ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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65『女好き、届け鐘の音、終焉の灯』

「お、みんな居た!」

 

ズボッと雲を走り抜ければ、上の階層にはロビンが居てみんなはその近くに運ばれていた。

 

「赤目さん!」

 

「ロビン!みんなを運んでくれてありがとう!」

 

「ええ、…?その腕の黄金はなあに?」

 

「ロビン!この蔓の天辺に黄金の鐘があるんだな!?」

 

彼女の質問に今はそれどころじゃないとでも言うかのようにルフィが問う。

 

「それは…鐘楼があるとすれば……そこしかないわ、だけどもう…」

 

「よし!」

 

それだけ聞いて頷くと、上の船を睨んで蔓を走って登り出した。

…なら私も、そろそろ出し惜しみなんてしてらんないよね!

 

「待ってろエネル…!」

 

ルフィの後を追うように蔓を登る。ここからは本当の本当に本気だ!!全・倍加(オールインクリース)!!

 

「おっ!」

 

いつものように体を大きくした瞬間にあの時のような衝撃波を放つオーラが体から溢れ出す。

荒れ狂うそいつは一旦体に纏わせて、一緒に戦うだろうルフィの邪魔にならないようにした。

 

彗星の別れ(コメット・アヴィオ)でもそうだったけど、このオーラを纏えば更に身体能力が向上するんだよね…絶対何かあるよこの変化。

 

「あの船…昇るの速いな!でも…!!」

 

私の方が速い!!50倍なめるなっ!!

走って登るのも億劫だから、ぴょんぴょん跳んで上を目指そうかな!

 

「イリス!」

 

「私に掴まって!あの船に戻るよ!」

 

途中でルフィを見つけて、伸ばしてきた腕を掴みまた登る。

 

「…!マズい…始まっちゃったよ、空島全体の落雷…!!」

 

「なんだこれ…!」

 

四方八方から雷が落ちる音が聞こえてくる。空を見れば、ここは雲の上だと言うのに雷雲が空を覆い尽くしてそこから次々に雷を発生させていた。

 

「なにが“デスピア”…!そんなモンで人を救済する神なんてこっちから願い下げだよ!」

 

「あァ!」

 

気を引き締めて蔓を登るスピードを上げた。

船はまだまだ上にあるが、この調子なら間に合う…!いや、間に合わせてみせる!!

 

「ルフィ…わかってるよね!奴に空島は堕とさせない…!」

 

「わかってる!!黄金の鐘もやらねェ…!あれはなんの覚悟もねェ奴が奪っていいモンじゃねェんだ!!」

 

ルフィはきっと、クリケット…そしてモンブラン家の人達の為に、ノーランドの為に鐘の音を響かせようとしてる筈だ。

だから黄金だけでその鐘の価値を決め付けるエネルを許さないんだ。

 

「だぁ!!」

 

思い切り跳んで雲を突き抜ければ、ようやく巨大蔓の天辺が見えた。

くそ、船はもう天辺越えてるのか!

 

「何だここは!」

 

「わかんない…」

 

周りを見れば、社が全壊して辺りに残骸が散らばっていた。

焼け跡から見てつい最近こうなったのだろうし、状況を鑑みればエネルの仕業なのは間違いない。

 

それより…。

 

「エネル!!」

 

キッと船を見上げて上から私達を見下ろすエネルを見る。

ルフィも同じように空を見上げて蔓の天辺を目指して登り出した。

 

「!ルフィ!」

 

「!うわっ…」

 

ルフィが登り出した瞬間に、蔓の天辺に雷が落ちる。

その衝撃で巨大蔓の先端が折れ、登るための足場も船に辿り着くまでの道も無くなってしまい、蔓の先端と共にルフィが下まで落ちそうになった。

 

「伸びて!」

 

ぐーっと腕を伸ばしてルフィを掴み、長さを戻して回収する。

あの右腕の黄金さえなければルフィはもっと身軽に動けるのに…!

 

「わ、悪ィイリス…!…にゃろ!!」

 

ここからでもエネルが高笑いしているのがわかる。

蔓はエネルに先端を折られたせいで余計船まで距離が出来てしまったし…まだ翔べば届くか?

 

「ん!?」

 

突然にエネルが雷となり船から消えたかと思うと、エンジェル島の真上から光が挿した。…雷雲が無くなった…?違う…雷雲が形を変えているんだ…!

 

雷雲は徐々に形を変え、次第に球状となる。丸い雷雲など流石にこの世界でも見た事ないが…。

 

「……ッ!」

 

その雷雲がエンジェル島へと落ちる。今まで見たエネルの繰り出す雷とは次元の違う規模のそいつは、とてつもない落雷音を響かせ大気を震わし、電撃が一面に迸る程の威力を持って海雲ごとエンジェル島を消し去ってしまった。

 

「…エンジェル島が…」

 

「ヤハハハ!!どうだ?空から消える間抜けな島を見たか?」

 

船からエネルかニヤリと笑いながら挑発してきた。

エンジェル島…住人は大丈夫なんだろうか。

 

「…間抜け…?勝ち誇った顔した間抜けならそこにいるよ」

 

「…フン、相変わらず口の減らない小娘だ。だが、私はもうその様な挑発に乗ってやる程貴様等を甘くは見ていない。私が欲する物さえ手に入れたら…あの「雷迎(らいごう)」により今度はこのスカイピアを丸ごと消してやる、お前達の真下に佇むいくつかの“声“も然り…」

 

…声?ということはみんな起きたのか?

 

「この空に不相応な“人の国”を消し去り、全てをあるべき姿に還すのだ!!それが神である私の務め!!ヤハハハ…さらばだ娘、ゴムの男…もう二度と会うことも無い!そこで指をくわえて死期を待て、もはや誰も私を止められん!!」

 

「お前の思い通りにさせるかァ!!」

 

「くどい!」

 

ルフィが登ろうとした蔓に雷を落としてルフィの行く手を阻む。

その間にも船は上へと昇っていき、またかなり高い所まで行ってしまった。

 

「畜生…!おれは、おっさん達に教えてやるんだ!!おれは!!鐘をならすんだァーーー!!!」

 

遠ざかる船に雄叫びを上げるルフィだが、その顔は打つ手の無い悔しさで溢れていた。

 

「… 神背・倍加(ヒューマ・インクリース)

 

私は自身の分身とも言える2体を出して互いに頷き合う。分身と言っても私は私…思考回路も私だ、今考えてることも既に伝わってる筈!

 

「…船の上昇が止まった、きっとあそこに黄金の鐘がある!」

 

「思いっきり鳴らしてやろうよルフィ!」

 

「『私』達が連れて行くから!」

 

「え!どれがイリスだ!?」

 

「「「私が」」」

 

…3人増えたら分かりにくいなぁ。

 

「じゃああなたイリであなたリスね、“私”はイリスで…」

 

「ちょっと待って、なんでちゃっかり私の立場奪おうとしてるの?ドッペルゲンガー的なホラーなの?」

 

「あっはっは!『私』達はもともとイリスなんだから、分かりにくいのは仕方ないよ…それより、次のが来るみたいだよ」

 

みんなで空を見上げれば、そこにはさっきの数倍は大きな雷迎がスカイピアを覆っていた。

…確かに、あれはマズいね…当たったら痛そうだ。

 

「どうするんだ、イリス」

 

「跳んで連れてく!…どう?」

 

「…しし、いいな!」

 

ルフィが頷いたのを見て、私達3人は全力で上に跳ぶ。

『私』が両足を私と“私”の足裏に当て、両腕はルフィに向かって伸ばした。

 

「じゃ、私は上に行くよ」

 

「踏み台ご苦労」

 

「オイ今踏み台って言ったのどの『私』だ!」

 

文句を言いつつも私達が跳ぶ勢いに合わせて強く蹴り上げた『私』は、今度は両腕でルフィの腕を掴み思い切り空に放り投げ私達にパスした。

 

「ルフィ!行って!!後は任せたよ『私』達!!」

 

「任された!!」

 

“私”がさっきと同じように私を上へと蹴り上げ、飛んできたルフィを上に投げた。

 

「よし…!後は黄金の鐘…」

 

「イリス!あのゴロゴロにおれを投げろ!!」

 

「!……いいけど、死なないで、ね!!!!」

 

ゴゥ!とルフィを雷迎の中へと放り投げる。

その際エネルに向かって舌を出してやるとあからさまに顔を歪めた。

 

「どうしたの?挑発に乗ってそうな顔してるけど?」

 

「…ヤハハハ!貴様は何を考えている?いかにゴムの男だろうと…この雷迎は中で激しい気流と幕放電が蠢いているのだ、無事で済む道理などない!!」

 

「道理?そんなのがルフィに通用するわけないじゃん」

 

「…!なに!?」

 

中の幕放電が異常にバリバリと発生する。

よくわかんないけど、ルフィの右手に黄金があったから雷がそれを伝って放電しているのかな?中で出し切ってくれたら…この雷迎も消せるかもしれない!!

 

「行けェ!ルフィ!!」

 

「いや、サボらずにあんたも行け」

 

「へ?…おおおおおっ!?ちょ、私はゴム人間じゃないからああぁぁぁ」

 

下から腕が伸びてきて、グン、と“私”が私を雷迎の中に投げ入れる。

鬼!私の鬼!!

 

「晴れろ〜〜〜〜!!!!うおおおおおおお!!!!」

 

その時、丁度雷迎が勢いよく弾け飛ぶ。ルフィが間に合ったんだ…よ、良かった…私があの中に居ても意味ないもんね!…多分、“私”が私を投げた理由は…ここからにあるんだ。

 

「…!!おのれ…雷迎を…!!青海のサルが…!不届き者めがァー!!」

 

「!」

 

エネルは怒声と共に体を激しい雷で覆う。

その次の瞬間には、巨大な雷の巨人となってそこに存在していた。

 

「2億V… “雷神(アマル)”!!」

 

「…なんじゃありゃ…!?」

 

雷迎を破壊したルフィがエネルの姿を見てギョッとする。

…だけど、それより大事なのは…。

 

「ルフィ、見えるよね…エネルの…船の後ろ!」

 

「あァ!“黄金の鐘”だ!!」

 

雷迎も壊して島を守った、なら…後は黄金の鐘を鳴らすだけだ!!

 

「手を!」

 

ルフィに左手を出してもらって、それを両腕で掴む。

 

「行くよ…!50倍灰(ごじゅうばいばい)!!ゴムゴムのォ!!!」

 

「おおおおおッ!!!」

 

グルグルと空中でルフィを回す。ルフィは自分でも勢いをつけて更に回転の速度が上がっていき、黄金のついた腕も伸びて行く。

次第に黄金ではなく、金色の何かが私を中心に星の環のようになるほどの高速回転となった。

 

「串刺しにしてくれる!!」

 

2本の巨大な槍を構えるエネル。

…私の嫁や、島や、空や、黄金や、誇りや…何もかもを嘲笑ったこいつに…くれてやる!!!!!

 

 

「う、おおおおおおおお!!!!!“黄金の星環(アウルステラ)”ァアアアアアア!!!!!」

 

「!!速い…!ゴッ…ハ!?」

 

回転の勢いを全て乗せてエネルに叩きつける。

後ろの鐘まで勢いよく振り切り、エネルごと鐘に勢いよく輝く金塊をぶつけ奴の意識を刈り取った。

 

「届け〜〜〜〜!!!!!」

 

「……綺麗…!」

 

ゴーン…ゴーン…と大きな音色が鳴り響く。

ルフィの右腕について離れなかった黄金が砕け散るほどの勢いで鳴らされたその鐘は…まるで今この瞬間をずっと待っていたかのように綺麗で…。

 

「聞こえてるか!?ひし形のおっさん!サル達ィ!!“黄金郷”はあったぞ〜〜〜!!!」

 

「届いてるよ…!だってこんなにも大きくて綺麗なんだから!!」

 

ニッとルフィに笑いかけ、ルフィもにしし、と笑った。

 

「…ん!?」

 

突然私の体の変化が解け、体も通常に戻った。

…しまった、ここ結構高いのに…能力使えない!

 

「イリス!」

 

「わっ…ありがとう…!死ぬかと思った…」

 

ルフィに掴まれて近くの小さな島雲に降りる。

…能力が使えないどころか、体もろくに動きません!前と違って倒れる事はないけど…反動はあるんだ…。

 

「あ…エネルの船が…」

 

飛行船…マクシムだっけ、そいつがエネルの制御から外れた事によって重力に従い落ちてゆく。

幸い下は海雲なので落ちた所で問題はない。

なんならエネルも船と一緒に落ちているが…まぁいいか。

 

「…黄金の鐘も、落ちちゃったけどいいの?」

 

「いいさ、鐘は鳴らせたんだ」

 

なら、早いとこ下に降りるかな。

……動けないんだけどね。

 

「ナミさん達が心配だよ、下に降りよう…ていうか降ろして、運んで!」

 

「仕方ねェなァ、しっかり掴まってろよ!」

 

「だから掴めないんだってば!指先1つ足りとも動かないの!」

 

反動が凄まじいんだよ!

 

…それにしても、この雲巨大蔓と距離あるな…どうやって下に降りるんだろ。

 

「ルフィ、ここからあの蔓まで届く……の?」

 

「ん?」

 

私達がいた雲から巨大蔓に飛び移るのかと思ったら、ルフィは私を背負ったまま下に飛び降りやがった。

これ、死んだわ…。

 

「ちょぉおおおおおおおっ!!!!わたし、わた、わたし能力使えないからね!!いま!!使えないからね!!!死ぬ!死ぬから!!」

 

「なんだよ、降りようって言ったのイリスだろ」

 

「そうだよ!降りようって言ったの!!決して“落ちよう”なんて言ってないから〜〜っ!!!」

 

そりゃルフィはゴム人間だから!?平気かもしんないけど!?

 

「ゴムゴムの…風船!!」

 

「わぷっ!」

 

地面に激突する瞬間にルフィの体が膨らんで衝撃を和らげた。

反動でぼよーんと上に飛び、何回かバウンドしてようやく地面に立つことが出来たが…。

 

「…はぁ…はぁ、寿命縮んだ、絶対縮んだ」

 

「何言ってんだよ、大袈裟だなァ」

 

「大袈裟なわけあるかい!!…ん?メリー号じゃん!」

 

雲から飛び降りて地面に着くまでに風にでも煽られたか、島の端まで来ていたみたいでメリー号を発見した。

ということは…。

 

「あ…イリスさん!ルフィさんも!」

 

「コニスちゃん!!」

 

やっぱり居た!コニスちゃん!

 

「…って、どうしたのその頭の怪我!…ん?サンジとウソップは?」

 

「サンジさんもウソップさんも何処に行かれたのか…。怪我は何でもありません、転びました」

 

明らかにウソでしょ…その怪我は攻撃の痕だよ。

…まぁ、コニスちゃんが隠すなら深くは聞かないけどさ。

 

「お父様はどこに?」

 

「!…父は…、それが、私を庇って…エネルに…!」

 

「……、そっか…」

 

「コニス…」

 

「コニスさん…」

 

視線を逸らして俯くコニスちゃんに、私は何も言えなかった。

ルフィも険しい顔付きになり、お父様も顔に影を落とす。

 

「……ってあなたの話だよっ!!!」

 

「生きててすいません!!」

 

コニスさん…じゃないよ!!コニスちゃんも目が点になってるじゃん!!

 

「父上〜!!」

 

「おっと…」

 

感極まって抱きつくコニスちゃんを受け止めるお父様。人騒がせ過ぎるでしょ…。

 

「…父上…!どうやって…!」

 

「ええ、すいません。気が付いたら下層に叩き落とされていまして…」

 

どうやらお父様は、エネルの雷に打たれそうになった所を雲の下に落ちた事で逃れることが出来ていたようだ。

 

「…まぁ、なにはともあれ良かったよ」

 

「ええ…本当にスカイピアを救って頂いて…、ありがとうございました!これでこの国は本当の自由を取り戻せたんです…!」

 

「気にすんな、おれもアイツはブッ飛ばしたかったんだ」

 

「私も」

 

「…何かお礼をしたいのですが、生憎私は何も渡せるものが…」

 

ぴく、と耳が跳ねた。ほうほう、お礼とな??ふむ、どんな事でも??

 

ルフィがまたやってるよみたいな顔で見てきたが無視しよう。

 

「なら、私の嫁になって!コニスちゃんは私の嫁!」

 

「え?お、お嫁ですか…?そうですね、そんな事でよろしいのでしたら…不束者ですが」

 

「よろしいのです!!やったー!エネル倒した甲斐あるよ!うん!」

 

「元気じゃん、歩けねェのか?」

 

「それは無理、動かないもん」

 

元気なのは声だけだよ!体は今もぐでーんとしてるからね!

 

でも、やったね。お父様もぽけーっとしてるし。…いきなり娘が口説かれて放心してるだけなのかもしれない…。

…まぁ、よし!後はナミさん達と合流するだけか!

 

「じゃ、遺跡まで行こう!コニスちゃんも来るよね?」

 

「あ、はい!」

 

もう場所は大体分かってるし、ルフィさえ見張ってれば迷わず着く筈。

 

そんな感じで私達はみんなと合流する為に神の島(アッパーヤード)の森へ入った。

…ってルフィ!そっちじゃないよ!!

 

 

 

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