ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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41『女好き、砂漠の地を踏む』

「ルフィ、兄ちゃんから何貰ったの?まさか本当にただの紙?」

 

「さあ、わかんねェけどエースが持ってろって言うんだから持ってるんだ、おれは!だからしっかり縫い付けてくれよ!」

 

「はいはい…出来たわよ、どうぞ」

 

テキパキと麦わら帽子のリボンの裏に紙きれを縫い付けるナミさん。くぅー、前も思ったけどやっぱりこういうとこも素敵だ!

 

「ルフィさん、これを着て」

 

「え、何でだよ、暑いじゃねェか」

 

ビビ王女がルフィに服を渡す。分厚くはないが、肌は目一杯覆い隠せる様になっている。

 

「暑いから着るの。砂漠では日中50℃を越えるんだから肌を出してると火傷しちゃうわ」

 

「何で、おめェら涼しそうじゃん」

 

「私達だって上からちゃんと着るわよ」

 

「勿体ないけど、火傷なんかにさせる訳にはいかないし…仕方ないか」

 

3人の潤いボディに傷を付ける訳にはいかない!!

 

 

 

***

 

 

 

「ついたぞ!ユバ!…いやー、なんもねェな、ここは!」

 

到着して早々ルフィが辺りを見渡して笑うが、うーん、何も無いと言うよりは、あったけど砂嵐か何かの災害に見舞われて住めなくなった…って感じかな。砂に埋もれた家がそこら中にあるよ。

 

「違うのルフィさん、ここはまだユバじゃないわ。ここから半日北西に砂漠を歩かなきゃ」

 

「半日かぁ」

 

そこそこの距離歩くんだね…ウソップとか大丈夫?あ、いや大丈夫じゃないみたい、泣いてた。

 

「ここは『緑の町エルマル』よ」

 

「緑の町?緑なんかどこにもねェぞ!?」

 

「…ええ、今はね…!」

 

やっぱり、何かあったんだろうね。

この先一面砂漠だし…砂嵐が頻繁に起きるのかも。

 

「うおーーっ、何だこりゃあ、カメか!?アザラシか!?」

 

ウソップの声に振り向くと、メリー号を泊めてある河から何かよくわからないカメの甲羅を背負ったアザラシみたいな動物が出てきた。

 

「クンフージュゴン!だめよみんな、手を出したら…!」

 

「え、ごめん、何か殴りかかってきたから倒しちゃった」

 

倒れたクンフージュゴンとやらは、次にむくりと起き上がると私の前で押忍、と頭を下げる。空手家かよ。…クンフーだったね。

 

「勝負に敗けたら弟子入りするのがクンフージュゴンの掟なの!」

 

「ちょっと、私も狙われてるんだけど!」

 

「おんのれェ!ナミさんに手を出すなァ!!!」

 

「イリスさん!!」

 

ナミさんに勝負を仕掛けようとしたクンフージュゴンを蹴散らし、ふん、と鼻を鳴らす。

 

「次ナミさん狙ったやつ…粉微塵ね」

 

「く…クオ…」

 

びくびくと頷くクンフージュゴンに満足して私もうんうんと頷いた。

 

「ちなみに私に弟子入りがどうこう言う奴も粉微塵」

 

これにもこくこく頷いてくれたからよしとしよう。

…クンフージュゴンって、ほんとこの世界の動物は分からないよ。

 

「まさかクンフージュゴンがそんな簡単に弟子入りを諦めるなんて…」

 

「女関係でイリスを怒らせるとヤベェって気付いたんだろ、中々聡いじゃねェか」

 

「うん、『この人ヤバい』ってみんな言ってた」

 

チョッパーもそう言ってる。確かに見た目は愛らしいけど、ナミさんに手を出そうとした時点で万死に値するからね、仕方ないね。

 

「しかしこの国のジュゴンは変わってんなァビビちゃん、河に住んでた」

 

「…ううん、海よ」

 

「?」

 

サンジの問いにそう答えるビビ王女だが、…私達は内陸からここへ来た筈だけど…?

 

「太古の昔からこの国をずっと潤してきた大いなる河“サンドラ”も、近年ではかつての勢いを失って下流に海の浸食を受けているの」

 

「…じゃあさっきのジュゴン達のいた辺りの河は…」

 

「海水よ、飲み水にも畑にも使えない水」

 

「それで枯れたのか?この町は…」

 

ゾロがそう言うが、それだけで1つの町が枯れるとは思えない。

 

「…いいえ、稀に降る雨水を確実に貯える事で町は何とか保っていたわ。つい最近までこの辺りは緑一杯の活気ある町だった」

 

「ここが…」

 

再度周りを見渡してみても、そうは見えない。

遠い昔に人が寄り付かなくなって…時間と共に砂に呑まれて行った、という風に見えるこの光景も、最近までは想像もつかないくらいに豊かだったのか…。

 

「だけど、ここ3年この国のあらゆる土地では一滴の雨さえ(・・・・・・)降らなくなってしまった…」

 

「さっきの港町は大丈夫だったの?」

 

「『ナノハナ』は隣町のカトレアというオアシスから水を供給してるから無事なの…。降雨ゼロなんてアラバスタでも過去数千年あり得なかった大事件…だけどそんな中1カ所だけいつもより多く雨の降る土地があったの。それが首都『アルバーナ』、王の住む宮殿のある町」

 

「アルバーナ…」

 

「人々はそれを“王の奇跡”と呼んだ。ーーーあの日事件が起きるまではね…」

 

ビビ王女の話では、2年前に運び屋が王の元へとある物を運び込もうと荷車を引いて町を歩いていた時、荷物の重さにバランスを崩して転倒してしまったのだと。

しかし問題はそこではなく、その際に崩れた荷物から出てきた“ダンスパウダー”と呼ばれる緑色の粉が反乱の始まりだった。

 

「ダンスパウダーって?」

 

とりあえず横にいたナミさんに尋ねる。

 

「ダンスパウダー、別名は…“雨を呼ぶ粉”。昔どこかの雨が降らない国の研究者が造り出した代物でね、その粉から霧状の煙を発生させて空に立ち上がらせる事で、空にある雲の氷粒の成長を促して降水させるの。つまり、人工的に雨を降らす事ができる粉よ」

 

「凄いじゃん、何でその便利粉が反乱の始まりなの?」

 

「便利なのは最初だけよ。“ダンスパウダー”を開発した国もその名の通り踊る様に喜んだと云うわ……だけど、それには大きな落とし穴があったの。それがーー風下にある隣国の“干ばつ”、……わかる?」

 

なるほど、…不思議粉か。

 

「わかってなさそうだから言うけど、人工降雨はつまり…まだ雨を降らすまでに至らない雲を成長させ雨を落とすと言う物だから、時間が経てば隣国に自然に降る筈の雨を奪ってしまうって訳よ。それに気付いたその国は戦争を始め、沢山の命を奪う結果になった…。以来世界政府ではダンスパウダー製造・所持を世界的に禁止してるの」

 

要は、その粉を使うと自分達はハッピーだけどその周辺の国が痛い思いをするのか。

…よりにもよってその粉が運ばれた時は、王の住む町以外は全く雨が降らなかったそうだし…民衆は王を疑うしかないと言う訳だ。

今回のクロコダイルとかいうワニ敵…頭も相当キレるのだろう。

 

「…今思えば、その時既にクロコダイルの壮大な作戦は始まっていたの。当然父にはさっぱり身に憶えのない事件だったけど…畳み掛ける様に知らぬ間に宮殿には大量の“ダンスパウダー”が運び込まれていた」

 

「ビビ…」

 

ミキータが視線を落とす。彼女は彼女なりに思うところがあるのだろう。

 

「全てはクロコダイルの仕組んだ罠…!彼の思惑通り…反乱は起きた!!町が枯れ、人が飢えて、その怒りを背負った反乱軍が無実の“国”と戦い殺し合う…!!国の平和も、王家の信頼も…雨も!町も、そして人の命までも奪ってこの国を狂わせた張本人がクロコダイルなの!!!…なぜあいつにそんなことをする権利があるの!!?」

 

「………ふんす」

 

ぐるぐると腕を回して近くの崩れた建物の前に立つ。

 

「…私は!!あの男を許さないっ!!!」

 

「よッ!!!」

 

ドゴォォンッ!!という爆音と共に、私の前の建物が更に瓦礫と化した。それは勿論、私が思い切り殴ったからだが。

 

隣を見ると、ルフィとウソップ、サンジも同じように建物に当たってた。…なんだ、私だけじゃなかったのか。……この、内から湧いてくる衝動は。

 

「イリス…あんた一体何を…!」

 

「早く先へ進もう、ムカムカしてきた」

 

まだまだ、私が見た『アラバスタ』はほんの序の口でしかないというのに…ビビ王女はこうも心を痛めている。

…それを作ったクロコダイルを…、そしてその組織、B・W(バロックワークス)を、許せるか?

 

無理でしょ!!!私の嫁(になる予定)のビビ王女を、傷付けてんじゃないってのォ!!!!

 

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーー

 

 

 

「アーーーー……」

 

「おー…これはなかなか」

 

すぐにユバ目指して歩き出した私達は、上空から降り注ぐ容赦のない熱気にやられていた。

とは言っても私はそうでもないが。

 

「アー…焼ける…」

 

「あんまりアーアー言わないでよルフィ!余計ダレちゃうじゃない…」

 

「ナミさん…後で抱きしめていい?」

 

「いいけど…なんで?」

 

そりゃ、汗だくナミさんを堪能したいからだよ。ははは。

 

「ビビちゃんとイリスちゃんはあんまり応えてねェみてェだな」

 

「…私はこの国で育ったから多少は平気なの」

 

「私は能力で暑さ耐性上げてるから全然平気」

 

「なにっ!?」

 

ぐいっ、とルフィの首が私に向けられる。

 

「ずるいぞイリス!おれにもしてくれ!!」

 

「残念、私にしかできませーん」

 

チョッパーのいた島がめっちゃ寒かったから生み出した倍加だけど…本当にこの能力何でも出来るな。暑さや寒さに対する耐性とかいう朧げな物すら私が認識すれば倍になるし。

 

「暑いってのもそうだが…この坂の多さは何だ、山登りでもしてるみてェだぜ」

 

「ここは歴史の古い砂漠だから、大きいものでは300メートルを越える砂丘もあるの」

 

300って……山じゃん。

 

「サンジ、弁当食おう!」

 

「まだダメだ、ビビちゃんの許しが出るまではな」

 

「ビビ!弁当食おう、力が出ねェよ」

 

「だけどまだ『ユバ』まで4分の1くらいしか進んでないわルフィさん」

 

暑さでみんな体力持ってかれてるからな…。

ルフィもよくここで弁当食べようと思ったよね、暑さを感じないとはいえ岩場も無いとこで食おうとは思わないよ。

 

「ばかだなーお前、こういうことわざがあるんだぞ?『腹が減ったら食うんだ』」

 

「どこがことわざだよ、ただの我慢できない人だよ」

 

「ふふ…わかった、じゃあ次に岩場を見つけたら休憩と言う事でどう?」

 

訳の分からないことわざを作り出したルフィ。相当参ってるんだろうけどビビ王女の言った岩場で休憩という言葉を聞いて少し持ち直した様だ。

 

その後、みんなして暑さにやられてる中私だけ何もないのは不公平だとルフィやウソップからの声があり、まぁ確かに1人だけ楽し過ぎてるかな、と思ってたのでみんなの荷物を引き受ける事になった。

 

「お前それ何キロあると思ってんだ…軽そうに持ちやがって」

 

「倍加様様だよね、ウソップも持ってみる?」

 

「ふざけんな殺す気か!」

 

そこまでなのか…。

…ん?視力倍加を使ってるから見えてるんだけど、前方に岩場もあるね。

 

「みんなー!もうちょっと歩けば前に岩場あるよ!」

 

「ほんとかっ!!?休憩タイムだーーーーっ!!」

 

「速ェな!」

 

ドヒュン!と煙を残して走って行ったルフィにウソップがツッコむ。

でも、やっと休憩か…。いくら能力を使ってるとはいえ、疲れるものは疲れるんだよね…。

 

そうしてルフィに続き岩場に辿り着いた私達は、早速弁当を食べる事にした。

 

「ゴァ〜……」

 

「ん?」

 

何か周りに大怪我してる鳥がいっぱい居た。何かに襲われたのか?

 

「駄目よイリスさん、その鳥はワルサギ。旅人をダマして荷物を盗む砂漠の盗賊なの」

 

「へぇ、危うく騙されるとこだったよ、ありがとビビ王女」

 

それにしてもこのワルサギ達、バレてると思ってないからかずっと演技を続けてる。

…このまま放置してたら本当に死んじゃいそうだな。

 

「あぁ!!?おれの水返せよお前ェ!!」

 

「今の話聞いてた!?」

 

その直後に荷物を取られたルフィが、逃げるワルサギを追って走って行った…。根が真っ直ぐだからルフィを騙すのは簡単だけど…ルフィもルフィでもうちょっと用心しようよ…。

 

「ううううわああ〜〜っ!!!!」

 

と思ったら速攻で戻ってきたけど……、うわ、何か凄いでかいトカゲ恐竜みたいなやつに追われてる。

 

「サンドラ大トカゲ!」

 

「…隣でラクダも走ってるってのはひとまず置いとくか…」

 

「ったく、どういう星の下に生まれればこうトラブルを呼び込めるんだ」

 

「仕方ないよ、ルフィだもん」

 

というわけで早速この大トカゲを処理しちゃおう!

 

「ゴムゴムの…!」

 

(たつ)…」

 

肩肉(エポール)…!!」

 

10倍灰(じゅうばいばい)

 

 

『“巻き”“ムチ”“シュート”“ 去柳薇(さよなら)”!!!』

 

 

ドォォオンッ!!と、無慈悲な攻撃がトカゲに炸裂する。

遠巻きに眺めてたナミさんやミキータ達にガッツポーズを送ると、揃って呆れ顔を返された。……何で?

 

 

 


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