ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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74『女好き、爆速海列車』

後日、私達は予定通りロングリングロング島を出航した。

その後3日間は特に何もなく、最早恒例となった偉大なる航路(グランドライン)の天候変化にもだいぶ慣れてきたナミさんの指示もあって現在に至る。

 

「ん〜〜!いい天気だね」

 

空は快晴、天候は春。時々夏になるのは夏島が近くにあるからだろうか、過ごしやすい季節だ。

 

「ヌワ〜〜ミさァ〜〜ん♡ンミィ〜キィタちゃ〜〜ん♡」

 

「?」

 

「じゃがいものパイユ、作ってみたのですマドモアゼル。よろしければ」

 

サンジが何時ものテンションで料理を持ってきた。

パイユ?何じゃそりゃ。麦わら帽子みたいな見た目の料理だね、おつまみ系?

 

「私も食べていい?」

 

「勿論、好きなだけ食べてくれ」

 

「やった、いただきます」

 

パリ、とこんがり揚がったパイユとやらを割って口に放り込む。

…あ、美味しい…。味付けは塩胡椒だけなのかな、シンプルながらじゃがいもの美味しい所をぎゅっと凝縮云々…。

 

とにかく美味しい。

 

「これ、美味しいね!」

 

「ほんと、美味しいわ」

 

「うおーー!!!幸せー!!!」

 

海に向かって叫ぶサンジ。隣で寝てたゾロが寝れねェだろ!と言っていつもの口喧嘩が始まっていた。あの2人は本当に仲が良いね。

 

「私も頂いていいかしら?」

 

「ロビン!はいっ」

 

いつの間に隣へやってきていたのか、ロビンが私の肩に手を乗せてそう言うので、あーん、と一口サイズにちぎったパイユをロビンの口元まで持っていく。…く、身長がね、足りなくてね!!

 

「フフ…ありがと」

 

しゃがんで私の指に摘まれているパイユをぱくりと食べる。

お、おお…良い!!ロビンとこうやってそれっぽい事やってるの嬉しい!

 

「あら…これ、美味しい」

 

「だよね?」

 

流石サンジ、誰が食べても絶賛だ。

 

「ロビン、イリス、気分はどうだ?寒気はあるか?」

 

「大丈夫だよチョッパー、ありがとね、チョッパーが居なかったら危なかったよ」

 

「そんな…嬉しくねーぞコノヤロがっ」

 

ニッコニコで踊りながら言われても説得力ないよ。

でも、本当にチョッパーが居ないと死んでいたかもしれないから…彼には感謝しかない。

 

「……ん?何だありゃ…」

 

「?」

 

何を見つけたのか、サンジと言い争っていたゾロがふと海を見つめて呟いた。

その言葉に真っ先に飛び付いたのは好奇心旺盛な船長、ルフィだ。

 

「カエルだ!巨大ガエルがクロールで海を渡ってるぞ!!」

 

「はぁ?巨大ガエルはまだしも、クロールなんてするわけ無いじゃん。そんなカエル見た事無い……ってしてるー!!?」

 

「追うぞ野郎共!オール出せ!漕ぐぞ!!」

 

まさかの海をクロールで泳ぐカエルの登場により、ルフィの目がキラリと輝く。

 

「船体2時の方角へ!」

 

「こら!あんた達何勝手に進路変えてんのよ!!」

 

「キャハ、大丈夫よナミちゃん。ここ最近気候も安定しているでしょ?少しくらい逸れたって平気じゃないかしら」

 

安定しているのは島が近くにある証拠だもんね。

それに仮に進路から大幅にズレてしまったとしても、ナミさんなら後でどうとでも出来そうだ。

 

「それによナミ、そのカエルは体中怪我してたんだ。おれ達は是非それを丸焼きで食いてェんだよ!」

 

「「食うのかよっ!!」」

 

追うならともかく、食べるのはちょっと…。

カエル食べるのは抵抗があるかな…鶏肉みたいだとは聞くけど…。

 

「ん?あれは…灯台…!?どうしてあんなとこに灯台なんて…誰かいるのかしら…」

 

「どうした、島が見えたのか!?」

 

「ううん、灯台があるの!別に記録指針(ログポース)が指す場所じゃないわ」

 

あんな海のど真ん中に灯台って…何か意味あるの?例えばここが偉大なる航路(グランドライン)の丁度中間ですよーみたいな。

 

「カエルも灯台を目指してるわよ」

 

「カエルはまず白ワインでぬめりを消し、小麦粉をまぶしてカラッとフリート」

 

ロビンの言葉に続いてサンジがカエル料理を語る。…うーん、やっぱりカエルは…なんか抵抗ある。

食べるっていう習慣が無いからだろうけど…なんかね?

 

「よっしゃー!カエルに全速前進〜〜っ!!」

 

「おーーーっ!!」

 

何でカエルにここまで熱くなってるのかは知らないけれど、ルフィとウソップは大いに盛り上がってるようだ。

でも食べるのはやめて頂きたい。

 

 

カンカンカン…

 

カンカンカン…

 

 

「あれ、この音…」

 

何だか、聞き覚えのある音に首を傾げる。

多分この世界じゃない…前世の事だと思うんだけど…何の音だっけ。

 

「待って、みんなストップ!変な音がする!」

 

私と同じように気付いたナミさんがそう言うが、ルフィは止まらない。

 

カエルは泳ぐのをやめて海の上に立つ。実際は海の上ではなく、恐らく下に岩か何かの足場でもあるのだろうけど。

 

「うわ!何かに乗り上げた!」

 

カエルの乗ってる足場はそれ程広いのか、近くを通るメリー号も何かに乗り上げてしまった。

…?いやでも、岩なんて見当たらないんだけどなぁ…。

 

カンカンカン…

 

それにしてもこの音何だろう…音も大きくなってる気がするし…。

 

「……え」

 

しかしその時、私は見てしまった。

そして同時に気付いてしまった…、メリー号が乗り上げている物の正体に。

 

私の視界にはこちらへ一直線に向かってくる“列車”が映っているのだ。

まさかこの世界にあるとは知らなかったけれど…なんて、今はどうでもいいか。

つまり、私達が乗り上げたこいつは…線路。急がないとどうなるのかなんて考えるまでもない!

 

「バックバック!!180度旋回して!!!」

 

「え?」

 

「急いでっ!!!」

 

この世界にも列車ってあったの!?聞いた事無かったんだけど…!

早くしないと私達全滅だよ!オールオール!!

 

「うぉわあ!!?」

 

「な…ーーーー!!?」

 

何とか、本当に何とかギリギリで旋回が間に合い線路から脱出した私達の目の前を列車は勢いよく通り過ぎる。

蒸気機関車…あんなのに激突してたらひとたまりも無いや。それに車体の先端尖ってるし、殺傷能力高いって。

 

「何だコリャ!!?」

 

「ちょっ…、カエルが危ない!!」

 

「おいカエル逃げろ!!何してんだ!!」

 

線路の上に立って、列車を止めようとしてるの…!?無理だよそんなの、止まるわけがない!!

 

「何なんだこの鉄の怪物はァ!」

 

「船!!?」

 

「違う…!こんな形で海を走れる訳がない!!」

 

流石ナミさんはこれが船ではないと直ぐに気が付いたようだ。

そうだよ、これは船と違ってとんでもない速度で“陸”を走る乗り物だよ、決して海の上を走るものじゃないと思うし、間違っても正面から止めるなんてやっちゃいけない!!

 

「…!!」

 

ガン!!と列車とカエルが激突し…当たり前だが、少しの抵抗もなくカエルは吹き飛び海中に叩きつけられた。

…見たとこ、死んじゃいないか…頑丈なカエルだなぁ。

 

「……船が、けむり吐いてたぞ」

 

「あれは船じゃない、列車だよ」

 

「列車?」

 

チョッパーが首を傾げる。

私も首を傾げたいよ。海上を走る事が出来る列車って何なの。前世にも、珍しくはあったけどそういう列車はあったと思う…多分。だけどそのどれもが海面から線路が飛び出していて、今過ぎ去った列車のように海中にある線路を利用するなんて聞いた事も見た事もない。

 

 

「あ!!」

 

「ん?」

 

灯台の足場付近に建てられた建物から、幼い女の子が出てきて船の旗を見て声を出す。

 

「大変だばーちゃん!海賊だよ!!」

 

「何!?本当かチムニー!よーひ、ちょっと待ってりゃ」

 

 

「面倒だな、建物から誰か出てきた…!!応援呼ぶ気だぞ…」

 

チムニーと呼ばれた少女が呼んできたのは、酒瓶片手に真っ赤な顔した年配の女性だった。

その女性は持ってた電伝虫を地面に置いて受話器を取る。

 

「あー…!もひもひ!?え〜〜と!!……、…何らっけ?忘れまひた!ウィ〜〜ッ!!」

 

 

「「酔っぱらいかよっ!!」」

 

ゾロとウソップが突っ込む。酔っぱらいだし、あの様子だとかなり出来上がってるでしょ…。

真昼間からどうしてそこまで飲んでしまうのか…私なんて一口飲んだだけでアレな事になるから禁止令が出たというのに。

 

 

 

そのまま通り過ぎるにしてもさっきの列車といい謎が残るので、一度この灯台に船を止める事にした私たちは、早速錨を下ろして小さな人工灯台島に降りた。

チムニーと呼ばれた少女の他に、ペットのゴンベ、チムニーのばあちゃんである先程の酔っぱらい…ココロと軽く挨拶を交わす。

 

「おめェら、列車強盗じゃね〜だろうな、んががが!」

 

「おれはルフィ、海賊王になる男だ!!」

 

「私はハーレム女王!!」

 

「はいはい、あんた達今は大人しくしててね。で、チムニー、あれは蒸気船でしょ?でもあんな形じゃ普通航海なんて…」

 

ナミさんの疑問にチムニーがひひっと笑って答える。

私もそれが気になっていたのだ。というか海の中に線路入れてたらさっきみたいに乗り上げ事故とかありそうな物だけど…その辺は大丈夫なの?

 

「見た事無いでしょあんなの、世界中探してもここにしかないよ!あれは“海列車”「パッフィング・トム」って言うの」

 

「煙吹きトム?」

 

「うん。蒸気機関で外車(パドル)を回して海の線路を進むの!」

 

そのまま、前世の列車っぽいね。

走る所が海か陸かの違いでしかない。…海を走れる時点で利便性は

 

「列車は毎日同じ所をぐるぐる走って島から島へお客を運ぶの。それより!“仕切り”もあるのに船で入っちゃ危ないじゃないあなた達!」

 

「んー?」

 

確かによく見てみれば、海中に敷かれている線路よりも少し外側にプールのレーン仕切りのような物がずっと並行して続いている。

カエルに目がいって気付かなかった…これは完全に私達が悪いね…。

 

「危ねェっつってもよ、カエルはそれわかんねェだろ、吹き飛ばすのは酷いぞお前。おれ達の獲物なのに」

 

「ああ…あいつは“ヨコヅナ”、このシフトステーションの悩みの種なのよ。力比べが大好きでいつも海列車に勝とうとすんの。あれくらいじゃ死なないしまた現れるわよ!」

 

「それに、列車は急には止まれないからね。前に出る方が悪いんだよ」

 

ルフィはそういうもんなのか…と納得した様子。何やら頑張り屋は食わないとか言ってるし、列車相手に力比べしてる所を気に入ったのかな?

 

「そんで?おめェら一体何処へ行きてェんだい。ここから海列車で行くとすりゃあ…」

 

「ああ、違うよココロさん。私達は列車に乗りにきた訳じゃないから… 記録(ログ)に従わないと」

 

「へー、どこ指してんの?」

 

チムニーが聞いてくるのでナミさんに目を向けると、ここから北の方だと言う。

 

「そうか、そりゃおめェ「ウォーターセブン」だね。さっきの海列車はその島のブルーステーションから来たんらよ。「水の都」っつーくらいで、いい場所だわ。何よりアンタ、造船業でのし上がった都市だからね、その技術は世界一ら!」

 

酔いが回ってるせいで舌足らずだが、ココロさんが言うには次の島…ウォーターセブンは私達が求めている島その物かもしれないね!

 

「ルフィ、どうする?どうやら次の島にはすんごい腕の船大工がわんさかいるらしいよ」

 

「なら、そこにしよう!そこ行って必ず“船大工”を仲間にするぞ!!」

 

船長が決定したから、行き先はウォーターセブンで間違いないね。

 

私達はすぐに船へ乗り込もうとしたが、ココロさんがちょっと待ちな、と待ったをかけてきた。

 

「便利なモンがあんら」

 

「?」

 

そう言ってココロさんは建物に入り、何やらガサゴソやって直ぐに外に出てきた。

その手には紙が2枚掴まれており、便利なモンとはそれで間違いないだろう。

 

「ほいじゃあコレな!簡単な島の地図と“紹介状”、しっかり船を直して貰いな。ウォーターセブンは広いからね、迷わねェこった」

 

「地図!確かに便利…!助かるよ」

 

「あたし達も近いうちウォーターセブンへ帰るのよ」

 

「へぇー、2人はウォーターセブンに住んでるの?」

 

聞けば、普段はウォーターセブンで常住しているのだがたまにこうやって灯台に出張しているのだとか。

仕事って大変だねぇ。…よくよく考えたら、私の夢ってニートみたいな物なんじゃ…いや、これ以上は考えないでおこう。

 

「また向こうで会ったら行きつけの店で1杯奢るさ、んががが」

 

「そうか、んじゃまた会えるといいな!」

 

「ウォーターセブンでの記録(ログ)は1週間らよ、ゆっくりしていきな!」

 

色々と教えて貰って、その上地図と紹介状まで渡してくれたココロさんとチムニー、あとゴンベに手を振って船に乗り込む。

紹介状…アイスバーグ?船大工かな?

 

「気をつけてね!」

 

「政府の人間に注意すんらぞ!!」

 

一般人なのに海賊に対してそんな送り出しって大丈夫なのかと心配になる。

でも、まぁいっか、別に私達が嫌な思いしてる訳じゃないし、寧ろこうやって言ってくれるのは嬉しいもんね。

よーし、目指せウォーターセブン!

 

 


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