ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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55『女好き、黒光の恐怖』

クリケットから聞いた話を纏めるとこうだ。

ここらの海では時として真昼だってのに突然“夜”が襲う奇妙な現象が起きる。その時に現れる巨人の事はクリケットも詳細は分からないそうだが…夜の正体は極度に積み上げられた雲の影。

その雲の正体は“積帝雲”。空高く積み上げるも中には気流を生まず雨に変わる事もない…それが上空に現れた時、日の光さえも遮断されて地上の「昼」は「夜」にも変わる。

何千年何万年も変わる事無く浮遊し続けてるという説もある事から雲の化石とも呼ばれてるらしいが…もし空島が存在するとすればそこ(・・)にしか可能性はないのだと。

 

そして本題の行き方だが…これが厄介だ。

突き上げる海流(ノックアップストリーム)、この海流に乗れば空へ行けるらしい。

だけどタイミングが大事で、一歩間違えれば船は大破。海の藻屑という訳だ…。

分かりやすく言えば海底ですんごい規模の爆発が起こって海を吹き飛ばし、1分間程空へ続く海流が出来るからそれに乗れという話だ。

 

積帝雲に空島があるかどうかも定かではないし、飛んだところで何も無く落ちて藻屑エンドを迎える可能性もある。

 

だけど、あるかもしれない。

それにクリケットの話によれば今までの経験上次の積帝雲、突き上げる海流(ノックアップストリーム)の発生位置も大体わかってるらしい。おまけにその丁度良いタイミングの日が明日の昼って話だ。

私達にとっては最高に美味しい話だ、クリケットがこの辺の海に詳しくて助かったよ!

2人の太もも膝の上が心地良すぎて逆に話がすっと入ってきたのも助かった…。

 

そして今は夜も更けてクリケットの家で宴会中である。この家にマシラもショウジョウ(ゴリラの名前)も入ってるからかなり狭く感じるよ。

 

「いや今日はなんて酒のうめェ日だ!!」

 

「さァ食え食え、まだまだ続くぞサンマのフルコースは!!」

 

「ぶっ…!か、からぁ〜〜!!い、いひゃい…!!」

 

「うぉ!?何でイリスにおれの必殺“タバスコボンバー”が…!?きちんとルフィの皿に…!」

 

「…ウソップ〜…?」

 

「キャハ…覚悟は出来てるのかしら?」

 

「ギャアアアアアアアアア!!!!?」

 

ウソップが処刑されてる!あ、ミキータがウソップの上に座った…うわ、徐々に重さ増やしてる…あれキツイだろうな〜…。

 

「う〜…ヒリヒリする…、あれ、ロビン?どしたのこんな端っこで」

 

「ノーランドの航海日誌を見てるの、なかなか興味深いわ」

 

すとん、とロビンの隣に座ると彼女は私の方を見て微笑んだ。おぅ…美しい…。

 

「…赤目さんは、どうして今の夢を追いかけようと思ったの?」

 

「え?…どうして、か…。可愛い女の子が好きだからかな…。うーん…わかんない。そういう物だからかな」

 

私が困った顔でそう返せば、ロビンはふふ、と笑ってそういうものよね、と返してきた。何だ、可愛くもあり綺麗でもある…強い。

 

「私も狙っているんでしょう?」」

 

「まぁねー…何なら今誓わせてあげようか?」

 

「フフ…じゃあ今夜、ベッドの上でお願いしようかしら」

 

「うぇっ!?ぁ、い、いやそれは…そのぉ…!」

 

「航海士さんが言ってたように、こう言えば躊躇うのね」

 

し、心臓に悪いわ!

 

「…!」

 

ぺら、とページを捲るロビンの手が止まったので不思議に思って見てみるとそこから先は白紙だった。

 

「髑髏の右目に黄金を見た」

 

「!」

 

急に目の前に現れたクリケットにビクッと驚くロビン。ギャップ萌えすらも完備しております、隙がありません。

 

「涙で滲んだその文がノーランドが書いた最期の文章…その日ノーランドは処刑された。このジャヤに来てもその言葉の意味は全く分からねェ、髑髏の右目だァ!?コイツが示すのはかつてあった都市の名か、それとも己の死への暗示か…後に続く空白のページは何も語らねェ。だから俺達ァ潜るのさ!!夢を見るのさ海底に!!」

 

クリケット…どう見ても酔ってるね、これ。

そうしてクリケットはまたどんちゃん騒ぎの中へ戻っていった。

 

ナミさんとミキータは未だウソップをシメている。あれは昼間のベラミー海賊団の時の鬱憤もウソップで晴らしてるな…。

 

「…私ね、ロビン。黄金郷は存在すると思うんだ」

 

「へぇ…それはどうして?」

 

うそつきノーランドの話を聞いた時から違和感はあったけど、 突き上げる海流(ノックアップストリーム)…この情報が決定的だった。

 

「まず、ノーランドが嘘をつく意味がないもん。偉大なる航路(グランドライン)と言えば言わずと知れた海賊の墓場。そんな海に乗り込んで帰って来れるような人物が…わざわざ嘘をついてまでもう一度偉大なる航路(グランドライン)に乗り込むとは思えなかったんだ」

 

「でも…実際ジャヤには何も無かった。…地殻変動?」

 

「似た様な物だけど…違う。黄金郷は地殻変動によって海に沈んだんじゃない…“ 突き上げる海流(ノックアップストリーム)”で島ごと空へ飛んだんだよ」

 

「!……それは、興味深いわね」

 

外れてたら恥ずかしいけど、合ってる気がする。そもそも突き上げる海流(ノックアップストリーム)がそこまで強いのかどうかはわかんないけど、変に確信している私が居るのだ。何でなのかはわかんないけど。

 

「……赤目さん。…あなたの説、もしかしたら本当に正しいかもしれない」

 

「え?」

 

ロビンが取り出した地図2枚を重ねてそういう。

持ってるのはジャヤと昼間ルフィが見つけてきたスカイピアの地図。

 

「照らし合わせれば…ほら、髑髏。…さっきの話を聞く限りでは髑髏の右目に黄金を見た…だから、ここに黄金郷がある可能性があるわ」

 

「え…本当に合ってた?」

 

ロビンが興奮気味に話しながら繋げて髑髏の形になった地図の右目部分を指差す。

 

「それに、この家の真っ二つに裂かれた様な外見もそれを裏付ける証拠になっている。…赤目さん、あなたは今…とんでもない発見をしたかもしれないわ」

 

「そ、そんなに?あはは、嬉しいなぁ…」

 

前世のもっさりした記憶すごーーい…。

 

「でも、まだ確定じゃないから黙っとこうよ、せっかく空島に行くんだから私達で確かめて…それでクリケットには報告しよう。ぬか喜びになったら流石に申し訳なさ過ぎるもんね」

 

「ええ、そうね。…フフ、良かったわね赤目さん。私…あなたに更に興味が湧いたわ」

 

「ほ、ホント?それが1番嬉しい情報だよ!」

 

えへへ、えへ、でへぇ…と鼻の下を伸ばしてるとつん、と鼻を突かれた。突いたロビンも口元を隠して笑い、私達のやり取りは部屋の喧騒やウソップの悲鳴でかき消されていく。

クリケットの話す昔ジャヤにあったとされる黄金の鐘の話をしたり、海に潜った時に手に入れた小さな黄金を見せたり盛り上がって…そのまま眠くなるまで騒ぐ……と思ってたんだけど。

 

「しまったァ!!こりゃまずい!おいお前ら森へ行け!!南の森へ!!」

 

「びっくりしたぁ…どうしたの急に」

 

「サウスバードという鳥を捕まえて来い!この鳥だ!」

 

そう言ってクリケットは取り出した黄金を見せる。

変な鳥だなぁ。

 

「いいか、よく聞け…!お前らが明日向かう突き上げる海流(ノックアップストリーム)、この岬から真っ直ぐ南に位置している…!そこへどうやって行く!?」

 

「船で真っ直ぐ進めばいいだろ」

 

「ここは偉大なる航路(グランドライン)だぞ!?一度外海へ出ちまえば方角なんて分かりゃしねェ!!」

 

「そうか…目指す対象が島じゃなくて海だから頼る指針がないんだわ……!じゃどうすれば真っ直ぐ南へ進めるの!?」

 

ナミさんがそう言うが、足元に転がってる鼻の長いナニカには触れない方がいいの?

 

「その為に鳥の習性(・・・・)を利用する!!サウスバードはどんな広大な土地や海に放り出されようとも、その体に正確な方角を示し続ける。とにかく!この鳥がいなきゃ何も始まらねェ!空島どころかそこへ行くチャンスに立ち会う事も出来んぞ!!いいな、夜明けまでにサウスバードを1羽…必ず捕まえて来い!」

 

かなり急な話だけど、それがなきゃ何も出来ないのなら仕方がない。

ウソップも何とか起こしてみんなで森に入る事になり、虫網などを持って森へ向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「わー…真っ暗だね、ナミさん」

 

「は、早く捕まえて戻りましょう…」

 

びくびく震えて私に縋り付くナミさん。

…夜の森探検ハマりそう。

 

「サウスバードって言うその鳥の手掛かり…本当に変な泣き声ってだけで分かるのかしら?」

 

「さァな…だが姿は分かってんだ、森に入りゃ分かるって言ってたオッサンの言葉も気になる…」

 

 

「ジョ〜〜」

 

 

「うわっ、変な鳴き声」

 

「これだ…」

 

どこからか聞こえてきた特徴的過ぎる声にみんなで反応する。

とにかく!鳴き声と姿がわかってれば後は捕まえるだけなので、網が3つあると言うことで3手に別れて探す事になった。

 

班分けとしては、まずルフィ、ウソップ、サンジ。

チョッパー、ゾロ、ミキータ。

私、ナミさん、ロビンだ。

 

くじで決めた訳だが、班が決まった瞬間のミキータの顔が忘れられない。絶望に染まってたもん…またフォローしておこう。

 

 

 

 

 

「鳥ってくらいだからやっぱり高い所にいるよねー、ちょっと木に登ってきてもいい?」

 

「はは、冗談でしょイリス、離れたら死ぬわよ私」

 

「大袈裟ね、航海士さん」

 

「あ、あんたはこの場所何とも思わないの!?怖いでしょぉ…」

 

縋り付くナミさんがレアだったので、ぶっちゃけサウスバードより今の状態の方が私にとっては重要かもしれない。

 

「…あら航海士さん、いつの間にそのコ捕まえたの?」

 

「え?」

 

ナミさんが恐る恐るロビンの指差す自身の腰を見れば、そこにはタランチュラのような大きなクモがくっ付いてわさわさ動いていた。

 

「キャアアアアアアッ!!イリス!イリス取ってぇ!!!」

 

「わ、わかったからちょっと離れて、何も見えない!何も!おっぱいしか見えない!息も出来ない!あれ、結構幸せかも、このまま死ねるのなら、本望…!!」

 

ナミさんのぱい窒息死とか、私がもし死ぬとしたら死因はそれがいい。

…まぁその話は置いといて、ナミさんが本気で怖がってるから動けない私の代わりに神背(ヒューマ)を出してクモを取ってもらった。

私も虫は普通に苦手なんだけど…ナミさんとロビンの前で格好悪いとこ見せらんないし…。

 

「ん?赤目さんと航海士さん、足元で何か動いてるわ」

 

「うぎゃあああああっ!!?ご、ゴキ…!!ゴ…ゴゴゴ!!!」

 

ナミさんの背中に手足を回し、完全にぶら下がる形になった。

格好悪い?うるさいな!相手はあの黒き彗星だよ!私はこいつだけはどーーーーしても無理なの!!!

 

「だ、大丈夫よイリス!ロビンが何とかしてくれるわ!」

 

「イヤよ、私もそれは触りたくないもの」

 

「も、もうやだぁ…この森ぃ…!」

 

ぎゅ、とナミさんの服を握り締める。

ゴキ…いや、Gだけは本当に無理なんです…見たくもないし、触るなんて絶対無理…!多分前世の前世はGに殺されたんだ!!

 

「イリス…!そ、そうよ、こんな時くらいは私があんたを助けてあげなくちゃ!ロビン、走るわよ!」

 

「ええ、鳴き声は西の方角から聞こえてくるわ、そっちに行きましょう」

 

ナミさんだってGは苦手な筈なのに、歯を噛み締めて私を抱いたまま西へ走り出した。

うう…格好悪い所というか、嫁に見られたら幻滅されてもおかしくないよこんなのぉ…なのにナミさんはこんなにも私の事想って…!好き過ぎるー…!!

 

 

「今度はブタ!?」

 

「こっちからはてんとう虫ね。ちょっと大きいけど」

 

ロビンは呑気に言ってるけどちょっとどころじゃない大きさだよそのてんとう虫、自動車のタイヤくらい大きいよ。

 

「ナミさん、もう大丈夫だよ、ありがとう」

 

「はいはい…よっ…と。それにしてもあんた…そんなにアレが苦手でよく無人島生活なんて出来たわね」

 

「当時もサイアクだったよ…」

 

やっぱりGはどこにでもいるんだよ…チョッパーの居たとことかなら居ないのかなぁ…。

 

「ジョ〜」

 

「…もー!声は聞こえるのに!」

 

「こうも暗いとね…一旦みんなと合流する?」

 

「そうね」

 

私達はコクリと頷き合って、別れた地点まで戻った。

そこには既にみんなが居て、やはり私達同様捕まえる事が出来なかったようだ。この森がおかしいんだよ…規格外にでかい虫とか当たり前のように大群でいるGとかさぁ…。

 

「おれ達は姿は見たんだけどよ、虫だらけで鳥どころじゃねェんだよ」

 

「だよね…。間に合うかな…」

 

「なんだよイリス随分弱気じゃねェか、さては虫が苦手なんだな?」

 

「んー、ちょっと一部無理な奴がいてね…情けないとこ見せちゃって傷心中…」

 

「キャハハ!そんなイリスちゃんも可愛いわ!」

 

なでなでとイリスちゃん補充とか言いながら撫でてくるミキータ。うう…私の嫁は良い人しか居ない…!

 

「ジョ〜ジョジョ〜ジョッ!」

 

「あ!!あの鳥!」

 

びし!とルフィが指差す方には例のサウスバードが木の枝に乗ってそこに居た。

何やら笑っているようだけど…。

 

「『お前らなんかに捕まるかバーーカ』って」

 

「なにィ!?わざわざそれを言いに出てきやがったのか!!?撃ち落としてやる!!」

 

ウソップがキレるのもよく分かるよ。私も今から1発殴ってやろうと思った時、サウスバードの翼から腕が生えてきて拘束し、木の枝から落ちてきた。

おおー、流石ロビン、鮮やか!

 

「姿さえ見えれば…」

 

「お手柄だよ!早く森から出よう!」

 

ゾロがサウスバードの脚を掴んで持ち上げた。よし、後はクリケットの所へ戻るだけか。

 

「イリス、足元で黒い何かが動いてるぞ!」

 

「あぎゃああああああっ!!!?み、ミキータ!!」

 

1番近くに居たミキータに飛びつき逃れる事に成功した。……早く出よう、ほんとに。Gの疲労よりも情けないとこ見せてる疲労の方が大きいよ…。

 

「ムシムシの実モデルゴキブリとかあったらピンチね」

 

「ろ、ロビン…?さらっと恐ろしい事言わないでくれるかな…??」

 

な、ないでしょ流石にそんなのは……ないよね?

 

 

色々と不安を抱えながらも、何とか森を抜けた私達はクリケットに報告して少し休む事にした。

ナミさんとミキータの間に挟まれて外で家の壁にもたれながら寝る事にしよう。本当はロビンも居たら良いんだけど……何だかロビンって壁があるからな…いつかその壁を壊す事が出来たらいいな…。今日はなかなかいい感じだったし…。

それにしても疲れた…ちょっと、寝よ……。

 

 




ベラミー達がクリケットを襲ってないのは勿論、昼間にボコされてるからです。
黄金を奪うとか言ってる場合じゃなくなってるんですね彼らは。再登場するとしたら2年後になるんですかね?まだまだ先だなー(笑)

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