ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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偉大なる航路(グランドライン) アラバスタ編
39『女好き、オカマと遭遇する』


英雄(ヒーロー)?クロコダイルはアラバスタの英雄(ヒーロー)なの!?」

 

気持ちの良い穏やかな風が吹き、暖かな春のような日差しの中改めてクロコダイル、そしてアラバスタの状況をみんなで確認していた時に言ったビビ王女の言葉にナミさんが驚きの声を上げる。

 

「“王下七武海”っていうのはつまり、世界政府に雇われた海賊達の事。“七武海”が財宝目当てに(・・・・・・)海賊を潰すのも、“海軍”が正義の為に海賊を潰すのも国の人達にとってのありがたさは変わらないって訳。結局町を襲う海賊達を追い払ってくれるんだもの」

 

「確かに…だけどその英雄(ヒーロー)が、実は自分達の住んでる国を乗っ取ろうとしてるなんてみんな夢にも思ってないんだろうね」

 

例えば私も、前世で警察とかが悪事を働けばええ…ってなるし、そういう立場の人間が何かしら悪事に手を染めるって事は想像しないからなぁ。でも、立場が違うだけで同じ人間だし…結局は警察だろうと何だろうとヤバい人はヤバいって事だ。

 

「とにかくおめェクロコダイルをよ!ブッ飛ばしたらいいんだろ!?」

 

「ちょっと、クロコダイル倒すのは私だからね!?」

 

「イリスはアーロンやったじゃねェか!」

 

「ルフィはアーロン以外やったじゃん!!」

 

むぐぐ、と睨み合う私達をナミさんが手を叩いて止める。

結局、ジャンケンした結果ルフィがクロコダイルと戦う事になった。

……解せぬ、何故そこでチョキを出すのルフィ…ルフィと言えばグーでしょ!!

 

「とにかく…まずは暴動を抑えて国からB・W(バロックワークス)を追い出す事が出来れば…アラバスタは救われる」

 

「でもよ、そのB・W(バロックワークス)って会社のシステムは一体どうなってんだ?“Mr.”だ“ミス”だっていうあれは?」

 

「キャハハ、それは私から説明するわね」

 

はい、と律儀に手を上げるミキータにみんなの視線が集まる。

流石元ミスの言葉は正確だろうからね。

 

「システムは簡単よ、まず頂点に社長(ボス)…クロコダイル、“Mr.0”がいて、彼の指令を直接受ける“エージェント”が12人と1匹いるのよ」

 

1匹…鳥か?ラッコか?

 

「彼らは全員『Mr.+ナンバー』の名を持っていて、その力に見合った女性の“エージェント”とペアを組むの。エージェントの中でもMr.5以上…つまり元々の私の立場から上の人達は“オフィサーエージェント”と呼ばれていて、私も含めて殆どが悪魔の実の能力者…違うのはゴールデンウィークくらいよ、彼女は特別」

 

そう、なんたって小さくて可愛いレアな少女なのだから!

 

「キャハ、イリスちゃんの考えてる事が手に取るように分かってきたわ…!」

 

「それで、そのオフィサーエージェントとやらは何をするのが仕事なの?」

 

ナミさんの問いは私も気になっていた、今のところ抹殺とかそんな感じの任務に来た人しか知らないんだけど。

 

「オフィサーエージェントは本当に重要な任務の時しか動かないわ、基本暇なの。それ以下はフロンティアエージェント、社員を率いて“ 偉大なる航路(グランドライン)”の入り口で会社の資金集めをするのが仕事、これが秘密犯罪会社“ B・W(バロックワークス)”なのよ」

 

ふむ…だからウイスキーピークではあれだけのミリオンズ(フロンティアエージェントの部下)が居て賞金稼ぎをしていたのか…納得した。

 

「ーーーってことは間違いなく、B・W(バロックワークス)社最後の大仕事、アラバスタ王国乗っ取りとなれば…その、“オフィサーエージェント”って奴らの残りは全員…」

 

「集結する…!」

 

ナミさんの言葉を私が繋ぐ。

そっかー…クロコダイルをやらないなら、その中の誰かで我慢するしかないのかー…。

 

「それなら話は早ェ、要はアラバスタへ行けば俺達の倒すべき敵が大集合って訳じゃねェか」

 

「キャハハ、そうね、でも気を付けないと…Mr.2から上は化け物揃いよ、3と2の間ではかなりの差があるわ」

 

「ま、何とかなるでしょ。ていうか、何とかするよ、このメンバーなら」

 

私がニッと笑っていうと、ミキータもふ、と笑ってそうよね、と言った。でも何だろう…私はその笑みに、少しの違和感を覚えたのだった。

 

 

「オイルフィ、俺がアラバスタまでの食料を溜め込んでた冷蔵庫に何も入ってなかったんだが……まさか食ってねェだろうな?」

 

「えっ!?く、食ってねェよ…?」

 

そんな彼女の違和感を気のせいだろうと振り払い、目を泳がせまくるルフィを見る。いつでも猪突猛進の我らが船長はウソが苦手なのだ。

 

「ウソつけ!口に食べカスついてんぞ!」

 

「なにィ!?」

 

「やっぱてめェじゃねェか!!」

 

サンジの引っ掛けに容易く掛かったルフィが蹴り飛ばされた。

 

 

 

その後、ルフィと一緒に食料盗み食いを働いていたウソップ、チョッパー、カルーの面々も合わせて4人…いや2人と2匹?や、3人と1匹…???ま、まぁそのメンバーで釣りでもして食材を手に入れろとサンジからの命令が下ったので、4人は揃って釣りをしている。カルーが餌にされてるけど、いいのあれ?

ちなみにサンジは少ない食材でどうやりくりするか考えてくるとだけ言い残して厨房に篭ってしまった。本当に彼が居なきゃ死ぬよ私達。

 

「…んー?ねぇナミさん、船の進行方向に何か煙があるんだけど、大丈夫?」

 

海から煙が出てるのか、もくもくと視界を遮る煙が海上を広く漂っていた。このままではあの煙の中へ船が突っ込むことになるんだけど…。

 

「あれは大丈夫よ、何もないわ、ただの蒸気」

 

「え、海から?」

 

「うん、ホットスポットよ」

 

ググりたい。でもこの世界にスマホは無いし…。

ナミるしかないか…、おっけーナミさん、ホットスポットって何?

 

「マグマが出来る場所のこと、あの下には“海底火山”があるのよ」

 

「ほえー、海底なのに…」

 

「そうよ、火山なんてむしろ地上より海底の方に沢山あるんだから。こうやってね、何千年何万年後この場所には新しい島が生まれるの」

 

「さっすがナミさん、可愛いだけじゃない!」

 

ナミさんがこう言うなら安心だ。

メリー号はそのまま直進して煙へと突入した。

 

「…ちょっと硫黄臭いし、ナミさんが見えないからここはやっぱりダメダメスポットだよ」

 

「我慢してよ、すぐ抜けるから」

 

我慢!?ナミさんを拝めない状況にどうして私が我慢しなくちゃいけないの!

 

「ぬぐぐ…!…あれ、ほんとにすぐ抜けた」

 

時間で言えば1分も無かったと思うけど、船は煙を抜け出した。

でもあそこはダメだ、ナミさんが見えない。ていうか煙で何も見えない。

 

「……オカマが釣れたぞ、ゾロ」

 

「あん?何言ってやがる………は?」

 

煙から脱出した直後に、ルフィがぽつりと呟いた。

釣りとは関連付けするのが難しい言葉が聞こえたので私達は揃ってルフィの釣竿の先を見ると……。

 

「シィ〜〜まったァ!あちしったら、何出会い頭のカルガモに飛びついたりしてんのかしら!!」

 

「お、オカマだーーー!!?」

 

餌役のカルーに飛びついてるのは、白鳥のコートを身に纏った大柄なオカマ。バレエやってそう。

 

「あ、落ちた」

 

そのまま海に沈んでいくオカマを見捨ててはおけず、ゾロが海へ飛び込んで助けに行った。

ていうかどうしてカルーに飛びつくの…?常識がやばい。絶対ヤバイ人だよ。

 

 

 

***

 

 

「いやーホントに、スワンスワン。見ず知らずの海賊さんに命を助けて貰うなんて…この御恩一生忘れません!…あと、温かいスープを一杯頂けるかしら?」

 

「ねェよ!」

 

船へ引き上げた早々に厚かましい人だな…。

 

「それよりよ、お前泳げねェんだなー」

 

嬉しそうにルフィが笑う。それはカナヅチ仲間を見つけて喜んでる顔ですね?

 

「そうよう、あちしは悪魔の実を食べたのよう」

 

「悪魔の実!?これまた凄い人拾ったね」

 

「キャハハハ、偉大なる航路(グランドライン)の海賊だとそれほど珍しくもないわ、かくいう私もそうでしょ?」

 

まぁ、確かに。

 

「…んーーー??なーーんかあちし、あんたを何処かで見た事ある気がするのよーぅ」

 

「キャハハ、私はないわよ?流石にあなたを一度見て忘れるなんて無いと思うから」

 

まぁ、ミキータは手配書もあるにはあるだろうし…それでだろうね。

 

「それで?どんな能力なの?」

 

「そうねい、じゃああちしの迎えの船が来るまで慌てても何だしい、余興代わりに見せてあげるわ」

 

そう言ってオカマは立ち上がり、突然にルフィを“右手”で張り手した。ゴムだからダメージはないだろうけど、それなりの威力はあったのか後ろへ倒れる。

 

「ルフィ!てめェ、何を……、な、!?」

 

ゾロが慌てて応戦しようと刀を抜いた時、オカマの顔を見て固まる。

は?え?あなた、そんな顔だったっけ!?

 

「そんな物騒な(もの)しまってよーぅ!余興だって言ったじゃなーーいのよーーーっ!!」

 

「お、おれ!?」

 

「ルフィの顔にそっくり!?」

 

何と、オカマの顔がルフィに変わっていたのだ。いや、顔だけじゃないね…声も、体格も全部ルフィだ…。

 

「びびった!?がーっはっはっは!!左手で触れればホラ元通り、これがあちしの食べた“マネマネの実”の能力よーーう!!」

 

「す、スゲーーーーーッ!!!」

 

ルフィがはしゃいでるが、ぶっちゃけ私はその能力に驚いた。

…だってこれ、どう考えても隠密スパイ的な能力だよね?しかもキャラすっごい濃いし、多分ONE PIECEでも登場してたんじゃないだろうか。

 

「まァ最も、さっきみたいに殴る必要性はないんだけどねーーいっ」

 

ゾロ、ウソップ、チョッパーと顔に触れていき、オカマがナミさんの顔にも触れようとしたのでガシ、と止める。

 

「要するに、その右手で顔に触れればその人の顔になれるって事でしょ?そんな能力でナミさんに触れるな、私の女なんだから」

 

「…それは、わーるかったわねーぃ」

 

そう言って手を引くオカマだが、私の見た目にそぐわない力に驚いているようだ。そりゃそうだ、見た目はこんなだけど実際の力は大男よりあるんだから。

 

「さて…残念だけど、あちしの能力はこれ以上見せるわけに」

 

「お前すげー!!」

 

「もっとやれー!」

 

「さ〜〜ら〜〜に〜〜??」

 

ノリノリじゃん…。

ノせられたら調子に乗って断れないタイプのオカマなんだって事がわかったよ。

 

「メモリー機能つきぃっ!過去に触れた顔は決して!忘れな〜い」

 

カシャ、カシャ、と次々この場に居ない人の顔に切り替わっていくオカマの顔。その中の1人に変身した時ビビ王女が驚きの声を上げた。

 

「どしたの?ビビ王女」

 

「……いまーーー」

 

「どーーーうだったあ!?あちしのかくし芸っ!普段人には決して見せないのよう!?」

 

「「イカスーーー!!」」

 

「うるさいな!話ができないでしょ!」

 

ルフィ、ウソップ、チョッパーの3人はかなりご機嫌なようで、そのオカマと肩を組んで踊り出した。

いやその人の事気に入りすぎ!

 

「キャハハ、オカマさん、何か船がこっちに来てるわ、あなたの船じゃないの?」

 

「アラ!もうお別れの時間!?残念ねい」

 

オカマはそう言って私達に背を向け船端の手すりに立つ。

さっき落ちたばっかなんだからそういう場所に立つのはやめようよ。

 

「「エ"ーーーーーッ!!」」

 

「悲しむんじゃないわよう、旅に別れは付き物!でもこれだけは忘れないで…。友情ってヤツァ…、付き合った時間とは関係ナッスィング!!」

 

振り返ってグッと親指を立てたオカマは、近づいて来た船に飛び乗った。

白鳥の船首に、帆には「おかま道」と書かれたとんでもない船だったが彼にはぴったりな船だろう。

 

「さァ行くのよお前達っ!!」

 

「「ハッ!!Mr.2(・・・)ボン(・・)クレー(・・・)様!!!」

 

 

「………は!!!!?」

 

「「Mr.2!!!?」」

 

まさか、今のオカマが!!?

…まずい、ルフィを含めたゾロ、ウソップ、チョッパーは顔を触られてる…!どこで利用されてしまうのか分かったもんじゃない…!!

 

…………でも、あのオカマ、根は悪く無さそうだったよね。調子狂うなぁ、もう…。

 

 


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