ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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47『女好きvsクロコダイル』

「はぁっ…はぁっ。ーーーーーーー迷った!!」

 

私がロビンたそを追いかけた時には、既におじさんを連れて何処かに消えていた。

それから数10分探し回ってる訳だけど、こんな広い都の何処に居るのかなんてわかんないし!!あーーーどこーーー!!!

 

「こっちかーー!!違うか!じゃあこっちは!?ちがーーう!!」

 

行き止まり!行き止まり!!行き止まり!!!

 

もう勘弁してよこの首都さんやい!別に方向音痴じゃないけど、全く知らない土地だから何処行けばいいのかわかんないよ!

 

「こっちはどうだぁーー!!」

 

「っ…あ、女好き…!?」

 

「お…!?まさか、たしぎちゃん!?ってどうしたのその怪我、血が…!足の骨も…」

 

広い道に出た!と思ったら、大勢の海軍とたしぎちゃんが道のど真ん中で倒れていた。しかも身体中かなり酷い怪我をしている様だ…、誰が私の嫁(予定)にこんな事を…!!

 

「女好き、あなたも…クロコダイルを追っているのですか…」

 

「え?いや、私はおじさんとロビンたそを。…もしかしてクロコダイルもここ通ったの!?」

 

となるとルフィとの戦いはどうなったの…!?

 

「麦わらがクロコダイルを追って…葬祭殿の方へ…!あなたもそこへ向かって下さい…、私達では、奴を止められない…っ!!」

 

ガン!と地面を強く殴るたしぎちゃん。その表情や言葉からは強い悔しさや無念の気持ちが痛い程に伝わってくる。

海軍である彼女が、海賊の私にこんな事を頼むのは……とんでもない程の覚悟の上での事だろう。

それに彼女は初めて会った時もかなり正義感を持っていた。私に海賊を止めてくれと言うのは…屈辱の筈だ。

 

「……たしぎちゃん、あなたは早くそこの海兵を起こして…“広場”へ!暴動が激化してるの!たしぎちゃん達が行かないと犠牲者が増え続けるよ!!」

 

「…っ!分かっています!だったら女好き、あなたも、急いで葬祭殿へ!」

 

「それこそ分かってるよ!あと…私の名前はイリスだから!そう呼んでね!!そんでこの前したお茶の約束も忘れないでね!!ね!!」

 

は…、?と目を丸くするたしぎちゃんに有無を言わさず走り去った。

目指すはたしぎちゃんの指さしてた方向にある“葬祭殿”とか言うよくわからんとこ!

 

「…ん!?」

 

葬祭殿まで急いで走ってる途中、今度は海軍ではなく海賊…それも我らが船長ルフィが道に倒れているのを見つけた。

急いで駆け寄って状態を確認すると、クロコダイルとの度重なる戦闘で出来た傷などが身体のあちこちにあり…本人も気絶していた。

 

「生きてるなら、ルフィだし何とかなるか…よし、起こそう」

 

ニヤリ、と笑ってルフィの頰を連続でビンタする。ゴム人間だから痛くないでしょ!ほらほらァ!!

 

「ぶへっ!な、なんだ!?おれ顔腫れてねェか!?…お、イリス!!」

 

「あ、起きた?」

 

ニコ、といい笑顔でルフィを見ると、彼は分かりやすく顔を引きつらせた。

 

「ルフィ、負けた?」

 

「うぐっ…」

 

「負けた???」

 

「ま、…けた…!!でもイリス、次は必ずかーーー」

 

「うるさーーい!!私もマリアンヌとか、ロビンたそとかビビ王女の恨みを晴らしたりとか、色々とあんの!これで私が負けたらルフィがやってよ!ね!!?」

 

ルフィが理解出来ない程の早口で勢いよく会話を終わらせる。

次こそは私の番、クロコダイルは私がぶっ飛ばす!!

 

「ルフィは広場に戻って!ビビ王女やナミさん達の手伝い!ほら行って!」

 

「く、くそ〜〜っ!!じゃあ絶対に負けんじゃねェぞ!」

 

「ルフィじゃあるまいし、負けないよ!!」

 

ニッ、と嫌味も入れて笑うと、彼も同じく笑って私に背を向けて走っていった。

さて…私も急ぐか!

 

「って…絶対ここじゃん!」

 

ルフィと別れた後に少し走れば、道の外れに不自然な下り階段を発見した。

明らかに隠し階段なんだけど、それをついさっき開けたって雰囲気がある。

 

…この下に、クロコダイルが居るのか…!!

 

「待ってろ…!クロコダイル!!」

 

……あ!クロコダイルと戦う事想定してないから、水持ってない!!?

…取りに帰ってる暇なんてないし、このまま行くしかない…!まぁいいか…こうなったらアレ(・・)で…!

 

急いで階段を駆け下りれば、だだっ広い地下空間に出た。

あーもう!また広い空間!?ここからクロコダイルを探すのも骨がいるなぁ!

 

「真っ直ぐ行ってみよう…!とにかく今はそれしか…」

 

ただひたすらに真っ直ぐ走る。

多分、そんなに入り組んでもないでしょ、この空間!!

 

「…っ!あれは…!!!」

 

ビンゴだ。真っ直ぐ走れば、その先にクロコダイルの姿が見えた。

その足元にはロビンが倒れていて、胸から血を流しているのが確認出来る。

 

「クロコダイルーーーーッ!!!!」

 

「…てめェか、女好き。クッハハ、てめェらのバカな船長なら…さっき殺したぜ?」

 

「バカはそっちだよバーカ!ルフィなら上で元気にしてるよ!きちんと始末したのを確認しないのはあなたの悪い癖なんじゃない?」

 

クロコダイルの前へ立ち、ロビンを庇う様に構える。

近くにはあのおじさんもいて、何かしようとしていたのか柱に手を置いていたのを私が来たことでゆっくり離した。

 

「威勢が良いのは悪い事じゃあねェ。だが…水も無しにどう俺と戦う気だ?さっきの様に吐き出してみるか?」

 

「それもありかも…ね!」

 

駆け出して拳を振りかぶる。クロコダイルはそんな私を心底つまらなさそうに見て、……私の拳に殴り飛ばされた。

 

「がはァ…っ!?な、何だと…!?」

 

「汗、倍加!!手汗べっちょべちょモード!」

 

にひひ、と拳を握ったり開いたりして挑発する。

何も水だけじゃないもんね、砂が固まるのは!!なんなら靴も脱いでるから蹴り技も問題ないよッ!

 

「はぁ!!」

 

再度距離を詰めて殴りかかる。クロコダイルは私の拳を左腕で弾いて右手に砂嵐を発生させると、それを私にぶつけて吹き飛ばした。

 

「うわっ!?ぐ、…!」

 

地面に背中から叩きつけられて息が一瞬出来なくなった。あの砂嵐、厄介だな…!!

 

「女好き、例えてめェがどれほど出来ようが…俺の弱点を知っていようが、俺には勝てねェぜ」

 

「はん!言うだけならタダだしね、好きなだけ言ってなよ!神背・倍加(ヒューマインクリース)!!」

 

2人に分裂した私と“私”が、互いの位置を連続で入れ替えながらクロコダイルに走る。シャッフル!本物がわかるかな?

 

神背・倍加(ヒューマインクリース)…分身にいくらダメージを与えても意味はなく、本体に少しでも攻撃する事で解除可能。…だったか?」

 

「な…っ!?」

 

「言っただろう、てめェが俺の弱点の1つや2つを知った所で…戦局が変わる事は万に一つもあり得ねェのさ。砂嵐(サーブルス)

 

クロコダイルは的確に私を狙って砂嵐を当ててきた。倍加時点で既に分身を見ておらず、本体の私だけを狙っていたからシャッフルなんてした所で意味はなかったのか…。

いや…!そんな事よりも、何で奴が私の技を……!?

 

「だったら…!!」

 

攻撃をされた事で効果が切れた神背・倍加(ヒューマインクリース)だが、私は再び距離を取って小太刀を構え、その刀身に汗水を垂らした。やばい、戦闘終わったら風呂入らないとまずいよこれ、嫁の前に出れないわ。

 

10倍灰(じゅうばいばい)!!去羅(さら)…」

 

「飛ぶ斬撃、知ってれば対処のしようなど幾らでもある。砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)!」

 

「っぐ!!」

 

咄嗟に横へ飛んで避ければ、クロコダイルの放った砂の斬撃は地をも綺麗にパックリと斬り裂いていた。

 

「な、何で…!」

 

「生憎と、てめェの情報なら幾らでもあるぜ?そろそろやらねェとまずいんじゃねェのか?全・倍加(オールインクリース)とやらもな」

 

「…ッ」

 

何でここまで私の情報がこいつに漏れてるの…!?する事為すこと全て手の内がバレてる!

 

「クハハハハ…!何も分からねェって顔だが…女好き、本当に何も分からねェか?」

 

何を言ってるの…?そりゃ何も分からないでしょ、自分の事を全て把握してるとか…。

 

「まさか、ストーカー?」

 

「冗談はてめェの容姿を見てから言うんだな、ガキ。… 大地の(グラウンド)…」

 

「っ!?」

 

クロコダイルが地面に右手を置くと、周りが一瞬にして砂に変わっていく。

あの右手…、相当厄介だね…!

 

宝刀(スパーダ)!!」

 

「がっ…!?」

 

周りの砂の中から突如として砂の刃が私を襲う。1つだけならまだしも、前後左右からの計4つもの刃だ。

見えていた前左右を避ける為に後ろへ飛び退いた時、私の背中を斬り裂いたのだ。

 

「ぐ……、手の内がバレてるのなら…!!!全・倍加(オールインクリース)!からの… 10倍灰(じゅうばいばい)(ピストル)!!」

 

「ッ…ち、そいつァ…!!」

 

「どう?今考えたんだから、知らないでしょ!」

 

ルフィと同じように…とは行かなくとも、倍加で腕を伸ばしてクロコダイルを殴る。

そして、ルフィとは違って私の腕はゴムのように戻ってくる事はない…伸びたら伸びっぱなしだ!!

 

10倍灰(じゅうばいばい)…!鞭ィ!!」

 

腕を大きく上に持ち上げて下に振り下ろす。

倍加で長く、固くもしてある私の両腕がクロコダイルに直撃して地面へ叩きつけた。

 

砂嵐(サーブルス)…!」

 

「っ!」

 

その言葉に慌てて腕を元に戻し距離を取ると、クロコダイルは砂嵐を引っ込めて自身を砂に変え肉薄してきた。くそ、その砂嵐はフェイントか!!

 

「さっさと死ね、女好き!」

 

「死ねるか…!あなたを倒すまでは!!」

 

そのまま振り下ろすフックに突き刺さらない様に、私はフックの中に腕を通して受け止めた。

フックに腕を引っ掛けたまま、クロコダイルの顔面目掛けて拳を振るうがそれは砂の身体を上手く駆使して躱される。

 

全・倍加(オールインクリース)は…3分間で効果が切れる。そうだろう?なら俺はわざわざてめェと戦ってやる必要もねェ訳だ」

 

「は…!?逃げるの!?」

 

「クハハハハ!!俺がてめェの土台で戦ってやる必要が何処にある?楽に勝てるならその方法を選ぶのは誰だってそうだろう」

 

それは…そうだけど…!!

 

三日月形砂丘(バルハン)!!」

 

クロコダイルが振るった右腕が三日月の形をした砂を描き私の体を包む。

それだけで触れた部分の水分が吸い取られ干上がりそうになったので慌てて水分を倍加させるが、クロコダイルはその隙をついて私から距離を取った。

 

砂嵐(サーブルス)「重」(ペサード)!」

 

「うっぐ…!」

 

右手から発生させた砂嵐が私に襲いかかる。その威力は今までの砂嵐とは桁が違い大規模な物だった。

…きっと、ユバを襲った砂嵐ってのはこれの事だろう。

 

何とか踏ん張って吹き飛ばされないようにするが、ロビンたそはおじさんの近くに飛ばされてしまった。

…あの辺なら、逆に巻き込まれなくて済みそうだ。

 

「どうした女好き、このまま砂嵐に呑まれて3分待つか?」

 

「は、はは…!ふざけないで…!!」

 

畜生…!私の最大倍率じゃ、この砂嵐を乗り越えられない…!このままじゃ本当にあいつの言う通り、時間切れまで粘られる…!!

 

「ッ…ぁ」

 

そんなギリギリの状態でいつまでも耐えられる筈もなく、私は遂に巨大な砂嵐に呑まれて遥か高く吹き飛ばされた。

天辺の岩盤に激突して止まり、下へと落ちていく。

 

「終わりだ…。砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)!」

 

「が…っ、ああああッ!!!?」

 

落下中の私に向かって飛来した圧縮された砂の刃は、10倍の防御壁など容易く斬り裂いて私の肩から腰まで一文字に傷跡を刻んだ。

空中で後方に飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がって壁にぶつかり止まる。最大倍加で自然治癒を促すも、そもそも痛みが尋常じゃなくて能力が上手く使えない。

 

「っ…は、ふぅ…」

 

「クッハッハッハ!!虫の息じゃねェか女好き…、麦わらが生きていたのなら、まだ素直に任せていた方が良かったんじゃねェのか?奴より弱いてめェが俺に勝てる訳がねェだろう」

 

「…っ」

 

…確かに、ルフィなら……。

でも、私だって…こいつには負けたくない…!!

 

「俺は今までにてめェの様な奴を幾らでも見てきたぜ。身の程を弁えず…“誰かの”為だと言い聞かせ無謀にも格上に挑む馬鹿をな。そんな奴はこの海には幾らでもいる、その他大勢の雑魚としてな」

 

「う、るさい!!!」

 

コツコツと私の前まで歩いてきたクロコダイルの不意を突く様にバッと立ち上がり、アッパーを狙う。

だがクロコダイルはその拳に見向きもせずニヤリと口角を上げた。

 

「あ……」

 

「気付いたか?…てめェの負けだぜ、女好き…!」

 

拳はクロコダイルの顎を捉える事なく、すり抜けた訳でもなく……ただ届かなかった(・・・・・・)

それは無慈悲な身長の差。そして、身長に差が出来てしまった最大の理由が……。

 

全・倍加(オールインクリース)が……切れ、た……」

 

体の硬さ、力、五感、汗…何をやってもうんともすんとも言わない…倍加しない…!!

 

「…く、だったら、この身1つで!!」

 

「俺ァ、身の程を弁えろと言った筈だぜ」

 

「ッぐ、ごフぁ…!」

 

振りあげた拳がクロコダイルに届く前に、奴の蹴りが私の腹に刺さりすぐ後ろの壁にまたも激突した。

ずるずると壁を背に崩れ落ち、乱れる息を何とか整えようと呼吸を荒く繰り返す。

 

「能力ありきのてめェの戦法がこの俺には通用しなかった。能力もねェただのガキに成り下がったてめェに何が出来る?」

 

「まだ…!負けてない!!」

 

「クハハハ…!気概だけは認めてやろう、だがてめェもわかった筈だぜ、気持ちだけではどうにもならねェ“壁”って奴をよ」

 

「…っるさい、ぐ、…私は、…私を信じてくれたルフィの為にも…私を待つ嫁の為にも…!!負ける訳には…!!」

 

「ク…、ハッハッハ…!クッハッハッハ!ハーッハッハッハッハ!!!!」

 

突然に笑い出したクロコダイルをキッと睨めば、奴は右手で顔を覆って尚もくつくつと笑いを堪えきれていない様だった。

 

「何が、おかしいの…!」

 

「丁度いい…“来たようだ”。教えてやろう、何故俺がてめェの能力を全て把握していたのか…その全てをな。全てを知った時…てめェは何もかもがバカバカしくなるだろうさ」

 

「…!どういう…」

 

「本当は気が付いてる筈だぜ、女好き。てめェの様な名も知れねェ海賊団の一団員でしかねェ奴の能力を、七武海であるこの俺が普通なら把握している筈がねェだろう。……てめェらの海賊船に、情報提供者(スパイ)でも乗ってねェ限り…な」

 

「ふ…っ、ざけるなっ…!!私達の船に…、麦わらの一味にそんな人ぉ…!!」

 

いるわけがない…!そんなの…、だって…!!

 

「おかしいとは思わなかったか?そいつ(・・・)が船に乗り込んだ途端、我が社の追手がてめェらを見つける速度が上がった事に」

 

……!!

…違う…!コイツはただ適当言ってるだけの筈なんだ!気にするな…気にするな!!

 

「そもそも、てめェらの船に乗り込んだ理由が…普通ならあり得ねェ程強引だった事に。一味に誘われてねェのに、船に乗った奴が居ただろう」

 

「…っ!もう、やめてよ!!私は信じない!!私達の仲間にスパイなんて………ぁ」

 

頭の中が、目の前が真っ白になったような錯覚に陥る。

いつの間にかクロコダイルの横に立ち、いつもの様に薄ら笑いを浮かべながら私を見下ろす彼女(・・)がそこに居たからだ。

 

ああーーー今思えば、レインディナーズの地下通路で…甘いチョコの様な匂いがしたのは、きっと彼女のーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーキャハっ」

 


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