原作ではウソップの現地妻だけど、せっかくだからイリスの現地妻に…ぐへへ。
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誤字報告ありがとうございます。
確かに数字の方が読みやすいですね。
「あ!ちょっとあんた!今までどこに行ってたの!?」
村の端で固まっていたルフィ達を見つけて全滅させた報告をしようとした時、ナミさんが怒ったように私の前に立った。
「海賊がこの村を襲うかもしれないって時に一人でうろついてんじゃないわよ!死にたいの?」
「あ、それがですね、ナミさん」
ナミさんが言い方はアレでも私のことを心配してくれてる感動に打ちひしがれながら、船長以外は全滅させた旨を伝えようとした時、子供三人組が村の中央から歩いてくるウソップを見つけた。
「…よォ!お前らか!…げっ!お前っ!!生きてたのか!!」
ウソップがルフィを見て驚いてる。え?そんなピンチだったの?
「崖から落ちたんだって、頭からね」
なるほど、ルフィはゴム人間だから効かないもんね。
「そんな事よりキャプテン!話は聞きましたよ!海賊達のこと早くみんなに話さなきゃ!!」
「……みんなに……!!」
一瞬だけだが、酷くウソップの顔に影が差したような気がした。
「はっはっはっはっはっはっは!!いつものウソに決まってんだろ!!あの執事の野郎ムカついたんで、海賊にしたててやろうと思ったんだ!!」
「ん?」
ルフィが怪訝そうな顔をする。そりゃそうだ、したてるも何も、クラハドール…キャプテン・クロはもともと海賊。真実を村人全員に知らせるだけで良いはずだ。
「えーーーっ!!ウソだったんですか!?」
「なーんだ、せっかく大事件だと思ったのに」
「……でもおれ、ちょっとキャプテンをけいべつするよ」
「ぼくもだ!いくらあの執事がやな奴でも、キャプテンは人を傷つける様なウソ、絶対つかない男だと思ってた…!」
「帰ろうぜ、晩ご飯の時間だ!」
ウソップの言葉を真に受けた子供達は、そのまま三人で家に帰っていった。流石に子供は純粋だね。
そして、そんな流れで海賊全滅の話は切り出せず、夜…クロがジャンゴと密会していた沖にウソップを含めた一味全員が集まる。
「おれはウソつきだからよ、ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ、おれが甘かった!!」
なるほど、既に村人全員、それからお嬢様に話は伝えたけど、クロは三年前からコツコツと信頼を集めていたにも関わらず、一方のウソップはウソつきで評判だった。つまりクラハドールが海賊だといきなり言われても信じることが出来なかったというわけだ。
「甘かったって言っても事実は事実、海賊は本当に来ちゃうんでしょう?」
「ああ、間違いなくやってくる、でもみんなはウソだと思ってる!!明日もまた…いつも通り平和な一日がくると思ってる……!!」
ここで、海賊は来ないって言うのは野暮な気がしたので、少し待つことにした。何より、ウソップの決意をなかったことにはしたくなかったから。
「だからおれは、この海岸で海賊どもを迎え撃ち!!この一件をウソにする!!それがウソつきとして!!おれの通すべき筋ってもんだ!!」
その言葉にルフィ、ゾロ、ナミさんの顔が変わる。
「腕に銃弾ブチ込まれようともよ…ホウキ持って追いかけ回されようともよ…!ここはおれの育った村だ!おれはこの村が大好きだ!!みんなを守りたい……!!こんな…わけもわからねェうちに…!みんなを殺されてたまるかよ……!!」
「とんだお人好しだぜ、子分までつき放して一人出陣とは…!!」
ため息をつきながらゾロはいうが、その顔は呆れてなどいない。
逆だ、ウソップの決意を讃えるような視線は、私を含めて全員変わらない。
「よし、おれ達も加勢する」
「言っとくけど宝は全部私の物よ!」
案の定、ルフィ達はウソップに手を貸すと言った。
…よし、そろそろ言ってもよさそうだ。
「ごめん、言うの遅れたんだけどね、その攻めてくる海賊の話で…」
私はさっき海賊団を全滅させてきた事を皆に伝える。ルフィにはそう伝えてあったから全然驚いた顔をしなかったが、残りはゾロを含めたみなが目を見開いていた。
「お、お前…本当に行ってきたのか!?個人じゃねェ、丸々一つの海賊団を相手にしたってのかよ!?」
「まァね、すごい?」
驚くウソップにふふん、とドヤ顔をかます。ここまでオーバーに反応してくれるとやってきた価値があったというものだ。
「すごいなんてもんじゃないわよ、よくやったわ!それで、宝はどこ!?」
「宝?気にしてなかったな…」
「このアホぉ!」
ボコ、とナミさんに脳天を殴られてしまった、痛い。
「何にせよ、イリスが全滅させたなら残る敵は総大将だけってわけか」
「じゃあ、今すぐわる執事をぶっ飛ばしにいくか!」
バシ!と掌に拳をぶつけるルフィだが、それは私が止める。
「ダメだよルフィ、クラハドールは信用されてる。この段階で私たちが奇襲で倒したら…その瞬間から私たちはこの村の敵になるよ」
「それも…そうだ!じゃあどうすんだ?」
「うん、勿論考えはある」
既に海賊団を全滅させ、私達全員の手がフリーになっている今だからこそ出来ることがある筈だ。
私はそれをみんなに話した。
「まず…カヤお嬢様を拐っちゃう」
「いやいや、そんなことしたらそれこそ村の敵じゃない!」
「敵にはならないよ、拐うのはカヤお嬢様と、あの屋敷にいる使用人全員…これでクロを孤立させる」
「拐った後はどうするつもりだ」
ゾロの疑問は簡単だ。
「そこなんだけど、ウソップ、ゾロ、ナミさんの三人は私が倒した海賊船を北海岸に移動させて欲しい、拐った人は皆そこに連れてって、自分の目で真実を見てもらう」
「で、でもそれだと、カヤが危険な目にあうかもしれねェじゃねェか!」
「結局クラハドールはあの屋敷を去ることになるし、私はその理由までは思いつかなかったから…あの屋敷に関係のある人たちには、真実を隠すべきじゃないと思ったの。村人のみんなには隠してた方がいいと思うけどね」
それに拘束してある海賊の前に出るだけだ。私を含めてみんないるのだから、クロの近くでいた三年間の方がずっと危険だった筈だ。
「おい、なんでおれが船の移動担当なんだ、クロってやつと戦えねェじゃねェか」
「それは勿論ナミさんの護衛だよ!ウソップだけじゃ心許ないし」
「オイ」
ビシ!とウソップの突っ込みが刺さる。
何はともあれ、まずはお嬢様達の誘拐からだ。
「ルフィと私は今から屋敷に向かうから、三人も今のうちに船の移動をよろしくね、あ、船はあっちにあるから」
「よっし、いくか!」
ゾロはまだ納得行ってなさそうだが、仕方ない、適材適所ってやつだ。
作戦会議が終わり私とルフィはすぐに屋敷へたどり着く。
最初に来た時と同じように門からよじ登り、気配を消して屋敷内に侵入した。
「なァ、おれこういうコソコソすんの苦手なんだよなァ、走っちゃ駄目なのか?」
「お嬢様を拐う前にクロに見つかったらどうするの、カヤお嬢様達を逃し終えたら暴れてもいいから」
「ストレスで死んじまうよォ〜…」
どんな身体だよ。
そう言ってる間にも、一つ一つ部屋の中を確認していく。
こうも広い屋敷だとお嬢様の部屋がどこかわかんないし……あ、そう言えばウソップと話してたあの部屋!あそこがそうなんじゃないだろうか?
「そうだよね…よし、まずはあの部屋に…」
「おいイリス、なんかあの部屋変だぞ」
ルフィの声に一度思考を中断して指差す方を見る。
確かに、その部屋だけ扉が開けっぱなしで、何かの臭いがした。
…いや、何か、じゃない。
「ッ」
気配は消しつつも、慌ててその部屋を覗き込む。
「…!!」
「誰か倒れてるぞ…!」
部屋は所々手当たり次第に斬り刻まれたような痕があり、中央には羊のような見た目の執事が血を流して倒れていた。
私とルフィは慌てて駆け寄って意識があるか確認する。
「…ガハッ…、あ、あなた方は…?」
「よかった、まだ生きてる!私達のことは後で説明します、まずはここから逃げて」
ルフィに執事さんを背負わせる。私では身長的にキツいんだよちくしょう。
「はぁ…はぁ…お嬢様は…ご無事ですか…っ?」
「まだわからないけど、絶対無傷で届けるよ、あなた以外の使用人はどこに?」
「……!!それが、今日から私とクラハドール以外は休暇を…!」
…くそ!そんなことってあるの!?この屋敷の使用人の殆どがクロの手中に落ちてるってことじゃないの!
「…わかった、じゃあ助けるのはお嬢様だけで良さそうだね」
「イリス、お嬢様を襲うなよ」
「襲うか!ていうかルフィにそれ言われるのは予想外過ぎる!」
にしし、と笑ったかと思うと窓から出て走って行った。
…はー、多分、これからミスが許されない最重要任務をしなきゃいけない私を気遣って冗談を言ってくれたのだろう。
ルフィにそんな気遣いが出来ることに驚きだよ、肉のことしか考えてないのかと思ってたのに。
ルフィに続いて私も窓から飛び出す。
目指すのはウソップが話していたあの窓だ。今日きたばかりの道だったので迷うことなく目的の場所にたどり着き、窓ガラスを割って向こう側のカヤお嬢様を傷付けないように、窓を丸々取り外して侵入する。
取り外すのは十倍パワーを使えば簡単でした。
「お邪魔しまーす…」
こっそり侵入。何かいけないことをしてる気分だ。
「……おぅ、可愛いなちくしょう」
月明かりに照らされながら眠るカヤお嬢様はやばかった。語彙力喪失。
体が弱いということなので体を毛布で包んで横抱きしようとしたが、やはり身長の問題もあり厳しかった。
…結局使わないといけないのか、本日二度目の…。
「
大きくなってしまえばこっちのもんである。
優しく横抱きして、窓から脱出した、後はこのままみんなと合流するだけだ。
「…おっと、どこに行く気ですか?誘拐犯」
「…ッ!?」
そんな声が聞こえたのは屋敷の門を飛び越えようとした時だった。
低い殺気に満ちた声に一瞬だけ体が固まる。
「…ちょっとね、お嬢様と深夜デートと洒落込もうかと思って」
「なるほど…ですが困りますね、カヤお嬢様は体が弱いお方だ、こんな夜更けに連れ回されてはお身体に響く」
その両手の五本指に付けられた長い爪のような刃が、夜の明かりに怪しく煌めいている。
まさしくその姿は…クロネコ海賊団船長、