ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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42『女好き、決まる目的、目指すは鰐』

「ーーーで…何なんだこのラクダは」

 

大トカゲを倒した後、サンジが捌いて調理した肉を頬張りながらゾロが言う。

 

「さァ…さっきの鳥を追ってたらよ、あいつら飛んで逃げやがって。そしたら前からコイツがトカゲに追われて走ってきたんでとりあえずおれも走ったんだ」

 

「でもそのラクダ、ちゃんと鞍が付いてるから野生じゃないよね」

 

「そうね、2人は乗れそう」

 

「じゃ、まずおれが…」

 

よいしょ、とルフィがよじ登ろうとした時、ラクダはルフィの頭に噛みつき抵抗した。

チョッパーによれば、『助けてくれてありがとう、乗っけてやってもいいが俺は男は乗せねェ派だ』と言ってるらしい。

 

「誰が乗る?」

 

「キャハ、私はまだ大丈夫よ、ナミちゃんとビビでいいんじゃない?イリスちゃんをどっちかが膝に乗せれば3人乗れるでしょ」

 

「ほんとにいいのね?…それで?この子、名前何て呼んだらいいの?」

 

「マツゲ長いからマツゲでいいでしょ、じゃ、いこ」

 

そんな感じで適当に決めてラクダに乗り込む。

ナミさんが手綱を握ってるから、私はビビ王女の膝の上だ。身長的に頭を預けると胸に当たって最高です。ネフェルタリ最高。

 

 

 

そうして私達は楽々ユバまでたどり着く事が出来たが、到着した頃には既に夜だった。

夜になると昼とは違って氷点下を下回りかなりの寒さとなっている。勿論私は寒さ耐性を倍加してるので何も問題はない。

 

「…町の様子がおかしい…!」

 

「…様子と言うか…この地響き…!砂嵐!!町が砂嵐に襲われてるよ!」

 

「っ!!」

 

更に近くまで行けば、その砂嵐の規模がどれ程の物かを実感できた。

町一つ程度なら容易く呑み込めるだろう巨大な砂嵐は、瞬く間にユバ全体を覆い尽くし…やがて、去って行った。

 

「そんな…」

 

マツゲから降りてよろよろと砂嵐が去った後のユバに足を踏み入れるビビ王女。呆然と立ち尽くすビビ王女にかける言葉が見つからず、私はきゅ、と唇を噛み締めた。

 

「こりゃひでェ…!あのエルマルって町と大して変わんねェぞ……!」

 

「ここはオアシスじゃねェのかよビビちゃん…!」

 

「砂で地層が上がったんだ…オアシスが飲み込まれてる…!」

 

いくらオアシスとは言えども、あれ程の規模の砂嵐が…そう、例えばビビ王女がこの国を離れて何度も起こっていたとなれば……。

 

「旅の人かね…、砂漠の旅は疲れただろう。すまんな…この町は少々枯れている……」

 

「誰…?」

 

不意に声がした方へ目を向ければ、そこにはスコップを手に砂を掘り起こしている爺さんの姿があった。

 

「何もないが、宿だけならいくらでもある。ゆっくり休んで行くといい」

 

「あ、あの…この町には反乱軍が居ると聞いてきたんですが…」

 

「…!反乱軍に何の用だね…?貴様等、まさか反乱軍に入りたいなんて輩じゃあるまいな!!」

 

「わっ!」

 

ビビ王女がそう言った途端、顔色を変えて手当たり次第物を投げてきた。

 

「あのバカ共なら…もうこの町には居ないぞ…!!」

 

「な、何ーーーっ!!?そんな…!」

 

誰かが叫ぶが、思いはみな同じ。反乱軍のリーダーに用があってここまで来たと言うのに…居ないとなればユバに来た意味が無くなってしまう…!

 

「たった今…この町に砂嵐が来たが今に始まった事じゃない。3年前からの日照り続きで砂は乾き切って、この町は頻繁に砂嵐に襲われる様になった…!少しずつ少しずつ蝕まれて…過去のオアシスも今じゃこの有様さ。物資の流通も無くなったこの町では反乱の持久戦もままならないで反乱軍は『カトレア』に本拠地を移したんだ…」

 

「か、カトレア!!?」

 

カトレアと言えば、昼にビビ王女が言ってたナノハナの隣町にあるオアシスじゃあ…!

 

「どこだビビ!それ近いのか!?」

 

「…!ナノハナの隣町にあるオアシスよ」

 

「ナノハナ!?おいそれじゃあ何のためにここまで」

 

ビビ(・・)…!?今ビビと…!?」

 

あ、そうだ、ビビ王女はアラバスタの王女なんだから…迂闊に名前を出せば…!!

 

「あ、あの…私はその」

 

「生きてたのか…!よかった…!!私だよ!わからないか!?…無理もないな、少し痩せたから…」

 

「……!!トトおじさん……!?」

 

トトおじさん?

それにビビ王女と顔見知りだったのかこの爺さん。もしかしてお偉いさんか?

 

トトおじさんはビビ王女の肩をガシッと掴む。その目からは涙を流し、まるで気持ちを訴えてるかのようだった。

 

「私はねビビちゃん…!国王様を信じてるよ…!!あの人は決して国を裏切る様な人じゃない…!そうだろう!!?反乱なんてバカげてる…!あの反乱軍(バカども)を…頼む!!止めてくれ!!もう君しか居ないんだ!!」

 

「おじさん…!」

 

「高々3年雨が降らないから何だ…!私は国王様を信じてる…!まだまだ国民の大半はそうさ…!何度も何度も止めたんだ!だが、何を言っても反乱は止まらない…反乱軍の体力ももう限界だよ…。次の攻撃で決着をつけるハラさ、もう追い詰められてるんだ…!死ぬ気なんだ!!頼むビビちゃん…あのバカ共を止めてくれ!!」

 

……。

ビビ王女は、きっとこう言うだろう。

 

「トトおじさん、心配しないで」

 

ほら。

 

「反乱はきっと止めるから!!」

 

「ああ、ありがとう……!!」

 

そう言って笑うのだろう。彼女はそういう人間だ。

トトという人に心配をかけないように、1番不安に思ってるビビ王女が気持ちを押し殺して何もかもを背負おうとしてる。

 

…そしてその事は私だけじゃない…ルフィも気付いてる。

 

「ルフィ…気付いてる?」

 

「……ああ」

 

小声でルフィに尋ねると、彼は小声でコクリと頷いた。

 

その日は、そうした思いを抱えながらユバの宿で夜を過ごした。

何もかもを背負おうとしてるビビ王女を…どうすれば救えるのかを考えながら。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「………ん、……あれ、ここは…?」

 

……?確か私は、宿のベッドで寝ていた筈なんだけど……どこ…ここ…真っ暗だ…。

 

いきなりの事で処理が追いつかないが、目を覚ますと辺りが暗闇に包まれた空間に私は居た。

 

「夢、かな?」

 

『そう、夢』

 

「うわっ!」

 

いきなり耳元で囁かれてビクッと震える。

あのね、私は幽霊とかの類に耐性はあるけど、それは流石にびっくりするから!!

 

「誰っ!?」

 

『それは、あなたが一番よく知っている』

 

何…?

 

『気持ちを押し殺す。…あなたも同じ』

 

「何訳の分からない事言ってるの?それより、ここって本当に夢?妙に意識がハッキリしてるというか…」

 

『……、夢だけど、夢じゃない。ここはーーーー』

 

「え…ーーーーーー」

 

大事な所が聞こえる前に、私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

***

  

 

 

 

「昨日はすまんねビビちゃん、とんだ醜態を見せた…」

 

次の日の朝、私達はトトに見送られながら来た道を戻りカトレアへ向かおうとしていた。何だろ…変な夢見た気がするんだけど…、まぁ、いいか。

 

「ううん、そんな事…。それじゃ、私達は行くわ…」

 

「ああ…。ルフィ君、これを持って行きなさい…」

 

「ん?うわっ、水じゃん!出たのか!?」

 

「昨夜君が眠った直後にね。湿った地層までたどり着いたんだ。何とかそいつを蒸留して絞り出した」

 

「おおーっ!!なんか難しいけどありがとう、大切に飲むよ!」

 

ルフィはワルサギに荷物取られてるから、自分の水が無いんだよね…。

 

じゃ、と手を振ってユバを出る。

そのまま少し歩くと、ルフィは急にどか、と座って難しい顔をした。

 

「…ルフィ?」

 

「やめた」

 

『は!!?』

 

一味の声が重なった。

…ルフィ、何か思い付いたのかな?ビビ王女を助ける方法を。

 

「“やめた”って……!!?ルフィさん、どういうこと!?」

 

「おいルフィ、こんなとこでお前の気まぐれに付き合ってるヒマはねェんだぞ!さァ立て!」

 

「戻るんだろ」

 

「そうだよ、昨日来た道を戻ってカトレアって町で反乱軍を止めなきゃお前、この国の100万の人間が激突してえれェ事態になっちまうんだぞ!ビビちゃんの為だ!さァ行くぞ!」

 

「つまんねェ」

 

「何を!?コラァ!!」

 

ルフィの態度にナミさんやミキータは首を傾げる。サンジは案の定騒いでるが…ルフィは人の気持ちも考えないような奴じゃない。大丈夫だ。

 

「ビビ…おれ達はクロコダイルをぶっ飛ばしてェんだよ!」

 

「!!」

 

今おれ達って言った?あれ絶対私の事入れたよね。ほんとそういうとこ船長流石尊敬します。

 

「反乱してる奴らを止めたらよ…クロコダイルは止まるのか?その町へ着いてもおれ達は何もすることはねェ、海賊だからな、いねェ方がいいくらいだ」

 

「…………。………」

 

ナミさんが「え…こいつルフィよね…?」みたいな顔で見てる。ミキータもびっくりしてるけど、そうだよルフィはたまに核心つく人だよ。

だからみんな着いてくるんでしょ?

 

「それは…」

 

「お前はこの戦いで、誰も死ななきゃいいって思ってるんだ!国の奴らも、おれ達もみんな!」

 

「……!!」

 

「“七武海”の海賊が相手で、もう100万人も暴れ出してる戦いなのに…みんな無事なら良いと思ってるんだ。…甘いんじゃねェのか」

 

「何がいけないの!?人が死ななきゃいいと思って何が悪いの!?」

 

「人は死ぬぞ」

 

その言葉にビビ王女は我慢出来ずルフィを殴り飛ばす。

 

「やめてよ!そんな言い方するの!!今度言ったら許さないわ!今それを止めようとしてるんじゃない!!反乱軍も!国王軍も!!この国の人達は誰も悪くないのに!!何故誰かが死ななきゃならないの!?悪いのは全部クロコダイルなのに!!」

 

「じゃあ何でお前は(・・・)命賭けてんだ!!!」

 

バキ、とルフィがビビ王女を殴り返す。

 

「……ッ」

 

握り締めた拳から、噛み締めた唇から血が流れる。

私は、私が許さないと思っていた事を黙認しているのだ。…こうするしかビビ王女を救えない自分の不甲斐なさ…結局ルフィに頼ってる弱さを情けなく思うから…。

 

「……大丈夫よ」

 

「…!」

 

そんな私をナミさんが後ろから抱きしめてくれた。

……正妻とかそんなの関係なしに…ナミさんって何か包容力あるよね……濁ってた心が浄化されそう。

 

「この国を見りゃ、1番にやんなきゃいけねェ事くらいおれにだって分かるぞ!!」

 

「何よ!!」

 

ビビ王女はすぐに起き上がってルフィに馬乗りになり顔を何度も何度も叩く。

 

「お前何かの命一個で賭け足りるもんか!!」

 

「じゃあ一体何を賭けたらいいのよ!!!他に賭けられる物なんて私、何も…!!」

 

「おれ達の命くらい一緒に賭けてみろ!!仲間だろうが!!!」

 

「!!!?」

 

そんなルフィの言葉に…態度に、ビビ王女は涙を流す。

 

「何だ、出るんじゃねェか…涙。本当はお前が1番悔しくてあいつをぶっ飛ばしてェんだ!……教えろよ、クロコダイルの居場所!!」

 

「…っ、うん…!」

 

「ちょっと待って、流石に口を挟ませて貰うけど、ルフィそれはダメ、カッコいいからダメ。ビビ王女がもし、もーーーし惚れちゃったらどうするの????私が泣くよ今度は、泣くよほんとに!!」

 

うがーー!とビビ王女とルフィの間に入り込む私!

これ以上は続けさせてやらん!話は纏まったと見た!いいね!

 

「イ、イリスさん、そんな心配しなくても…私はそもそもイリスさんが……、はっ!?な、何でもないわ…!」

 

「キャハハ!なに?ビビ…何て言おうとしたのか聞かせてくれない?」

 

「も、もう、やめてよミキータ!」

 

なんて言おうとしたのかは気になるところだけど、ビビ王女が元気になったならそれが1番いい事だ。

 

そんじゃ、次の目的地は決まったね!!王下七武海?クロコダイル?懸賞金8000万越え?知るかそんなもん。

私の嫁を泣かせる奴は…どこの誰だろうと殴って空の彼方へ飛ばしてやる!!

 

 


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