ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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54『女好き、モンブラン家に会う』

「ルフィー、家の中なんかあったー?」

 

「なんもねェなー、留守みてェだ」

 

本来は勝手に侵入なんてダメだけどね、海賊だからね。

 

「!絵本…随分年季の入った本ね、「うそつき(・・・・)ノーランド」だって、あはは」

 

「ほー、イカスタイトルだな、題材がいいぜ」

 

ナミさんが切り株の上に置かれていた本を手にする。うそつきノーランドかぁ…またまた聞いたことあるなぁ…。最近こういう事多い気がする。

 

「「うそつきノーランド」?へー懐かしいな、ガキの頃よく読んだよ」

 

「知ってんの?サンジ君。でもこれ北の海(ノースブルー)の発行って書いてあるわよ」

 

「ああ、俺生まれは北の海(ノースブルー)だからな、みんなにゃ言った事無かったか?」

 

「生まれは北で育ちは東?どうして東の海(イーストブルー)に?」

 

「まぁ俺の話はどうでもいいさ、こいつは(ノース)では有名な話なんだ。童話とは言ってもこのノーランドって奴は昔実在したって話を聞いた事がある」

 

何か今露骨に話を逸らされた気がする。

…気のせい、かな??

 

「へぇ…」

 

ナミさんはそう言って本を開ける。私も読んでみたいと言ったらナミさんはしゃがんでくれた。あれ、親子かな??

 

 

 

ーーむかしむかしの物語。

それは今から400年も昔のお話ーーーー北の海のある国に、モンブラン・ノーランドという男が居ました。

探検家のノーランドの話はいつもウソの様な大冒険の話。だけど村の人達にはそれがホントかウソかも分かりませんでした。

あるときノーランドは旅から帰って王様に報告をしました

 

『私は偉大なる海のある島で山の様な黄金を見ました』

 

勇気ある王様はそれを確かめる為2000人の兵士を連れて偉大なる海へと船を出しました。大きな嵐や怪獣達との戦いを乗り越えてその島にやっと辿り着いたのは王様とノーランド、そしてたった100人の兵士達。

しかしそこで王様達が見たものは何も無いジャングル。

ノーランドはうそつきの罪でついに死刑になりました。ノーランドの最後の言葉はこうです。

 

『そうだ!山の様な黄金は海に沈んだんだ!』

 

王様達は呆れてしまいました。

もう誰もノーランドを信じたりはしません。ノーランドは死ぬ時までウソをつくことをやめなかったのです。

 

 

「…哀れ、ウソつきは死んでしまいました…“勇敢なる海の戦士”に…なれも…せずに…」

 

「おれを見んなァ!!切ない文章勝手に足すなァ!!」

 

ナミさんが最後ウソップでオチ付けたが、…これは妙に引っかかる話だ。

ただの作り話なら、こうはならない様に嘘つかない子になるのよー、みたいな感じで子供を教育する本としては童話の役目をきちんと果たしている。

…だけど、サンジの言ってた“実話”というのが本当なら…。

 

「…?どうしたの、イリスちゃん」

 

「ああ…ちょっと気になる事が」

 

「ぎゃあああ〜〜〜っ!!」

 

「へっ?」

 

ヤバイ…!童話に夢中になってる間にルフィが海に落ちた!

…いやなんで!?

 

「てめェら誰だ!?人の家で勝手にお寛ぎとはいい度胸、ここらの海は俺のナワバリだ」

 

落ちたルフィの代わりに頭に栗を乗っけた様な飾りをしてる男が海から出てきた。状況的に見てあの男に引き摺り込まれたんだろう。

 

「ウソップ、ルフィを宜しく」

 

「お、おう!」

 

「狙いは“金”だな、死ぬがいい」

 

「うわっ」

 

言うや否や蹴りを問答無用で打ち込んできた。

 

「ち、違うよ!私達は空島に行く方法が知りたいだけで…!」

 

「!!…何?空島……ぐ、…は、ハァ…ッ…ッ!!」

 

「お、おじさん!」

 

私の言葉にピタ、と攻撃を止めたと思ったら急に苦しみ出して地面に倒れた。い、医者!!チョッパーー!!!

 

「ど、どうして急に…いや、とにかく早く家へ運ぼう!チョッパー、頼める?」

 

「う、うん、おれの役目だ、診てみるよ!」

 

サンジにおじさんを担いで貰って、急いで家の中へ運び込む。

そのまま中にあるベッドに寝かせ、そこからはチョッパーの指示を聞く事となった。

 

「タオルをもっと冷やしてきて、窓は全開に!」

 

「わかった。タオルの冷たさ2倍!」

 

「凍ってるよッ!そこまでしなくてもいいぞ!?」

 

「あわわ…」

 

あたふたしながらも何とかチョッパーの指示に応える。

ナミさんの時はビビが居たからなぁ……。あ、なんかビビ思い出したら会いたくなってきた。別れた当初は大丈夫だったんだけどなぁ。いや大丈夫では無かったけど。

 

「それで、このおっさんの病気は何なんだチョッパー」

 

「多分潜水病だ」

 

サンジの問いにチョッパーが答える。潜水病?知らないな、潜ってたらなるのかな?

 

「ダイバーがたまに罹る病気さ、本当は持病になったりする様な物じゃないんだけど。海底から海上へ上がる時、減圧が原因で体の中にある元素が溶解状態を保てずにその場で気泡になるんだ、気泡は血管や血管外で膨張するから、血流や筋肉・関節に障害を与える…」

 

「ーーーあァ怪奇現象ってわけか」

 

「それ」

 

全くわからんからルフィといつかのやり取りを繰り返す。

 

「この人はきっとその気泡が体から消える間もないくらい、毎日毎日無茶な潜り方を続けてきたんだ」

 

「一体何の為に…」

 

「わからないけど……危険だよ。場合によっては“潜水病”は死に至る病気だ」

 

結構危ない奴だった!

 

…まぁ!そんな感じでヤバイ病気だって事が分かった訳だ。

私達は意識を切り替えてチョッパーの指示に従う。とにかくタオルを冷たくして、冷たく…冷たく…。

 

「こ、凍ってるぞ!」

 

「ふぁ!!ご、ごめん!!」

 

倍加しか出来ないから微調整出来ないんです…!!こんな所で欠点出ちゃった…。

 

そうして数10分付きっきりの看病を一味で続けている時、家にマシラとゴリラが姿を現した。お、やっぱり繋がりあったのかこの人達。

 

2人(2匹?)にはおじさんの状態と看病していた事を説明して、とにかく家にいた事は納得してもらった。

 

今は看病もある程度目処が立ち、チョッパーが1人で状態を確認しているので私達は外に出てマシラ達と話している所だった。

話してると言ってもルフィが打ち解けてるだけなんだけど。相変わらずコミュ力やばい。

 

「お前らもここに住んでんのか?」

 

「まァこのおやっさんの家が「猿山連合軍」の本拠地ではあるんだが、大概はてめェらの船で寝泊まりだ」

 

「俺達にこの家は小さすぎるからな、ウォッホッホッホ!!」

 

笑い方完全にゴリラじゃん…。何類だ?

 

「お前らがデカすぎるんだよ、まー巨人のおっさん達から見たら耳くそみたいなもんだけどな」

 

あの2人が大きすぎるだけなんだけどね。規格外だよあれは。

 

「ルフィ!気がついたぞ!」

 

お、早かったね、流石チョッパー。

という事なので再度家の中へと戻った私達は、当初の目的である空島について聞くことにした。

 

「ひし形のおっさん!聞きてェ事があんだよ」

 

…モンブラン・クリケット。間違いなくモンブラン・ノーランドに関係ある筈だ。

そして、私の違和感が正しければ…。

 

「迷惑かけたな、おめェらをいつもの金塊狙いのアホ共だと思った。…で、俺に聞きてェ事ってのは何だ?さっきの嬢ちゃんが言ってた様に空島の事か?」

 

「そうだ!おれ達空島に行きてェんだ!!」

 

「…そうだな、あると言っていた奴を1人知ってるが…そいつは世間じゃ伝説的な大嘘つき。その一族は永遠の笑い者だ。…「うそつきノーランド」…そういう昔話がある、ある程度察する事は出来るだろうが俺はそいつの子孫なのさ」

 

まぁ名前的にも、見た目的にもね。

 

「モンブラン家は当時国を追われ…肩身狭く暮らすも人の罵倒は今もなお続く…。だが一族の誰1人奴を憎む事はない」

 

「…なぜ?」

 

「ノーランドが類稀なる正直者だったからだ」

 

「……」

 

これは私の違和感が正しいのかもしれない。

…いや、私が違和感を持てたのはそもそも前世の知識があったからかもしれないけど。

 

「絵本にあるノーランドの最期の言い訳はこうだ。「そうだ!山の様な黄金は海に沈んだんだ!」…アホ面そえて描いてあるが、実際は大粒の涙を流した無念の死だったという。到着した島は間違いなく自分が黄金都市の残骸を見つけたジャヤ。それが幻だったとは到底思えない…ノーランドは地殻変動による遺跡の海底沈没を主張したが、誰が聞いてももはや苦し紛れの負け惜しみ…見物人が大笑いする中ノーランドは殺された」

 

「じゃあ!だからおっさんはそのモンブラン家の汚名返上の為に海底の黄金都市を探してるのか!?」

 

「バカ言うんじゃねェ!!」

 

ドゥン!と撃たれた銃弾がウソップの頭上を通過する。あ、危ない事するなこの人。

 

「大昔の先祖がどんな正直者だろうが、どんな偉大な探検家だろうが、俺に関係あるか!!そんなバカ野郎の血を引いてるってだけで見ず知らずの他人から罵声を浴びる子供(ガキ)の気持ちがお前らに分かるか!!?俺はそうやって育って来たんだ!!」

 

だけど、この人以外のモンブラン家の人はそう言った名誉を取り戻す為に海へ出た者も多いらしい。…帰って来た者も居なかったそうだが。

だからこの人はそんな一族を恥じて、自らは海賊になった。

 

「別に海賊になりたかった訳じゃねェ、ノーランドの呪縛から逃げ出したかったんだ。…しかし10年前……冒険の末俺の船は何とこの島に行き着いちまった。奇しくもモンブラン家を、ノーランドを最も嫌い続けたこの俺だけが行き着いた。絵本の通り黄金郷など欠片も見当たらねェ…この島の岬に立つと、これも運命(さだめ)と考えちまうーーーもう逃げ場はねェ……」

 

だからこそクリケットは、この地に残って黄金郷を探し続けた。

あるのならそれもよし、無いのならそれもよし。別に黄金を見つけてノーランドの無実を証明したい訳じゃない、と。

 

「俺の人生を狂わせた男との、これは決闘なのさ。俺がくたばる前に…白黒はっきりさせてェんだ…!!」

 

「じゃあ、あいつらは?さる達は何でここにいるんだ?」

 

「あいつらは絵本のファンだ」

 

えー、めっちゃ簡単な繋がりじゃん…。

 

「空島にはどうやっていくんだ?」

 

「だから話してやったろ、“空島”の証言者はその「うそつきノーランド」…こいつに関わりゃおめェらも俺と同じ笑い者だ」

 

そう言ってクリケットは棚から日誌を取り出した。…お?航海日誌?

 

「え!?そいつ空島にも行った事あんのか!?」

 

「残念ながら行ったとは書いてねェが……」

 

「航海日誌…まさか、ノーランド本人の!?」

 

ナミさんの驚いた声に、クリケットはページを開けた状態でナミさんに日誌を渡す。

 

「その辺…読んでみろ」

 

「凄い…400年前の日誌なんて…海円暦1120年、6月21日快晴、陽気な町ヴィラを出航… 記録指針(ログポース)に従い港より真っ直ぐ東北東へ進行中の筈である。日中出会った物売り船から珍しい品を手に入れた。「ウェイバー」というスキーの様な1人乗りの船である…。無風の日でも自ら風を生み走る不思議な船だ。コツが要るらしく私には乗りこなせなかった。目下船員(クルー)達の格好の遊び物になっている…ウソっ!何これ欲しい〜!!」

 

「「いいから先読めよ!!」」

 

「バカ野郎!!ナミさんが欲しいって言ってる物を調達するのが先でしょ!!待っててナミさん!私が今から探しに…!」

 

「「お前は落ち着けェ!!」」

 

それにしてもこいつら何にも分かってないな、ナミさんが音読してくれてるんだよ?あぁ、録音したい…耳が幸せ…。

 

「この動力は“空島”に限る産物らしく、空にはそんな特有の品が多く存在すると聞く。“空島”と言えば探検家仲間から生きた「空魚」を見せて貰った事がある。奇妙な魚だと驚いた物だ。我らの船にとっては未だ知らぬ領域だが…船乗りとしてはいつか“空の海”へも行ってみたいものだ」

 

「空の海…ロビンが言ってた通りだ!」

 

「それにこの時代じゃ空島があって当たり前の様に書いてあるぞ!!」

 

「やっぱりあるんだ!!」

 

「やった〜〜!!!」

 

いつものトリオがはしゃぐ。

でも空島ってなったら騒ぐよね普通、だって普通じゃないもんね。

 

という訳で、クリケットが空島について知っている知識を教えてくれるらしい。

もう動いて大丈夫なのか…頑丈だなこの人。それかチョッパーが凄いのか、どっちもか…。

 

みんなで外に出て切り株周辺に集まる。

ナミさんミキータが隣同士に座って、私はその上だ!これぞハーレムの特権なんだ!!うはーっ!!

 

…あ、ここちょっと居心地良すぎるかも。話、まともに聞けるかな…??

 

 


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