ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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46『女好き、先を越される』

「あーーーっはっはっは!!私の嫁を殺そうなんておこがましいわ!!!ていうか、普通に許さないし!」

 

「オオ、やる気じゃねェかイリス」

 

「………、参ったぜ」

 

やれやれ、と首を振る坊主。

てか、こいつMr.1でしょ、胸に大きく壱って書いてますけど。

 

「…イリス、あんたは下がってて」

 

「ナミさん?」

 

ぐい、とナミさんに肩を引かれて後ろに下げさせられる。

え、私の出番ってこういう時くらいしか無くない!?どうしたのナミさん!?

 

「ゾロ、あんたはそっちのデカブツをお願い!私はそっちの女をやるわ」

 

「別に構わねェが…どういう風の吹き回しだ?」

 

「ふ…、あんたね、私が誰の妻を務めてると思う?こんな所で…止まってられないでしょうが!」

 

「っ!?」

 

そう言うとナミさんは足元の石ころを美人なお姉さんに投げつけて入り組んだ道へ走って行った。

 

「ハッ、成る程…良い度胸じゃねェか!オイイリス!ここは俺達が引き受けた、てめェは先にビビの元へ向かえ!!」

 

「…!!で、でも…」

 

「てめェの女が腹括ってんだ!!てめェ自身がくよくよしてんじゃねェよ!」

 

ダッ!と坊主頭に距離を詰めて刀を振り下ろす。

お姉さんの方も狙い通りにナミさんを追いかけて行った。

 

「ッ……あーーーーもうっ!!ゾロ!!ナミさんに何かあったら絶対許さないからね!!」

 

「安心しろ、あの女は殺した所で死にやしねェ」

 

私はそれだけ聞くと、勢いよくビビ王女が居るだろう王の宮殿に向かい走り出した。

遠くから野太い声が聞こえる…!多分、入り口で反乱軍を止めるのは失敗したんだ!!

 

「はっ…はっ…じゃあ、どうして失敗した…?」

 

…あのタイミングなら、間違いなく反乱軍より先にビビ王女の方が到着出来た。向こうのリーダーが聞く耳を持たなかった…?それもあり得るけど何か違う気がする…!!

…もしかして…国王軍、もしくは反乱軍…最悪その両方にB・W(バロックワークス)が潜入してる…!?だとすれば、どれだけビビ王女が声を届けようと邪魔など幾らでもしようがある…!!

 

「出た…!宮殿前!」

 

走る事数分で喧騒の聞こえる広場へと出た。道中はかなり登りの階段が多く、王の宮殿はそれなりに高い所に作られているようだ。

王国軍の兵士でごった返してる…私はこんな見た目だからスルーされてるのかな?きっと普通の一般市民が来たら追い払われるくらい厳重に警備されてるんだろうね。

 

「ビビ王女はどこ!?こっちかな?」

 

どこ…ビビ王女…!!それにここにいるのならミキータも!!ミキータはちゃんとアルバーナへ辿り着けたの!?まさか、オフィサーエージェントにやられてるなんてないよね…?もしそうなら、絶対許さないよミキータ…!勝手にピンチになんてならないでよ!!

 

「こうなったら、もう宮殿に乗り込むか…!門も空いてるし…!」

 

今は緊急事態なんだし、王様も多少の不法侵入は許してくれるでしょ?

 

そんな私ルールを発動し、宮殿の大門前階段まで行けばそこも既に大量の兵士で溢れていた。

ビビ様が危ないとか言ってるし…もしかしてこの中にいるんじゃ!?

 

「ちょっとごめんね!!」

 

「ふべっ!」「あで!」「ちょ、あばっ!」

 

ぴょんぴょんと人の頭を踏み越えて最前列に進む。この階段長いしかなり角度あるなぁもう!

 

「!何これ…!」

 

そこには国王軍の精鋭みたいな人達が複数人倒れていて、しかもビビ王女がクロコダイルに首を掴まれ持ち上げられていた。

しかもビビ王女の足元に場はなく、その手を放せば何百mと下に落下するだろう位置だ。

…あの下は、広場か…!そこから争いの声や音が聞こえて来る…!

 

「全てを救おうなんて甘っチョロイお前の考えが、結局お前の大好きな国民共を皆殺しにする結果を招いた。最初から最後までどいつもこいつも笑わせてくれたぜこの国の人間は!!」

 

何の話をしてるんだ…?ていうか、ルフィは!?まさか、ルフィが負けたの…!?

 

「2年間、我が社へのスパイ活動御苦労だったな…。結局お前達には何も止められなかった…反乱を止めるだの王国を救うだの、お前の下らねェ理想に付き合わされて無駄な犠牲者が増えただけだ…!教えてやろうか……お前に国は救えない」

 

その言葉を最後にクロコダイルはビビ王女を掴んでいた右手を砂に変え、下へ落とした。

下では既に反乱軍と王国軍が衝突しているし、何よりここから広場まではかなり高低差がある。さっきも言った事だけど…何百mあるかわからない。間違いなく落ちれば命を落とすだろう。

 

…………。

流れなんて何にもわからない。

この国がどうとか、国民がどうとか…正直私にとってそれらはあまり関係のない事なんだ。

ビビ王女が国を救えないだとか、国民がバカばかりだとか、そんな事(・・・・)はもう…この際どうだっていい…!!ただ……今、ビビ王女泣いてたよね…?

 

 

泣かせたな(・・・・・)?クロコダイル…!!!!

 

 

「う、おおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

「!!?」

 

落下するビビ王女に向かって走る。

勿論足場など無い、壁を足場に走ってるんだ!気合で!!!

 

「届けェええええええええ!!」

 

が!っと落下するビビ王女を抱きとめる。流石にその衝撃で壁走りは出来なくなったけど…もうビビ王女は掴んだ!落下の衝撃くらい気合いで和らげてみせる!!

 

「イリスさん!!」

 

「ビビ王女…!泣いてる場合じゃないでしょ!!あのワニ野郎に何言われようと…あなたは立派だよ!こんな所で死ねない、必ず生きて争いを止めなきゃならないの!!」

 

「!!…ええ!ごめんなさい…私、…!」

 

 

「クロコダイル〜〜〜!!!!!」

 

「っルフィ!」

 

落下に備えようと色々倍加していた時、ルフィが大きな鳥に乗って空からやってきた。

その鳥は物凄い速度で私達の元に飛来し、乗ってたルフィが落ちる私達を受け止める。

 

「ふうっ!間に合った!!」

 

「ルフィ!無事だったんだね、助かったよ!流石に落ちたら痛かったかも」

 

「ししし、おう!」

 

ビビ王女への衝撃もゼロには出来なかっただろうし…何なら私は死んでたかも…、う、想像したら怖くなってきた。

 

「イリスさん…ルフィさん、ペル…!広場の爆破まで時間がないの!もうみんな…やられちゃったし……!私の“声”はもう…誰にも届かない!このままじゃ国が……んっ!」

 

「聞こえてるよ、私に… 仲間(みんな)に!」

 

ビビ王女の唇を人差し指で押さえ付けて言葉を紡ぐ。

その言葉に静かに涙を流して私を抱き締めるビビ王女の背中をそっと撫でた。

……あれ、結構いい雰囲気。

 

「ちょっとルフィと鳥さん邪魔じゃない?今なら口説けそうなんだよね」

 

「お前助けてやったのにそれはねェだろ!?」

 

「ビビ様を口説く!?何を考えているのだ!!」

 

そんな事を言いながら、下まで降りた私達は鳥さんの背中から降りて辺りを見渡す。

…争いもかなり激しくなってる、さっき私が見たときよりも更に…そしてこれからももっとだ。

 

「ルフィ…上に行くの?」

 

「ああ、ワニをぶっ飛ばしてくる!」

 

「ルフィ、負けたの?」

 

「あ、ああ、一回負けたんだ、わりィ。…でも次は」

 

「なら次は私の番だよね!!!!?」

 

「何ィ!?」

 

がびーんと目を飛び出させて驚くルフィ。だって負けたら順番としては次私じゃん!私だってあいつを許さないんだから、ルフィばっかりずるい!

 

「あああ〜〜っ!!ルフィが生きてるぞ〜〜!!」

 

「トニー君!」

 

「何ィイ!?ルフィ!?ビビもイリスも居るじゃねェか!な!!な!!だから言っただろ!おれにはわがっでだ!!」

 

「分かってたって奴のツラかよ…」

 

チョッパーにウソップにサンジ!!…ってウソップ全身包帯だらけだけど!?大丈夫!!?

 

「ウソップ〜〜っ!!」

 

「ホゲェ!」

 

そこにウソップの後頭部を殴りながらナミさんも現れた。ゾロも一緒か…!ゾロは相変わらず傷だらけだね!

 

「ってナミさんんんん!!?傷だらけじゃん!!うわぁああ!!足が!足から血が…誰か、医者、チョッパー医者を呼んで!!」

 

「おれが医者だ!!」

 

「こら!」

 

ガツン、とナミさんの鉄拳を貰いました。痛い。

 

「こんな物傷のうちに入らないわ。そんな事より、私もオフィサーエージェントの一角を倒したって事実を褒めてくれてもいいんじゃないの?」

 

「!…そ、うだよね!流石ナミさん!傷付いた姿も凛々しくて素敵だーー!!」

 

ぎゅ、と抱き締めるとそれでいいのよ、と頭を撫でられた。うー…でも心配だったから…本当に良かった…。

 

「じゃあな!」

 

「あっ!!!?ルフィ!!待てーーーッ!!」

 

その隙をついてルフィが上へと“ロケット”で飛んで行った。

私もそれを追いかけて壁を全力で駆け上がる。さっき出来たんだから今回も出来て当然でしょ!!おのれルフィ…!次は私だってのに…!!

 

 

上へ辿り着くのにそう時間は掛からず、到着してすぐルフィを探せば彼は既にクロコダイルと戦闘していた。

もう!先を越されちゃうと手出し出来ないじゃん…!!

 

「ゴムゴムの(ピストル)!!」

 

「濡れていようがいまいが…俺の掌はあらゆる水分を吸収できる…!」

 

「しまった!その能力があった!!」

 

私のアドバイス通りに手を水で濡らして攻撃するルフィだが、伸びた腕を掴まれて水分を取られていた。

その後も攻防は続き、ルフィの攻撃がクロコダイルに直撃した隙をついて彼は背負った水樽を直接クロコダイルにかけようとクロコダイル目掛けて放り投げる。

 

「水浸しになれっ!!」

 

「そりゃ、当然の狙いだろう。“砂嵐”(サーブルス)

 

だけどクロコダイルは、ルフィが投げた水樽に右手から発生させた小さな砂嵐をぶつけて跳ね返した。

ルフィは慌てて水樽を掴む。あのワニ野郎を相手取ろうと思えば水が無ければどうしようも無いから…あの水樽が手元に無ければルフィは戦えない。

 

「その樽がなきゃあ結局何も出来ねェって訳だ…、これじゃ初戦と何も変わらねェじゃねェか!!クハハハハ!!」

 

「……、お前の言う通りだ…!!なら、これならどうだ!!」

 

「は…っ?」

 

「……正気か、てめェ……」

 

端から見てるだけの私も、正面切って戦ってるクロコダイルさえも素っ頓狂な声をあげる。

だってさ、まさか…水樽に入ってる水を全部飲み干すとは思わないじゃん?お腹凄い膨れてるけど…戦えるの?

 

「水ルフィ!…ゲップ」

 

「アハハ!」

 

オールサンデーは笑ってるし…。笑ってる顔可愛いな。嫁に来ないかな。

 

「フザケてんじゃねェぞ小僧ォ!!」

 

「!」

 

そんなルフィに対し、クロコダイルが青筋を浮かべながら突撃する。

ルフィの俊敏さは完全に無くなってしまっているからこのままだと奴の攻撃に直撃してしまうのだが、ルフィは腹からポンプの様に喉まで水を持ち上げて目の前まで迫っていたクロコダイルに水玉を喰らわせた。

 

「誰がフザけてるんだ!!?おれはいつでもまじめだぞ!!ゴムゴムの…!バズーカ!!」

 

「ぐっ!!!」

 

水に濡れたクロコダイルの腹に必殺技を決めて、後方へ吹き飛ばす。

 

「信じられん……!」

 

何かよくわかんないおじさんが驚いた様にその光景を見ていた。まあクロコダイルを相手に普通に戦ってるもんねルフィ。七武海だよ相手は。

 

「感心してる場合じゃないでしょ、Mr.コブラ。あなたは私を案内しなさい、歴史の本文(ポーネグリフ)の記される場所へ!」

 

おじさんとオールサンデーが何か話してるけど…ぽーねぐりふって何??

 

「ふふ、あなた達の命運も…ここまでかしらね、もう時間がないわ」

 

「さっさと行け、ニコ・ロビン。てめェも干上がりたくなけりゃあな…俺ァもう…相当キてるぜ…!」

 

「ええ…従います」

 

ニコ・ロビン?オールサンデーの本名か?

 

ルフィに吹き飛ばされて相当怒ってるクロコダイルに言われ、ロビンと呼ばれた美人はおじさんを連れてこの場を去った。ぽーねぐりふってとこに行ったんだっけ、追った方がいい…よね?

 

「ルフィ!私はあの嫁を追う!だからクロコダイルは任せるよ、次負けたら今度こそ私が貰うからね!」

 

「おう!もう負けねェ!」

 

その言葉を聞いて、私も駆け出した。早くしないと見失っちゃうよ、どこにその何ちゃらぐりふがあるのかなんて知らないんだから!

 

 


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