ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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83『女好き、潜入海列車』

「ロビン!探したよ!」

 

「………」

 

私がいきなり現れた事で驚いているのか、どうもロビンの反応が鈍い。

でも表情は驚愕というより…そう、焦りだ、焦りが見て取れる。

 

「ロビン、どうしたの?そんな胸元開けてたら興奮しちゃうよ?」

 

「赤目さん」

 

まるで私の言葉など聞いていないかの様に口を開くロビンに、また私は疑問を抱く。

確かに彼女は探究心が強く、特に遺跡の様な“歴史”が絡む事象については自分を強く出していたイメージがある。だけど、私の話を無視するなんて事は…今まで1度たりとも無かった筈だ。

 

「さっきそこでコックさんと船医さんにも会ったわ。そしてあなたにも、同じ事を言わせてもらう。…あなたとは…ここで、この町でお別れよ」

 

「……は、い?ごめん、良く聞こえなかった。もう1回お願い」

 

「お別れよ、赤目さん」

 

…何、コレ。

聞き間違いだと思わせてくれない程にハッキリと、2度もそう告げるロビンに私は未だ自分の耳を疑う。

 

「お、お別れ…?えっと…その、なんで?」

 

「あなたも耳にしている筈よ、昨夜の市長発砲の件」

 

「あ、ああ…あれね、いや、私も大変だったよ!何だか知らないけど麦わらの一味が犯人って事になっててさ!私まで追われちゃって…はは。あ、もしかしてそれでお別れって言ってる?大丈夫だよ!これはただ濡れ衣着せられただけで、きちんと話せばアイスバーグも分かってくれる筈だから!私達の仲間にそんなのする人居ないでしょ?」

 

「…そうね、確かにあなた達の中でそんな事をする人はいない。謂れのない罪を被せて悪かったわ」

 

…え?

 

「だけど、私にとっては偽りのない記事よ。昨夜市長の屋敷に侵入したのは私」

 

「……?何、言ってるの?」

 

「私には、あなたの知らない“闇”がある。“闇”はいつかあなたも、そして大事なお嫁さん達も滅ぼすわ(・・・・)。現に…私はこの事件の罪をあなた達に被せて逃げるつもりでいる…、事態はもっと悪化するわ。そして何故そうするのかも…あなたが知る必要のない事よ」

 

…闇がどうとか…何なんだ一体…!

そういえば、青キジもロビンの闇がどうこう言ってたっけな…。

ロビンと関われば身を滅ぼす。不幸になる。後は何だっけな、関わった組織は壊滅とか?そんな感じだっけ。

 

 

…うーん、じゃあ私からも1つ言わせてもらうか。

 

 

 

「で?」

 

「っ……」

 

はて、ととぼける様に首を傾げる私を見てロビンの表情が怒りに染まる。

 

「なるほどなるほど、アイスバーグを撃ったのはロビンで、私達に罪をなすりつけようとしてるのもロビン。はー、ほー……誰に脅されてるの?」

 

「え…」

 

「だから、ロビンにそんな事させてるクソ野郎は誰って聞いてるの」

 

ずい、と距離を詰めれば彼女は同じだけ足を引いて逃げる。

さっきの怒りの表情はどこへやら、今は只々目を見開いて言葉を失っているみたいだ。

 

…私はもう、“信じない”事はしたくないんだ。

 

「言わないなら別にいい、気絶させてでも連れて帰るから」

 

「…私は、私の意思でそうしてる。誰に指図されている訳でもないわ」

 

「ふーん…じゃあさ、ロビンがアイスバーグを襲った訳は?それを答えてくれるなら信じてもいいよ」

 

「っ…私の、夢の為よ」

 

…っはー。

 

やれやれ…と首を振る。

ロビンの夢は何たらグリフの解読でしょ、アイスバーグ関係ないじゃん。

もうこれ、ロビンがアイスバーグ襲撃の犯人なのは本当だとしても、裏で誰かが手を引いているのも事実なのは確定したよね。

何故ならロビンがアイスバーグを殺そうとする理由がない…だから理由はロビンではなく、彼女に指示する誰か(クソ野郎)の方にあるという訳だ。

 

 

「アイスバーグとロビンの夢は何の関係があるの?」

 

「それは…」

 

ロビンもそこまで迫られるとは思ってなかったのか歯切れが悪かった。

 

大体、ロビンは私達を何だと思っているのか。

短い付き合いとはいえ、ロビンがどんな人かなんて知ってるし、信用もしてる。

私に至っては嫁にするの確定ってくらい好きなんだから離す訳がないじゃん。

 

「言えないのなら、諦めてね。私はロビンの事諦めないけど…ねっ!!」

 

「ッ!?」

 

最後の言葉と同時に、地面を踏み込みロビンへと一直線に走る。

押し倒して身動き取れなくしてしまえば後はこっちのもんだ!ぐへへ、観念しろォ!

 

「くっ…!私は、捕まる訳には行かないのよッ!!八輪咲き(オーチョフルール)!!」

 

「それは、私には通用しないよ!」

 

私の体から生えてきた8本の腕を、同じく私の肩から、だけど今度は私が生やした8本の腕が掴む。

力で私が負ける筈もなく、押さえ込んだままロビンへどんどん近づいて行けば能力で勝負するのは不利だと悟ったのか背を向けて逃げ出した。

 

「速さも、私の方が上だよ!!」

 

ロビンが能力を解除した事で余計な気を使うものも無くなり、ただ追う事だけに集中しているからかその距離はみるみる内に近づいていった。

む、曲がり角を曲がったか。

 

「絶対に逃がさない!!!…って、あれ?」

 

ロビンが曲がったすぐ後にその曲がり角を曲がれば、そこにロビンの姿は無かった。

…しかもこの先…行き止まりだ。普通に考えれば逃げられる訳がない…が、さっきの説が本当に本当ならロビンに指示してる奴が逃走の手引きをしたとしか考えられない。

 

…くそ!邪魔ばっかしてくれるじゃん…!

彼女を良いように扱って…下らない陰謀に巻き込みやがって…!!

 

…でも実際問題、これからどうするのが正解なんだろう。

私としてはこんな事態になってるんだからナミさんやミキータが心配だけど、動きやすくする為にはサンジ達と合流するのが今は1番なのかな?

 

だったら…、

 

「よっ!」

 

タン、と再度屋根に飛び乗り辺りを見渡す。

視力倍加も使用して人1人見落とさない様にしなければ……とはいえここは下町。アクア・ラグナの影響で人通りもさっきよりはまばらだからまだ見つけやすいだろう。

 

時間をかけすぎて私が潮に呑まれるのはバカらしいし、早めに見つけたいね。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

と思ってたんだけどぉ…。

 

「誰も居ない…うそん…」

 

サンジどころかチョッパーも居ないし、ルフィもゾロも、ナミさんもミキータも居ない!!なんならウソップもメリー号も居ない!!アクア・ラグナのせいで人も居ない!!なんなのここ、私しか居ないの!?

 

「もう夜だよ…アクア・ラグナ来るのが何時だっけ」

 

確か今夜半過ぎとか言ってたし、もうそろそろだよね…時間分かんないから勘だけど。

 

「…あと探してないトコといえば…」

 

アイスバーグの屋敷にはきっとルフィ達が居るはず…、なら、サンジとチョッパーは残ったあそこしかない!

 

「ブルーステーションか、確か島の正規入口にあったっけな。ということはあっちか」

 

…あ、そっか、よくよく考えればロビンが島を出るなら海列車を通らなければ無理な訳だし、そこで張ってればいつかはロビンを見つける事が出来るじゃん!

サンジは頭が良いから、私が思いつくずっと前に閃いて駅にスタンバイしてるかも。

 

かなり慣れてきた山風式移動法ですいすい屋根を飛び越え移動し、目的のブルーステーションに結構早く到着した私は適当な所で屋根から飛び降り周囲の様子を伺う。

 

「……?あれは、世界政府の役人…?確かあんな感じの服着てたっけな。それに海兵も…、………!!?ロビン…!」

 

え、まさかロビンを1番最初に見つける事が出来るとは思ってなかった…!

ってまずいまずい、適当な柱の影にでも身を隠さないと見つかったら面倒だ。

 

「ビンゴだね、やっぱりロビンは海列車で移動しようとしてる…さて、後は…」

 

嗅覚倍加…タバコの臭いを探そうか。

サンジの事だ、タバコは吸ってるだろうし、だとすればこの方法で見つからない訳がない。

 

「…くんくん、……!いた…!」

 

銘柄までは分かんないけど、いつもサンジが吸ってるタバコの臭いだ!

受動喫煙?その辺の耐性を倍加云々…。

 

臭いがするのは私から少し離れた柱の影からだ。恐らくサンジも私と同じように様子を伺っているに違いない。

居ると分かればそれでいい、チョッパーも近くに居るだろうし…後の問題はロビンだけか。

 

「放せチクショー!放せー!!」

 

「?」

 

後から現場に到着したのか、4人組の男女が町方面から駅に向かって歩いてくる。

その内の1人の両肩には人が2人担がれており、叫び声は担がれている人物の1人が発しているものだった。

 

「…ウソップ…!!」

 

しかもウソップだし…!何であんなぐるぐる巻きにされて…まるで連行されてるような…!

…ていうか、連行してる4人組の内3人は知った顔なんだけど。

担いでる大男は知らないけど、女はアイスバーグの秘書のカリファだし、残り2人は船大工のルッチとカクだ。ルッチはともかくカクの鼻を見間違えるなどあり得ないから間違いないだろう。

 

「CP9だ…!」

「スゲー…なんて迫力だ…」

 

聴覚倍加を使って海兵達の囁き声に耳を傾けるとそんな声が聞こえてきた。CP9?カップリングならイリス×ナミとか、イリス×ミキータとかイリス×ロビンとか一杯あるよね!!

…いや、違うのは分かるよ流石に。冗談だよ。

 

「全員気を引き締めろ、列車に乗れ!」

 

「「はっ!」」

 

ルッチの一言で役人や海兵はぞろぞろと駅へと入っていく。

なに?ルッチってあんなに権力ありそうな奴だったっけ?この島の船大工ってそんなに偉いの…?

 

…何にせよ、この列車にロビンが乗るってんなら私も乗り込むしかない。

けど、ナミさん達を置いていくのもね…。

 

『「ウォーターセブン」ブルーステーション発、エニエス・ロビー行き。アクア・ラグナ接近中につき、予定を繰り上げまもなく出航致します』

 

「え、もう!?」

 

さっき入ったばっかじゃん!

 

…くそ、なら今いる私とサンジ、チョッパーだけでも列車に乗り込まないとロビンを追う手がかりすら…!

 

「サンジ!」

 

「イリスちゃん!?」

 

もう駅前には誰も居ないし、隠れる必要も無くなった私はサンジの元へ移動する。

 

「あれ、チョッパーは?」

 

「別行動中だ。それよりイリスちゃんが無事で良かった」

 

「うん、ありがとう。…それで、サンジはロビンに会ったんだよね?」

 

「ということはイリスちゃんもかい。…どう見る?今回の件」

 

どう…とは、ロビンの真意だろうか。

 

「どうもこうもないよ、ロビンの本心が聞けてない以上は何も分かんない。…だからサンジ、悪いけど一緒に来てくんない?」

 

ニヤリ、と笑ってサンジを見れば彼も同じく笑って頷いた。

ちょっと無茶するけど…必要な無茶ならナミさんも許してくれる筈!……きっと!!

 

「乗り込む前に書き置きを残しておこうよ、電伝虫がいれば完璧だけど…」

 

「小電伝虫なら持ってるぜ」

 

さっすがサンジ、痒いとこに手が届く。

 

そんな訳で私は紙にロビンの行き先と、私とサンジもロビンを追って海列車に乗り込む事と、一緒に置いておく小電伝虫に何とか列車の中から連絡する旨を書いて柱の下に置き、その上に小電伝虫を乗せる。

うーん、これだけじゃ分かりにくいよね…。

 

「イリスちゃん」

 

「ん?…お!」

 

サンジが小さく私を呼ぶので振り返れば、彼の手にはペンが握られていた。

用意周到にも程があるよ、え、何?もしかしてこうなる事が分かってたの?

 

…ま、まぁ何にせよあるのは助かったよ。

柱の壁に「ナミさんへ」と大きく書いてメモを置いてある場所に矢印を引っ張っておく。

間違いなくこの場所には来るだろうし、その時にでも発見してくれたらそれでいいや。

 

エニエス・ロビーがどこかは分かんないけど、ルフィ達なら何とかして後を追ってくるでしょ。

 

「よし、準備完了!…じゃ、行きますか」

 

「ああ」

 

出発する前に乗らないとね。

…流石に遅れるのは洒落にならない。

 

 

 

出発する直前の海列車まで2人で走り、動き出した列車の最後尾の外の…何て言えばいいのか、バルコニーみたいな所へ乗り込むことに成功した。家じゃなくて列車だけど。

でも…一段落ついたかな。

 

「しかしここはめちゃくちゃ濡れるな…一服もできやしねェ…!」

 

「アクア・ラグナのせいで波が荒れてるもんね。水飛沫が…雨も降ってるし」

 

2人揃って水に濡れてビチョビチョですよ。寒い!

 

「とにかくどうにかして列車内に潜入しよう。ここに居てもすぐにバレ…」

 

ガチャ

 

「いやァ、外は凄い嵐……ん?」

 

「… 首肉(コリエ)シュートォ!!」

 

「ブはァ!!」

 

タイミング悪く中から出てきた役人の下っ端を、つい反射的に列車内へ蹴り飛ばしたサンジがしまった、と青ざめる。

 

「…くそ、こうなりゃ仕方ねェ!オイてめェら、()1()()の潜入を許してマヌケだな!」

 

「…!!」

 

そう言ってサンジは私に振り返る事なく、中に入って扉を閉めたのだった。

…そっか、私は丁度扉の裏に居たからバレてないのか。体が小さいのがここにきて役に立つとは…。

 

「…さて」

 

せっかくサンジが機転を利かせてくれたんだ。この好機は上手く使いたい。

…上に登るしかないか。ロビンがどの車両にいるか分かんないけど…それは上手く能力を使って確認して探そう!

 

…それにしても寒いな…濡れすぎたかな?

 

 




はい、次回から物語がめっちゃ動きます。エニエス・ロビーの話が好きな方には大変申し訳ない内容となっておりますが、この作品にとっては大事な話ですのでお付き合い下さいませ!

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