ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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87『女好き、光閉ざす世界』

「は……」

 

何、この内容…「キモい」「死ね」「男女」「調子乗んな」……。

似たような罵倒がぐちゃぐちゃに敷き詰められていて、鼓動が否応にも速くなる。

 

…何で、私がそう(・・)だって…。知ってるのはだって、3人だけで…じゃあ、美咲達がこれを…?

……あり得ない。絶対…みんなはこう言う事をしない。だけど筆跡はぐちゃぐちゃだ、1人だけの仕業とも思えない…。

 

「おはー」

 

「…?何か、妙に静かですね」

 

静寂を壊すように、教室に美咲達3人が入ってきた。

3人は中の雰囲気に首を傾げて、1人突っ立っている私の元へ歩いてくる。

 

「どうしたのですか?そんな所で立ったまま……ーーーーーッ!!?」

 

「これ、は…!?」

 

「王華…!ちょっと、これ書いたの誰!!?」

 

私の机を見て3人は目を見開き、バン!と机を手のひらで叩いた沙彩が叫ぶ。

当然、その問いに答える人など誰も居なかった。

 

「王華、大丈夫だから。こんなの気にしないで!」

 

「ね、ねぇ…それに書いてる事って、その、本当なの?」

 

「そんな事、今どうだっていいじゃない!!誰か見てないの!?これを書いた人!」

 

「し、知らない…」

 

周りに聞いた美咲が、答えに舌打ちしてハンカチを取り出して机を強く擦る。だけど、水性じゃないその字が消える事はない。

美咲は諦めずに消しゴムと油性ペンを取り出して、文字の上を油性で塗り潰してから消しゴムで擦る。

確かに文字は消えていくけど、それでみんなの顔が晴れる事はなかった。

 

「…そんな必死になって消して…事実を認めてるようなモノじゃない。…そっか、だからあなた、着替えの時更衣室で妙に周りを見ていたのね…!?…キモ…!」

 

「…!そんな事してない!私は、出来るだけ見ないように…」

 

「どうして出来るだけ見ないようにする必要があるの?自分で認めてるじゃない!今まで本性を隠して、私達の体を立場を利用して見ていたんでしょ!?そんなの、覗きと変わらないわ!」

 

「…!!」

 

この人は…確か、安城(あんじょう)さんだったか。

私を指差して大声で怒鳴る姿は、心無しか周りに同意を求めているように見えた。

 

「安城さん、黙って聞いていれば好き放題言ってくれますね。そうやって1人を糾弾するような言い方はーーー」

 

「あ、あなた達も入州さんと同じってだけなんじゃないの!?体を盗み見られた人の気持ちにもなってくれない!?」

 

「そうよ!男に見られるのと何も変わらないんじゃないの!?」

 

安城さんに続いて他の人も同意するかのように非難が飛ぶ。

そうなってしまっては、もう…手遅れだった。協調とは怖いモノで、人数が多い方が正しくなるのだ。

中には戸惑っている人も居るけど、大半の同級生が私達に対して様々な声で非難する様を見て口を出さずに縮こまるだけ。そして、その場ではそれが正しい在り方なんだ。

 

「何なのコイツら…今まで3年も同じクラスで学んできた事が恥ずかしいわ…!!王華、行こ!」

 

私達4人は教室を飛び出して、走って学校から出る。

職員室に駆け込むのは、みんなが気遣ってやめてくれた。先生へ説明するには、どうしても私の事情を話さなければならなかったからだ。

 

「はぁ…はぁ…!」

 

「逃げて、来ちゃったけど…はぁ…っ、明日から、どうする…?」

 

「…明日には、落ち着いていると思いたいですね。…あ、大丈夫ですよ、仮に周りが何て思ってても…私達は王華の味方ですから」

 

「そうよ…っ、私達はあんたが、優しくて可愛いって事くらい知ってるからね」

 

「うん…!ごめんね、私、アレを見た時最初みんなを疑っちゃって…」

 

私の言葉に3人は首を振って微笑んでくれた。だけど3人には気になる事が1つ…自分達は誰かに口を滑らせてなど居ないとハズなのだ。そもそも昨日の今日だ、何かがおかしい…と。

 

「私達が1番疑わしいのに、信じてくれてありがとう…!」

 

「…今日は昨日の続きよ!こうなったらヤケね、遊び尽くしてやりましょ!!そしたら気も紛れるでしょ?」

 

「みんな…うん、私の方こそ、本当にありがとね…!!」

 

みんなが私を見て微笑んでくれるのを見て、私も笑って返した。

例え全校生徒に嫌われても…3人が味方なら乗り越えられる。そう、思った。

 

 

 

 

 

その日以降は表立って私達を糾弾する事は無くなったけど、私の話はもう学校全体に広がっていた。

そしてそれでもずっと私の傍にいる3人も同類という扱いを受け、こっそりと陰湿なイジメを受ける毎日が続いていた。

ある日はトイレから帰ってきた美咲がびしょ濡れになっていたり、ある日は叶のノートが破り裂かれていたり、またある日は沙彩の机に花瓶が置かれていたり…そして私も、同じような事をされ続ける毎日だった。

 

ただ、そんなイジメがあろうともみんなが居るから私達は耐える事が出来ていた。

特に沙彩なんか、持ち前の姉御気質で常に私達を励まし続けてくれていたんだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーそんな沙彩が死んだと聞かされたのは、あの日から1ヶ月経った頃だった。

 

死因は、転落死。自殺でも事故でもない、間違いなく…行き過ぎたイジメによる立派な他殺だった。

学校の階段から突き落とされた沙彩は、当たりどころが悪く…そのまま息を引き取ってしまった。目撃者が居ないから推測でしかないけれど、今までの状況からして他殺に違いないのに…。

 

足を滑らせただけだと言い張る学校側には、当然3人で抗議を重ねた。だけど幾ら言ったところで聞く耳は持ってくれなかった。沙彩の死より、自分達の保身で精一杯なんだ…。

…その日から安城さんの様子が明らかにおかしいけれど、今はそんな事に構っていられる精神的余裕はない。

 

 

…それから、更に1ヶ月後ーーー今度は叶が死んだ。原因は……自殺だった。学校の3階から飛び降りて…そのまま…。

その日は休日で、何故叶がそこに居たのかも分からないけれど…。

 

沙彩が居なくなって、私達も精神的ショックから徐々に一緒に居る事が少なくなってきていた。それでもイジメは今も続いていて、叶は様々な方面から来る悪意とストレスに耐えられなかったんだと思う。

叶が死んでしまった日の前日に、何やら安城さんと話していたという目撃証言があったそうだけど…それも今となってはどうでもいい話。

この事を聞いた時、私も美咲も泣き崩れてしまった…。当然だ、私達が、私がもっと叶の心を理解してあげられていたなら…こんな事にはなっていない筈だったのだ。

 

いや、そもそも……私が、3人に…打ち明けなければ…。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

自室の勉強机で、数学のノートを出して問題と向かい合う。

……私は、何?自分の為にみんなに“本当の私”を打ち明けて…そして2人…親友を殺した私は、一体何で…将来を見据えた勉強なんてしてるの?

 

「……っ」

 

ポロ…と涙が零れる。

前は、こうして勉強机の上にスマホを置いていれば沢山の通知が届いていたのに…今は、ゼロ。

そして、ゼロにしたのは…私。

 

勉強なんてとてもする気は起きなかった。パタン、とノートを閉じて机に突っ伏す。

 

「……っ…」

 

次々に溢れ出てくる涙は、あの日、みんなに打ち明けてしまった事に対する後悔で濁っていた。

一体私は何なんだろう。沙彩は何で死んだ?イジメ…?違う、私が殺した。

叶は何で死んだ?ストレス…?違う…!私が殺した…!!

 

「…っ…私は…!」

 

勇気なんかじゃ、なかった…。あの日、私がみんなに話した行為は…無謀だったんだ。

その先を何も考えていなかった。ただ、みんなに知って欲しい…そんな事しか、考えていなかったんだ…!!

 

「……ちょっと、外歩いてこようかな」

 

思考がどんどん危ない方向へと進んでいくので、1度風にでも当たろうと外に出る。

もう夜も遅いのにと親には心配されたが、そんなに遠くには行かないと言って出てきた。

 

「…あ」

 

「あ」

 

玄関から出たすぐの所に美咲が立っていた。どうやら私の家のインターフォンを押そうかどうか迷っていたみたいだ。

 

「…一緒に歩く?ちょっと…頭冷やしたくて」

 

「うん…私も、王華と話がしたくてね」

 

そう言って儚げに笑う美咲を見て、私はこの娘の可愛い本当の笑顔まで奪ったのか…と瞳を伏せた後勢いよく首を振って無理やり思考を切り替えた。

せっかく頭を冷やしに外に出たんだ。変な考えは捨てなければ…死んでしまった沙彩や叶に怒られてしまう。…2人は私が死ぬ事なんて望んでいないって断言できる。私が今すべきなのは…そう、美咲を1人にしない事だ。

 

そのまま2人で目的地なども決めず歩き出し、長い間の静寂の後…美咲が口を開いた。

 

「王華…その、あんまり気負わないでね。…きっと王華の事だから、私のせいだ、とか思ってるかもしれないけど」

 

「…凄い、正解だよ。…だけどそれに関しては譲る気はないよ、私が何も行動を起こさなければ、2人が死ぬ事は無かった」

 

「……王華」

 

軽く俯いた美咲が、ぎゅっと私の手を握る。

 

「…王華まで死んじゃったら…私…っ」

 

「…、…私は、死なないよ。…死ねない…美咲を1人にしたら、それこそ2人に殺されるよ」

 

軽く美咲に微笑むと、彼女は小さく嗚咽を漏らし出した。…かなり、参ってたんだろうな。当然だ…この短い間に2人も親友が亡くなったんだから。

私だけが辛い訳じゃ無いと再確認して、一層美咲を1人には出来ないと思った。

 

そのまま、話せなかった期間を埋めるかの様に様々な話題を投げ合い、受け止めている間に交差点近くへとやってきていた様だ。

ここはよく待ち合わせに使っているあの場所で、美咲もそれに気付いたのか、私達が集まっていた場所を目を細めて懐かしむ様に見ていた。

 

「そんなに前じゃないのに、何だかみんなで遊んでたのも懐かしいね」

 

「そうだね…。今度は、2人で遊びにこよっか」

 

私の誘いには答えず、美咲はそこから目を離して私を見る。

 

「…王華、私、良いこと思いついた」

 

「ん?」

 

「沙彩と叶の復讐」

 

私の目を見て、真剣な顔でそういう美咲から目が離せなかった。

復讐…って、それって…どういう…。

 

「王華は女の子が好きで、それを受け入れられない人達が沙彩と叶を殺した。…だったら、そんな人達すらも纏めて王華の女にしてしまえばいいんだよ」

 

「え?」

 

「ううん、それだけじゃない…世界中の可愛い、あなた好みの女の子全員をお嫁さんにする事が出来たなら…王華をバカにする人も居なくなって、王華が正しいって事になる。そうなれば、沙彩と叶の敵討ちにもなる」

 

 

ーーーーーー。

 

言葉が、出なかった。

同性愛の壁は高いのに、その言い方だとまるでハーレムを作れと言ってるみたい…というかまんまそうだったからだ。

 

「ーーーー、は、はは、無理だよ…だって私が“そう”だったから、沙彩も叶も……っ、死んじゃったのに…!」

 

「…そんな事、言わないであげて」

 

斜め下に目線を逃す私の頰に手を添えて、美咲は何かを決意したかの様に揺らぎのない瞳で私を見据えた。私は、その瞳を見る事が出来ない。…新しい希望が、私には怖くて…!

 

「逃げないであげて、王華。叶も沙彩も、王華から“本当の王華”を奪いたかったんじゃない…好きな物に正直になって!!何にも遠慮する事なんか無いでしょ!だって王華は王華…ただ女の子が好きなだけじゃないの!!」

 

「っ…でも、私…もう怖いよ…!私の気持ちがみんなを巻き込んで…!そして殺しちゃうのなら……私は自分を、隠していき……っん!!」

 

…あ、え、…?今、何が起きてるの…?

私の唇に、何が当たって…、え、美咲の顔、どうしてこんなに近く…。

 

「は…、…だったら、あなたの嫁第1号に私がなるわよ…!!そんなに苦しいのなら、私があなたの隣に居てあげる!!こんな風に、き、キスだって、その先も!幾らでもさせてあげる!!」

 

顔を赤く染めた美咲がそう言った事で、私はようやく何が起きたのかを理解した。今のは…美咲の…!

 

「だから…あなたはあなたらしく、堂々と生きてよ!!私は死なない…あなたも死なせない!王華の可愛い所を知ったら、みんなもあなたを放っておかない!!」

 

「み、さき…」

 

「それでもまだ分からないなら、この場でおっ始めてやる!服脱げぇ!!」

 

「ちょ、ちょっと待っ…!み、美咲!本当にちょっと…!!」

 

冗談ではなく、本当に脱がせようとしている美咲に焦る私は、何とかその手を止めながら美咲の言葉を頭に浮かべる。

…それは、どう考えても現実的じゃないどころか不可能に近い考え……。希望も何も無い、ただ真っ暗なだけの未来に灯された一筋の光ってだけ…。

 

だけど、

 

それでも、私の口角は上がっていた。

 

「…そうだよ、私はただ、女の子が好きなだけ」

 

「!…うん」

 

ハッとして私の服にかけた手を止める美咲に…もう大丈夫だよとでも言うかのように笑いかけた。

…これがただの希望で終わっても良い。それが…美咲と生きていく理由になるのなら。

 

「みんな堕として…嫁にすれば、私達をバカに出来る人も居なくなる…!」

 

「うん…っ!」

 

そしてそれが、2人の敵討ちにもなるのなら…!私は、ハーレムを目指したい…!いや、目指す!!

…勿論、今の私は正常な思考回路などしていない。新しい目標が出来たという事実に逃げただけなのかもしれない。…それでも、そんな逃げ道が後ろではなく前へと進んでいるのなら、私は美咲と一緒に歩いていけるだろう。

 

「ありがとう美咲、私…頑張るから」

 

ん、と微笑んで美咲は私に体を預けて来た。

…心臓の音、聞こえちゃうかな。まぁ…いっか。それにしても美咲が私の嫁になりたいって…言っちゃ何だけど予想外だね。

 

「……だけどその、嫁って…実際どうすればいいの?日本って認められてたっけ?それに美咲って…同性愛に関心あった?」

 

「そんなの、正式な書類なんて必要ないでしょ。ただお互いに好き合ってて、ハーレムを目指す王華が嫁だと認めたら嫁!これでいいと思うけど。2つ目の質問には、王華だから関心がある、かな」

 

そんな簡単で良いのかな…。

 

「それにさっきは目指すって言っちゃった…というか、勿論今も目指す気では居るんだけどね、ハーレムって酷くない?だって私は美咲に、その他大勢の1人になってって言うって事じゃ…」

 

「じゃあ、1人を愛し続ける事だけが愛なの?」

 

「それは…」

 

「確かにそれも愛だけど、沢山の人の気持ちを纏めて受け止めて、その上で気持ちを返す事が出来るなら…それだって愛だと思わない?あ、勿論、浮気みたいな後ろめたいのはまた別の意味だからね」

 

「……愛」

 

……そんな事、考えた事も無かったな。

美咲の言う事はハードルが高く、下手をしなくても雲を掴む様な話だ。

 

だけど……。

 

「…うん、今度こそ本当に決めた。私は…ハーレムを築き上げてみせる!」

 

「ハーレムってだけじゃ、なんか味気ないからハーレム女王なんてどう?」

 

「いいね、海賊王みたいで!」

 

そう言って2人で笑い合って、先が見えなかった真っ暗な未来に光を見つけた。

私達が見つけた光は細く、並大抵の努力で掴めるような未来じゃないけれど…必ずやり遂げてみせる。

そして…私達をバカにした人達を全員見返してやれば…それが沙彩と叶の敵討ちにーーーーー。

 

 

 

プーーーッ!!!

 

 

 

「ーーーーーッ」

 

耳をつん裂くような、けたたましいクラクションの音が脳を揺さぶる。

反射的にバッと音のする方を見て…私の顔は真っ青に染まった。

 

私の眼前一面に広がるトラックの前面が、ゆっくりとスローモーションで近付いてきているのだ。

それは運転ミスなのかは分からないけれど…とにかく歩道に乗り上げて私達に迫っているのは間違い無いし、このままでは当たってしまう!美咲を助けーーーーー、

 

 

ドンッ!!!

 

 

「っ…ぁ」

 

…人間ってこんなに吹っ飛ぶのか、なんて呑気な事を考えながら宙を舞う。

…ああ、落ちたら死ぬな、これは死ぬ。

同じように飛ばされた美咲を見れば、その顔は見えなかったけれど涙が舞っているのが分かった。

 

……死ぬ?

 

………、死ぬ?

 

…………ふざ、けんな。

ふざけんな!!さっき決意したばっかじゃんか!やってやるぞって、見返してやるって…!!

こんなの、まるで運命みたいな…私は幸せになっちゃいけないっていうの…!?こんなのって無いよ…!!

 

「……っゥ…!?」

 

聞きたくもない、不快な音を立てて私達は地面に叩きつけられた。

美咲は……は、はは……美咲、人ってそんな首曲がらないよ…!手品じゃあるまいし…!

 

「…は、…ぁ…っ、ぐ……そ……!!」

 

震える手で、最後の気力を振り絞って美咲の手の上に自分の手を重ねる。

…結局、あなたの決意に応えてあげられ無かった。見せてくれた希望は、呆気なく散った。

私が、全てを打ち明けた事で……みんな、死んじゃった。みんな、殺しちゃった…っ!

 

「……っ」

 

涙が止まらない…無力な自分に。理不尽な仕打ちに。死んだ親友達に。どうしようもなく私を嫌いなんだろう…この世界に。

 

…どうして私は、私なんだろう。もっと普通に生まれたかった。もっと普通に恋愛したかった。だってそうすれば…もっと、もっともっと、美咲達と一緒に居られた筈なんだ。

…私が誰かを好きになる事で、その人を殺してしまうのなら…私はもう、誰も愛さない。愛したく、ない。

 

…もし、生まれ変わるとするならば、私が世界に気付かれない様に姿形を別人にしてほしいな。…あ、だけど私なんかより美咲と、叶と、沙彩を優先して欲しい…。

…でも、今のまま生まれ変わっても死にたくなるだけか。…記憶を失えば、大丈夫かもしれないね…。フフ、そうなったら別人と変わりないか…。そうなれば、夢は次の私に託すとしようかな…なんて。だって私は、もう誰かを愛するのが怖いから…。

 

ずっと私の味方であり続けてくれた3人に、私はついぞ、何も返してあげられなかった。生まれ変われるなんて信じちゃいない…だけど、願わずにはいられない…!

 

無謀な私には…過ぎた…望みかも知れないけど…。

 

 

ーーーああ……意識が…遠く……。

 

 

「…ご、め……、ーーーーーーー」

 

 

人生の終わりは、呆気なく訪れた。

親友を死に追いやった私が死ぬのは当然…だけどそれに美咲も巻き込んで…。

彼女が見せてくれた“希望”が眩しい…。手を伸ばしたって、もう届かない…。

 

 

 

入州 王華(わたし)』の人生は、そこで終わったのだった。


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