ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

48 / 251
45『女好き、作戦名《超カルガモクイズ》』

「ガハッ、ゴホッ!」

 

「イリス、大丈夫…!?」

 

何とかあの地下から湖を泳いで脱出した私達だが、意外と苦しかった。ほんとに体が何一つ言うことを聞かないのだから参ったよ。

 

「だ、だいじょぶ…じゃない。ナミさんの…く、おっぱいさえあれば…!」

 

「大丈夫みたいね、よかったわ」

 

ホッと胸を撫で下ろすナミさん。あれ、スルー??

 

「うおっ!?スモーカー!?おいおいゾロ、何敵連れて来てんだよ!」

 

「うるせェ不本意だ」

 

「ゲホ、う…、まあ、今はそんな事より先を急ごう!」

 

「ああ、だいぶロスしちまったな、ビビちゃん、間に合うか?」

 

「わからない…」

 

どちらにしても、行ってみない事には何も始まらないんだ。

まずはチョッパーやミキータと合流しないと!

 

「ナミさん、『ナノハナ』で買った香水持ってるか?」

 

「ええ…何で?」

 

「体に付けるんだ、チョッパーはそれで俺達の場所がわかる」

 

なるほど、流石サンジだ、頭がいい。

 

シュッと香水をつけるナミさん。あー、普段とは違った匂いで…新鮮で素敵だー!!

 

「ロロノア!!」

 

ギィン!!とスモーカーが十手でゾロに攻撃したのを、彼は刀の腹で受け止めた。

 

「何故俺を助けた…!?」

 

「“船長命令”を聞いただけだ、別に感謝もしなくていいと思うぜ?コイツの気まぐれさ、気にすんな」

 

「………。じゃあ、俺がここで職務を全うしようと…文句はねェ訳だな?」

 

「見ろ…!言わんこっちゃねェ!」

 

…でも、これスモーカーやる気ないよ。なんて言うんだろ…私達を捕まえるっていう意思を感じない。

 

「クロコダイルは何処だーーーっ!!」

 

あ、ルフィも目を覚ましたか。

 

「うおっ!けむりっ!やんのかお前っ!」

 

スモーカーを見た途端すぐに構えるルフィ。そういうとこの判断力というか、戦闘に入るスイッチの切り替えは流石だよね。

 

「………、行け」

 

「ん?」

 

「ーーだが、今回だけだぜ、俺がてめェらを見逃すのはな…」

 

やっぱりね…でもほんとに助かった。こんな所でスモーカーと戦闘なんてしたら絶対にアルバーナへ間に合うなんてムリだった。

 

「…次に会ったら命はないと思え…、“麦わらのルフィ”…」

 

お、私は忘れてくれてるみたい!ラッキー!

 

「勿論てめェもだ、“女好きイリス”」

 

全然忘れてなかった。

 

「あそこだ!!麦わらの一味だァ!!」

 

「っ、じゃね、スモーカー!助かったよ!」

 

別の海軍に見つかったか…!スモーカー程話が分かるとも思えないし…えっと、東へ真っ直ぐだったよね!

 

そうして私達は東へ真っ直ぐ走る。

だけどこのまま走ってるだけじゃ間に合わないんじゃ…!それに、ミキータは!?

 

「サンジ、ミキータを知らない!?」

 

「ああ、それがミキータちゃん、オフィサーエージェントに見つかったとかで丁度『アルバーナ』に逃げるって言ってたから大丈夫だ!心配すんな、彼女も強い!」

 

「…そっか!」

 

普通に心配だけどね?オフィサーエージェントって…強さで言えばミキータ以上の人達ばっかなんでしょ?

…でも、あのMr.5だって単独撃破出来たんだし…こんな状況なんだ、信じるしかない!

 

「おい!もしかしてこのまま走ってアルバーナへ行くなんて事ねェよな!」

 

「そうだマツゲ!マツゲは何処に行ったの!?」

 

「ご安心あれ…前を見な!」

 

丁度レインベースを出た時、サンジの言う通りに前を見ればそこには巨大すぎる蟹と、その背中に乗ったマツゲとチョッパーの姿があった。

 

「これは…!“ヒッコシクラブ”!!」

 

そのまんまじゃんか!!

 

「おーーいみんなーーーー!!早く乗ってくれよ!」

 

「乗れるのかァ!?うほーーっ!!」

 

「ああ、マツゲの友達なんだ!マツゲはこの町の生まれでこの辺には友達が一杯いるんだ!」

 

そうか、チョッパーは動物とも会話出来るから…!!

 

みんなでカニに乗り、チョッパーが手綱を引く。

カニに手綱って…もう意味わかんないよね。

 

「よーし行くぞ!出発!!」

 

「!!?ビビ王女!!!」

 

カニが走り出した直後に、ビビ王女の体が宙を浮く。

その体にはフックが引っかかっていて、その先をずっと砂が伸びていた。間違いない…クロコダイルだ!

 

「イリス!おれが行く!!」

 

ルフィはすぐ様ビビ王女をフックから剥がして私達の方へ放り投げ、代わりに自分がフックに掴まって引き寄せられていく。でもマズイ…!あそこは砂漠だ、クロコダイルのホームの様な場所で戦闘なんていくらルフィでも…!!

 

「……、違う、そうじゃない!」

 

ブンブンと頭を振って余計な考えを払う。じゃんけんで勝ったのはルフィ、あいつと戦うのはルフィの役目だ。だったら私は彼が勝利するのを信じていればいいだけだ!

 

「ルフィ!私達は先に行く!絶対に後から追いかけて来て!!それから、クロコダイルの弱点は水だよ!!水さえかければ攻撃は当たる!」

 

「おう!!」

 

ルフィはニカッと笑ってクロコダイルに引き寄せられて行った。

私達はそのまま速度を落とす事なく『アルバーナ』を目指す。

 

「ルフィさんっ!」

 

「大丈夫だよビビ王女!ルフィは本当に強いから!」

 

実際は、あのミホークと同じ七武海のクロコダイルに勝てる保証など何処にもありはしない。だけれどさっきも思った通り…私達は彼を…私達の船長(キャプテン)を信じて待てばいいのだ。

 

「いいかビビ、クロコダイルはあいつが抑える。“反乱軍”が走り始めた瞬間にこの国の制限時間(リミット)は決まったんだ。“国王軍”と“反乱軍”がぶつかればこの国は消える!それを止められる唯一の希望がお前なら…何が何でも生き延びろ…!!この先ここにいる俺達の中の… 誰がどうなってもだ(・・・・・・・・・)……!!」

 

「…そんな」

 

ゾロの言葉にビビ王女が狼狽るが、その通りだ。ビビ王女にはルフィのあの言葉を本当の意味で理解してもらわないと行けない時が来たんだ。

 

《おれ達の命くらい一緒に賭けてみろ!仲間だろうが!!》

 

「…ビビちゃん、コイツは君が仕掛けた戦いだぞ。数年前にこの国を飛び出して、正体も知れねェこの組織に君が(・・)戦いを挑んだんだ。……ただし、もう1人で戦ってるなんて思うな」

 

「!」

 

「び、ビビビビ!!心配すん…パイスン…スンぱいなよ!おれガツ…ガッツいて…」

 

「いやガッツくな」

 

 

「…ルフィさん!!!「アルバーナ」で!!待ってるから!!!」

 

覚悟を決めたビビの声に、ルフィも大きく雄叫びを上げるかのように返事を返した。

 

 

戦いを嘆く者ーーー

 

戦う者ーーー

 

戦いを煽る者達ーーー

 

その真実を知り阻止する者ーーー

 

それぞれの想いは行き違い、首都「アルバーナ」で衝突する。

 

 

 

***

 

 

 

 

「え!このカニ、河は渡らないの!?」

 

「ヒッコシクラブは砂漠の生き物だから…!水は苦手なのよ!」

 

レインベースとアルバーナを直線で結べば、その中央にはサンドラ河が横断していて必ず河を越えなければならない。

だというのにこのカニ、河を渡らないって!?

 

「河を越えてもまた何10kmも砂漠があるんだぞ!このカニが向こう岸へ行かなきゃその先走るのか!?間に合うわけねェだろ!」

 

「やべェっ!そう言ってる間に…サンドラ河が見えてきた!!」

 

どうするの!?

 

「そうだ!“ハサミ”は踊り娘が大好きだ!!」

 

ちなみにハサミとはこのカニの名前である。

ハサミだなんて、ナミさんの命名は可愛いなぁ!好き!!

 

「私がローブを抜けばいいの?」

 

「は?いやいや、人の嫁を見せ物にしないでもらえますかね?ん?今すぐてめェのミソほじくってもいいんだよ?あん?」

 

コンコンとハサミの頭をノックすると、それはもう面白い程スピードが上がった。その顔は恐怖に包まれてたけど。

 

「おいおい、すげェぞこのカニ、奇跡だ!水上を走ってる!?……いや気のせいだ!!」

 

最初だけなら勢いで水上を走ったハサミだったが、人間が水の上を走らないのと同じでハサミも無理だったようだ、ぶくぶくと沈んでいく。

流石に不憫なのでサンジとゾロでハサミは陸に戻したが、こうなると泳ぎで向こう岸まで渡らなければならない…!!くそ、私はこうなるとただの足手まといだってのに!!

 

「ぎゃあああっ!?今度は何だァ!?」

 

水中から巨大なナマズの様な魚が出てきた。なんでこの地には何かと巨大なやつしかいないの!!

 

「サンドラマレナマズ!!出現がごくマレなの!!」

 

「んな説明いらねェよ!」

 

ナマズが口を開けて襲いかかってきた。え、ナマズの癖に人間食べるの!?

 

「あと人間が大好物!!」

 

「そっちを先に言えェ!!」

 

ウソップが悲鳴を上げ、みんなして泳ぎ逃げ出すが如何せん私が邪魔をしてしまう。

そのままナマズの大口に吸われそうになるが…ナマズは突如として現れた無数のクンフージュゴンによって倒された。

 

「クンフージュゴン!」

 

「ナイスだ!助かったぜ!」

 

倒れたナマズの上に乗り、クンフージュゴン達が向こう岸まで運んでくれた為かなりペースを縮めることが出来た。

チョッパー曰く「師匠のピンチを見過ごせねェっす」とのこと。

 

ハサミの移動で本来なら半日かかるのを3時間で、そしてクンフージュゴン達のおかげで1時間で河を渡れた…!レインベースでのロスが大体30分だとすれば…クロコダイルの言ってた8時間まで大体あと3時間!!

 

「順調に来てるぞ、間に合いそうか!?」

 

「難しいわ、マツゲ君に乗ってもまだ間に合うかどうか…!」

 

ゾロの問いにビビ王女が答える。てかマツゲ君って…呼び方がもう可愛い。

 

「しかもそれじゃ乗れて2人だぞ!B・W(バロックワークス)が仕掛けて来るとすりゃここから先だ!何とか全員で行動する方法はねェのか…!?」

 

「…!待ってみんな、向こうから何か来る!」

 

「何だ!?敵か…!?」

 

「違うっ!あれは…っ!」

 

砂漠から集団で走って来る何かを見つけて指させば、ビビ王女の顔が綻ぶ。

 

「カルーーっ!!それに「超カルガモ部隊」!!迎えに来てくれたのね!?」

 

カルーは勿論知ってるけど、超カルガモ部隊って何よ!

…いや、それはもういい!とにかく…えーっと、いち、に、…7頭いるのか!1人一頭は無理でも全員乗るくらい訳ないね!

 

「よし、これならアルバーナへ文字通り最速で行ける!!…ただし、その前に1つ…作戦会議をしない?」

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

 

 

「あーーー、幸せ、幸せだよこれ、役得役得!」

 

「ちょっとあんた、敵が見えたわよ、静かにして」

 

今私は、7頭いるうちの一頭のカルガモにナミさんと乗って砂漠を走っていいて、既に眼前には首都アルバーナが見えている。

1人で乗ってるように見せかける為、体の小さい私はナミさんに凭れ掛かるように、そしてナミさんは私を覆い隠すようにマントを羽織っていた。

ちなみにマントは他全員着用している。何故なら相手の狙いはビビ王女…どれがビビ王女か分からなくするのがこちらの作戦という訳だ。

 

ま、今この場にいるカルガモは6頭だけ(・・・・)だけど!

 

「……!」

 

あれは、雰囲気からしてオフィサーエージェント…!Mr.2もいるし、数も合う!間違いない…!!

…だけど、ミキータはいないか、ちゃんと逃げ切れたなら良いんだけど…!!

 

「私達はどこから登るんだっけ?」

 

「西門からよ、行くわよ!」

 

ダダ、と物凄い速さで走るカルガモがオフィサーエージェントの攻撃を掻い潜りながら抜けていく、

アルバーナへ西から入ろうと思えば、5つある内の3つの門…西門、南西門、南門から入れる。作戦通り、西門からは私とナミさん、そしてゾロ。南西門からはウソップとマツゲ。南東門はサンジ、チョッパーと三手に分かれての行動となる。

 

「みんな散れたね、オフィサーエージェントも追ってる!」

 

「ふふ、流石ねイリス、良い作戦だわ」

 

「それ程でも〜」

 

でへでへとやってれば、それなりに奥まで走ってこれたようだ。

私達は大柄な坊主の男と、大人の女性感醸し出す美人を引きつける事に成功した。

この距離まで走れば…もう今更戻った所で手遅れだ!!

 

「あなた達勘がいいわ、そう!私こそがビビ王女♡」

 

「何言ってやが…言ってるの?私が真のビビだわよ!」

 

「ぷっ」

 

あ、だめ、声出ちゃった…!!だってゾロが…あのゾロが…!!はっっはは!!!

 

「今正体を見せてあげるわ!」

 

バッ!とマントを脱ぎ捨てる。

というか、そもそもどこの門に入ったカルガモを追った所で…。

 

 

「「残念、ハズレ」」

 

「なっ…!」

 

ビビ王女には会えないけどね!だってそもそもビビ王女は最初から別行動だし!!!もう今頃追手やら何やらを気にする必要もなく反乱軍に会えてるだろうね!!バーーーーーーーーーーーッッッカ!!!!!!

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。