「おわぁぁあああああ!!」
「へぶっ!」
「うーん…いたた…!」
巨大ヘビに飲まれて随分と長い胃袋の中に来てしまった…。
ナミさんとアイサちゃんへの衝撃は勿論最小限に留めたけどね、そりゃもう全力で。
「大丈夫?2人共」
「平気よ、ありがと」
「あたいも」
良かった…。
ガン・フォールもピエールも何ともなさそうだね。
「…お主ら、なぜ船におらぬのだ…。…いや、それよりその子はシャンディアでは…」
「げげっ!神っ!!は…排除してやるっ!!」
「やめなさいったら」
シャンディアからすれば元神のガン・フォールも敵なのか…。
「おお〜〜〜〜っ!!?イリス、ナミ〜〜〜!!!変なおっさん!!何やってんだお前らこんな不思議洞窟で〜〜〜!!」
「ルフィ!!……なにしてんの?」
どうしてかは分からないけど、ヘビの胃袋でルフィと出会った。服も少し溶かされてるし…半泣きだし、だいぶ長い事ここに居たんだろうな…。
「キャプテン…何してるのここで」
「聞いてくれよ!急に足場が崩れたと思ったらこの洞窟にいてよ!!動いたり海雲が流れ込んできたりすんだよこの不思議洞窟!」
「まぁ…そりゃね。私達も今ヘビに食われたトコなんだけど…」
「ヘビに…!?そうか、そりゃ大変だったな…!お前らヘビに食われたのか…!!」
「だからあんたもそうなのよ!!ここがヘビのお腹の中なの!!」
ぐいぐいとルフィの鼻を引っ張りながら言うナミさん。
そこまで言ってやっとルフィは現状を理解してくれたのか驚愕の表情を浮かべた。
「よし、じゃあこいつの尻の穴を探そう」
「「どこから出る気だ!」」
ボコン!と私とナミさんの拳が脳天に炸裂する。大丈夫大丈夫、ゴムだから打撃は効かないからね!
「…とにかく、この蛇今虫の居所が悪いみたいで私達食べられたのよ、また暴れ出さない内に早くここから……ん?」
「ん?」
ナミさんはそこまで言ってからルフィを見て、まさか…という顔をした。
ナミさんだけじゃなく、この場にいるルフィ以外の全員が何となく察してしまったのだ。
「あんた……まさかずっとここで暴れてたんじゃ…」
「ああ、ブッ壊して外出ようと思ってよ、あはは、あー腹減った、なんか食いもん持ってねェか?」
「………」
「……どうした?」
「この……どバカ〜〜!!!!」
「ギャーーーー!!!?」
ナミさんの拳骨がまたもやルフィに落ちた。
ルフィが中から攻撃を繰り返してたからヘビの機嫌が悪かったのか…まぁ…食べられた事に気付かなかったらここがヘビの胃袋だとは気付かないよね、なんたって広すぎるし、長いし。
「とりあえず…口っぽい方に歩いてみる?」
「どっちよソレは」
「口っぽい方だろ?あっちだな、口っぽい」
「あたい分かった、この人バカだ」
バカかもしれないけどルフィは凄いんだよ!!いやホントに!!
それにバカってより素直なだけだから!物事を考えられない訳じゃないし!
「外はどうなってるんだろう…ミキータ達大丈夫かな…」
歩きながらそう呟く。一緒にワイパーっていうモヒカンも居たし…なんならこのヘビも居るもんね…、どうせならみんな丸呑みされた方が安心できる状況かも、なんて。
「ゾロも居たし大丈夫でしょ、それより心配なのはチョッパーとロビンよ、2人はどこに行ったの?」
「とにかく外に出ないことには始まらないのである。仲間が心配なのなら進むしかあるまい」
「だよね…」
このままじゃ状況が一切分からないから不安が募る一方だ。
私達は何とか胃液を避けながら長い長い胃袋を歩き続ける。
…どれだけ歩いても先が見えないなぁ…。
「っ!これは…!」
「ピエーー!」
ヘビがまた体勢を変えたのか、足場が無くなり下へ落ちていく。
横長の洞窟がいきなり縦長になるとか、殺す気満々か!
「我輩は飛んでゆく!」
「ええ、もう切りがない!ウェイバーに掴まって!一気にエンジンかけるから!」
「!!ナミさん!下に出口発見!ヘビが口開いてる!」
「一気に行くわよ!!あの口が閉じる前に!!」
落下しながらも器用にウェイバーに乗ったナミさんが言って、ルフィが腕を伸ばしてウェイバーと私を掴む。私も近くにいたアイサちゃんを引き寄せた。よし、これでみんな脱出でき……、……ん?ルフィ…それ掴んでるトコ…それ…!
「行っっくわよ!!」
「は〜〜!やっと出られる!!」
「待ってルフィ!それ掴まってるトコ噴射口……あぶっ!?」
「ぶほァ!」
ナミさんとガン・フォール、ピエールが凄いスピードでヘビの口へ飛んでいく。
その際にウェイバーから大量に噴射された白煙に押し出されてルフィがウェイバーから手を離してしまった…ということはつまり私とアイサちゃんも同じという訳で…。
「うわぁあああ!!?あ、アイサちゃん!」
アイサちゃんはがしっと掴んでおく。このままヘビが口を開き続けてくれてたなら良かったけどそう上手く行くはずもなく…ナミさんとガン・フォールが外に出た瞬間に閉じてしまった。
「ぐへっ!」
「ふげっ!!」
「いったぁ…、あー…また逆戻りかぁ…」
ヘビの体勢が同じならずっと下に落下して口から出れたのに、もう元に戻ったのかまたもや口がどっちか分からなくなってしまった。
「えれェ暴れやがったな…!」
「ピエ〜!」
「あ、ピエール!残ってくれたんだ!」
それは助かる。もうピエールに乗って口に向かおうよ。
「アホ!!何で噴射口なんて掴むんだよ!!」
「悪ィ悪ィ!まァ無事だったんだから細かい事は気にすんな!」
「もうやだこいつ…!」
「ルフィ、アイサちゃん、とりあえず早くここから脱出しよう、ナミさんが外に出ちゃった」
アイサちゃんを持ち上げてピエールに乗りながら私は話す。
「ゾロも居るんだろ?」
「居るけど心配は心配なの!ナミさんだけじゃない…ミキータも、ロビンだって心配なの〜!」
「イリスは心配性だなァ」
「ルフィが呑気なだけでしょ…」
と言いながらもルフィもピエールに乗った。
お、3人も乗ってるのに飛べるんだ、結構力あるねピエール。……2人子供カウントだから実質2人しか乗ってないとか言わないで。
***
「あ!あれ口だよね?」
「!閉じてるけどそうだよ!はぁーやっと出られる…けどワイパーに怒られるよ…」
ようやく出口に辿り着いた私達は、ヘビの口をこじ開けて外に出た。色々ハプニングはあったけど結構早めに出られてよかった…。
「あれ?石の地面…?」
「ホントだ、土でもないし…どこ此処?」
「うおおーー!!出ったァ!!出られたァ〜〜っ!!」
ルフィが高い建物に登って叫んでる。私もルフィの隣まで行って景色を見渡してみた。
「…凄い、なんて広大な……遺跡、だよね?」
「ここにあんのか…!?でっけェ“黄金の鐘”!!」
黄金の鐘か…そう言えばそんな事もクリケット言ってたっけ。
それにしても見渡す限り一面遺跡だらけだ。
さっきゾロ達がいたとこの遺跡とは比べ物にならない規模だし…。
「もしかして……ここ、あたい達の故郷…?」
「…黄金都市、シャンドラ。…黄金が見当たらないけど………ん?」
「あ、ちょっとどこ行くんだよ!?」
遺跡を飛び降りて今目に入った光景を確認する為に走る。
…でっかい穴が地面にぽっかり空いてる所の近くに……見えた。
「……っ、な、ナミさん…?ミキータ…ロビンも……」
それにゾロも、チョッパーまで…!!どうして……倒れてるの…?
「おいイリス!急に走ってどうした……、!!…お前ら…!!おい、オイゾロ!!何があったんだよ!!お前が居ながらどうして…!」
ルフィがゾロを抱き上げて揺するが反応がない。…全員黒く何かで焼かれたようになっていて…ガン・フォールにワイパーまで…!
「ワイパー!!うわ〜〜ん!!」
「…あのバズーカの奴だ…!あんなに強ェのに…みんな誰にやられたんだ…!」
「エネルだよ!!…こんな事できるのあいつしかいない…!」
「エネル…って、“神”か!?」
…エネル……!!!
「蛇の中にいる間ずっと
「……うゥ」
「!ロビン!!」
かすかに意識が残っていたのか、ロビンが呻き声を上げたので急いで駆け寄って抱き上げる。
「…ごめんなさい、みんなエネルにやられてしまったわ…」
「何を謝る必要があるの!?それで、ソイツは何処!?」
「…わからない……ハァ…よく、聞いて……」
朦朧とした意識の中で、ロビンは何かを伝えようと必死に口を動かす。
「このままだと…この国は、スカイピアは消滅してしまう……」
「空島が!?」
「…あ…あたい達の村も!?」
「“全て”よ…!!空にいる全ての人々を地上へ還すと…言っていたわ…」
「…奴のどこに、そんな事をする資格があるんだ…!!」
それに…みんなをここまで…、私の大事な人達を…!!!
「…航海士さんは、立派だったわ。エネルについていけば…少なくとも危害を加えられる事は無かった……けど、赤目さん以外の人に着いて行くくらいなら…って……勿論、ミス・バレンタインも…」
「…!!…バカ…バカだよみんな…、そんな…やられちゃったら意味ないじゃん!!」
地に倒れ伏すナミさんとミキータを見て、視線を落とす。
「…赤目さん、彼女達は別に、意味もなくやられた訳じゃないと思うわ」
「え?」
「必ず…あなたがどうにかしてくれるだろうって、信頼している…ただそれだけなんじゃないかしら…」
……信頼、私が、奴を倒すことが出来ると…?
奴の力は雷そのもの、果たして勝てるかどうか…。
「……ルフィ」
「どうした」
「一発私を殴ってよ」
「え!?あ、あんた何言ってんだよ!」
「おう」
「あんたも何頷いてんだ!!」
ロビンを地に寝かせて目を瞑ると、直後に顔面へ強烈な打撃が飛んできた。
私はその勢いで後方へと飛ばされ、背後にあった石の壁にめり込んで止まる。
「赤目さん……?何を…」
「……ふん!」
バキ!と石から体を出して立ち上がり、首を回す。
「ーーーーは〜効いた効いた、バカな考えが吹っ飛ぶくらい効いたよ」
私はさっき、奴を倒せるのかと思った。…いや、思ってしまったというべきか。
ここまでナミさん達が私を信頼してくれて、私が居るからと体を張ってまで勝てないとわかっているエネルに戦いを挑んだ彼女達の気持ちを…蔑ろにする所だったんだ。
勝てるかどうか?下らないね。
「ブッ飛ばそう、神を名乗るペテン師を…私の女に手を出した外道を!!」
バシッと手の平に拳をぶつけて宣言する。ルフィも強く頷き、ロビンはそんな私を見てため息をつきながら笑った。
「……!」
体から力が溢れ出てくる感覚がする…この感じ…クロコダイルの時と同じ…!
「えっ!?あ、あんたいきなりどうしたのその髪の色…!それにその、頭の飾りみたいな…!」
「あー…やっぱりそうなってる?」
でも前みたいに体は大きくなってないし、衝撃波も出てないみたい…。出そうと思ったら出せるのかな?分かんないや…そもそもこの状態が何なのか分かってないし。
「…航海士さん達は私が避難させておくわ…だから何も気にしないで」
「うん、ありがとうロビン、けど無理しないでね」
「それから…黄金郷の、ノーランドの日誌にあった“黄金の鐘”…あれは恐らく空にある。…あの蔓の天辺…エネルはきっとそこを目指してるわ」
…!!流石ロビン…場所の特定は済んでたのか!
「でもよ、今エネルの奴がどこに行ったのかわかんねェんだろ?」
「…ううん、あたいわかる!!この島で“声”が1つ動いてる…すぐちかく!きっとエネルだ!!」
「よっし…じゃあそこまで案内してくれる?」
アイサちゃんは迷わず頷いた。
急がないと…このまま奴の好きにはさせられない…!この島を、みんなを守る!!