ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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59『女好き、天の裁きを受ける』

「あっ、戻ってきた?」

 

「ええ…!けど…もう既になんか居る…!」

 

あの後すぐに私達は島を離れて来た道を真っ直ぐ帰った。

結構急いで戻ったと思ったんだけど…ルフィの前に結構な数の人が集まってるね。他のみんなはメリー号の上か…。

 

「状況がわかんないね、あれってやっぱり空島の軍人みたいな?」

 

「わからないけど…下手に手を出すのはマズいって事は確かね。…ルフィ!!その人達に逆らっちゃダメよ!!」

 

「ああっ!!ナミさん、イリスちゃん!無事だったんだね♡」

 

ちょっと遠出しすぎて心配でもさせちゃったのだろうか。サンジはいつも通りだけどミキータも何やらホッとしてるし。

 

「逆らうなって…オイナミ!じゃあ700万ベリーの不法入国量払えるのか!?」

 

「…良かった、まだ罰金で済むのね、700万ベリーって」

 

「っうわ」

 

ウソップが言った金額を聞いてナミさんは少し顔を俯かせる。…何か今ウェイバー揺れたんだけど、速さも上がってる気がするんだけど…。

 

「高過ぎるわよ!!」

 

「ぶべェ!?」

 

ウェイバーに乗ったまま海から浜へ飛び上がり、ルフィと話してた軍人の隊長だと思われる男の顔面をウェイバーで轢いてはね飛ばす。

 

「「隊長〜〜!!!」」

 

部下達が慌てて男に駆け寄るが、かなり血だらけだよその人、大丈夫?

ナミさんはどうやら理不尽な多額請求につい体が動いてしまったようだ。ならしょうがない。

 

「コニスちゃん!さっきぶりだね」

 

「え?あ、はい…、いえ!そうではなく…、あなた方大変な事に…!」

 

「ああ…大変はいつもの事だよ、気にしないで!」

 

1歩間違えれば死ぬって状況に今まで何度も陥ってきたし…大変なんていつもの事だよね!

 

「それよりルフィ、さっきヤバいの見てきたよ、流石に大変って言葉じゃ済みそうになかった」

 

「そうよ、まずはここを離れて話を…!」

 

「待てーい!!」

 

ルフィに声をかけて私達も船に乗り込もうとした時、轢かれた隊長が起き上がってきた。

 

「我々に対する数々の暴言、それに…今のは完全な公務執行妨害、()5()()犯罪に値している…!!(ゴッド)エネルの御名においてお前達を“雲流し”に処す!!」

 

「雲流し…!?そ、そんな!!」

 

コニスちゃんがあんまりだとでも言うように声を荒らげた。雲流し?島流しみたいな?

 

「何だそれ、雲流しって気持ち良さそうだな」

 

「良くありません!逃げ場のない大きさの島雲に船ごと乗せられて骨になるまで空を彷徨い続ける刑です、死刑ですよ!!」

 

ルフィの脳天気な声にコニスちゃんがそう返す。

なるほど…つまり例のガレオン船はこの刑を受けて空から降ってきたのか。

 

「引っ捕えろ!!」

 

「「ハッ!!」」

 

部下達全員が弓を構える。

何だ、やる気なの?手っ取り早くて良いね。

 

「逃げて下さい!(かな)いません!!」

 

「よしなさいお嬢さん、それは犯罪者を庇う言動に聞こえますよ」

 

声を荒らげるコニスちゃんに隊長がそう忠告した。

犯罪者ねぇ…。

 

「下でも犯罪者、ここでも犯罪者…どうするルフィ?私達どこに行ってもお尋ね者らしいよ」

 

「何言ってんだイリス、海賊なんだから当たり前だろ」

 

そりゃそうだ。

 

「「撃て!雲の矢(ミルキーアロー)!!」

 

「ん?」

 

部下達が撃った矢は雲を生み出しながら駆け抜け、細い雲道をいくつも空中に作り出した。

彼らはその雲に乗って仮面の男がつけていたようなウェイバーの靴版で雲上を滑ってくる。

 

「ナミさん船に行ってて、すぐ終わるよ」

 

「ええ」

 

走って船に乗り込んだナミさんを確認して、雲を滑る男に視線を戻す。

敵さんはそれなりの人数なんだし…そうだ、せっかくだからあの技パクっちゃうか!

 

10倍灰(じゅうばいばい)銃乱打(ガトリング)去柳薇(さよなら)!!」

 

「なっ!?」

 

腕を10本に増やして長さも伸ばし、まるでルフィの技みたいに拳を繰り出す。

ルフィのと違って本当に10本あるからガトリングかと言われたらそうではないけど…。ていうか名前変えてるだけでやってることはクロコダイル戦の拳雨(レインファスト)と一緒なんだけど!

 

「イリスお前!それおれの技だぞ!ゴムゴムの〜…!銃乱打(ガトリング)!!!!」

 

「うごぉっ!?」

「ぐふぁっ!?」

 

「ま、まさか、悪魔の実の…!!?ごはっ…ぁ!!」

 

私達の攻撃に大半が倒れて、倒し損ねた敵もゾロとサンジがやってくれた。

まだロビンもミキータもチョッパーも戦力は残ってるし、別にウソップやナミさんが戦えない訳じゃない。

麦わらの一味ってそう考えたら凄い戦力じゃない?

 

「ところでナミ」

 

敵を全滅させてからゾロが口を開く。

 

「ウチの船の経済状況は?」

 

「残金5万ベリー」

 

「5万!?…そんなにねェのか?」

 

もって後1日2日じゃん。

消費の原因の大半がルフィの食費らしいけどね、良く食べるからなぁ。

 

「ハ…ハハハ、バカ者共め……」

 

「まだ意識があるの?タフだね」

 

流石は隊長、倒れ伏す部下とは格が違うって訳だ。

 

「我々の言う事を大人しく聞いていれば良かったものを…我々ホワイトベレー部隊はこの神の国の最も優しい法の番人だ。彼ら(・・)はこう甘くはないぞ…!これでもはや()2()()犯罪者、泣こうが喚こうが……ハハハハ…。“神の島(アッパーヤード)”の神官達によってお前達は裁かれるのだ!!へそ!!!」

 

え、へそって挨拶とかじゃないの!?神官がどうとかよりそっちの方が気になるけど!?あ、さよならとかそんな感じだった?

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「で、危なそうだから帰って来たんだけど…どうする?ハメられてこの島でも無事犯罪者になったし、やっぱりあの巨大島行く?」

 

「イリス…あんたもあの雷見たでしょ?今回は本当に危ないわ、やめといた方がいいわよ」

 

「うーん……確かにあの雷からナミさんを守り切れる保証はないけど…」

 

ホワイトベレーとかいう部隊が居なくなった事でみんな船から降りてきて、浜辺でさっき見てきた巨大島や雷の出来事を話した。

 

「キャハハっ、じゃあこうしたらどう?私とナミちゃん、ロビンとイリスちゃんでここに残れば良いんじゃないかしら?」

 

「ダメよミキータ、コニス達に迷惑がかかるわ。私達はこの島でも犯罪者、お尋ね者なんだから。…そうね、どうせもう犯罪者なんだしコニスの1人や2人くらいは拐ってもいいかもしれないけど」

 

「え」

 

コニスちゃんドン引きしてるし、それはどうかと思う!

 

「とにかくここを離れましょ、居場所がバレてるもの。…コニス、おじさん、色々ありがとね」

 

「はい…」

 

何かコニスちゃんの元気が無いけど…流石に常識ある人から見たら今の私達は怖いのかな、なんたって誘拐発言出たからね。

 

 

 

色々とやり残した事はあるけど、まずここを離れるというナミさんの判断に反論する人は誰も居なかった。唯一ルフィは不満げだったけど…。

 

そんなルフィは今、サンジと一緒に一度コニスちゃんの家へと私達が島に行ってた時に作ってもらったという料理を弁当箱に詰めに行った。

ウソップもお父様にウェイバーを修理する為の材料を貰うために付いて行った。やはりルフィ達が深海から引き揚げたガラクタの中にウェイバーが紛れ込んでいたらしい。

ミキータは何やらウソップに頼み事をしていたらしく、確認の為に3人について行った。内容は確か新しい装備がどうとか…まぁ詳しくは教えてくれなかったかな、秘密だとかで。

ちなみに残りのメンバーは私を含めてみんな船の上だ、ナミさんもTシャツ着ちゃったし。

 

「これからどうするんだ?」

 

「そうね…本当なら地上に帰りたいんだけど…」

 

聞いたチョッパー本人がナミさんの返答にがっくしと項垂れる。

 

「私はまだ用事あるんだよね、あの島に」

 

「あんたまだ言ってるの?危ないわよあそこは、本当に死ぬわ」

 

「でもルフィ弁当頼んでたし…絶対探検する気だと思うけど」

 

「うぐ…、こうなったら2人で、いやロビンもミキータも含めて4人でルフィを倒すのよ!大丈夫、イリスが居るから何とかなるわ!」

 

ルフィと戦闘とか絶対イヤだけど…。

何してくるか分かんないし。

 

「っわ!!」

 

ナミさん達と今後の話をしていた時だった。急に船体が激しく揺れて前に居たナミさんの胸にダイブする。

……何が起きたの?目の前が真っ暗で大きなぽよんに顔を挟まれてるのだけは分かるんだけど…。

 

「ふかふかー」

 

「言ってる場合か!!何なのこれ!?」

 

私は今ここから離れたくないから状況がよく分からないのだけど…どうやら船がエビに持ち上げられて運ばれてるようだ。

エビってここに連れてきてくれたやつとは別なのかな?

 

「俺達をどこかへ連れてく気だ!!おい!全員船から飛び下りろ、まだ間に合う!」

 

「ふがふが、ふが!」

 

「ふふ、赤目さんの言う通りそんな事は出来ないみたいよ、見て」

 

「絶対ソイツは何も有益な事を言ってないだろ…。…だが確かに、こりゃァ…」

 

「ええ…大型の空魚達が口を開けて追ってきてるわ、飛び込んでも勝ち目は無さそう」

 

あれかな?さっきホワイトベレーが言ってた裁きってのは、もう始まってるって事?

だとすれば船を運ぶこのエビも、それを大きく口開けて追う空魚も全て仕組まれているのか…。

 

「「天の裁き」か…追手を出すんじゃなく俺達を呼び寄せようって訳だな、横着なヤローだ」

 

「じゃあまた()()()へ!?」

 

「ふが…」

 

「あんたはいつまでそうしてんのよ!」

 

とか言いつつも引き離さないあたりナミさんが私に激甘なのを知っているのだ。

だってここ落ち着くもん…ナミさんの匂いと温もりと柔らかさとエロスに包まれて最高だもん…。

 

 

エビが私達を運び終えるのにそれ程時間はかからなかった。このエビ凄く速いし、何よりあの島はエンジェルビーチからそう遠くない。

 

そして私達は島の内部へ行き、雲の湖のような場所まで運び込まれた。

その湖の中心部には小さな祭壇があり、船ごとそこに揚げられたのだ。

 

「…ふがふが、……ふぅ、堪能した!」

 

「し過ぎよ」

 

いい加減にしておこうと思って顔を離す。

今は湖から岸に渡れるか調査する為にゾロが飛び込んで空サメと格闘している所だった。

ゾロを襲う空サメ以外にもまだサメはうようよいるな…。

 

「あァウザってェ!!」

 

ボコォ、とサメを殴って倒したゾロが祭壇へと戻ってきた。剣を使わなくても腕力が凄まじいから素手格闘で充分強いんだね。

 

「参ったな…これじゃ岸へも渡れねェ…一体どこなんだここは…」

 

神の島(アッパーヤード)ってとこの内陸の湖なのは間違い無いよね」

 

「まるでここは生け贄の祭壇ね…」

 

生け贄の祭壇か…確かにそれっぽいな。

 

「えらいトコに連れて来てくれたもんだ、あのエビ…」

 

「ここで飢えさせる事が天の裁きかしら」

 

地味な裁きもあったもんだよ。どうせなら隊長が言ってたような『神官』がお命頂戴!みたいに襲い掛かって来てくれる方がやりやすいんだけど…。

 

船底もエビに運ばれてる時の衝撃でボロボロだし…こんな状態で湖に降ろしたらとんでもない事になりそう。

 

「どうする?」

 

「とにかく船を直さねェ事にはこの島から出られねェ…チョッパー直しとけ」

 

「おれ!?わかった」

 

()()()()って…あんた何かする気?」

 

「どうにかして森へ入る、とりあえずここは拠点にしといた方がいいと思うんだ。きっとルフィ達が俺達を探しにここへ向かってる」

 

ゾロの言う事は正しいね、私達もここでじっとしているのは得策じゃなさそうだし、かと言って全員で動いちゃ万が一ルフィ達がここへ来ても誰もいないって事になるし。

 

「この島には神がいるんだろ、ちょっと会ってくる」

 

「神かぁ…私もこの島で気になる事があるんだよね…、ね、ロビン」

 

「そうね、なら私が剣士さんについていくわ。赤目さんは残った方がいいでしょう?」

 

ナミさんを残していくのが心配だって思ってるのを察してくれたのか、ロビンがそう提案してくれた。

私はそれを了承して、探索組はロビン、ゾロ。居残り組は私、ナミさん、チョッパーとなった。

 

「あのつるが使えそうだな」

 

「あ、ホントね、いい考え」

 

丁度船の近くに長いつるがぶら下がっており、それを掴んで跳べば前世で世界一有名だった架空の野生児みたく岸まで辿り着ける筈だ。

 

「ウン!ア〜〜…ウウン!!……アーーーアアーーーー…」

 

そんな感じでゾロがお決まりの掛け声と共に岸まで揺られていった。

こっちの世界でもそれって浸透してるんだ…。

ロビンは普通に掴まって無言だったから、やっぱりゾロのテンションがアレだっただけなのかもしれない…。

 

「じゃあ船番頼むぞ!!」

 

「よろしくね!」

 

「おう!2人とも気をつけて行けよ!無事に帰って来いよ!」

 

チョッパーが見送りの声をあげ、2人はそれを見て大きな森に入っていった。

 

 

「じゃあ私達は船の修理でもしちゃおうか」

 

「そうね、チョッパー1人だけだと大変でしょ」

 

「いいのか!?助かるよ」

 

「あ、そうだ、念の為これはチョッパーが持ってたら?」

 

そう言って私は船のメインマストにかけてあったホイッスルをチョッパーに渡す。

これはガン・フォールから貰った例の笛で、誰が持っておくかという話になった時に「平等にメインマストにでもかけておこう、困った人が吹いてね」と決まって置いてあったものだ。

今はいつどこから神官とやらが現れてもおかしくない。ナミさんは何があっても守るから笛はチョッパーに持ってて貰おう。

 

「あ、ありがとう!これでイリスだけじゃなく“空の騎士”にも助けて貰えるぞ…!」

 

何だかんだ言っても今の状況はかなり危険だからねぇ…。

ロビンもチョッパーを置いていけないと思ったから私を残したって理由もあるのかもしれない。

 

「じゃあ私とナミさんは船底でも直してこようかな、チョッパーは突き上げる海流(ノックアップストリーム)で壊れたマストとかお願いできる?」

 

「おう、任せてくれ!」

 

ウソップの手伝いをしたりして船の修理経験はこの一味だとチョッパーが2番目に多いから頼りになるよ。

私に関してはセンスなさ過ぎてウソップから木材を運ぶ係しか任命された事ないんだけど…今回は上手くいくかな??

 

「うわ…間近で見ると凄い壊されてるね…」

 

「そうね…これはカヤが見たら怒るわよ」

 

「う……」

 

せっかくカヤに貰った船だと言うのに…。

……会いたくなってきたなぁ。

 

 

『ピィイイイイイ〜〜〜!!!!!』

 

 

「……え、笛の音!?」

 

「いくらなんでも早過ぎじゃない!?」

 

まだ何も修理に取り掛かってないけど、チョッパーが笛を吹いたって事はそれなりの事態なんだろう。

私とナミさんは急いでチョッパーのいるデッキに乗り込んだ。

 

「何だ、殺していい生け贄は弱そうなお前ら3人だけか?」

 

「い、イリス〜!」

 

慌てたチョッパーがとてとてと私の背後に隠れる。

船の近くには大きな鳥に乗った槍を武器に持つ『神官』らしき奴がいた。

こいつはあの時島で見た4人のうちの1人…パイロットみたいな男だね。パイロットゴーグルのせいで余計にそう見えるよ。

 

「チョッパー、ナミさん…出来るだけ遠くへ。…こいつは引き受けた」

 

「ハハッ!何だ1番乗りはてめェか、ガキ。度胸だけは認めてやらんでもないがな…それは無謀ってモンだろう、実に腹立たしい」

 

「奇遇だね、私もキレてるよ。…ナミさんの…嫁の命を狙う輩は、誰であろうと潰してやる」

 

ゴキ、と指を鳴らしてパイロット野郎に向き直る。

…相手の力量は分かんないけど…ここは何としても食い止めないとナミさんとチョッパーが危険だからね、絶対に負けられない!

 

 


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