ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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76『女好き、大金持ちになる』

「さて、いよいよ造船島へ入るわよ、水門エレベーターで」

 

「水門エレベーター?」

 

商店街の奥へ奥へと進んでいけば、やがて大きな塔の下へと辿り着いた。

ナミさん曰く、この塔のような物がその“水門エレベーター”らしい。

 

『お入り下さい、エレベーターは造船島、造船工場及びウォーターセブン中心街へ参ります。門の中へお急ぎ下さい、閉門1分前です』

 

係の人が私達にそう告げるので言われるがままに急いで塔へと入る。

どこからか水を流しているのか、塔の内部には滝の様に水が流れ落ちてきている穴があり、恐らくこの門を閉める事で水位が上がってエレベーターの役割を果たすのだろう。

 

「おー、門が閉まった」

 

「上がってくぞ!面白ェな〜ウォーターセブン!」

 

「水で何でもやっちゃうのね!」

 

ぐんぐんバケツに水を入れるように水位は上昇していき、ついに上へと到着して門が開く。

その先に広がるのはさっきまでよりもずっと大きく見える中心の噴水と、その下にある沢山の家々。

住宅街より少し下の層では大きな造船所が何箇所も存在し、まさに世界一の造船所と呼ぶに相応しい街だった。

 

「ここは流石に陸の方が多いな」

 

「巨大だなー色々〜!」

 

かなりの大都市に興奮してキョロキョロと忙しなく首を動かしていると、何やら1と書かれている大きな門の前に人だかりが出来ているのを発見した。

造船所でも見ているのか、とにかく行ってみよう。

 

「ルフィ!あの人だかりまで行こう!」

 

「おう!行けヤガラ!」

 

「ニーー!!」

 

早速歩道へ降りてブルに別れを告げる。いやー、ほんと助かったよ。この子達が居ないとこの街じゃやってけないね。

 

「ホラ見てあそこ!ルッチさんだわ、素敵!!」

 

ざわざわと人だかりから聞こえる声に耳を傾ける。

大体は船大工達を誉め倒している内容っぽいかな。

 

「パウリーはいないのか?」

「ルルが居るぞ!シブイなァ、男の中の男だぜ、奴は!」

「男っちゃあタイルストンだぜェ!」

 

まるで芸能人みたいな騒がれようだなぁ。

丁度近くを通る通行人が居て、ルフィがこの人だかりについて軽く尋ねた。

 

「なァおっさん、何かあったのか?」

 

「ん?ああ、この1番ドックでまた海賊達が暴れたらしくてな。…まァ結果は当然職人達にノされて終わりよ。バカな輩が後を絶たない」

 

「船大工が海賊を?」

 

「あァ…君達は航海者か。あの人だかりは、まあつまりヤジウマだな。「ガレーラカンパニー」の船大工達は住人みんなの憧れの的さ。強くて腕があって…彼らは“ウォーターセブン”の誇りなんだ」

 

なるほど…それは楽しみだね。腕のいい人に直して貰えるならメリー号も嬉しいでしょ!

 

「私達、ここに換金所があるって聞いたんだけど知らない?」

 

「換金所?ブルがあるならその水路を渡ってーーーー」

 

街の人が親切に教えてくれたので、早速ブルに乗り込んで言われた道を進めば確かに換金所がそこにはあった。

よーし、行くぞー!多分これだけの黄金があれば………、ちょっとどれくらいのお金になるかは分かんないけど、きっと大金持ちだよね!

 

ガッシャガッシャと黄金の詰まった袋を揺らしながら換金所に入る。持ってるのがミキータだからか、音だけが大きくて重いものを持っているようには見えない。そりゃそうか、実際軽いはずだもんね。

 

流石中心街と言われるだけあって、ここの換金所はかなり大きい銀行の様な内装だった。

中ではせっせと忙しなく働く人達や、お金を受け取ってる人達など…私達は後者だね。

 

すぐに受付に向かい、周りの人達に見られない様に袋を開けてこっそりと係の人に見せればその人は目ん玉を飛び出させてパチパチ瞬きをする。

 

「よ、ようこそお越し下さいました。こ、こちらは?」

 

「見ての通り、黄金よ?換金して欲しいの」

 

「で、ではこちらへ!」

 

そう言われて案内されたのは、「VIP」と書かれた部屋の中だった。

VIPルームかぁ…レインディナーズのせいでいい印象ないんだよね。

それもこれも全部クロコダイルが悪い!今度会ったら水水肉で顔面ぶっ叩いてやる!!

 

とりあえず長机を挟んだ両側の椅子の片方に座り、隣にナミさんとミキータが座る。残った両端にルフィ、ウソップがそれぞれ座った。

 

「これだけの黄金だからな…5000万は下らねェか?」

 

「いやぁ、保存状態が素人でも分かるくらい良いから、もしかすると1億とか行くかも?」

 

「1億って肉何個買えるんだ!?」

 

相変わらずルフィの頭の中は肉しか無いようだけど、もし1億換金出来たとしても全て肉には使えないからね…??

 

「ふふ」

 

そんな私を見て微笑ましいものを見るように笑うナミさん。ちくしょう、何で笑われたのか分からないけど可愛いなちくしょう。

 

うぉお…!とナミさんの可愛さに悶絶していると、扉がガチャ、と開いて鑑定士が入ってくる。

おお…あの鑑定士がしてそうな眼鏡に、鑑定士が生やしてそうな髭!ザ・鑑定士!!

 

「お待たせして申し訳ありません。物はどちらで?」

 

「これよ」

 

ミキータが机に袋を乗せて、ナミさんが紐を解いた。

 

「おお…、素晴らしい。では早速…」

 

「わくわく」

 

「わくわく」

 

ウキウキ気分で向かいに座った鑑定士の黄金を確認する姿を見る。

今度空島に行く時は空島住人全員に何かプレゼントでも持っていってあげようそうしよう。

 

「う、ううむ…ざっと見た限りでも…」

 

「見た限りでも!?」

 

「……1億相当の価値があると思われます」

 

!!!!

 

いち!おく!!

 

日本円にして、1億円!!!?1ベリー=1円だからね!!

 

生涯賃金の半分じゃないですか!!やたー!!!ぶっちゃけこの世界でお金ってそんなに興味ないけど、それだけ手に入るっていうのは素直に嬉しいよね!!

 

「そんなにくれるのかァ!!?」

 

「歴史的にも純度も…素晴らしい黄金です…!」

 

「そんだけありゃあ充分メリー号を直せるな!!残りの金で肉買ってよォ」

 

「ご納得頂けましたら、早速換金の用意を…」

 

「やったね!ナミさん、ミキータ!……っひぇっ」

 

笑顔でナミさんとミキータを交互に見ると、…お、おう…何か2人とも恐ろしい笑顔を浮かべておられました。

ナミさんなんかニッコリ笑ってるけど青筋が隠し切れてないよ!ミキータも背中から殺気漏れてるよ!

 

ドスン!!

 

「ひ!!」

 

突然、テーブルの上にかかと落としを喰らわせたナミさんに驚いて鑑定士が小さく悲鳴を上げる。

 

「な、なな、ナミさん…ど、どうした、の?」

 

「…私の言いたい事は3つよ…鑑定士さん」

 

ギロリ、と鑑定士を睨み付けるナミさんの迫力は、推定懸賞金額1億は下らないと思った。怖い。でも可愛い。

 

「1つ…言い忘れてたけど、こっちの2人はそれぞれ(・・・・)1億の賞金首。2人合わせてじゃないわ、1人で1億よ。…2つ、今の鑑定に私は納得しない。3つ、もう1度ウソをついたら…あなたの首を貰う!以上」

 

「キャハ!私からも言わせて貰うけど、無邪気なイリスちゃんを騙さないでくれるかしら?信じちゃうじゃない。あ、でもそんなトコも可愛いわ!好きよ!」

 

私も好き!!

……じゃなくて!…いや、じゃない事はないけど、今は置いといて!!

1億ってウソなの!?しかもナミさん達の言い方…1億でも安いって事!?

 

「あ…そ、それは…、そ、その……、…ま、誠に申し訳ございませんでしたあーーーっ!!!」

 

びゅーーっ!と風の様に去っていった鑑定士。

と思ったらものの数分でアタッシュケースを4つ抱えて持ってきた。取引とかに使われてそうなやつ!

 

「こ、こちらが紙幣になります!えー、かなり古くに発見が確認されていて、現在だと数個しか存在しないと思われていた、まさに幻の黄金の数々…それを1度にこれ程までとなると…はい、合計で4億ベリーになります…!」

 

「よっ…!!?」

 

「「4億ゥ!!?」」

 

ルフィ、ウソップと一緒に大口開けて驚き、急いでケースを受け取って開ける。

す、凄い…!4つ全てにぎっしり埋まった紙幣って…ここ現実だよね?

 

「な、ななな、ナミさん、ミキータ…これは…?」

 

「これはも何も、お金よ。元々それくらいの価値はあると踏んでたの」

 

「私もナミちゃん程じゃ無いけど、経験上そういう事は少し詳しくてね、まさかこれだけの黄金で1億だなんて…言ってくれるわ」

 

ミキータがちら、と鑑定士を見るとその額からドバドバと汗を流していた。

なんだ、私達を下に見て騙したのか。…3億も騙せると思ってたの?バカだよねこの人。

…2人が居なきゃ間違いなく騙されてたけども!!

 

 

そんなこんなで、まさかの大金4億を手に入れた私達はホクホクと暖まった懐を噛み締めるように換金所を後にした。

鑑定士の心は私たちに比例して極寒の地になってそうだけど。

 

「よ、4億になっちまった…!こ、こえェよおれ、1億も持つのかよ」

 

「ミキータ1人にこんな重圧任せるなんて酷な事出来ないよ、私達全員でこの子達を泥棒から守りきらなくちゃ!」

 

「あんたは何に怯えてるのよ…あんた相手から盗める盗人がいるなら見てみたいわ」

 

ルフィ以外の4人で1個ずつアタッシュケースを抱える私達は、先に船大工に会う事にしてさっきの1番ドックまで戻った。

何故ルフィに持たせてないのかなんて、言う必要もあるまい…。

 

「造船所の入り口まで戻ってきたぞ」

 

「さっきの人だかりはもう無くなってるわ。じゃあアイスバーグって人を探す?」

 

「そうねぇ…」

 

誰に声を掛ければ良いのやら、呼び出しベルでもその辺に置いてくれてれば便利だと言うのに。

 

「おじゃまします!」

 

「うわ…強引だ…」

 

柵を乗り越えて中に入ろうとするルフィを見てため息をつく。

これから船を直してもらおうってのに不法侵入しちゃったらマズいんじゃないの?

 

「おっと待つんじゃ、他所者(よそもの)じゃな?」

 

「ん?」

 

自覚のない不法侵入を試みたルフィが柵を乗り越える前に、突然物凄いスピードで現れた男に顔を押さえられて動きを止める。

…何、この人…、全く動きが見えなかった…!

 

「とりあえず外で話そう。工場内は関係者以外立入禁止じゃぞ、このドックに用か?」

 

どっこいしょ、と柵を乗り越えてこちらにやってきた男がそう話す。

は、鼻が……長い!!四角い!

 

「ウソップ…?」

 

「オイ、おれはここに居るだろ!」

 

ビシ、と例の突っ込みを披露するウソップを置いて、ナミさんが男に紹介状を渡しながら本題を尋ねてくれた。

 

「あの、アイスバーグさんに会わせて欲しいの」

 

「ほう、シフトステーションのココロばーさんの紹介状じゃな」

 

「え?お前おっさんか?」

 

「ワシャ23じゃ」

 

「“23じゃ”て、じいさんみてェな話し方だぞ」

 

「ワハハハ、よう言われるわい」

 

キャラ作り…ではないか。特殊な環境で育ってきたんだろうなぁ、周りが老人ばっかだったとか。

 

「知ってるの?アイスバーグって人」

 

「ん?知っとるも何も、アイスバーグさんはこのウォーターセブンの“市長”じゃ」

 

え、わりと大物に紹介状書いてくれたんだね…。

ていうか、そんな人に紹介状を書けるって…ココロさんは一体何者なの?

 

「へぇ、お偉いさんなのね」

 

「更にワシらガレーラカンパニーの社長でもあり、海列車の管理もしておる」

 

「いやそれはやりすぎ!」

 

市長で社長で管理者って事でしょ?めちゃくちゃ有能じゃん!

…ちょっとあの、年収とか聞いても良いだろうか。単純に気になるよ。

 

「じゃが…あの人も忙しい身じゃしのう。お前達の話は要するに船の修理じゃろう?船を止めた場所は?」

 

「え?岩場の岬だよ。裏の方」

 

「よし、じゃあワシがひとっ走り船の具合を見てこよう。その方がアイスバーグさんに会った時話が早いし、金額の話も出来るじゃろ」

 

ひとっ走り??

 

「ブルでってこと?」

 

「ワハハハ、そんな事しとったらお前達も待ちくたびれてしまうじゃろう。まァ10分待っとれ」

 

「10分…?」

 

「10分」

 

男はそう言い残すと、まるで風のように速くこの場から走り去って行った。

しかも私達が登ってきた水上エレベーターの上からジャンプして下に落ちて行ったし…本当に信用して大丈夫なのだろうか。単なるダイナミックな自殺って訳では無いだろうけども。

 

「死んでないよね?」

 

「キャハハ…分からないわ…」

 

 

「ンマーーー!心配するな、奴は街を自由に走る」

 

突然の事で驚き、少しの間男が落ちて行った所を見ていた私達の後ろから声がかかる。

…誰だこのおっさん。隣に立ってる美女を下さい!!

 

「人は、奴を“山風”と呼ぶ。ガレーラカンパニー1番ドック、大工職職長…カク」

 

「凄い職長も居たもんだよ。安全第一じゃないの?」

 

「それを言われると痛いな。次からは速度制限の装置でも持たせておこう」

 

「アイスバーグさん、そんな装置はありませんし、彼女が言っているのはそういう問題ではないかと」

 

アイスバーグ!この人がそうなんだ。おっさんとか言ってごめんなさい。

 

……もう一度言うけど隣の秘書の様な美女下さい!…ボンキュッボン…ああ、良い!!

 

 


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