ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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6『女好き、嫉妬する』

「お前らのキャプテンならな…」

 

「な、何だ!何をした……!」

 

ちらちらルフィの食べ終わった肉の残骸を見ながらわたわたしてる子供達。そんな子供達にゾロが一言。

 

「喰っちまった」

 

「「ぎいやああああ鬼ババア〜〜〜っ!!」」

 

「なんで私を見てんのよ!!」

 

「ガキ共ナミさんのどこがババアなんだああん!?」

 

「あんたもちょっと黙ってて!」

 

ぶくぶく泡吹かせて気絶した子供達。

ていうか、いくらルフィでも人は食わないからね。……多分!

 

数分後、わりと早く起きてきた三人に本当の事を伝えると、ウソップは病弱な子のいる屋敷に行ってるのだとか。

極秘任務ってそのことか。

 

「何しに行ったんだよ」

 

お、珍しくルフィが他人の動向に関心を持ってる。

 

「うそつきに」

 

「だめじゃねェか」

 

呆れてツッコむルフィに、子供達は駄目ではなく立派なんだと言う。

ウソをつきにいくのが立派って、どういうこと?

話が見えなくて顔を見合わせる私たちに、三人は説明してくれた。

 

 

「ーーーと言うわけなんだ」

 

「なんだ、あいつ偉いじゃん」

 

「へー、じゃあお嬢様を元気づけるために、一年前からずっとウソつきに通ってるんだ」

 

「うそつきはうそつきでも、私はそんな嘘をつける人は尊敬しますよ、ね、ナミさん!」

 

三人の話によると、ウソップは病弱でろくに外出することもままならないお嬢様のために、こうして心躍る嘘をつきに行ってるらしい。

 

「もしかして、もうお嬢様元気なのか?」

 

「うん、だいぶね、キャプテンのおかげで!」

 

誇らしげに頷いた子供を見て、ルフィはやっぱり屋敷に船をもらいに行こうと言い出した。

止めても無駄そうな雰囲気がバシバシ伝わってくるので、私は流れに身を任せたのだった。

 

 

屋敷前

 

「うわー!おっきな屋敷!すごい、ナミさんこれ凄い!」

 

「あー、はいはい、そうしてれば本当に子供みたいね…」

 

いや、日本人ならみなこうなるって、だって豪邸だよ?

 

そうこうしてるうちにもルフィが門をよじ登って敷地内に入っていったので、私たちも後に続く。

…これ、普通に不法侵入だよね。

 

裏庭に続く道を歩いていくと、ウソップが誰かと話しているのが見えた。

 

「おーい、キャプテーン!」

 

「げっ!お前ら何しに来たんだ!」

 

ウソップの話し相手を見る。

…うわ、やべぇ、なんだこの美少女。

 

薄い肩にかかるほどの金髪、病弱だと一目でわかるほどの白い肌と細い体は、なんだか守ってあげたくなる雰囲気を纏ってる。

そんな子が自室の窓を開けてウソップと話してたのか…くそ!羨ましいな!!

 

だけど私は明らか人の女って感じの人には手を出さないようにしているのだ。確かにこのお嬢様はえっちないたずらして赤面させたい欲求に駆られる…けど!それでもウソップの女…!!あぁーーっ!ウソップになりたい!!

 

「ん?どうしたんだイリス、すげェ顔してよ」

 

「ん、んんっ!何でもない…よ、自分の中の獣を鎮めたの」

 

「あんた、どうしたの?」

 

「手を出したらいけない大好物が目の前に転がってるの…ここは危険だから、ちょっと向こう行ってるね…」

 

「ああ…大体理解したわ、心配して損した」

 

ナミさんの呆れ顔が刺さる。…ん?なんか今回の呆れ顔はキレがないな。

 

「…なんでちょっと嫌な気持ちになってんのよ私は」

 

ぼそ、と呟いたナミさんの言葉は、私に届くことはなかった。

 

 

 

 

「美人で、恋人候補がいなくて、びびってくる至高の女性なんてそうそう居ないよねー…」

 

ナミさんなんて激レアだよ、なんで誰もゲットしてないの、バカでしょありがとう。

 

「それにしても、ここ結構いい眺めだね、水平線ってなんでこう落ち着くんだろ」

 

今私がいるのは海沿いの平地だ。

辺りはちらほら岩が転がってて、目の前の海以外の三方向は崖で囲われている密会に便利そうな所である。

 

「…ん?」

 

何やら人の気配を感じて咄嗟に岩の影に隠れる。隠れる必要ないかもしれないけど、なんか隠れちゃった。

 

歩いてきたのは二人組の男だった。なに?男同士でナニするつもり!?

 

「それで…計画の準備はできてるんだろうな」

 

「ああもちろんだ、いつでもイケるぜ、『お嬢様暗殺計画』」

 

「!!」

 

びっくりして声が出るとこだった。

 

よりにもよって何言っちゃってるんだあの人たち…。

この村でお嬢様って言えば…もう、あの子しかいない…!!

 

暗殺(・・)なんて聞こえの悪い言い方はよせジャンゴ」

 

「ああそうだった、事故(・・)…!事故だったよな、"キャプテン・クロ”」

 

ほ、ほんとに密会で使われてるし。

どうする?もう少し様子を見たほうがいいよね…?

 

「キャプテン・クロか……三年前に捨てた名だ、その呼び方もやめろ、今はお前が船長のハズだ」

 

じっと息を潜めて様子を窺う。

バギーの時と違って緊張感あるな、これ。

 

「しかし、あんときゃびびったぜ」

 

「ん?」

 

「あんたが急に海賊をやめると言い出した時だ、あっという間に部下を自分の身代わりに仕立て上げ、世間的(・・・)にキャプテン・クロは処刑された!!そしてこの村で突然船を下りて三年後にこの村へまた静かに上陸しろときたもんだ」

 

な、なんだ?いくら密会だからって機密情報ぺらぺらしゃべりすぎでは?

 

「まァ、今まであんたの言う事を聞いて間違ったためしはねェから協力はさせて貰うが、分け前は高くつくぜ?」

 

「ああ、計画が成功すればちゃんとくれてやる」

 

…前世の朧げな記憶も合わさって、キャプテン・クロの目的はだいぶ見えてきた、気がする。

 

「殺しならまかせとけ!」

 

「だが、殺せばいいって問題じゃない、カヤお嬢様は不運な事故(・・・・・)で命を落とすんだ、そこを間違えるな」

 

かっこつけてるけど、あなたの服うんこ柄だからね、ダサいよぶっちゃけ。

 

「どうもお前はまだこの計画をはっきり飲み込んでいないらしい」

 

「バカを言え、計画なら完全にのみこんでるぜ、要するにおれはあんたの合図で野郎どもと村へ攻め込み、お嬢様を仕留めりゃいいんだろ?そしてあんたがお嬢様の遺産を相続する」

 

「バカが…!頭の回らねェ野郎だ…!他人のおれがどうやってカヤの遺産を相続するんだ」

 

「がんばって相続する」

 

「がんばってどうにかなるか!!ここが一番大切なんだ!!」

 

私は聞きながらもすぐ行動に移せるようにしておく。

 

「殺す前に!お前の得意の催眠術でカヤに遺書(・・)を書かせるんだ!“執事クラハドールに私の財産を全て譲る”とな!!」

 

…なるほど、そういえばこいつはお嬢様の執事だったか。

段々思い出してきた、そうだ、こいつはキャプテン・クロ…何か爪みたいな武器のやつだ。

 

「それでおれへの莫大な財産の相続は成立する………!ごく自然にだ、おれは三年という月日をかけて周りの人間から信頼を得て、そんな遺書(・・・・・)が残っていてもおかしくない状況を作り上げた!!」

 

「……そのために三年も執事をね、おれなら一気に襲って奪って終わりだがな」

 

「それじゃ野蛮な海賊に逆戻りだ、金は手に入るが政府に追われ続ける。おれはただ政府に追われる事なく(・・・・・・・)大金を手にしたい、つまり平和主義者なのさ」

 

「ハハハハ!とんだ平和主義者がいたもんだぜ、てめェの平和のために金持ちの一家が皆殺しにされるんだからな」

 

「おいおい、皆殺しとは何だ、カヤの両親が死んだのはありゃマジだぜ、おれも計算外だった」

 

「まァいい…そんな事はいい…とにかくさっさと合図を出してくれ、おれ達の船が近くの沖に停泊してからもう一週間になる」

 

いい加減、野郎どものシビレが切れる頃だ、と締めたジャンゴ。

…ふーむ、これは、私のやることは決まったよね。

 

このキャプテン・クロはルフィが倒す、それは私の記憶がそう言ってる。

ただ、ジャンゴの言ってた野郎ども…キャプテン・クロの船員が沖に泊めてある船には無数の部下が息を潜めて待機してる筈だ。

そいつらが出ることでゾロやルフィの手が塞がって、カヤお嬢様がちょっとピンチになる。もし、原作通りに進まなくて間違ってもお嬢様が死ぬようなことがあれば……。

 

…今こそ、私がここにいる意味を見せる。

流れは、私が変えてやる!!

 

「おい、お前ら!!お嬢様を殺すな!!」

 

「誰だ…!?」

 

「私もいるよ、計画も全部聞いてました〜」

 

ルフィも話を聞いていたのか、彼は堪らずと言った感じで会話に入り込んできた。私もそれに合わせて乱入する。

 

「……やあ、これは…ウソップ君じゃありませんか…」

 

ん?ウソップまでいたのか。このひとたち話聞かれすぎでしょ。

 

「こんな子供まで…なにか、聞こえたかね?」

 

「え?わかんない、カヤお嬢様の暗殺がなんだっけ?」

 

「…聞かれたか」

 

私は倍加を使ってルフィ達の元までジャンプする。

 

「な…っ!?」

 

クロもジャンゴも驚いて声も出ないようだ。ただの子供だと思うな!…いや子供じゃないから!

 

「ルフィ、私はこいつらの船を潰す、親玉と催眠術士は任せた」

 

「しし、おう!」

 

「お、お前、まさか一人で行かせるのか!?」

 

「心配すんな、イリスは強いからな」

 

じゃね、とひらひら手を振って別れる。

確か、あいつらの船は北にある筈…ここからだと最速で走れば一分もかからない!

 

「カヤたんを殺させてたまるかあー!!」

 

うおおおおお!!と走り抜けると、すぐに北海岸が見えてきた。

 

「はぁ…はぁ、ん?あれ?船がない!?な、なんで?」

 

北海岸で間違いない筈なんだけど、キャプテン・クロの船は見えなかった。

 

「……違う、まだ来てないんだ、でも一週間前からってあいつ言ってたし…沖合なら詰むけど…この島は崖が多いから、その死角で隠れてるとかなら!」

 

近くの木に飛び移り、更に高い木の枝に飛び移って思いっきり高くジャンプする。

遥か上空とまではいかないまでも、ある程度の高さまで跳べたので周りを上から見渡すことができた。

 

「…あった!結構近い!」

 

思ってた通り崖で村からは見えないよう隠れて停船してあり、口角が上がる。

 

「何人いるかは知らないけど…美少女を愛でることができないようなゴミ共は…私がこの手で殲滅してやる!!」

 

行くぞ!カヤお嬢様を狙えない事への、憂さ晴らしだ!!

 


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