ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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53『女好き、やっぱり逃げられないベラミー海賊団』

「…………」

 

「ね、ねぇイリス!私は大丈夫よ、ほら!ピンピンしてるじゃない!」

 

「そ、そうだぞイリス!ナミは元気じゃねェか!な!?」

 

「その血は何?」

 

こてん、と首を傾けてルフィを見れば、彼は分かりやすく目を泳がせて最終的にミキータに助けを求めた。

 

「きゃ、キャハ…ハ。無茶振りにも程があるわ…。あ、あんまり暴れたら、店の迷惑に…」

 

「私は海賊だよ、そんな事関係ない。…それにミキータ、その右腕…どしたの?」

 

「えっ」

 

ミキータがバッと自らの右腕を見れば、先ほど酒瓶を投げていた時の破片でも飛んできたのか少しだけ切り傷があった。

彼女も目を瞑って数秒思考し…やがてゾロに丸投げした。

 

「オイ!俺にどうしろってんだ!…あー、イリス、このケンカは買うなって船長命令ーー」

 

「私が売られたケンカは、また別のモノだよ」

 

「……おう」

 

「おう、じゃないわよ!一瞬で言い負かされてくるな!!」

 

バシン!とナミさんがゾロの頭を叩く。

 

「ハハハ…!どうしたんだ仲間内で言い争って…気でも狂ったか?」

 

私の目の前まで歩いてきたサーキースが、ナイフを指で回しながら舌舐めずりする。

顔はナミさん達の方に向けたまま視線だけでサーキースを見れば、奴は分かりやすくでかい態度を取って私を見下していた。

そんな奴の顔に向かって手を伸ばすと、勿論届く筈もなく店中が爆笑に包まれる。まぁいいよ。

…笑える内に存分に笑え。

 

「ぎゃーっはっはっはっは!!届いてねェぜお嬢ちゃん!!」

 

「ここはガキの来るトコじゃねェよ!!」

 

「ハハ!そうだぜ…!悪い事は言わねェ!どうやって3000万の懸賞首になったのかは知らねェが…俺に勝てる訳がね…ッぐぉ…!!?」

 

ペラペラと喧しいサーキースの顔面を掴む。

届かない?そんなもの腕を長くすれば良いだけだ。顔を掴めるだけ手が大きくない?それも手を大きくすれば良いだけだ。

 

「うぐ…っ、こい、つ!能力者か……!?」

 

そのままミシミシとアイアンクローを決め続け、腕を徐々に上へ伸ばしていく。

サーキースが地に足を付けられなくなってじたばた暴れるので、店の天井に到達した辺りで思い切り床に叩きつけてやった。

その際の衝撃でサーキースだけじゃなく、周りの雑魚達も数人巻き添えにした。

 

「ぐふぉッ…!!!?」

 

「ぎゃあッ!?俺達まで巻き込まないでくれェ!!!」

 

「酒瓶投げといてよく言うよ…逃す訳ないでしょ」

 

神背(ヒューマ)で私を増やして店の出入り口から逃げようとする奴を1人1人潰していく。

誰がナミさんやミキータを傷付けたのか分かんないから…ここにいる奴全員潰せばその中にいるでしょ。疑わしきは罰するから。

 

「さ、サーキースを一撃…だと…!?」

 

ベラミーが私を見て目を見開いている。何を言ってるのか、あの程度ならルフィでもゾロでも一撃だよ。

…それにしても、間違いなく倍加の上限上がってるね。流石にあの時の50倍までは行かないけど…20倍までなら今のままでも扱えるようになってる。

 

「…ハハッ…ハハハ!!不意打ちでサーキースを倒した程度で…粋がるなよガキがァ!!スプリング狙撃(スナイプ)!!!」

 

こいつも能力者だったのか。

足をバネに変えてバネの力を利用して突撃してくるベラミー。なるほど、結構速いね、あの速度で殴られたら…今の私だったらそうだな… ちょっと(・・・・)痛いかも。

 

20倍灰(にじゅうばいばい)

 

「ッ!!?」

 

ベラミーの拳を体を少しずらす事で避けて、右手を握りしめる。

 

去柳薇(さよなら)

 

「ブッ…ゴ…っ…!!?」

 

自分のバネで付けた勢いと、私の20倍の拳の勢いに挟まれて物凄い衝撃がベラミーの顔面に突き刺さる。

最終的にバネの勢いを私の拳が上回り、バキバキと嫌な音を立てながらベラミーの体は後方へ吹き飛ぶ……なんかで終わらせる筈がないでしょ。

 

「何だ、やっぱり口だけじゃん。…まだダメだよ、もっと体に叩き込んでやる」

 

吹き飛ぶ前にベラミーの足を掴んで床に叩きつけ、近くの雑魚に叩きつけ、倒れたサーキースに追加で叩きつけ……次第に顔の原型が無くなってきた所で店の端に放り投げた。

 

「私からも1つ言わせてもらうよ。粋がるな雑魚が!」

 

「いや、もう聞こえてねェだろ…」

 

ゾロの突っ込みが聞こえるけど、だって仕方ないじゃん。ナミさんとミキータを傷付けたんだからこれくらいはね。

 

「さて…まだ沢山残ってるね?」

 

「え…!?お、おれは何もして無い!ただ瓶を投げただけじゃねェか!しかもそこの女に当てたのはおれじゃねェ!」

「お、おれでもない!」

「おれも違うぞ!!」

 

「そうなんだ、じゃ、さよなら」

 

「「がぺっ!?」」

 

私の肩から生える腕を20本に増やして一気に殴り飛ばす。

…お、これで立ってる奴ら居なくなったね!勿論、美女達や関係の無い店主には何もしてないけどね。

 

「ひ、ヒィ…!」

 

「ん?ああ…あなたは確かサーキースの隣に居た…名前は?」

 

「あ、ぁ…り、リリー、リリー…!お、お願い見逃して…!!」

 

尻餅をついて震えるリリーの前にしゃがむ。

ふぅん…リリーか。

 

「ちょっとサングラス取ってよ」

 

「…え、は、はい…っ」

 

びくびくとサングラスを取るリリー。…ふむ、可愛い、案外いけるね。

 

「そっちの君は?名前なんて言うの?」

 

「み、ミュレよ…」

 

ミュレねぇ…リリーは可愛くて、ミュレは綺麗だね。ベラミー海賊団も良い女居るじゃん!

 

「君達の可愛い見た目に免じて、この海賊団を修復不可能ってレベルまで潰すのはやめとくよ。ナミさんとミキータに傷をつけた事は…周りの人達の惨状で勘弁してあげる。だからそいつらが目を覚ましたなら言ってやってよ。…私達は“空”へ行く、いつまでも下から上見上げてへこへこしてやがれってね」

 

それだけ言って立ち上がり、私達は店を後にした。ごめんね店主さん、許して!

 

 

「やっぱおれ、イリスを怒らせるのはやめよう」

 

「倍返しなんてもんじゃねェぞ…死んでねェだろうなアレ…」

 

「キャハハ!私達の為に怒ってくれるイリスちゃんも素敵よ!」

 

「ミキータ…あんたはちょっとイリスに甘すぎるわ!」

 

「いやー、ごめん!!でも仕方ないよね?」

 

私が悪びれもなくそう言えば、ナミさんは般若の顔で私の頭をぐりぐりしてきた。痛い痛い!それ痛い!!

 

「あ・ん・た・ねェ…!あんたがやられてた時の私やミキータも同じ気持ちだったって事に気付きなさいよ!本当なら私があいつらボコボコにしてやりたいのよ!!」

 

「大丈夫よナミちゃん、私店出る時に1万キロで踏んできたわっ!」

 

そっちの方が重傷になりそうなんですが…?それ、死んだんじゃない??

 

「空島はあるぜ…ゼハハハハ、嬢ちゃん思ってたよりやるじゃねェか、3000万とは思えねェな」

 

「ん?あー、あなたはさっきの」

 

店を出て少し歩けば、さっきの大男が道の真ん中で座ってチェリーパイを食べていた。いやどこで食ってんの。もうちょい端寄るとかさ。

 

「アイツらの言う新時代ってのはクソだ。海賊が夢を見る時代が終わるって……!?えェ!!?オイ!!!ゼハハハハハハ!!!ーーーー人の夢は、終わらねェ!!!!」

 

「!!!」

 

…何か凄い聞いたことあるセリフだなぁ…。前世では有名なのかな?てかこの大男誰?

 

「人を凌ぐってのも楽じゃねェ!海賊の宝を狙うなら双方命を賭けるべきだ!!一方は宝を傷付けた!一方はそれに対し裁きを与えた!!迎え撃てなかった方が弱く、悪いのさ!!海賊ってのァそういうモンだろ!!えェ!!?」

 

「……行こっか、よく分かんないし」

 

「ええ…」

 

そうして何か言ってる大男から背を向けて船に戻った。

それから1つ言わせて貰いたい。あの大男を見ながら不安げな顔してるナミさん、ちょーーーーーーー可愛いっ!!!!!

 

 

 

***

 

 

 

 

「る、ル、ルフィ!ゾロ!イリス!!お前ら何だそのケガ!何があったんだ!!?」

 

「何!?イリスちゃんが傷だらけだと!!?ナミさんやミキータちゃんは無事か!?」

 

「私達は平気だけど、ナミさんとミキータが重傷だよ、チョッパー真っ先に2人を見てあげて」

 

「「いやいやいや」」

 

船に戻ればウソップが心配して声をかけてくれた。それに釣られてサンジとチョッパーもやってくる。

 

「ルフィもゾロも、ここはレディファーストでしょ!」

 

「どう見ても俺らの方が重傷だろうが!それにてめェも一応は女だろ!」

 

「何言ってるの!ナミさんは頭を打ったんだよ!ああ、私がついていながら情けない…!」

 

どっちにしろ私はナミさんとミキータが治療終わるまでは待つ!!

…あ、あれ、なんか怖い笑顔の嫁2人が近付いてくるんだけど…。

 

「はいはい、あんたが1番先よ」

 

「キャハハ、私の傷なんて絆創膏貼れば治るわ」

 

「い、嫌だ!ナミさんとミキータが先に治療して貰わないと安心できな」

 

「「それは私達も一緒!!」」

 

ずるずるとチョッパーの前に引き摺られてしまった…。くそう、そう言われたら返す言葉もないよ…。

 

「随分傷付いて…何かあったの?」

 

「あ、ロビン!」

 

ロビンも帰ってきた様だ。何処に行ってたのかと聞けば服の調達と空島への情報を入手してきたと言う。流石有能だった。

 

「これよ」

 

「お!宝の地図だっ!」

 

「ただの地図だろ、どこだコリャ?」

 

「この島よ」

 

すっとルフィに地図を渡した。この島の地図か…何か手掛かりでもあったのかな?

 

「左にある町の絵が現在地「モックタウン」…そして対岸…東にバツ印があるでしょう?そこにジャヤのはみ出し者(・・・・・)が住んでるらしいわ、名前は「モンブラン・クリケット」…夢を語りこの町を追われた男、話が合うんじゃない?」

 

「流石ロビン!収穫あったね。…じゃとにかく行ってみよう!これが現状唯一の手掛かりなんだし」

 

「ええ、そうね。ルフィどうする?」

 

「おう!行こう!!」

 

そして船は対岸のモンブラン・クリケットが住む所へと向かう事になった。

島の対岸に進むだけだから対して時間はかからないだろう。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「…で、これは何?」

 

「さァ…」

 

船を進めてほんの数10分で、船と遭遇した。

昼間のサルベージサルベージ言ってた猿船と似たような形で、船首にはゴリラが付いている。

 

「そういえばさっき、猿の船がこの島に入るのを見たぜ」

 

「あ、じゃあ見た目も似てるし関係者かもね。とにかく邪魔だから退いて貰おうよ」

 

船の進行方向に相手の船が居るから進めないんだよね。

 

「オウオーウ!!ニーチャンネーチャン!!そっちでゴチャゴチャ言ってんじゃねーーーぞォ!!ウォーーホーーーー!!」

 

ハイテンションゴリラだった…。見た目もゴリラだった…。

 

「思い切った顔してんなーー、何類だ?」

 

「人類だバカヤロー」

 

ルフィの問いに漫才みたいな返しをするゴリラ。いやルフィの問いも漫才みたいだったけど。

 

「おれ達行きてェ場所があんだよ、どいてくれ!」

 

「あほたれェ!ここらの海はこの俺のナワバリだ!!通りたけりゃ通行料を置いてゆけ!!」

 

「何だナワバリって、マシラみてェな事言ってやがる」

 

「マシラって誰?」

 

「昼間の猿だよ」

 

何でウソップ名前知ってんの?自己紹介してた?私が聞いてなかっただけかな。

 

「何ィ!?マシラァ!?マシラがどうした!?」

 

「昼間に会ったんだ、おれ達」

 

「何!そうか…と言うことはマシラの知り合いってことか!ったく、ハラハラさせやがる…」

 

今の会話のどこにハラハラしたのか教えてよ…。

 

「マシラの知り合いなら俺の知り合いでもある!!どこに行きたい!?」

 

「モンブラン・クリケットって人んち」

 

「な、なぬ!?おやっさんとも知り合いなのか…!!?よし、じゃあ通っていいぞ。ハラハラするぜ…」

 

何にハラハラしているのかは置いといて、通ってもいいらしい。

別にクリケットって人とは知り合いでも何でもないけど、勘違いしてくれてるならそれでいいや、楽だし。

 

 

多少の運もありながら、ゴリラと遭遇しても何のトラブルを起こす事も無く私達はジャヤの東海岸に到着した。

 

「着いたわ、地図の場所。ここに例の…誰だっけ?」

 

「モンブラン・クリケット」

 

「ーーその夢を語る男(・・・・・)が住んでるのね?」

 

「お、おお!!」

 

東海岸へ辿り着くと、そこには海岸沿いに豪邸が建っていた。

何で海側に玄関があるかは置いといて。

 

「ん…?いやこれハリボテじゃん!」

 

海側から正面で見れば立派な豪邸だが、島に降りて後ろから見た姿は寂しいものだった。

何故か半分縦にすっぱり無くなってる家の断面に、豪邸に見せかける為の大きな板をはってるだけだ。実際の家の大きさはくっ付けてある板の半分もない。

 

「こ、これは中々斬新なデザインだね」

 

「一体どんな夢を追って町を追われたの?」

 

ナミさんがロビンに尋ねる。あの町なら夢を掲げるだけでバカにされて追い出されそうだもんね。

 

「詳しくは分からないけど…このジャヤという島には莫大な黄金が眠っていると言われているらしいわ」

 

「黄金かー」

 

「あんたは海賊なのに黄金とか興味なさそうよね」

 

「いや、興味はあるよ!だって黄金があればナミさんが喜ぶからね!」

 

「結局そこじゃないの…」

 

呆れた顔をしつつもふふ、と笑うナミさん。

一応前世は日本人な訳ですから黄金と聞けば気持ちは昂りますけど…やっぱり1番は女の子だよ!

 

「とにかく家に入ってみようよ、ハリボテの入り口は海側だけどちゃんとした玄関は陸側にあるみたいだし」

 

「おう!」

 

そう言ってルフィが「お邪魔しまーす」と入って行った。

ちょっとルフィにはお邪魔しますと言えば勝手に入ってもいいって思ってる考えを直して貰わないといけないねこれは。

…あ、いや海賊だからそもそもそんな事気にする方がおかしいのか。

 

 


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