ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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77『女好き、突きつけられる事実』

「いや、でも驚いた。飛ぶんだもんな、あそこから」

 

「ンマー!ウチの職人達をナメて貰っちゃ困る。より速くより頑丈な船を迅速に造り上げる為には…並の身体能力では間に合わねェ……ところでカリファ」

 

「ええ、調査済みです」

 

カリファ!良い名前だ…よし決めた、嫁にしようこの人。秘書だからアイスバーグの女じゃないでしょ?

 

というか、調査済みって何が?

 

「“麦わらのルフィ”、“女好きのイリス”、“海賊狩りのゾロ”、“運び屋ミキータ”、“ニコ・ロビン”。5人の賞金首を有し、総合賞金額(トータルバウンティ)3億4千650万ベリー。結成は東の海(イーストブルー)。現在9人組の『麦わらの一味』です」

 

物凄いバレてら。

 

スマホの様に簡単に先生を使えないこの世界で、ここまで速く私達の情報を探し出せるなんて…世界一の造船技術怖い。情報網もバロックワークスより敷かれてそうだもん!

 

「そうか、よく来た。俺はこの都市のボス、アイスバーグ」

 

「普通に対応出来るなんて凄いね。目の前に居るのがその1億だよ?」

 

「客は客だ」

 

成程…流石大都市のボス。

私が前世で例えば働いていたとして

 

 

『いらっしゃいませー』

 

『おう姉ちゃん。俺1億の指名手配犯、でも客やからな』

 

『客は客です!!』

 

 

……うーん、絶対言えないね。震えるよ色々と。

 

そんな凄腕市長のアイスバーグがさっきから胸ポケットに入れて可愛がってるネズミも気になるんだけど…ペット?

 

「このネズミが気になるか?さっき拾ったんだ。名前は…そうだな…、ティラノサウルス。エサとカゴを用意せねば」

 

「手配済みです、アイスバーグさん!」

 

「ンマー!流石だなカリファ」

 

「恐れ入ります」

 

胸ポケットに入っちゃうような可愛らしいネズミに対して、その名前はちょっと重たいんじゃないかな…。

 

「それより、10分後にチザのホテルでグラス工場の幹部と会食。その後リグリア広場での講演会。終わりましたら美食の町ブッチの市長…ビミネ氏と会談。その場で新聞社の取材を受けて頂き、本社へ戻り書類に少々お目通しをお願い致します」

 

「いやだ!!」

 

「では全てキャンセルします」

 

「市長ってそんなでいいの!!?」

 

「キャハ…私の元上司も、ここまで適当じゃなかったわ」

 

元上司ってクロコダイル?そりゃあの男はかなり用心深いというか…適当にする訳には行かない立場だったからね。

それにしてもアラバスタ乗っ取りとか良く考えたもんだけど、ビビを泣かしたんだから失敗するのは当然だよね。

 

「こんな事が出来る程の権力者だ、俺は」

 

「市長失格じゃねェか完全に」

 

「わがままな奴だなー。でもコレ(・・)、あのバーさんの言ってたアレじゃねェか?」

 

「ええ、そうみたい。そのアレよ」

 

ルフィの言葉にナミさんが頷く。

あんまりアレコレ言ってたら流石のアイスバーグと言えども怒るんじゃ…。

 

「無礼者っ!!」

 

「うわっ!」

 

アイスバーグ本人では無かったが、流石に言い過ぎたかカリファが連続で蹴りを放ってきた。

しかも、結構キレがあるな!まるで戦い(こっち)が本職の様だ…。でも!

 

「おっと、ナミさんとミキータにまで当てられちゃ困るよ」

 

「っ!?」

 

ガシ、とナミさんの顔前まで迫ってきた右足首を軽く跳躍して掴んで止める。

いくら美人秘書だろうと、私の嫁には手出しさせないよ、

 

「…うわ、パンツ丸見え」

 

「え!?は、離しなさい!この無礼者!!」

 

「どーしよっかなーー???私、海賊だからなァ??」

 

実際はこの角度だと太ももが遮ってスカートの中身は見えないんだけどね。

でも、太ももも悪くない…!

とはいえ、本当に無礼をし過ぎると船を直してもらえないかもしれないから冗談だよ、と手を離した。

 

「…さ、流石は1億の首…私の蹴りを受け止めるとは中々です。ですが!世界屈指の造船技術者に向かってアレだのコレだのは何ですか!」

 

「うん…それは、ごめんなさい」

 

「……。失礼、つい取り乱してしまいました。ですがアイスバーグさんは市民の憧れ、あまり無礼のない様に」

 

素直に謝れば、意外そうに目を丸めた後またアイスバーグの後ろへと戻って行った。

でもカリファって怒ると見境無くなるんだね…気付いてないだろうけどそのアイスバーグの顔にも蹴り入ってるよ…。

 

「とにかく、あなたがアイスバーグだよね?」

 

「そうだ。船の修理だったな?」

 

「ええ、紹介状もあるわ」

 

カクに見せた時と同様に、ナミさんはアイスバーグに紹介状を渡して見せる。

何て書いてあるのかは知らないんだけどね。アイスバーグって人に渡してくれとしか言われてないし。

 

「ココロバーさんか、なになに……『ふねみてやんなよ』」

 

「……え、それだけ?」

 

「…ふぅ」

 

アイスバーグはそれを見て軽くため息をつくと、あろうことか紹介状を破り捨てた。

その顔はかなりの不快感で一杯だ。まさか、船を見て貰う事は…。

 

「ねぇ、お願い、船直して!お金なら払えるのよ!!」

 

「私からもお願い!航海でメリー号はボロボロなの!」

 

「いいよ」

 

「それに、あの船は私達の思い出が……っていいんかい!なんで破いたの!」

 

すっごく軽く承諾して貰ったんだけど!心臓に悪い!

 

「最後のキスマークが不快だった。ココロバーさんとは昔からの飲み仲間でよ…」

 

「…、まぁ、見てくれるなら良いけど」

 

昔からの“飲み仲間”と言うには、呼び方に親しみを感じるのは気のせいだろうか。

まぁ…船を見てくれると言うのなら、その辺の事情に無闇に踏み込んでいく必要は無いから詮索しないでおこうかな。

 

「ンマー!とはいえ、既にカクが船を査定に行ってんだ、話は進んでる。それにどうせ今日は退屈な日だ。工場を案内しようか」

 

退屈にしたのはあなたの一言でだけどね…。

 

…良く捉えれば、自分で言うのも何だけど私達って高額な賞金首だし、目を離せないとか…?

 

「あれ、ウソップ、お金は?」

 

「ああ、ずっと持ってるのも重たいからな、ナミのも預かってここに……って」

 

 

「…あ、バレたぞ、急げ!!」

 

ウソップが自分の足元を見るがそこにアタッシュケースは無く、急いで周りを見渡せば背後でこそこそ隠れてケースの中を覗いている連中と目が合った。

何だこいつら!どんぐりみたいな格好しやがってー!!!

 

「フランキー1家!」

 

アイスバーグにフランキー1家と呼ばれたそいつらは、用意していたヤガラブルに乗って逃走しようとする。

悪いけど…あげないよ!!それは大切なお金なんだ!!

 

「ん!?」

 

フランキー1家の乗るヤガラが橋の下へ差し掛かった瞬間、橋から誰かが飛び降りてきてフランキー1家をロープで弾き飛ばし、代わりにその人がヤガラに乗る。

ロープで縛るんじゃなくて、ムチみたいな攻撃の仕方する人初めて見たなぁ。

…いやいや、今はそんな事よりも、誰だか知らないけど助かったよ。後もうちょっとで必要以上に彼らの体が傷付くトコだった。

 

「パウリー!」

 

「パウリー?もしかしてあの人アイスバーグんとこの船大工?」

 

「そうだ」

 

なんだ、じゃあ丁度良かった!

 

「おーい!ありがとう、その金おれ達のだ!」

 

ウソップが大きな声でパウリーを呼べば、彼は自分の足元に転がってるアタッシュケースを開けて瞳をキラリと輝かせ、そのまま手を上げて遠ざかっていく。

 

「いやオイ!戻れ〜っ!!」

 

「もういいよウソップ、私が行く」

 

どこに泥棒が潜んでるのか分かったもんじゃない。あの人も大金だと知るやそのまま持って帰ろうとするし…常識を疑うよ!普通1億だろうと人の金は取らないでしょ!!

 

『いや、俺が行こう』

 

「え?」

 

何処からか声が聞こえたと思った次の瞬間、船の上からパウリーの痛がる声が聞こえてきた。

声だけじゃない。いつのまにかヤガラの上に…そうだ、あの時人だかりの中の誰かにルッチと呼ばれてた人がパウリーの耳を抓って立っている。

…え、さっきその辺で声聞こえたのに、もうあそこまで!?

 

ルッチはパウリーを引っ張ったままヤガラを動かしてこちらに戻ってくる。

 

「ありがとう。本当は私が取り返そうと思ったんだけど…」

 

ルッチからアタッシュケースを受け取りながらお礼を言う。

その時に感じたんだけど、ルッチって絶対強いよね。何て言ったらいいか…底知れぬパワーを感じるというか。

 

「ンマー!悪かった、身内のバカは身内でカタをつけさせてくれ。おめェらにとっ捕まりゃカドが立つからな」

 

「フランキー1家に盗られなくて良かったと思ってここは1つ…」

 

「カリファが言うなら許すよ〜!」

 

「そ、そうですか」

 

くねくね踊りながら言えば、少し引き気味で後ずさるカリファ。

今に見てろ、その顔を真っ赤に染めてやる!

 

「…でも、何者なの?さっきの変なカッコした奴ら」

 

「泥棒でしょ。どっからどう見ても」

 

「泥棒と言っても、あなた方は海賊ですので法には触れませんよ。フランキー1家は船の解体屋であり、賞金稼ぎでもあるのです。この都市に出入りする海賊達を見つけては諍いを起こす迷惑な人達です」

 

あ…確かにそうか。私達海賊なんだから、盗られる方が悪いのか…。

あの黄金だって空島から盗ってきた奴だし、奪われたくなきゃ守り通すべきだよね。

 

「この街に来た海賊共を潰せばそいつらの乗ってきた船も手に入るだろ?それを解体して使える木材は売り捌く。これがフランキー1家の商売だ」

 

「キャハ!おっかないわね。でもあれくらいの人達が集まってるだけなら、盗られても盗り返すのは容易ね」

 

「あれは手下共だ。だが、裏に控える一家の頭…「フランキー」は甘くみるな」

 

フランキー…?

何処かで聞いたことあるなぁ…。この感覚も久し振りだよ…なんか前世の記憶が疼いてるって感じの…。

 

 

『ーーーーうん、今度こそ本当に決めた。私は…ハーレムを築き上げてみせる!』

 

『ハーレムってだけじゃ、なんか味気ないからハーレム女王なんてどう?』

 

『いいね、海賊王みたいで!』

 

 

「ーーーーーッ!!!?」

 

「イリスっ!!?」

 

「イリスちゃん!!!」

 

…!?え、…あ、頭が…痛い…っ!!

今、頭の中で、ちらりと映像が映ったのは…何…!?何か、話してた、様な…!!

 

「はァ…っ、は、あ……。…、」

 

「どうしたイリス!アイツにやられたのがまだ直ってねェのか?休むか?」

 

「…、いや、ごめん。もう治ったみたい…。何だろうね、別に体調は悪くないから気にしないで!」

 

ルフィまで心配してくるので、大丈夫だと手を振る。

本当にもう頭に痛みはなく、あの一瞬だけの話だったようだ。

 

「イリスちゃん…本当に大丈夫?」

 

「うん、平気平気!さ、アイスバーグ、工場見学させてくれるんでしょ?」

 

「そうだが、倒れられちゃ困るぞ」

 

倒れたりはしないと思ってるけど…でも実際の所本当に何なのだろうか…?多分、というか絶対脳裏に映ったアレは関係あると思うんだけど…。

 

「……」

 

う、ナミさんからのジト目が刺さる…。

こんな状況で言うのも何だけど、そんな表情も可愛いね!!

 

「ンマー…とにかく、職人の腕一本の世界に案内しよう。金はもう手離すなよ、中に盗人はいねェ筈だが」

 

「さっきはおれが悪かった。その辺に置くなんて普通ダメだよな。オイルフィ、しっかりおれをガードしろよ!」

 

自分が悪いと反省しつつも人任せのスタンスを変えない辺り素晴らしいと思うよウソップ。ブレない。

 

「お」

 

ギギ、と前にある大きな門が開いていく。

1と書かれた文字が縦に割れる様に開かれていき、次第に中の様子も目に見えてきた。

大まかには外からでも確認出来たんだけどね。だって門が大きい割には柵が低すぎるし…。

 

「この1番ドックには、「ガレーラカンパニー」の主力が集まり最も難しい依頼を引き受ける」

 

「へぇ…!うわ…凄い!」

 

門が開ききって中へと入れば、そこは正しく職人達の世界。

どんな巨大な船だろうと造れると言わんばかりの設備に、熱気ある船大工達の作業音…。私にはよくわかんないけど、あのクレーンもめっちゃ大きいよね。

 

「でっけ〜んだなァ!造船所っつーのは近くで見るとまた!」

 

「巨大ガレオン造ってんぞ!誰のだァ!?」

 

こういう光景が好きそうなルフィとウソップがわいわい言って騒ぎ出す。でも仕方ないよね、これだけの規模なら誰だって盛り上がるってモンだよ。

 

「おお!アイスバーグさんだ!」

 

「おい、社長がおいでになったぞ!!」

 

「本当か!アイスバーグさんおはようございます!!」

 

「おはようございます!!」

 

やっぱりアイスバーグって凄い人なんだなぁ。上に立つ人って言うのは、勿論例外もあるけど嫌われる傾向にあるのに…凄く慕われてる様に見える。

 

「アイスのおっさん随分人気あるぞ」

 

「勿論!この都市では“腕”が全て。その昔この島では、元々造船業が発達していて7つの造船会社が競い合っていた時、天才的な造船技術で職人達を魅了し…7つの造船会社を1つに束ねたのがアイスバーグさんなのです。そして集結した会社こそが、ガレーラカンパニー。彼の造船に対する熱意と腕はずっと変わらず、職人達は彼への尊敬を忘れない」

 

実作業している訳じゃないのに腕って落ちないもんなんだ。

普通しなくなったら忘れて出来なくなるのにね。そうならないって事は、それだけ熱心に毎日造船の事を考えてる証拠でもある訳だ。

 

「職人達はその腕に誇りがあるから、海賊にも権力にも屈しない…ここはそういう場所です」

 

「そっかぁ…。じゃあカリファ、私の嫁になってよ」

 

「脈絡!!」

 

がびーん、と分かりやすく驚くカリファ。

いやぁ、じゃあ船大工じゃないカリファは私に屈してくれるって事じゃないの?

 

「違うぞイリス!おれ達は船大工が欲しいんだ!オイおっさん、すげェ船大工なんだってな!おれと一緒に海賊やらねェか!?」

 

「ンマー!お前らの船には大工の1人も居ねェのか!」

 

ウソップ先生なら居るんだけど、流石のウソップも本職じゃないからね。

あの継ぎ接ぎには彼なりの愛情も感じるけども。

 

「船大工はごまんと居るがー、海賊船に乗りてェって奴ァいるかな。希望して行きてェって奴がいりゃあ引き抜いて構わねェぞ」

 

「ホントかー!?やー話が分かるなー!!おっさんはダメなのか」

 

「ンマー!俺はダメだろ、市長だぞ。ーーーところで、お前の船には「ニコ・ロビン」という女が?」

 

「いるぞ!頭いいんだこいつがまた」

 

そして私の嫁だ!!

まだだけど……、もうすぐ落としてみせる…!!

 

「カクが帰ってくるまで、好きに工場を見て回るといい。ただし、あまり船大工には近付くなよ」

 

「おう!」

 

「!あれ、デミ・カルヴァリン砲か!?おお〜!!」

 

アイスバーグの許可が下りたので、ルフィもウソップも喜んで各々見たい物の下へ向かって行った。

私は…いいかな。ここでナミさん、ミキータ、カリファと一緒にイチャイチャしてる方が有意義だし。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

と言っても、造船所内で心トキメクイチャイチャストーリーが繰り広げられる訳もなく…カリファに至ってはアイスバーグの横で忙しなく働いてるし…。

 

そんな感じで5分くらいが経過した時だった。

 

「あ、カク」

 

「キャハ!査定は終わったのかしら!」

 

ついに船を見に行ってくれていたカクが帰ってきて、ナミさんの号令でアイスバーグの所に固まる私達。

ん?

 

「ルフィは来たけど…ウソップは?ルフィ知らない?」

 

「ウソップ?いねェのか?」

 

「きっと遠くまで見に行ってるのね。だからかケースはここに置いてるわ」

 

確かにナミさんの足元にはウソップが持っていたアタッシュケース2個が置いてある。

……でも、ウソップはついさっきケースから目を離して盗まれそうになったのを反省していた筈だ。何か、引っかかる…。

 

「それで、いくらかかりそうなの?」

 

「いくらでも出せるぞ!金なら持ってんだ!出来ればよ、もっと頑丈で大砲も増やして、スピードも速くして!」

 

「後素敵な装飾なんて外板につけたり出来る?部屋の中も改装出来るの?」

 

「私は大きなベッドが欲しいわ!イリスちゃんと熱い夜を過ごすのよ!!」

 

ルフィもナミさんもミキータも少し興奮している様だ。

ちょっと待ってミキータ、それ作っちゃったら私毎日寝不足になるから!!

 

「まァ待て、手っ取り早く言うと…お前達の船は戦いのキズが深すぎる。随分豪快な旅をして来たんじゃろう」

 

「そりゃもー、山登ったり空飛んだり串刺しになったり、色々あったからなー。ちゃんと、直してやりてェんだ!!」

 

「もしかして、だいぶ時間かかるの?」

 

首を傾げてカクに問えば、彼は被っている帽子のツバを持って軽く整えた。まるで、何か言いにくい事がある様な…何か、何か嫌な予感が、私の胸の奥底から湧いて来ているのだ。

前世の記憶なのか、ただの第六感なのかは分からないけれど…頰から流れ落ちる汗が、私が知らず知らずのうちに緊張しているのだという事実を突きつけてくる。

 

「…いや、はっきり言うが、お前達の船は…、わしらの腕でももう直せん……!!」

 

「!」

 

「え…」

 

……え?

 

「ーーー例えば、無理に修理したとして、次の島まで持つ確率は…“0”

じゃ」

 

「…そ、そんな!!だって、だって今日まで普通に航海して来たんだよ!!?」

 

「…竜骨でもやられてたか」

 

「ああ、酷く損傷しておる」

 

パウリーが竜骨がどうとか言ったのに対して、カクは否定せずに軽く頷いた。

 

「……メリー…!!」

 

脳裏に浮かんでくるのは、空島で見たあの影の事。

 

…もっと船を大切にしてあげれば良かった。もっと修理に気を遣ってあげれば良かった。もっと安全なルートを選んであげれば良かった。

 

ーーーもう走れないなんて…そんなの…ウソでしょ?

 

 

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