ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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43『女好き、挑むは七武海』

「もし私がクロコダイル倒したらさ、ビビ王女、どうする?」

 

「え?」

 

ユバから北へまっすぐの所にある『レインベース』というオアシスにクロコダイルが居るとの事で、一味は現在そこへ向かってまたも広大な砂漠をひたすらに歩いていた。

そんな中、私が不意にした質問にきょとんとするビビ王女。

 

「だから、私がクロコダイルを倒したらどうするの?感謝の嫁になったりしない?」

 

「あんたバカねぇイリス、クロコダイルを倒せばそれなりの礼ってもんが貰える筈でしょ。一国を救うのよ?そりゃもう王女様を貰うなんて安い物よ、ねぇビビ」

 

「ど、どうかしら…はは」

 

「オイイリス!クロコダイルをぶっ飛ばすのはおれだぞ!!」

 

くぅぅ!じゃんけんさえ勝っていれば…っ!!

 

 

そんなこんなで一行は、丸1日掛けてレインベースへと到着した。

遠目で見てもわかる…今までのエルマルやユバとは明らかに違った活気というものがここからでも認識出来る程だ。

 

「…そうだ、ウソップ、頼んどいたアレ(・・)…出来てる?」

 

「アレ?」

 

「オオ…アレか。出来てるぜスゲェのが」

 

そういうとウソップはガサゴソ鞄から棒を取り出した。それはナミさんが使ってたような3節棍で、私は首を傾げる。

 

「見ろ!これがお前の新しい武器!“天候棒”(クリマ・タクト)だっ!!」

 

「クリマ・タクト?」

 

ナミさんもその3つに分かれた棒を受け取り、空洞になってる中を覗きながら首を傾げている。

 

「そう、一見前と変わらねェただの棒だが全然違う!3つの棒の組み方でなんと攻撃が変わるんだ」

 

「凄いじゃんウソップ!私にも何か作ってよ!!」

 

「お前は武器いらねェだろ!!」

 

ゴツン、とウソップの拳が私の頭に落ちた。でも殴ったウソップの方が痛がってるのは、勿論私が体の硬さを倍加したからですねぇ。

 

「でもナミさん、武器を新調してどうしたの?珍しいね」

 

「あら、イリスは私が戦闘では何の役にも立たない雑魚小娘だって言いたい訳?」

 

「そ、そそそんな事言ってないし!!!」

 

「フフ、でも間違ってないでしょ?だからよ、私がウソップにクリマ・タクト(コレ)を頼んだのは」

 

…そっか、ナミさんも今回の一件は自分自身でも動きたいんだね。

そうだよね、だってナミさんだもん、ビビ王女の気持ちを知ってて…自分だけ何もしないなんて許せる性格じゃないか。

 

「所でよ、B・W(バロックワークス)は俺達がこの国にいる事に気付いてんのか?」

 

「間違いなく気付いてるよ。今までMr.3や2にも会ったし…Mr.2の能力で顔だって間違いなくバレてる…、慎重に行動しないとね」

 

「そうだな」

 

みんなで頷き合ってレインベースへと入った。

ルフィとウソップは水が飲みたいというので近くの食堂に足を運ぶそうだ。

 

「ウソップ、ルフィの事よろしくね」

 

「任せろ、しっかり手綱引いといてやる!」

 

そう言って2人は人混みへと消えていった。

残された私達は隅の方で腰を下ろし、砂漠で歩き疲れた体を癒す。

 

「おれ、トイレ行ってくる」

 

「んー」

 

…あれ、チョッパーが言った事に気軽に返したけど…彼ってトイレどこでするんだろ……まぁいいか。

 

 

 

 

***

 

 

 

ナミさんやビビ王女、ミキータと楽しくお喋りしていると、突然町が騒がしくなってきた。

何かデジャブのようなものを感じるよね、つい最近も同じ事なかった?『ナノハナ』とかで…。

 

「…ゲッ」

 

「だと思ったよ…」

 

はぁ、とため息をつきながら私が見る方向には、ルフィとウソップが海軍から逃げている姿があった。

やっぱりルフィの手綱を引くのはウソップでも無理なのかな。

 

「ウソでしょ…?何でこっちに来るのよ!」

 

「ナノハナでもそうだったんだから諦めよ、ナミさん。…所でチョッパーがまだ来てないけど…」

 

「放っとけ、てめェで何とかするさ!」

 

ゾロの言葉にそれもそうだね、と頷く。チョッパーもああ見えてちゃんと強いし…問題ないでしょ。

 

「オイみんな!海軍が来たぞォ!!」

 

「お前らが連れて来てんだよっ!!!」

 

「しかもまたスモーカーいるじゃん…!」

 

こんな所で座ってたら速攻捕まるので、急いで立ち上がって走る。もう全力で走る。

その際に辺りをチラリと見れば、B・W(バロックワークス)の社員と思われる奴らが人混みに紛れて私達の顔と手に持つ紙を見比べていた。

…あちゃ、もうバレたか。

 

「まずいよ、B・W(バロックワークス)にも見つかった!こうなったら早くクロコダイルのとこへ行こう!」

 

「…!うん!あそこ…!」

 

ビビ王女が指差す建物を見る。それはこの町のどの建物よりも高く、ピラミッドのように三角錐になっていた。

 

「ワニの屋根の建物が見えるでしょ!?あれがクロコダイルの経営するカジノ、“レインディナーズ”!」

 

「了解…っ!みんな、とにかく今は散ろう!」

 

何たってこの数の海軍だ。固まって行動するのは得策じゃないだろう。

 

「よしっ!じゃあ後で“ワニの家”で会おうっ!!」

 

そう言って3手に分かれる。

私はナミさんとウソップ、サンジ達と一緒の方向だ。

 

「海軍はまだ来てる!?」

 

「あの煙野郎はいねェが、海軍はワラワラだぜイリスちゃん…!よし、ここは俺が一旦引き受ける!ウソップ!ナミさんとイリスちゃんを頼むぞ!!」

 

「ごめんサンジ!また後でね!」

 

スモーカーが居ないのなら、どれだけ海兵を掻き集めようとサンジに敵うはずもないので素直に場を託す。

私が最優先すべきはこの場だとナミさんだし、何が何でも守り通すんだ!

 

「居たぞ!あいつらで間違いねェ、さっさと殺せ!!」

 

「うるさい!」

 

「ぐへっ!?」

 

道中、道を塞ぐB・W(バロックワークス)を数人蹴散らし、何とか目的のレインディナーズへと辿り着いた。

 

「とにかく中へ急ごう、またいつ海軍やB・W(バロックワークス)に見つかるか分からないし」

 

「そうだな。…ん?オイゾロも来たぞ!」

 

「あれ!ゾロ、ビビ王女とミキータは!?」

 

「まだ着てねェのか!?先に行かせたんだが…もう中に入ったのかもしれねェ!」

 

なら尚更急がないと…!

 

「おおおおおおおお!!!みんな行くぞ!中に走れ!走れ!」

 

「うおわ!?ルフィ!!?」

 

今度はスモーカーに追われてるルフィもやってきた。

私達はレインディナーズの中へ走り込み、とにかく奥へ奥へと走る。

 

「…っふぅ!ここまで来れば、スモーカーも撒けたんじゃない?」

 

「はぁ…はぁ…、そうね、この人の数だもの。それで?どれがクロコダイルなの?」

 

レインディナーズ内は、見たままにカジノだった。

かなり繁盛しているようで中は人でごった返しており、ここに紛れ込んだ私達を見つけるのはスモーカーでもなかなか難しいだろう。

 

「クロコダイルは経営者…つまりオーナーでしょ、こんな所に居るはずがないよ、間違いなく裏に居る」

 

「それもそうね、…でも、どうやってそこまで行くのよ?私達はこの店の関係者じゃないわよ?」

 

そこなんだよね…。どうしたものか…。

 

「見つけたぞ麦わら共!湖に囲まれたこの店じゃあもう逃げ場はねェ!」

 

「えっ!?見つかるの早すぎでしょ!もう考えてる暇ないよ、とにかく奥へ行こう!最悪強引に入ればいんだよ!!」

 

「そうだな、何も一般な善良市民じゃあるめェし!」

 

そうしてまたも奥へと走れば、“VIP”と書かれた大扉へと辿り着いた。

 

「どうぞこちらへ!VIPルームで御座います!」

 

しかも出迎えられてるし…!これは、入ってこいって事でいいの!?

 

「“かかって来い”って事じゃないかしら?」

 

「話の分かる野郎じゃねェか!」

 

「うっし!行くぞーーっ!」

 

ドドドッ!と足音を響かせながら、私達はVIPルームへと入った。

中に入れば一本道となっており、突き当たりまで走ると左右に通路が分かれていた。

ご丁寧に看板まで設置してあり、矢印が左に向いてる方はVIP、右は海賊と書かれている。

 

「おれ達は海賊だから、右だろ!」

 

「あぁ!」

 

「ちょっと待って!」

 

多分何も考えてないルフィとウソップ、ゾロの3人が右へと向かう。

ちょ、絶対そっちじゃないよ!間違いなく罠だって!!

 

「待て麦わらァ!!」

 

「ええっ!?」

 

スモーカーも一旦私達を無視してルフィ達を追う。いやあなたも大概考えなしというか…狙ってる物があったら周り見えなくなるタイプだね!?

 

「「おわぁっ!?」」

 

案の定右に行ったメンバーは床が抜けて下に落ちていった…。そりゃ、そうなるよ…。

 

 

「…どうする?左に行ってみようか?」

 

「どっちに進んでも罠って可能性は?」

 

ナミさんの言うことも一理あるよね…。そもそもここは敵の本拠地になる訳だし…罠が無い方が不自然だよ。

 

「…じゃあ、こうしよう」

 

ドゴッ!と壁をぶち抜けば、その奥の部屋が姿を見せる。

 

「これで罠かどうか確認しながら先へ進もう。ルフィ達は下に落ちたから…地下に繋がる道が何処かにある筈だよね」

 

「かなり強引ね…。でも、流石イリス!それなら安全に進めるわ、どうせ敵の店よ、何なら金目の物を奪って行きましょ!」

 

強かなナミさんはやっぱり素敵だー!!

…ってこれ、よくよく考えればナミさんと2人きりだし…!?デートじゃんデート!!

 

「よっ!…ていっ!」

 

バコォン!ボコォン!と響く音と共に私達は先へと進んでいく。

部屋が壁越しに繋がってるような構造で良かったよ、ほんと。

 

そうやって進んでいけば、やがて少し広い空間に出た。

中央に階段が設けられており、下へと降りることが出来る様になっている。

しかもこの空間、私がぶち抜いた穴以外どこにも扉らしい物が見当たらない。つまり…隠し部屋って事だ。

 

「お、正解ルートきたかな、どう思うナミさん?」

 

「こればかりは行ってみないと分からないわね…。何かあっても守ってくれるんでしょ?」

 

「勿論。…さ、行こ」

 

ナミさんの手を取って階段に足を踏み入れる。

かなり長い階段なのか、それとも下が暗いだけなのか先が見えない。

 

「絶対に手を離さないでね、こんな暗いとはぐれちゃったら危ないから」

 

「離すわけないでしょ」

 

ぎゅ、と握り返してくるナミさんの手の平の感触がやばい、こんな時に言うのも何だけど…むらむらしてきた。だって暗いし。ナミさんいい匂いだし。…でも何だろうか、ここ…ナミさんの素晴らしすぎる匂いの他にも別の匂いがするんだよね。…何だろ…チョコとか?そんな感じの甘い匂いがする。

 

「…灯りとかは無いのかな?スイッチとかない?」

 

「こうも暗いとね…。……あ、イリス、あんた…視力倍加とか出来るなら暗順応とか、そういう倍加はできないの?」

 

「暗順応…?何それ、暗闇適応!みたいな?」

 

「そんな感じの認識で大丈夫だけど…どう?」

 

「なるほど…確かに言われてみれば何で思い付かなかったんだろ、出来るよ、多分!」

 

暗順応…とにかくこの暗闇に対応する視覚機能を倍加しよう。

 

……あ。

 

「見えてきた!」

 

「あんたの能力ってほんと幅広いわね…そんな何となくで出来るような物なの?」

 

「はは、悪魔の実の能力なんて大体何となくだよ。ルフィだって何となく使ってそうじゃん」

 

倍加出来そうだな、と思えば大体出来ちゃうから…便利と言えば便利だね。

 

「んー、一本道だね、それも人1人通れる程度の狭いとこがずっと奥まで続いてる」

 

「緊急の脱出口かもね…」

 

結構長かった階段を下りれば、そこから先は一本道だった。

ナミさんと縦になって先へ進めば、突き当たりに上へ登る梯子が姿を現す。

 

「さっき下りたのにすぐ登るの?設計した人バカでしょ。あ、ナミさん先に上がってね」

 

もし落ちたら危ないからとナミさんを先に行かせる。

…ぐへへ、本当の目的はナミさんの可愛らしいお尻を間近で眺める為だけどね…!

 

「…ちょっと、どこに顔近づけてるのよ、そんなにしたいなら一緒に寝てるのにどうして夜手を出してこない訳?」

 

「そ、そこはほら、ミキータとかビビ王女も居たし?」

 

「ふぅん…?」

 

そうしてナミさんのお尻を堪能しつつ梯子を登れば、遂に1番上まで辿り着いた。

遂にと言ってもそんなに長くはなかったけど。

 

「開けるわよ」

 

「そっとね、クロコダイルが居るかもしれないんだから」

 

ナミさんはコクリと頷き、ゆっくりと塞がれている天井を少しだけ上へ上げて中を覗いた。

 

「……居るわ、間違いない…クロコダイルよ。あとあのバカ達も居るわね、捕まって檻の中みたい。ビビも居るけど…捕まってはないみたい」

 

「案の定だね。ビビ王女はどうやってそこまで行ったの?私達はこんな遠回りしたのにさ」

 

中に聞こえないよう、ナミさんと息を潜めながら会話する。

どうやら中ではルフィ達が纏めて檻に捕まっているようで、クロコダイルと何やら話をしているのか声が聞こえて来た。

 

 

「お前さえこの国に来なければ、アラバスタはずっと平和でいられたのよ!!」

 

「待てビビ!ここを開けろ!!おれ達を出せ!!」

 

 

見えないから状況が分からないんだよね。

 

「ナミさん、上はどうなってるの?」

 

「…かなりまずい状況ね。まず、ビビが今クロコダイルに捕まったわ」

 

「なにっ!?」

 

「ちょ、静かに…!大丈夫よ、捕まったと言っても何もされてないわ。相手にもされてないみたい」

 

「どうする?突撃する?」

 

「…ビビが無事ならあまり無理はしない方がいいかもしれないわね。クロコダイルの能力…相当厄介よ、攻撃が効いてないみたいな…」

 

それはあれか?まさかスモーカーみたいな能力って事なのかな?

 

 

「7時を回った。丁度頃合い…パーティの始まる時間だ」

 

「パーティ!!?ふざけないで…!今度は何を企んでいるの!?」

 

「クハハ、何、少しこの国の()から国民へのメッセージが届けられるだけさ。そうなれば……俺の作戦は最終段階に入る」

 

 

この国の王って言ったって、どうせ化けたMr.2でしょ?

…つまり、国王の顔で国民に…不信感を爆発させる何かを言わせる、もしくは何か行動を起こすとみて間違いない。しかもその作戦はもう始まっているんだ。

 

 

「どうだ、気に入ったかねミス・ウェンズデー。君も中程に参加していた(・・・・・・)作戦が今花開いた…耳を澄ませばアラバスタの唸り声が聞こえて来そうだ!!…そして心にみんなこう思っているのさ、「俺達がアラバスタを守るんだ!」…クッハッハッハ!!」

 

「やめて!なんて非道い事を…!!」

 

「ハハハハ……!!泣かせるじゃねェか…!国を想う気持ちが国を滅ぼすんだ…!」

 

 

野郎…!!

国王軍と反乱軍…どっちもこのアラバスタを大切に想ってるってのに…その心につけ込んで…こいつは!!!!

 

「ナミさん…ごめん、きちんと隠れてて!」

 

「あっ、ちょっとイリス!」

 

天井口を開け、勢いよく部屋に飛び出る。

…この鰐野郎…!一発殴ってやらないと気が済まないよ…!!

 

 


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