ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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偉大なる航路(グランドライン) デービーバックファイト編
67『女好き、船大工を求める』


「みなさん、前方をご覧ください!見えました、雲の果て(クラウド・エンド)です!」

 

「おー!あのトンネルみたいな門を潜れば青海かぁ」

 

コニスちゃんの指差す前方にある門を見て言う。

…あーあ、空島…というかコニスちゃんともお別れか。

 

「あの門抜けたら雲の川(ミルキーロード)で一路、青海って具合か」

 

「うー、コニスちゃん、またね」

 

「はい、待ってますから!」

 

そう言ってコニスちゃんは船を飛び降り、門から伸びる雲道に着地した。

 

「…名残惜しいですが、皆さんお元気で!」

 

「ええ、送ってくれてありがと!」

 

「何から何までありがとうな!」

 

みんなでそう言って大きく手を振る。また来なくちゃ…ここには心残りが一杯あるからね。主に嫁関係で。

 

「ではすぐに帆を畳んで船体にしがみ付いていて下さい!」

 

「おい!おっさんの言う通りに!だいぶ高速で行くみてェだ!」

 

「そりゃ7000mの坂道だもんな!急げ!!」

 

「黄金も部屋に運ぶぞ!!」

 

一気に忙しくなったなぁ!

せっかくなってくれた嫁との別れは寂しいけど…次の冒険の事を考えるとまたワクワクしてくるよ。

 

「ジョ〜〜ッ!!ジョ〜!」

 

「あ、一緒に来ちゃったサウスバード!」

 

忘れるな、とでも言うかのように船へ入ってきた鳥が怒りを顕にするが、適当に凄んだら大人しくなった。やっぱり一回はっ倒したからかな?

 

「次の島への記録(ログ)もバッチリ!」

 

「んん、そうだ!ここ降りたらまた新しい冒険が始まるんだ!!野郎共、そんじゃあ……!青海へ帰るぞォ!!」

 

「「おお!!!!」」

 

みんなで腕を上げて雄叫びを上げた。

く〜、次はどんな美女に会えるんだろう!

 

「じゃあねコニスちゃん!!また絶対くるからねーー!!」

 

「はい!!…また、必ず!!!ではみなさん、落下中お気をつけて!!」

 

よし、船にしがみ付いたね、万が一がない様にナミさんとミキータとロビンは私が掴んでおこう。何たって落下するんだから振り落とされたりするかもしれないもんね!落下なんだから……。

 

………ん?落下中??

 

スポーン、と船が門を乗り越えれば、その先に道などなく…つまり、それが意味する事って…。

……え、もしかして……このまま7000m落下!!?

 

「へそ!!」

 

「へ、へそじゃなあああああぁぁぁぁぁぁぁぃ!!!」

 

もしかして空島の人は青海人が空を飛べると思っちゃってる感じ!?

死んじゃうよこれは!!ああ何としてでも嫁だけは助けなければ…っ!!

 

ボフッ

 

「…!!」

 

「た、タコ!?」

 

重力に従って落下する船を雲から飛び出してきたタコが掴む。そのまま頭が風船のように膨らんで、気球のように船は落下速度を減速させた。

 

「た、助かったの…?」

 

「キャ、ハハハ…はは、流石に、死んだかと思ったわ…」

 

「うわ〜面白ェ〜〜!バルーンだ!」

 

まだ心臓バクバク言ってるよ…コニスちゃんもこう言う事なら初めから言っといてくれても良かったのに…。

 

「……!ねぇ、聞こえる?」

 

「あァ、バッチリな!」

 

カラァーン、カラァー…ン、と心地よい音色が空から流れる。この音は…間違いない、黄金の鐘だ!

見送りに鳴らしてくれたんだろう。きちんと回収出来たみたいで良かった…。

 

「うっはっはっは!いいなコレ…」

 

「ああ、い〜い気持ちだ〜…」

 

「んー、…風もいい感じだし…何だか寝ちゃいそう」

 

ふわぁ〜、とあくびすればナミさんが座って膝を叩いてくれたので喜んで飛び付く。うーんすりすり…なんて素晴らしい手触り…!ズボン越しだけど!

 

 

 

そんな感じで本当に数分間寝てた私は、気付けばもうかなり下まで降りてきていた。

言うだけで寝るつもりは無かったのに…鐘の音とナミさんの太ももコンボはとんでもない威力だったよ…。

 

ごろん、と上を見ればナミさんのナイスな形をした2つのぽよんが見える。その向こうには段々小さくなっていくタコの頭。

うむ…絶景かな絶景かな。

 

「起きたの?早かったわね」

 

「うん、夢見心地だったよ」

 

…あれ、なんかさっきおかしな光景を見たような…。

 

「んー?」

 

じー、とナミさんの胸を見る。…いや、全くおかしくない…いつも通りのナイスバディだ。

何だろ、萎んでるタコの頭が関係してるのかなぁ……。うん、タコの頭がねぇ…萎んで行ってねぇ……。

 

「って萎んで!?」

 

「わっ!ちょっとイリス!急に起き上がらないでよ!」

 

「どうしたんだよイリス」

 

バッ!と飛び上がった私にルフィが首を傾げるので、上を指差してみんなに伝えた。

 

「タコが縮んでるよ!まだここ空でしょ!?このままじゃ落ちるから衝撃に備えて!!」

 

「「何だとォ!!?」」

 

みんなして上を見上げてだらだら汗を流す。そして次の瞬間、一気にタコは空気が抜けたかのように縮んで浮力が無くなり…つまりメリー号がタコの手を離れて落ちていく事になった。

 

「うおお!!」

 

腕を増やして伸ばしてなみさんとミキータとロビンを掴み、私も強く船体にしがみついた。

あああああああ!!!何とか耐えて!!メリー号…!!!船の耐久倍加…!木材の柔軟性を…!

 

「おおおおおおおおお!!!?」

 

ドッパァーーン!!と凄まじい水しぶきを上げながらメリー号は海へ着水した。海水が大量に入ってきて冷たい…、みんなは大丈夫なの!?

 

「ナミさん、ミキータちゃん、ロビンちゃん、イリスちゃんも大丈夫か!?」

 

「何とか…!みんなは!?」

 

「死ぬかと思った…」

 

「おれも…」

 

思っただけなら大丈夫だね!

 

「…でも、何とか無事に戻ってこれたね、一安心かな」

 

「……しかし、すげーとこに行ってたんだな」

 

サンジがタバコをふかしながら空を仰ぐ。落ちてみれば…また遠い場所だよね…。

…よし、また行くぞ空島!みんなに会いに!

 

「野郎共〜!帆をはれ〜〜!!行くぞ次の島!!」

 

「おいちょっと待てよルフィ、少しは休ませろ!」

 

「甘い甘いっ!そんな事言ってられる海なら誰も苦労しないでしょ!?波が少し変なの、さぁみんな動いて、とり舵!」

 

とり舵いっぱーい!…おおっ、凄い大波だ!

 

「何だあの波!中に何かいるぞ!」

 

「シーモンキーだ!」

 

波の中から猿の顔が出てる。シーモンキーって言うらしいけど…何で波の中に?

 

「まぁいいか、急げ急げ!」

 

あんな波に飲み込まれちゃお仕舞いだからね、とにかく急がないと!

 

もう慣れた作業をテキパキとこなして波から逸れる。ナミさんの指示に従っておけばこの船は空だって飛べるからね、波を躱すくらい訳ないんだよ!

 

そうこうしている内に、波もだいぶ落ち着いてきた。油断は出来ないけど…気を張り詰める必要も無いだろう。

 

「キャハ、ナミちゃん、持ってきたウェイバーは(ここ)でも使えるのかしら?」

 

「ああ、そういえば気になるわね…試してみる!イリス、手伝ってくれる?」

 

「もちろん」

 

奥からガタガタとウェイバーを取り出して海へ浮かべ、すぐにナミさんが乗り込んで走り出した。

 

「…!良かった、この海でも使える!」

 

「最悪の場合嫁だけを乗せてウェイバーで逃げ出すとか出来そうだね」

 

「その時に航海士さんが真っ先に連れていくのは赤目さんな気がするわ」

 

そうなったら私よりロビンやミキータを優先して貰いたい…。

 

使用できる事を確認出来たナミさんはすぐに船へ上がってきたので腕を伸ばしてウェイバーを回収しておいた。

 

「見ろ、これが苦労して何とか手に入れた憤風貝(ジェットダイアル)だ!」

 

「おおーー!」

 

「えっ、凄いじゃないウソップ!それって空島でも珍しいやつでしょ!?このウェイバーにも搭載されてるっていう…」

 

「まァな!けどこれはミキータ用だぜ?それに加えて風貝(ブレスダイアル)3つで完成だ!本当は全て憤風貝(ジェットダイアル)にしたかったんだが…」

 

それでも凄いよ!…けど、どう使うの?

 

「ダイアルもいいけど……」

 

くい、とナミさんが部屋を指差すのでみんなぞろぞろと中は入る。

中の机の上には大きな袋が所狭しに並べられていて、私達はそれらを見て目を輝かせた。

 

「今はコレの山分けよ!まず私とイリスに8割」

 

「「いやちょっと…」」

 

ジャラ…と山盛りになった黄金を横に避けようとしたナミさんをみんなで止める。私にって何?そんなにあってもどうせナミさん達に飛んでくよ!

 

「ちょっと待って、山分けもいいけど…私達にはそれよりもっと大事な事があるよね?」

 

「?」

 

ウソップに話を振ると彼は首を傾げていた。そう考えなくてもすぐに答えは出すけどね。

 

「船の修繕だよ、カヤから貰ったメリー号も…気付けば色んな所に傷が出来てるからね」

 

「ああ、そりゃいいな!大賛成だ!」

 

「言われてみれば、そうよね。なら宝の山分けは一旦保留って事でいい?メリー号を修繕してもらって残ったお金を分けましょ」

 

みんなで頷き合う。東の海(イーストブルー)のあの村から…こんな所まで私達を運んでくれた船だ、たまにはしっかり労ってあげないとバチがあたるよ。

 

……それに、空島でのあの出来事も気になるし。

 

「だったらよ、“船大工”を仲間に入れよう!旅はまだまだ続くんだ、どうせ必要な能力だし…メリーはおれ達の家で、命だぞ!この船を守ってくれる船大工を探そう!」

 

「……コイツはまた…」

 

「ホント、稀に核心をつくよな…」

 

本当にやらなきゃいけない事を本能で分かるから、ルフィは凄いんだよ。後ろをついて行く私達船員が不安に感じることも無いからね。

 

「そりゃそれが一番だ、そうしよう!」

 

「よーし、じゃあ次の島からは船大工探しって事で!」

 

「「おおーー!!!」」

 

こうして私達は船大工を探す事になった。船大工って言うと海パンにアロハなイメージがあるなぁ……何でだろ??

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「うわあああッ!!シーモンキーだ!!」

 

「ついてきやがったのか!?まずい、風がねェ!」

 

「漕ぐんだ、漕げ〜〜〜っ!!!」

 

現在メリー号はまたもや大波に襲われていた。波の中にはシーモンキーの顔もあるし、この大波はシーモンキーが引き起こしてるの?

 

「緊急報告!緊急報告!!12時の方角に船発見!」

 

「何だ敵か!!?」

 

見張り台に立っていたウソップからそんな声が上がった。

こんな時に何だよ!

 

「いや、それが…旗もねぇ帆もねェ!何の船だか…」

 

「何だそりゃ、何も掲げてねえ!?何の為に海にいるんだ!?」

 

ルフィにとっては海に出る=海賊か海軍って認識なのかもしれない…。

 

「わからねェ…それより乗ってる船員(クルー)が異様に少ねェし…それにすげェ勢いでイジけてるぞ!まるで生気を感じねェっ!」

 

「よいしょ、よいしょ!それよりその船さ、この大波に気付いてるの!?その方角にいるのなら…このまま波の餌食だよ!!」

 

「ちょっと行ってくる!!」

 

「えっ、ルフィが行くの!?」

 

オール漕ぐってのに何でルフィが居なくなるの!う…負担が…!あ、かわりにウソップが降りてきてくれた…見張りはロビンか。

 

「おーーーいお前らー!!大波と猿が来てるぞー!!舵きれ〜〜!!」

 

 

「……おい、船だ、海賊船だ!」

 

「野郎共!立ち直れ、敵船だぜ!宝を奪うぞ!!」

 

何だコイツら、やっぱ敵か!

 

「待て波だ!大波が来てる!避けるのが先だ!」

「あの船に逃げられちまうぞ!」

「大砲を用意しろ!」

「オイ誰に命令してんだ!!」

「てめェがやれ!!」

「舵!舵舵!!」

 

 

「うわぁ…まとまりないなぁ…」

 

ゾロとサンジを混ぜ込んだらああなるのかな?

 

 

「誰か号令を!航海士〜!」

「いねェよ!!」

「船長〜!!」

「いねェよ!!!」

「ダメだ飲まれる〜〜〜〜ッ!!!!」

「波1つ切り抜けられねェのかァ!!」

 

 

航海士はまだしも、船長もいないのかい。船出すな。

 

波から逃げるメリー号に追い抜かれてもなお、後ろでもたもたしてるその船は案の定簡単に波に飲み込まれていった…。

…知らない人達だけど、死んでなきゃいいね。

 

「もっと遠くへ行こう!漕いで漕いで!」

 

みんなで必死に漕ぎ、何とか普通の海に辿り着けた。

気候も波も穏やかだから…島が近くにあるのかも。

 

「ふー、おさまったか…」

 

「というより、あの大波はシーモンキーのいたずらよ。湿度も気温も随分安定してるからもう次の島の気候海域に入ったんじゃないかしら」

 

「ロビン、なんか見える?」

 

下から見上げながら問う。…ああ、あのぽよん、いい下ぽよんだ…。

 

「島がずっと見えてるわ」

 

「「言えよそういう事は!!」」

 

ビシー!とルフィとウソップが突っ込む。2人からしたら次の島は冒険の合図だからね、待ち切れないのかな。

 

「わりと霧が深いわ」

 

「霧か…危ないわね。イリス、前方確認お願い」

 

「はーい」

 

視力倍加で見ようかな。流石に霧の向こうは何を倍加しても見えないけど。

 

「所で…さっきの船気にならねェか?船長がいねェとか航海士がいねェとか…旗はねェわ帆はねェわ、やる気もねェわまとまりねェわで…海賊の一団として成り立ってねェんだ!」

 

ウソップが身振り手振りでそう言う。あの時はオールを必死に漕いでたからよく船を見れてないんだけど…。

 

「海戦でもやって負けたんだろ、で、船長が死んで…色んなモン奪われて…」

 

「死んだなんて可哀想だね…」

 

「それが“この”海だろ」

 

くぅ〜ゾロのくせに!このマリモ!!

…ジロっと睨まれたんだけど、心とか読めたりする?

 

「いやいやそれがよ…!よく船も見たんだ、そしたら戦闘の形跡もねェんだよ!なのに海賊として“命”とも言えるようなもんがあの船には何もなかった!!」

 

「じゃ海賊じゃねェんだろ、気にすんな」

 

「……んー、どうみても海賊だと思うんだがな、あいつら」

 

確かに、普通の船ではなかったよね。宝を奪おうとする一般船があってたまるかっての。

 

「海岸が見えたよー!ミキータ、イカリよろしく」

 

「任せて頂戴!」

 

深い霧を抜けて、ついに島が姿を現した。

……うおー、見事になんっっっにもないな。所々に細長い木がぽつぽつあるくらいで、見渡す限りの草原って感じだ。

 

「うおーー!!大草原だー!!!」

 

すぐに我慢できなくなったルフィとウソップとチョッパーが島に飛び降りる。それに対してナミさんが咎めたが、まぁ大丈夫だろう、何せこれだけ見え透いてるんだから何かあっても対処できそうだ。

 

「コラー!遠くに行くなーー!!」

 

「まぁまぁ、ルフィもいるんだし大丈夫だよ」

 

「キャハ、でもいいわよねここ、ゆっくりイリスちゃんとお散歩したいわ」

 

「あら、いい考えね!ロビンもどう?」

 

「ご一緒しようかしら」

 

え、気付いたら最高のシチュエーションに発展してた!?

 

「オイ、何だこの船は」

 

「ん?」

 

ゾロの言葉に海側を見れば、大きなガレオン船が島と挟むようにメリー号の前まで接近していた。

うわ…霧で気付かなかったのかな?

 

その海賊船の前方左右から先端に手の形状が取り付けられた鎖が勢いよく飛び出し、その手が島をガッチリ掴んだ事で鎖と島と船に囲まれてメリー号が動かせなくなってしまった。

……何だ?やろうっての?

 

「いきなり何するの!このデカ船!!」

 

「船の行く手を封鎖された!!」

 

ゾロも刀を抜きかけ、危うく戦闘になりかけたその時…ガレオン船から聞こえてきた声に首を傾げる。

 

「我々は“フォクシー海賊団”。早まるな、我らの望みは……“決闘だ”!!」

 

………、決闘???

 

 

 


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