ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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今回はちょっと長いです。


49『女好き、これはきっと、愛ある印』

「…っ」

 

暗闇から瞼を持ち上げる事で抜け出した私は、まず目だけを動かして状況を確認する。

ベッドの上…か、ふかふかだ…カヤの時もこんな事あったっけ。

 

という事はナミさん達がここまで運んでくれたんだろうな、広い部屋だし…もしかしたらビビ王女が宮殿の一室を貸してくれたりしたのかな?

 

「…あっ!ミキータは…っ!!?」

 

ガバ!と綺麗に被せてくれていた布団を取っ払って上半身を起こす。

あがが…!な、何…?身体がめっちゃ痛い…凄く痛い…!

 

「…こら、急に体動かしちゃダメよ」

 

「ッ!」

 

私の横に設置されてあるベッドから聞こえる声にぐるっと首を向ける。

そこには、いつもの丈の短いワンピースとは違い病人服を身に纏ったミキータが私と同じく上半身を起こして笑っていた。

 

「ミキータ…!お、お腹の傷は…毒は!?何ともない!?」

 

「キャハッ、何ともはあるわね、なんたって2日程心臓が止まってたみたいなのよ、私」

 

「ええっ!!!?ミキータ、死んじゃったのぉ!?」

 

「ちょっとイリスちゃんは落ち着いた方が良いと思うわ」

 

とまぁ、峠を乗り越えミキータはチョッパー達の尽力により急死に一生を得たという訳だ。本当に…良かった…!

普通なら2日も心肺停止って死んでるよ…奇跡…!!チョッパーありがとう!!

 

「……ん?2日?」

 

「ええ、今日であの日から3日目ね」

 

「……なぬ!?」

 

どう考えてもミキータの方が重傷だったのに、私の方がぐっすり寝ていたって事!!?

 

「イリスちゃんは軽く考えてそうだけど…イリスちゃんの身体も相当危険な状態だったそうよ」

 

「…そっか」

 

…私でも何が起きたのか分からなかったけど…間違いなくあの時、私は自分の限界を越えた。神背(ヒューマ)だって2人増やせたし。

どうすればああなるのかは全く分かんないけど…とにかくあの時の私は尋常じゃない力を得てた筈だ。その反動が一気に来たって事かもしれない。今じゃ背丈も髪も元に戻ってるし…ティアラも無いし。

 

「でも、本当に良かったよ…ミキータが無事で」

 

私が笑顔でそう言えば、ミキータは少し表情に影を落とす。

 

「…イリスちゃんは、本当に私を許してくれるの?」

 

「ああ、そういうの良いよミキータ。つまんない」

 

「え?」

 

よっこらせ、と年寄りの様にベッドから抜けて彼女のベッドに座る。そのままミキータの胸にぱふ、と顔を落とした。

 

「許すとか、許さないとか…いやね、怒ってないから。だってミキータは私の嫁でしょ?…それにさ、それを言うならミキータが私を許せるの?私はミキータを最後まで信じ切れなかったんだよ?最低だとは思わないの?」

 

「……キャハハ、本当ね…つまんないわ。…私も怒ってないもの、イリスちゃん」

 

「ふふ…でしょ?」

 

私の頭をぎゅっと抱きしめその胸に押しつけてくるミキータ。

…あ、何も考えずにやったけどこれあかん、むらむらする。

 

「改めて…誓わせて。私はあなたの嫁になりたい、みんなの仲間になりたい…大好き…イリスちゃん」

 

「うん…っ、とっくに嫁だよ…!仲間だよ!」

 

ミキータの左腕に巻かれた包帯を掴んで引き寄せ、キスをした。初めて強引にした時よりも深く…ミキータを強く求めるように。

…だってむらむらしてますから、仕方ないね。

 

「……あらお2人共、随分お盛んの様ね」

 

「「ぶはっ!?」」

 

急に背後から聞こえたナミさんの声に私達は慌てて顔を離す。

 

「な、ななナミさん!あれ、ビビ王女も!お、おはよう!」

 

「ええおはよう。所で続きはしないのかしら?私の事は気にしなくていいわよ?」

 

「ええ!?私は気にするわよ、ちょっとミキータ、じゃあいっかみたいに続けようとしないで!」

 

ビビ王女が私を抱き上げてミキータから離した。ミキータは少し不満げな顔をしたが直ぐにニヤリと笑って言う。

 

「だったらビビもすればいいじゃない、キ・ス♪」

 

「んな…!」

 

「なんたってアラバスタを救った英雄よ?王女から何の謝礼も出ないって事はないでしょ?」

 

そこにナミさんの追撃も決まり、ビビ王女は顔を真っ赤に染め上げた。

 

「う、ううう!だったら!イリスさん、ビビ王女って呼ぶのやめて!あなたの嫁になるなら…立場は関係ないでしょ!?」

 

「思い切ったじゃないビビ」

 

うんうんと満足げに頷くナミさんだが、何だコレ?美女3人に囲まれて…しかもみんな私の嫁?私は死ぬの?前世でどんな徳を積んだんだ?いやただの女子高生でしたが?

 

「あー……び、ビビ。…その、キス…」

 

「ああもう!こんなの我慢ならないわ!!」

 

「えっ!?ちょぉ…んっ!!?」

 

まさかのビビ王女……ビビからの強引なキスに目を見開く。あるぇ?何で私されてる側なの??

しかも深い方だし!ビビノリノリだし、ちょ、さっきむらむらしたばっか…まずい、これは非常にまずいーーーっ!!

 

「…そういえば、あの日から碌に夜の相手してくれないじゃない。せっかくだから今してくれる?1人も3人も変わんないわよ」

 

「ぷは…っ、な、ナミさんちょっと待って…今はまだ夜じゃないし…!それに幾らハーレム女王目指してるからってこんな同時に相手なんて…ちょ、ミキータまで何でそんなキラキラしてるの…ちょっと…だめ…あっ、アッーーーーーーーー!!!!!」

 

 

…私は、ハーレム女王を目指している筈でしたが、結果として私は3人の獣に弄ばれる子羊になってしまったようです。

 

あれ……どうしてこうなった。

それにミキータ…傷は大丈夫なの…??

 

 

 

 

***

 

 

 

 

カポーン

 

 

「あー、気持ちーぃ…」

 

「ほんとねぇ…」

 

「キャハ、いいわねェ…私も全身浸かってみたいわ」

 

現在、私とナミさん達は揃って王の宮殿の大浴場にやってきていた。ミキータは足だけしか浸けてないけど。

やっぱり私達が寝てた所は宮殿の一室だった様で、王様の命令でこっそり海賊である私達を匿ってくれていたのだ。

王様って誰だろう、私見たことないんだよね…。ビビのお父様になる訳だから…やっぱり挨拶とか?いるよね??

 

「…そういえば、ロビンはどうなったの?」

 

「ロビン?…もしかして、増えたあんたが抱いてた女?それならあんたが気を失った後何も言わずに何処か行ったわ。なんか思い詰めた顔だったけど…」

 

そっか…まぁ、無事ならいいや。

 

ちなみに現在、私達には知る由もない事だが男湯の方では女湯を覗くか覗かないかで揉めていた。

王様やサンジは覗きたがったが、他のみんなが全力で止めたそうだ。理由としては

「イリスに殺されちまうぞ、まじで」

 

 

 

「…私達、今夜にでもここ出ようかと思うの」

 

「え、そなの?」

 

「あんたもミキータも起きたからね、ここに居る理由がないじゃない。港には多分海軍も構えてる、船もそろそろ危ないわ」

 

「…そうよね。みんな海賊だもん、この国にいつまでも留まってなんておけないわよね」

 

「ま…そういう事。…ビビは、これからどうするの?」

 

ナミさんの問いに、ビビは直ぐに答えを出すことが出来なかった。

…私としては、そりゃ勿論一緒に行きたいんだけど…。

 

「かなり悩んでるようね、アラバスタの姫様」

 

「そりゃね…なんたって今後の人生が……ってえええええ!!?マリアンヌ!!?」

 

「へっ?ミス・ゴールデンウィーク!?」

 

いつの間にか私の隣で湯船に浸かってたマリアンヌに皆が目を飛び出させて驚く。いやだって彼女と別れたのリトルガーデンだからね!?ここアラバスタだけど!!?

 

「些細な事はどうでもいいじゃない。…あなた、本当に社長(ボス)…いや、クロコダイルを倒したみたいね」

 

「些細かな?ここ宮殿内の筈だけどなぁ?…ま、いっか…。うん、倒したけど…」

 

「なら私は約束通りあなたの嫁よ、よろしくね」

 

「あっ…確かに約束したよね!まさか本当に来てくれるなんて…感激だよ!!」

 

やったー!!マリアンヌも嫁になってくれた!!やった!

 

「だけど一緒に行く事は出来ないわ。私には夢がある…そこのレモンと違って私は自分の夢を放棄してまであなたについて行く程惚れ込んでないもの」

 

「キャハハ、レモンって私の事かしら?」

 

「…それを言いに来ただけ。ただ、今後私の所へ寄る事があったのなら…こんな体で面白味はないかもしれないけれど好きにさせてあげるわ」

 

つまり、する事してもいいってこと?

 

「じゃあ、それだけ。またね、イリス」

 

「あ、名前を…。ってマリアンヌ、もう行くの!?」

 

「ええ、私は嫁の中でも比較的立場が弱いから…その3人に囲まれると生きた心地がしないのよ」

 

え、そんなヒエラルキーあるの?

と思ってナミさん達を見るとないない、と首を振っていた。

もう一度マリアンヌの方へ顔を向ければ、既にその姿は無かった…。

 

 

 

***

 

 

 

「ここは?」

 

「寝室、私のね」

 

…そ、そうですか。

というわけでなんと今、まさかのビビの寝室へと通されてる訳であります。

昼にあんな事をしておいて今更寝室に招かれるくらいって思うかもしれないけど…それとこれとは違うから!

 

「どうしたの?あ、もしかして…決まった?」

 

「…ううん、それは、まだ」

 

私達についてきてくれるのか、どうか…。

ビビは確かにまだ迷っているような表情を浮かべている。

 

「ただ、改めてお礼を言わなくちゃと思って。この国の真の英雄ですもの、ね?」

 

「…いやー、そうかしこまって言われると…照れるよ」

 

英雄なんてガラじゃないし…私は女王を目指してるんだから!ヒーローよりクイーンが良い!

 

「本当に、ありがとう…!これは凄い事よ、本来なら私の体1つなんかじゃ足らないくらいの大恩なんだから!」

 

そんな恩があってたまるか!ビビの体はそんな安くない!!

 

「そりゃ…ビビは恩を感じるかもしれないけど、私はただ許さない奴をぶっ飛ばしただけだし…下心もあったからね。そんな大それたものなんかじゃないよ、はは」

 

「そう?前々から思ってたけど…イリスさんはもう少し積極的になってもいいと思うけど…」

 

そんな事を言うビビを見て、軽く吹き出してしまった。

途端に頰を赤く染めてぶんぶん手の平を振るビビだが、笑ったのは別にビビの言ってることが間違ってるからじゃない。カヤと同じ事を言っているのが面白かっただけだ。

 

「私は、自分では十分に積極的だって思ってるんだけど…。なんで?」

 

「…だって、我慢している時があるじゃない。今だって…折角2人きりなのに何もしないの?」

 

「何もしないのって…さっき存分に…」

 

「あれはまた違うわ。そうでしょ?」

 

……ビビは核心を突いていると思っているのかもしれないけれど…私は本当に心当たりがない。

我慢をしているつもりはなく、ただヘタレているだけの筈だ。

……そうだ、それ以外であっちゃいけない。

 

 

『…また、逃げるの?』

 

 

「ーーーーえ」

 

不意に聞こえた声に振り向いても、そこには無地の真っ白な壁が一面に広がっているだけだった。

…あの声…そうだ、ユバで聞いた、あの…。

 

「イリスさん?」

 

「………え?あ、ああ…ごめん、何でもないよ!」

 

軽く笑って誤魔化すが、ビビは更に怪訝そうに眉を潜めた。

 

「…あー!イリスさん、目にゴミが…!早く閉じて!」

 

「えっ!?な、なになに!?こう…!?……ッ!」

 

「っ…」

 

大声に反射的に目を閉じれば、直後に唇へと恐ろしく柔らかいなにかが当たる感触がした。

鼻腔をくすぐる良い香りが目の前に広がり、思わず閉じた目を開ける。

 

「……っ、ん」

 

…分かってはいたけど、それはやはりビビが私にキスをしてきた感触だった。

見た目の割にはかなり大胆な性格で、それでいて誰よりも他者を気にかける…それは私とはまた違った“王”としての器だ。

そんな彼女の唇が、私を強く求めて吸い付いてくる。……私は、手を出すべきだ。今ビビはそれを望んでいる。驕りじゃなくそうだと確信出来る状況じゃないか。

 

「ん……、イリスさん。……私は、貴方なら……」

 

「ビビ…」

 

ナミさんと初めてそういう行為をした時も、何故か内心で怯えている私がいたのを覚えている。

そしてそれは今も……。

 

「ビビ…!」

 

だけど…!!でも…!ビビの気持ちを受け止めてあげなくちゃいけない…!ここまでさせておいて、出来ませんだなんて…そんなの、言っちゃいけない…!!

 

私は、怯えるヘタレ(・・・)な自分を奮い立たせて…彼女の服に手を掛けたのだったーーーーーーー。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

夜ーーー、行為を終えて、再度ビビとお風呂に入ったりしていたらこんな時間になった。

今は客室にビビを含めた一味全員が揃っている。……くぅ、あんな事をしたばかりだからちょっと恥ずかしい。

 

「電伝虫?誰から?」

 

宮殿の係の人が、「ボンちゃん」って人から電話だと部屋へ電伝虫を持ってきた。

 

「ボンちゃん?誰?」

 

「ワナかも知んねェぞ、やめとけ」

 

「まぁでも、ただの電話だしね、出るだけ出たらいんじゃない」

 

ゾロは止めたが、私も言ったようにただの電話だし…問題ないだろう。

 

『モシモシィ!!?モッシィ!?がっーはっはっはっは!!あァちしよォ〜〜う!!あ!ち!シ〜〜!!!』

 

ガチャン。

 

「ナイスサンジ、今の電話は聞かなかった事にしよう」

 

「ああそれがいいぜ」

 

ジリリリリリリリリ!!

 

「何だよ!!」

 

「おうオカマか!?おれ達になんか用か?」

 

切ってもかけ直して来たので、船長であるルフィに任せた。

Mr.2…こんな時に一体なに?

 

『アンタ達の船…あちしが貰ったから!』

 

「あァん!?」

 

『その声は女好きねーい!アンタ強いじゃな〜い!あちしびっくらコイたわ!でも違うのよ!…あちし達、友達ジャナーイ?』

 

何だこいつ…と思いながらも話を聞いていけば、どうやらメリー号の停泊場所が海軍から見つかりそうだったから船をサンドラ河の上流へ移したという連絡だった。

つまり、そこまで来れば船を渡せるから急げという電話だったのだ。

 

「…信用出来るか?」

 

「いや、行くしかないよ、船を取られてるんだから」

 

「だな。そうと決まりゃさっさと仕度だ」

 

みんなして急いで準備をする。

今の話が本当なら、この島はかなりの数の海軍に囲まれてるんじゃない?

 

「ねぇ、みんな…私、どうしたらいい…?」

 

「…ビビ」

 

そんな時、ビビが不安そうに言った言葉にナミさんが反応する。

 

「よく聞いてビビ、「12時間」猶予をあげる。私達はサンドラ河で船を取り戻したら、明日の昼12時丁度!「東の港」に一度だけ(・・・・)船を寄せる!恐らく停泊は出来ないわ…。あんたがもし、私達と旅を続けたいのなら、その一瞬だけが船に乗るチャンス!その時は歓迎するわ!海賊だけどね……!!」

 

「…ビビ、さっきはありがと。………それじゃ、先行くね…っ!」

 

「あ、イリスちゃん、私も行くわ!…ビビ、これはあなたの人生よ。…ゆっくり考えなさい」

 

サンジが開けた窓から脱出する。ミキータも私に続いて窓から飛び降りた。

 

本当は、私はビビと共にこれからも旅をしたい。色んな冒険、色んな出来事…全て共に経験して、その…さっきみたいな事だって。

だけど、やっぱり最後に決めるのはビビだから。私が今本気で一緒に来てって言っちゃったら…ビビ本人の考えとは関係なしについて来てくれるかもしれない。

だから私は、一刻も早くここを離れたかった。

 

「あ、君たちは…!」

 

こっそり窓から脱出して宮殿を後にすると、そこには6頭の超カルガモ部隊が待ってくれていた。

…そっか、今夜には出るって言ったからビビが用意してくれてたのか。

すぐに後ろからルフィ達も出てきて、みんなでカルガモに乗って船へ駆ける。

 

 

流石はカルガモ部隊。かなりの速さで砂漠を駆け抜け、アルバーナからサンドラ河まで3時間で到着した。

 

「ん待っっっっってたわよアンタ達っ!!おシサシブリねいっ!!」

 

「うん久し振り、それでどうしてこの船に?」

 

カルガモ達にお礼を言って、船に乗り込みながら待っていたらしいMr.2に話しかける。

 

「アンタ達、今この島がドゥーいう状態にあるか知ってる?海軍船による完全フーサよ、封鎖っ!スワン1羽と逃げられない」

 

「…じゃあ、お前…海軍からゴーイングメリー号を守ってくれたのか……?」

 

「何故だ!!」

 

「何で!?」

 

「友達…だからよう」

 

キラーンと涙を光らせて親指を立てるMr.2ことボンちゃん。いや、それってつまりあなたもこの島から出られないだけじゃん…。

後ろを見ればボンちゃんの船もメリー号についてるし…まぁ本当にそんな封鎖をされてるなら、戦力が少しでも増えるのはありがたいけどね。

 

「なら早く行こう、ゆっくりしてたら向こうの守りがより強固になるよ」

 

「そうだな!よし、野郎共!船を出せ!東の港に行くぞォ!」

 

「「オオ!!」」

 

ここから下流まではそこそこ距離がある…それまでに海軍船との戦闘準備でも整えておこう。

 

「…キャハハ、みんな、私が裏切り者だったって知った筈なのにどうして今まで通りで居られるのかしら…つまんないから?」

 

「そりゃそうだよ、つまんないでしょ?だってミキータはもう…いや、最初から私達の仲間なんだから」

 

「…キャハハ。そうね…!」

 

裏切り者って言っても、完全に裏切った訳でもないし、私からすればそんなことはどうでもいいしね。

 

ナミさんがそんな私達を見て微笑んでいたが、とにかく可愛いって事だけは分かった。

 

 

 

そんなこんなで、私達を乗せた船はサンドラ河を抜け出した。

その頃にはもう陽も上がって、時刻は午前11時半と言った所か。

 

「やっぱ、海軍だらけだね」

 

「何がなんでも東の港には辿り着くぞ!野郎共気合いを入れろよ!」

 

完全封鎖というだけあって、どこから抜け出そうとしても必ず海軍船が存在してるってくらいには全方位に海軍船があった。

 

「ちょっとアンタ達!鉄の槍が飛んできてるわよう!!?」

 

「何ィ!?」

 

いきなりメリー号目掛けて黒い鉄の槍が何本も飛んできた。

いきなりの事で反応しきれず、その巨大な槍は何本もメリー号の船底を貫く。

 

「くっそ〜!砲弾で来い!跳ね返してやるのに!!」

 

「こんな攻撃…いつまでも耐えられないよね…!メリー号…これで少しはマシになった?」

 

メリー号に触れてその強度を倍加させる。

とは言えメリー号は当然木製だし…飛んできてるのは鉄の槍だ。私の強化じゃ結局時間の問題だ…!

 

「ボン・クレー様大変です!!“黒檻”です!」

 

「黒檻?」

 

「ウゲッ!“黒檻のヒナ”!この海域をナワバリとする本部大佐よう!厄介な奴が出てきたわ!さっさとトンズラぶっコクわよう!」

 

「ハッ!Mr.2・ボン・クレー様!!」

 

「ほらアンタ達も逃げるのよ!このまま進めば必ずやられるわよう!?」

 

「行きたいなら行ってよ。でも、私達はまだ行けない…あと、ヒナって女?」

 

「そんな事今関係なーいでしょう!?捕まるわよアンタ達!!」

 

ボンちゃんの言う事は最もだけど…私達にも譲れない物はある。

 

「仲間を迎えに行くんだ!」

 

「!!!!」

 

そんなルフィの言葉にボンちゃんは雷にでも打たれたような表情を浮かべた。

彼は逃げようとしていた動きをぴたりと止め、私達に向き直る。

 

「…ここで逃げるは、オカマに非ず!!命を賭けて友達(ダチ)を迎えに行く友達(ダチ)を…見捨てておめェら、明日食うメシが美味ェかよ!!…いいか野郎共及び麦ちゃんチーム…あちしの言う事、よォく聞きねい!」

 

覚悟を決めたかのような顔をしたボンちゃんが言ったのは、この場を切り抜けて私たちが東の港へ辿り着ける作戦だった。

…確かに、その方法なら確実に港まで迎えて…尚且つそこからこの包囲網を抜け出すことすら出来る…だけど、それはボンちゃん達を犠牲にして初めて成り立つ作戦だ。

 

「…行くわよぅ、アンタ達!!ここで咲かなきゃ、オカマが廃るわァ!!!」

 

「ボンちゃん!!」

 

彼はスワン号に乗り込み、自身の顔をルフィに変えて南側へと突っ込んだ。

これで海軍はメリー号を囮だと勘違いして、ルフィ(ボンちゃん)が乗るスワン号を追う筈だ。その隙に私達は東へ逸れる。

 

「…ありがとう、ボンちゃん…!!」

 

彼の勇姿をゆっくり見ている暇もない…!私達はせっかく作ってくれたこの絶好の機会を無駄にしない為にも急いで東の港へと向かう。

 

「すぐにあっちが囮だってバレる!ちょっと私刺さった槍抜いてくるから、みんな中から補修お願い!」

 

「待てイリスちゃん、1人じゃ大変だ、俺も行く」

 

助かるよ、とお礼を言って船に刺さった鉄の槍を抜いていく。

全てを抜き終わり、中の補修も済んだ時……アラバスタから拡声器を使った声が流れてきた。

 

 

『ーーー少しだけ、冒険をしました。それは暗い海を渡る“絶望”を探す旅でした。国を離れて見る海はとても大きく…そこにあるのは信じ難く力強い島々、見た事も無い生物…夢と違わぬ風景、波の奏でる音楽は…時に静かに小さな悩みを包み込む様に優しく流れ…時に激しく弱い気持ちを引き裂く様に笑います』

 

「ビビの、声…!」

 

拡声器…スピーチ…!今…!?

 

『…暗い暗い嵐の中で、一隻の小さな船に会いました。船は私の背中を押してこう言います。「お前にはあの光が見えないのか?」…闇にあって決して進路を失わないその不思議な船は、踊る様に大きな波を越えて行きます。海に逆らわず、しかし船首は真っ直ぐに…例え逆風だろうともーーーそして指を差します。「見ろ、光があった」…歴史はやがてこれを幻と呼ぶけれど、私にはそれだけが真実。そしてーーーー』

 

その後も、ビビ王女のスピーチは続く。

 

「聞こえたろ、今のスピーチ。間違いなくビビの声だ」

 

「アルバーナの式典の放送だぞ、もう来ねェと決めたのさ…!」

 

言ってるゾロとサンジも、やはり表情は暗い。

 

「…行こう、12時を回った」

 

「おいまずい!海軍がまた迫ってきた!!」

 

「一体何隻居るんだよ…!」

 

「……、ビビ…っ」

 

ぐ、と拳を握りしめて噛み締める。

ミキータとナミさんが私の肩に手を乗せ、優しく背中を撫でてくれたその時ーー。

 

 

「みんなァ!!!」

 

「ビビ!!カルーも!!」

 

港に、間違いないビビとカルーの姿が見えた。

どうしてだとか、そんな事を考えてる暇はない、早く船を戻さないと…!!

 

「…!お別れを!!言いにきたの!!」

 

「……え、今、なんて…!?」

 

『私…一緒には行けません!!今まで本当にありがとう!!』

 

……聞き間違えじゃない。

1回目は、よく聞こえなかったけど…2回目は拡声器を使ってさっきのスピーチと同じくらいの音量で私達に声が届く。

 

『…本当は、ずっと隣に居たかったけど…!!私はやっぱりこの国を愛してるから!!…それから、私は戦力にもならないし、航海の術も知らない…!!あなたの隣に立つには、色々と足りないから!!だから、行けません!!!』

 

「…そんな、隣に立つことに…力も、知識も…いらないよ…っ」

 

『ーーだから!!私がずっともっと立派に国を背負って立てる程成長したら…また、会いに来てッ!!!好きだって…何度でも言います!!!その時は、あなたのそばでずっと居ます!!みんなも!!私は、みんなにも相応しい人になります!!だから私は、私は!!今はここに残るけど……!!!いつかまた会えたら!!もう一度仲間と呼んでくれますか!!?』

 

「…!」

 

…最後の方は、嗚咽できちんと喋れてなかったけど…伝わったよビビ。

そりゃ、無理だよね、優しいあなたが弱り切った国を放って私達についてくるなんてさ…だから、アラバスタがもっと大きくなって自分が必要なくなった時に迎えに来てくれって事でしょ…?

 

「いつまでもナっば!」

 

「アホかルフィ、返事をするな!海軍が今の話を聞いてる…返事をすればビビちゃんは“罪人”だ…このまま、黙って別れるぞ」

 

 

そう言って私達は、左腕の包帯を取って上に掲げた。ビビとカルーに見えるように…海軍にバレず…私達は仲間だと態度で叫んだのだ。

 

…いつか、また彼女と会った時に…胸を張れる私で居たい。涙を流して左腕を高くあげるビビを横目で見てそう思ったのだった。

…それにこの印は…私達にとってただの仲間って証明じゃないもんね。

 

そうだなぁ…名前を付けるならーーーー

 

 

愛ある印、かな。




愛ある印です。
もぎたてフレッシュとは関係ありません。
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