ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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偉大なる航路(グランドライン) W7 女好き編
73『女好き、不穏な決意』


………。

 

 

……………。

あ、れ?ここは……?

 

「真っ暗…」

 

目を覚ませば、真っ暗な闇の中に1人…私は立っていた。

この感覚は前に1度味わった事がある。ユバで見た夢の時だ。

 

「…てことは、あの声も……」

 

それに、私がここに居るって事は私はまだ死んではいない…のか?それとも死んだからここに…?

 

「ッ、い…っ、な、何…ッ?」

 

あ、たまが…、割れそうな程、痛い…!

ここは、夢なんじゃないの…?いや、そう言えば…夢だけど夢じゃないみたいな事…言ってたっけ…っ。

 

 

『頭が、痛いんでしょ』

 

「!…あなたは…」

 

やっぱり居た…謎の声…!

でも今回はあの時と違って…声が何処から発せられてるか分かる。光の球からだ。

…うーん、何と言えば良いのか、私の前にふわふわと浮かぶ光の球から声がしているのだ。ホタルの光みたいな…とでも言えば良いだろうか?淡く儚い…そんな光だった。

 

『痛むのは、あなたが目を逸らしているから』

 

「…前もそうだったけど、何言ってるのか分からないよ」

 

『分からないことが、既に逃げている証拠。“知らない”筈がない』

 

そんな事、言われても…。

 

「ぅ…、あぐ…ッ」

 

痛い…!頭も…心臓も…!!なんで、これは、何なの…!

 

ぎゅっと目を瞑って痛みに耐え続ける。

今まで感じた事のない様な…心の底を握り潰されているような痛みだ…。心の底って言ってもよく分からないけど…本当にそこが痛いのだ。

 

「!…え」

 

ふと痛みが消えて、ばっと前を見る。

 

……な、んで……?ここ……まさか、学校…、…教室…だよね…3年、B組?

 

「うわ…っ」

 

いきなり謎の学校の教室に来たと思えば、次の瞬間にはこれまた良く分からない家の中に場所が変わった。

…まるで瞬間移動でもしたみたいだ…それに、この部屋……なんだか見覚えがある。

 

『………』

 

「…?」

 

ただの光の球だから、実際の所は何とも言えないけれど…何故だか私はこの球がどこか泣いているように見えた…。

この部屋が、原因なの…?それとも別の…。

 

《……っ、う》

 

「…?」

 

いつの間にか、その部屋の勉強机に突っ伏して涙を流している少女がいた。

…長い、見惚れる程綺麗な純白の髪。顔は見えないけど、女の子だよね…?身長高いな…。170…いや、もっとあるかな…?

 

《…っ…私、は…》

 

「どうしたの……って」

 

肩に手を乗せようとしても、まるで実体が無いかのようにすり抜ける。

…そりゃそうか、夢だもんね。

 

「……ねぇ、これは、何なの?」

 

泣き続ける少女から何故か目が離せず、何か知ってそうな光の球に尋ねる。

 

『これは……、記憶。必死に忘れようとして…でも忘れられなかった…真実』

 

「…ふぅん」

 

何で私はそれを見せられてるんだ…。

…あ、本棚にONE PIECEがズラーっと並んでる…この子もONE PIECE好きだったんだ。

 

「何で泣いてるんだろう……、…ぇ……ッ?」

 

その時、私の視界に一冊のノートが映った。

それは泣きじゃくる少女の頭の横に置かれており、タイトルは「数学」と書かれている。

…いや、問題はそこではない。

……この女の子の正体……まさか…。

 

「…3年…B組……名前……、ーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーー “入州(いりす)”」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ッ!!!?」

 

ゴンッ!!

 

「ぁ痛っ…!」

 

「ぁ…え、…な、ナミさん…?あ、ご、ごめん!そんなつもりじゃ…」

 

…あのノートに書かれていた名前、それを目にした瞬間私は体の底から湧き上がってくる負の感情に蝕まされそうになった。

理由は分からないし、何より…私と関係していると決まったわけでもないのに。

 

だけど間一髪という所で夢から覚める事が出来た…のだが、勢いよく起き上がってしまった為に私の顔を覗き込んでいたナミさんに頭突きをかましてしまったのだ。

 

「いいのよ、そんなの…。あんたがこうして目を覚ましてくれたなら」

 

「ナミさん…」

 

私が当ててしまった額の痛みには気も向けず、ナミさんは少し震える手で私の手を握る。

 

「氷漬けになったあんたを見た時は、…死んじゃうんじゃないかって、思ったんだから…!だから、本当に無事で良かった…!」

 

「…ナミさん…。ごめんね… 心配かけちゃって」

 

目を赤く腫らしている彼女の顔を見て申し訳なく思う。それと同時に、情けなくも…。

氷漬けになっても助かってるって事は、多分、チョッパーが尽力してくれたんだろうね。

 

「心配どころじゃないわよ…、氷が溶けてからだってずっと魘され続けるし、一体何が…」

 

バン!とナミさんの言葉を遮るように寝室の扉が開かれる。

開け放ったのはミキータで、その額には尋常ではない量の汗を流していた。

 

「ナミちゃん!新しいおしぼり持ってきたわ……って、い、イリスちゃん…!!目が覚めたのね!?」

 

「うん、ミキータもごめんね…」

 

「キャハハ!何を謝ってるの?生きていてくれただけで満足よっ!ね、ナミちゃん!」

 

「そうね。それにイリスにも朗報よ?ロビンも無事だからね」

 

はぁ〜、良かった…ロビンも無事か…。

ナミさんやミキータもそうだけど、私とロビンを治療してくれたチョッパーにもきちんとお礼言っておかないと…。

 

……それにしても、変だ。

どうして私は青キジに殺されていないんだろう?そりゃ、生きてるのは良いことだけど…あの状況で奴が私を見逃す理由が見当たらないんだけど…。

 

「ロビンは?」

 

寝室のどこ見渡してもいないし…私と同じ時期に大怪我する人ってみんな私より先に回復するよね…。

 

「ロビンなら外で読書よ。あんたがやられてから3日経ってるんだから」

 

「3日…」

 

道理で体の節々が痛いと思ったよ。

…ちょっと外歩いてこようかな。

 

「ごめん、外で体動かしてくるね。出航はいつになるの?」

 

「イリスに任せるわ。療養も兼ねて長い間停泊してもいいのよ」

 

そう言ってくれるのはかなり嬉しいけど…体が怠いだけでそれ以外に不調が見られないからなぁ。

…唯一違和感があるとすれば、未だに引っかかる夢の話くらいか…。

 

「大丈夫だよ、明日にでも出そう」

 

「本当に大丈夫?イリスちゃん」

 

「平気平気。じゃあ行ってくるね」

 

「あ、待って、私も行くわ」

 

「キャハッ、勿論私もね」

 

2人が来るのか。

……あの良く分からない夢のせいで乱れてる心を、是非とも癒して頂こうかな。

 

そうと決まれば直ぐに出発しよう。

ベットから抜け出すだけでそれなりに力を要するのには驚いたけど…これはアラバスタでもそうだったし、何とかなるよね。

 

そのまま甲板へ出ると、ルフィ達が周りに集まってきた。その中にはロビンの顔も見える。

 

「イリス!もう大丈夫なのか!?」

 

「うん、完全回復!…とまでは行かないから、ちょっとリハビリがてらその辺歩いてくるね。あ、チョッパー、助けてくれてありがと。歩いてきてもいい?」

 

「ああ!無事で良かった!!でもあんまり無理すんなよ、病み上がりなんだぞ!!」

 

「イリスちゃん、帰ってきたら特製ジュースをご馳走しようか」

 

「ほんと?ありがとう!」

 

「リハビリって言うなら俺と一本打ち合わねェか?」

 

「お前はイリスを殺す気か!!」

 

はは、一味総出で出迎えか…。何だか嬉しいな、こういうのって…。

 

「…赤目さん、ありがとう。私も散歩一緒していいかしら?」

 

「なんでお礼?…でも、うん、嬉しいよ!一緒に行こう!」

 

じゃあまた後で、と手を振って4人で船を降りる。

この島をゆっくり1周してたら日が暮れちゃいそうだし、ある程度歩いて引き返しちゃうか。

 

 

「改めて考えたら、こうやってみんなとデートするの初めてだね」

 

「そもそも、1つ言わせて貰うけどあんたはあまり私達とデートしてくれないじゃない」

 

「ぅ…それは、そうです…ごめんなさい…」

 

だってぇ…時間も無かったじゃん…。

 

「キャハ、でもロビンも一緒にって言うのは嬉しいわ。ようやくイリスちゃんの嫁に来る決心がついたのかしら?」

 

「フフ、さて、どうかしら」

 

「何〜?ロビン、随分曖昧に濁すじゃない」

 

このままロビンも嫁になってくれたら幸せだよね。

…でも、過去に色々と問題を抱えてそうだから、ロビンが躊躇しているとすれば理由はそこかな。

別に私はロビンがどこの誰だろうと気にしないのに。

 

「………」

 

過去、か…。

 

どうしても、さっき見た夢の光景が頭から離れない。

あれは、私?それも前世の…。だとしたら、何で泣いてたんだろうか。というか、あれが私だとは到底思えない。

同じなのは名前だけだし、その名前も私は今世、自分で命名したのだから。

 

「イリス?」

 

…あの光の球も分からない。夢に関係あるのは間違いのに…私の事も何か知ってそうだったよね。

あー!何か考えてたらムカムカしてきた、あの球…毎度毎度一方的に情報与えてきてさ!何で私がこんなにも悩まなくちゃいけないの!

 

「イリスってば!!」

 

「わっ!…え、ご、ごめん、どうしたのナミさん」

 

「どうしたのじゃないわよ、あんたがどうしたのよ、やっぱりまだ寝てた方が良いんじゃない?」

 

ナミさん達の心配そうな顔が視界に映る。

だけど、体調的にはこれと言って問題ないからナミさんには大丈夫だと返事をした。

 

「…だけど」

 

「航海士さんの言う通りよ、休んでた方がいいわ」

 

「ロビンまで…どうしたの?……って、あれ?」

 

不意に、頬を何かが伝う感覚がしたので触れてみる。

……、涙…?どうして…?私、何で泣いてるの……?

 

「………」

 

「イリスちゃん、何か、あった…?」

 

「え…?いや、これと言って何も…」

 

泣いてる事に関しては本当に心当たりがない。自分のことなのに分からないって…自分でも意味わかんないよ。

 

「イリス」

 

「ん?…って、え!?ちょ…!」

 

突然ナミさんに体を押されて、ロビンの胸に顔から飛び込む形になった。

ま、待って!ちょっと待って!いきなりどうしたの!?今度こそ本当にどうしたの!?

 

「あら…中々抱き心地いいわね」

 

「当たり前じゃない、だってイリスちゃんだもの。次は私よ!」

 

「わぷ」

 

すぐにミキータに変わって、また胸に顔を埋められる。

…という事は、最後は…。

 

「はい、私の番」

 

ぎゅ…と優しく私を抱き締めるナミさん。

さっきから困惑するばかりで、意図が掴めないんだけど…。

 

「あんたの嫁だってのに…私はあんたの悩み1つ察してあげられない。どうして泣いているのかも、苦しんでいるのかも…」

 

「それは、違くて…!私でも分からないから…!」

 

「良いから。…だからせめて、これくらいさせてよ。…だめ?」

 

………もう、ずるい。

これでダメなんて言えるわけがないよ…。

 

「イリスが困ってるなら、私達は何時でも力になるから」

 

「キャハ、勿論、私は何だってするわ!」

 

「私も、微力ながら」

 

……みんな。

 

…ただ、本当に分からないんだけど…。

……でも、落ち着く………。

 

「ごめんね…情けなくて」

 

「情けなくないわよ、仮にそうだとしても、あんたはあんたよ。情けないのだってイリスなんだから」

 

「もうっ、それって別に褒めてないよね?」

 

あはは、と4人で笑いあえば、何時の間にか流れる涙は止まっていた。

ロビンも、少しずつ私達に気を許してくれているのだろうな、そんな気がする。

 

私の、大切な人達。

またあの青キジの様に手も足も出ない敵が現れたら…私はどうするんだろう。

…いや、そんな事に答えを見出しても意味ないよね。何故なら、何が何でも仲間と嫁を守る!それが私の役目であり、使命とも言える事なんだから。

 

…だから心配しないで、ナミさん、ミキータ、ロビン。

 

何があっても、

 

何が起きても、

 

例え、どれ程の敵が道を塞ごうとも、

 

全ての障害は私が、()()()()()使ってでも、

 

 

……みんな、私が守るよ。

 

 

 


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