ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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青キジの技はオリジナル成分多目です。原作での戦闘描写が少ないのが悪いんです。


91『女好きvs青キジ』

私が再度目を開ければ、意識の底に潜る前の状況へと帰ってきていた。

私の手錠を外して強く抱き締めキスをするナミさんも、それを見守るミキータとロビンも…そして、武器を構える海兵達も。

 

 

…ただ、1つ、決定的に違うのは…。

 

 

「ーーーーーッ!!?そりゃ、マズいぞ!!アイスBALL(ボール)!!」

 

「っ!イリス…!!」

 

「イリスちゃん!」

 

青キジの顔が焦燥感に染まり、2も3も無く攻撃を放ってきた。

その腕から放たれる霧状の冷気が、私や私を庇おうとしてくれた3人までをも一瞬の内に凍らせる。

 

「た、大将殿…?殺してはいけなかったのでは…」

 

「…キミ、今すぐバスターコールの標的を『エニエス・ロビー』ではなく、『この船』に変えるよう伝えなさいよ」

 

「な……!?そ、そんな事をすれば我々が…!」

 

パキ、と氷にヒビが入る。

それを中心に空気が渦巻き、波は大荒れ…海が振動を始めた。

 

「参った、今回ばかりは判断をミスっちまったと認めざるを得ねェか。…情けを掛けたばかりにとんでもねェ怪物が生まれやがった」

 

「…!そういう事ですか…!」

 

青キジの言葉の意味をいち早く理解した准将が小電伝虫を使ってバスターコール出動中の中将へと連絡を入れる。

報せを受けた中将モモンガは怪訝そうに眉を潜めるが、大将の指示だ、従う他ない。

 

「乗り込め!!船を落とすぞ!!」

「出来るだけ味方には攻撃するな!だが、最優先である海賊、女好きのイリスを消すのに邪魔だと判断した場合は斬り捨てても構わん!!」

「クザン大将の氷で固まってる今がチャンスだ!!一気に討ち取ーーーーーー……!!!?」

 

先陣を切って船へと突撃した海兵の1人が…その場で倒れた。

突然の事態に周りは混乱し、青キジはハァ…とため息をついて頭をポリポリと掻く。

 

「…遅かったか。…来るぞ」

 

鋭い眼光で青キジが氷の塊を睨んだ瞬間…氷に亀裂が広がり、やがてそれは粉々に砕け散った。

中から現れた私を見て海兵達は、青キジは…ナミさん達ですら目を見開く。

 

「…あ、んた……イリス…よね…?」

 

頭の上に燦爛と輝く黄金のティアラ。中央には真紅に染まった宝石が当て嵌められており、今までのような透明ではなかった。

髪はいつもと同じ黒だが、漆黒に煌く美しい、まるで絹の様な長い黒髪を靡かせ…同じく変わらない赤の瞳を開く。

肩から足元まで届く程の薄く優雅なマントは、私の存在を更に雄大に見せ…何より、私の背丈も170センチ台に伸びていた。

 

「…ぁ」

「う…」

「なに…が…っ」

 

バタバタと周りの海兵が倒れていく。

記憶を全て渡したから良くわかんないけど…これは覇王色(はおうしょく)…だよね。

 

「…どうやら、私は凄く強くなったみたい」

 

全・倍加(オールインクリース)ではあり得ない背丈に、体から湧き出る今までにない力の波動。

過去を王華と乗り越えた事で…本当に大事な事と別れ(・・)なかった事で…私の能力が強化されたとでもいうのか。

 

「どっちでもいいか…!」

 

ちょっと凄めば、私の覇王色は更に規模を拡大させてバスターコールで駆けつけていた海兵達をも昏倒させていく。

私から湧き出る白い覇王色のオーラが天へと昇り、その堂々たる立ち姿はまさしくーーーー、

 

 

「女王……!!」

 

 

青キジがボソリと呟いて構えを取った。

奴に…構えを取らせたんだ。

 

「こりゃ…報告したら怒られるな。殺しておくべきだった…どうしたもんか」

 

「そうかもね。恩に着るよ…私達に時間をくれて」

 

右腕をジッと見つめてそこに“攻撃をする”という意志を強く込めれば、私の腕は真っ黒に染まった。

…出来ると確信して試してはみたけど、何だろコレ。

 

「まぁ、いいか。…あ、そうそう、さっきの取引なんだけどさ」

 

フッ…と私の姿が消え去り、次の瞬間には青キジの横腹に黒色の蹴りがめり込んでいた。

 

「あれ、無かったことにしといて…ねッ!!!」

 

「っぐお!?武装色か…っ!」

 

そのまま派手に横へぶっ飛び、勢いよく海に落ちて大きく飛沫を上げる。

 

「え…勝ったの…?」

 

「そうだと嬉しいけど…奴はそんなに甘くないよ」

 

船の端にある手すりに掴まり海をジッと見つめる。奴が海中に落ちる瞬間に能力を発動していたのが“視えた”。何でだろ…?これも出来ると思ったら出来たんだよね、王華の知識が私を後押ししてくれてるのかな?

…ほら来た、能力者なんだから海に落ちたら終わりにしとけばいいのにさ。

 

「よっ」

 

柵を飛び越える様に自然に、私は手すりを飛び越えて海面へと飛び降りた。

ギョ…っとナミさん達が驚愕の顔を浮かべるが、…大丈夫、心配ないよ。

 

 

パキィンーーーーッ。

 

 

「これは…!」

 

辺り一面、まるで氷河時代でも来てしまったのかと言うほどの光景にロビンが声を漏らす。

私は無事氷の地面となった場所に着地して、迷わず一直線に歩いて行く。

 

私が向かっている場所の地面が、ボコ!と下から蹴り飛ばされそこから青キジが姿を現した。

大したダメージはやっぱり入ってないか…タフってのもあるんだなぁ。

 

「あららら…とんでもなくパワーアップしてくれてんじゃないの」

 

「でしょ?私もびっくりしてるんだから」

 

「……覇王色、武装色と来たら…見聞色が使えねェ事はねェよな……」

 

覇気ね…。どうして私が使えるのかは分からないけど、使えるものは何でも使ってやる!

奴に攻撃が当たる…!これだけで、今までより大きく進歩しているんだ!

この勝負…必ず勝って、みんなで帰るよ!!!

 

「行くよ…!50倍灰(ごじゅうばいばい)女王の慈悲なき拳(クイーン・ファストリテ)ッ!!!」

 

氷塊(アイスブロック)(ウルス)!!」

 

武装色だか何だかは知らないけど、奴を殴ると強く意識すれば真っ黒に染まる右腕を武器に奴へと距離を詰め、一切の躊躇いなく拳を振るう。

青キジも対抗して巨大な熊型の氷を出してくるが、そんなモノは私の攻撃の前では豆腐の様に脆く崩れ去り、拳は黒く煌く軌跡を描いてその向こうの青キジの顔面へと突き刺さり後方へ吹き飛ばした。

 

「手を緩める気はないよ…!50倍灰(ごじゅうばいばい)!」

 

吹っ飛ぶ青キジに走って追いつき、その頭を両足で挟み込む。

 

女王の御御足(クイーン・リワーブ)!!」

 

挟み込んだ頭を、体を捻る事で氷の地面へと首をへし折るつもりで叩きつけた。

…これで倒れてくれるなら楽だけど…絶対そんな事は無いだろうな。

 

「んァ〜!く〜っ、いつ振りだこんな痛みは…!」

 

ガラ…と氷の瓦礫を押し除けて青キジが立ち上がる。

…?叩きつけた時のダメージは入ってない…のかな?ダメージが全く入ってないって訳でも無さそうだけど。

どちらにせよ、ようやくこれで私も戦いの土台に立てたって事か。全く…面倒だなぁ自然系(ロギア)ってのは。

 

「にしても…あんとき見たお前の覇王色より規模が大きくなってねェか?…言っとくが、今のお前の覇王色は規模だけで言えばあの“赤髪”や“冥王”と同等…いや、それ以上(・・・・)だ。どの覇気も使い方をマスターしていないのが救いではあるが…」

 

「…私も意識してる訳じゃないけど、覇気だって私から発せられるモノでしょ?だったら恐らく…私の能力で倍加してるんだろうね」

 

「…つーこたァ、ざっと50倍…」

 

「いや…」

 

深く腰を下げ、右手の大きさを軽く倍加する。

 

王華と1つになった事で…私は能力が強化された。

…つまり、上限は50よりも更に増えているのだ。

 

100倍灰(ひゃくばいばい)…!!」

 

「ッ!そりゃ、手強いなッ!」

 

「逃がすかッ!!捕まえた!!」

 

移動するだけで私が通った所の氷は抉り取られ、風が吹き荒れた。

倍加していた右手で青キジの頭を鷲掴みにして勢いよく空へ飛び、そこから縦にぐるぐると回転を始める。

 

「うおおおおおおッ!!!氷の星輪(アイス・ステラ)ァ!!!」

 

そのままの勢いで地面へと回転しながら落下し、その遠心力を利用して青キジの頭を氷に叩きつけた。

氷の大地は大きくクレーターができたが、それでも下から海水が飛び出さない所を見るに相当下の方まで海を凍らせているんだろう。

 

「…ふぅ!」

 

とんでもないな、100倍って!

クレバスのような物をさっきの衝撃でそこかしこに生み出してしまう程の威力だ。…まぁ、という事はつまりそれだけ青キジは海を深く、そして広く凍らせてるって事なんだけど…。

 

「やれやれ…マジでやらねェと殺されちまうな」

 

「…私としては、さっきのであんまダメージ無さそうにピンピンしてるあなたにちょっとショックを受けてるトコなんだけど?」

 

“覇気”を纏った体で攻撃しないと意味がないって事かな…。地面に叩きつけたって、地面に覇気が通ってるわけでもないし。

 

「だがこのままじゃ俺ァ負けるだろう。…はァ〜、まさかコレ(・・)を使わされるとは思っても無かった、女王イリス」

 

女王イリスって…。…出来ればその前にハーレムって付けていただければ泣いて喜びますけど。

 

「コレ?」

 

「見てりゃ分かる」

 

青キジの周囲をとてつもない程の冷気が迸る。それは次第に氷の礫となり、辺りに激しく降り注ぐ。

正に吹雪の様な光景だが、これを1人で起こしてるんだからやっぱり青キジは強いし…油断ならない…!

 

寒いのは耐性倍加で防いで、私は猛烈な吹雪のせいで見えなくなった青キジの気配を探る。

……居た。けど、さっきの位置から移動はしてないみたい。気配を探るって、普通にやってるけどこれが見聞色かな。さっき青キジの能力を“視た”時も同じ感覚だったし。

 

「っ…」

 

一際激しく吹雪が吹き荒れ、青キジが居る場所を中心としてまるで竜巻のような猛吹雪が発生した。

その竜巻は激しく轟音を奏でた後、まるで役目を終えたかのように呆気なく四散し…。

 

「…『 氷の宝鎧(アイス・パッキン)』」

 

…あれは、氷、か?

青キジの体を、鎧の様にイカつい氷が包み込んでいる。

肘辺りからブレードの様なモノが生えているし、顔だけを出した氷の西洋風兜には鬼の様に角も2本存在していた。

全体的にゴツゴツし、強そうな見た目になったが…それは見た目だけじゃなさそうだ。

 

「…凄い覇気…」

 

私はあの子のお陰で100倍もの倍加が可能となったのに…奴の気迫に押されてしまう。

やっぱり…一筋縄じゃ行かないか…!

 

「この状態は長くは続かねェんで、速攻でケリ…付けさせてもらうぞ」

 

「へぇ…そんなこと言って、実は私にケリ付けられるんでしょ?」

 

「そうなっちゃ、流石に面目丸潰れだ。大事にしたい面目なんざねェが」

 

コキ、と奴が首を鳴らす。その動作をするだけでも身につけている氷がガチャガチャと音を立て、まるで本物の鎧を着ているかのような金属音に冷や汗を流した。

 

…恐らく、あの氷鎧にはこれでもかってくらい青キジの“覇気”が詰め込まれている筈だ。通常の氷と同じだとは…思わない方が良いだろうね。

 

「おわっ!?」

 

一瞬で私の目の前に移動してきた青キジが、そのゴツくなった右腕を振りかぶってパンチを放つ。

 

「そんな重量級の見た目して速いとか反則でしょ!」

 

ブリッジをする様に逆手で地面に手をついて避け、ガラ空きの腹を蹴り上げた。

…う、うそん…氷に傷1つつかないんだけど…。

 

「うわ…!足が…っ」

 

蹴り上げた足が、触れた箇所を皮切りにパキパキと凍結していく。

即座に足の熱を100倍にさせて氷を瞬く間に蒸発させた。

 

「悪いが、この鎧は触れた物を何であろうと凍らせる。少しでも解凍が遅れたら…ま、言わなくても分かるだろ」

 

「ご丁寧にどうも!!」

 

ブリッジの体勢をした状態から後ろに跳んで仕切り直しにしようとした時、私の体を分厚い氷が輪っかを通すように拘束してきた。

どっからでも出てくるなぁこの氷ほんと…!

 

「さっきから攻撃されてばっかだから、そろそろ俺の攻撃でも喰らっとくか!!!」

 

「お構いな……ぐっ…が…っ!?」

 

両手の指を祈るように絡ませた青キジがそれを私の顔面へと思い切り振り下ろしてきて氷へ叩きつける。

い……ったい!!100倍アーマーだよこっちは!5倍で充分だったオニオンに謝れ!!

 

「この!女の子の顔を躊躇なく殴るなんて海軍のすること!?てぁ!!」

 

拘束している氷を溶かし、思いっきり青キジの顔面を殴って無理矢理距離を取らせた。

 

「躊躇なんてしてたら、こっちが殺されるでしょーが」

 

何やら考え込むように殴られた頬を触りながら言った。失敬な、私は殺人なんてしたくないっての!!

 

(…まさか、この状態の俺を殴り飛ばせるとは…、早いとこ決着をつけねェと面倒になる…)

 

「考え事するなんて、余裕だね!!100倍灰(ひゃくばいばい)去羅波(さらば)ッ!!」

 

小太刀を抜き、全力で奴へと振り抜いた。

す、すごっ、いつもの去羅波とは比べ物にならない大きさとエネルギー…!

想像を遥かに超える飛ぶ斬撃が、氷の地を斬り裂きながら青キジへと飛来する。

 

氷槍(アイス・ランス)!」

 

巨大な刃を迎え撃つは、青キジの腕から生み出された同じく巨大な氷の槍。

まるでドリルの様に回転しながら私の技と衝突し、相殺した。

 

「あー…これでもダメかぁ」

 

「そう簡単に突破されちゃ、この技も報われねェだろ」

 

さっきから、間違いなくMAXの100倍で攻撃してるんだけどな。

だけど、向こうも私の攻撃をきちんと警戒してるって事はそれだけ相手と私に力の差が無いってことを意味してる訳だ。

 

…なら、そろそろやっちゃいますか。

 

「手伝ってもらおうかな、そこで見てるだけじゃ退屈でしょ?」

 

「…なんだ、まだ何かあんのか?そろそろ打ち切りにしとけ、面倒だろ」

 

「残念だけど、もっと面倒になるよ。……女王・倍加(クイーン・インクリース)

 

目を瞑り、私は技を発動させた。

見聞色があるとはいえ、同じ位の実力の者同士が対峙していて視覚を断つのは悪手過ぎるだろう。

普通ならば、この隙をついて青キジは私に攻撃を仕掛け、勝つことだって出来たと思う。

 

ーーーー私の隣に、青色の瞳(・・・・)をした、綺麗な純白の髪が特徴の“彼女”が立っていなければ。

 

 

 

 


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