!」

 

そしてゾロには後ろで檻を支えてもらって、二人でルフィをとりあえず遠くまで運ぶことにした。ナミさんは別行動だ。

遠くと言ってもゾロの傷だって心配だ。ある程度の所まで歩いてきたので檻を下ろす。

 

「おい、俺はまだ運べるぞ」

 

「その腰から出てる血を見て言ってるのだとしたら、相当バカだよあなた」

 

「んだとこのガキャ!」

 

「だから19歳だって言ってるよね!!」

 

ぬぐぐ…と二人で睨み合ってると、ルフィが近くの犬と遊んでいるのが見えた。

全然動かない犬に対して、死んでるのか?って目潰し食らわせて反撃くらってるって…子供か!

終いには疲れて檻の中でひいひい寝転んでる。

 

「あんた達…一体こんな道端で何やってんの?バギーに見つかっちゃうわよ!」

 

「「よォ航海士」」

 

「誰がよ!!」

 

「あ、ナミさん!」

 

「あーよかった、こっちは普通だったわ」

 

あれ?さっき別れたばっかなのに再会はやいな、と思ってるとナミさんは鍵をぽいとルフィの前へ放り投げた。

 

「鍵!檻の鍵盗ってきてくれたのか!!」

 

「まァね…我ながらバカだったと思うわ、そのお陰で他に海図も宝も何一つ盗めなかったもの」

 

とため息つきながら言うナミさんも素敵だっ!!

 

「流石ナミさん!ルフィ、早く脱出してバギー殴りに行こう!やっぱりやられっぱなしはムズムズするし!」

 

「おー!お前女だけど度胸あるなァ〜、よしっ、気に入った!お前、仲間になれ!」

 

「ナミさん航海士になるなら航海士の嫁ポジで入ってもいいよ」

 

「入らんでいい」

 

パシっとナミさんに叩かれた。

 

そしてルフィが檻から出るため、ナミさんが持ってきた鍵に手を伸ばした時…。

 

ぱく。

 

『………』

 

さっきまでルフィと喧嘩していた犬が鍵を食べました、まる

 

「このいぬゥ!!!吐け!今飲んだのエサじゃねェぞ!!」

 

そこからまたルフィと犬の大喧嘩が始まってしまった訳だが…。

うーん、これ、どうしよ。

 

「こらっ!!小童ども!!シュシュをいじめるんじゃねェ!!」

 

なんかプードルのような髪をした軽い鎧を見に纏ったおじいちゃんが現れた。

この犬をいじめてるように見えたのかもしれない、実際ルフィはそれなりにマジな喧嘩をしてるし。

 

「シュシュ?」

 

「誰だおっさん」

 

「わしか、わしはこの町の長さながらの町長じゃ!!」

 

ちなみに名前はプードルというらしい、まんまじゃねぇか!

自己紹介もそこそこに、敵対心はないことを伝える。

 

その後は一番重症のゾロに医者を進めてくれたのだが、寝たらなおるという頑ななゾロに自分ちの寝床をかしてくれたりもした。いい人だ。

 

「この犬、シュシュって言うんだ」

 

よーしよしとエサを食べるシュシュの頭を撫でる。

町長さんはシュシュにエサをやりにきたと言った。

 

「こいつ、ここで何やってんだ?」

 

「店番さ、見ての通りペットフード屋じゃな」

 

「あ!本当、よく見たらここお店なんだ」

 

この店は町長の親友である人が主人を勤めているらしく、シュシュと一緒に10年前開いたそうだ。つまり、シュシュにとっては大事な宝物なんだね。

 

「この傷は、バギー一味から店を守った傷なの?」

 

「そうだ、勇敢だろう」

 

町長さんは誇らしげに頷く。

 

「だけど!いくら大切でも海賊相手に店番させることないじゃない、店の主人はみんなと避難してるんでしょ?」

 

「いや…奴はもう、病気で死んじまったよ」

 

「!」

 

3ヶ月前に病院に行ったきりらしい。

だからずっと待っているのかと言われたら、町長さん曰くは違うと、シュシュは頭のいい犬だから主人が死んだことくらい理解している筈だという。

 

「きっとこの店は、シュシュにとって宝なんじゃ、大好きだった主人の形見だから、それを守り続けとるのだとわしは思う。困ったもんよ、わしが何度避難させようとしても一歩たりともここを動こうとせんのだ、ほっときゃ餓死しても居続けるつもりらしい」

 

その話を聞いたナミさんが何やら微笑んでいた。優しいナミさんの心には響くよね!私知ってた!

 

ルフィすらも感傷に浸ってた時だ、突然獣の雄叫びのような音が聞こえた。前までよく耳にした獣の声だ、私が狩ってたのより強そうな声だけど。

 

「な…何この雄叫び……!!」

 

「こ…こりゃらあいつじゃ!!猛獣使いのモージじゃ!」

 

逃げろォーーーーっ!!と町長とナミさんがこの場から全速力で離れていく。

ルフィはあーあ、なんかきちまったよ、鍵返せよお前ェ、とか呑気なものだ。

 

「お前は逃げなくていいのか?」

 

「じゃ、勝てなかったら逃げるね」

 

ニッと笑って見せると、ルフィも口角を吊り上げて機嫌よく笑う。

次第に足音が大きくなってくると、すぐにさっきの雄叫びの主が姿を現した。

まるでライオンを巨大化させたような猛獣の上に、白い毛で覆われた着ぐるみきた男が乗っている。

 

「見つけたぜェまずは二人…おれはモージ」

「さっき聞いたから早くしてよ着ぐるみおじさん」

 

腕をくるくる回して準備運動をする。

 

「何っ…失敬だぞ貴様ァ!これは俺の髪の毛だ!!」

 

とどう見ても耳にしか見えない髪の毛を指差して抗議する。

どっからどう見ても着ぐるみきてるようにしか見えない。

 

「じゃあなおさら変だな」

 

「てんめェ…その檻に入ってるからって安心してんじゃねェのか、まずおれの怖さを知らんらしい…」

 

「べー、毛の手入れくらい真面目にやったら?」

 

「ぐぬぬぬ!!やれ!リッチー!!」

 

「ガルルルル!!」

 

バキバキっ!!っとルフィの鉄の檻をその力で粉砕する猛獣。

 

「やったね、これでルフィがフリーになった!」

 

と思った瞬間、リッチーの前足がルフィに攻撃しようと振りかぶられたので、咄嗟に拳をぶつけて威力を相殺する。

 

「なにっ!?受け止めただとォ!?」

 

「ルフィ、こいつは私が、他のは任せたよ」

 

ぱんぱんと手のホコリを落とすような動作を取り、猛獣使いに向き合う。

 

「おう!任せたぞイリス!」

 

そう言って走っていくルフィを横目で確認して、私は案外余裕のある表情で相手を見据えた。




原作の、モージに対してルフィがブチ切れるシーン本当に良いですよね。
「だからおれはお前を、ぶっ飛ばしに来たんだ!!」っていうあのキレ顔。
だからそんな話を丸々カットしなきゃいけないのは辛いですが、全部原作通りなら二次創作の意味がなくなるので…シュシュには強く生きてもらいましょう。

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