長い黒髪を後頭部の下の方でツインおさげにしてる敬語少女。
王華曰く、真面目な委員長オーラが眩しい美少女。メガネはかけていないが似合いそうな雰囲気を醸し出している様だ。
前世では例の事件から続くイジメに耐え切れず自殺をしたと王華は思っており、状況も自殺と見てまず間違い無いのだが……?
「お前はわしの孫なので!この島で捕らえるのはやめた!!ーーーと、軍には上手く言い訳しておくので安心して滞在しろ」
「言い訳になってないので「逃げられた」って事にしましょう」
壁の修理も終わったと言う事で、ガープやその他大勢の海兵達は島から去る事となった。
理由は何であれ、見逃してくれるなら有り難い。…ま、あの時の…そうだね、『
どうやってあの状態になるかっていうのも感覚で理解してる。…例に漏れず使用後は動けなくなったり能力が使えなくなるのが難点だけど…。
「結局、本当にルフィの様子を見に来ただけなんだね…」
「嵐の様な人ね、血の繋がりを感じるわ」
ガープが去った後、隣にいたナミさんとガープをそう評した。
あれ、あの2人…えっと、なんて言ったっけな…確か……コビーとヘルメッポ!2人は帰らないのかな?残ってるけど…。
久々の再会らしいし、ガープが気を利かせて話す時間を設けてくれたのかも。
「…海軍の話か、ちょっと気になるわね」
「ん?」
そういうとナミさんは電伝虫をルフィとコビーの近くに持っていき、2人には見えない場所にそっと置いて戻ってきた。
「おう…盗聴ね」
「そ♡私達は裏のプールでのんびりしてましょ」
「え、ここって裏にプールあるの?」
ていうか、ナミさんの水着姿が見れるの??
空島の時は下は普通のズボン履いてたからなぁ!これは楽しみだなぁ!!
「ミキータとロビンもプール行こう!」
「キャハッ!いいわね!イリスちゃんの水着姿…キャハハハ!!!!キャハハっ!!ごほっ、げほっ!」
「私は後で行くわ。このコーヒーを飲み終えてから」
「分かった、それじゃ後でね!」
手を振って2人と裏のプールへ行った。
勿論水着も忘れず持ってね。みんなに合いそうな色をチョイスしてやりましたとも!
「あれ、ココロさんにチムニー、ゴンベも」
着替えてプールへと到着すれば、そこには既に2人と1匹が中で泳いでいた。
よーし、私はとにかく浮き輪を膨らます事から始めないと!私とミキータとロビンの3人分だよね。
「海賊のねーちゃんも泳ぐの?」
「ふーっ!ふーっ!…え?いやぁ、私は泳ぐというより…浮く?まぁそんな感じ。ていうか今私の事ねーちゃんって言った?いくら欲しい?1億ベリーで足りるかな?」
「えっ」
1個完成。
それにしても、ナミさんとミキータ…美しい…!
ナミさんには白と黒の水玉模様を。ミキータには白を。そしてまだ来てないけどロビンに黒を渡せば完璧だよね!!うはー!!あ、2個目も3個目も出来た。
「ナミさんはまだ来れない?」
「ええ、でもすぐに行く!」
「よーし!じゃあミキータ、2人で向こう岸まで競争だよ!」
「キャハ!負けないわよ!」
ちゃぷんと浮き輪を浮かべてその上に座りプールに入れば、物凄い脱力感が私とミキータを襲った。
おう…浮き輪…私の命は預けた…!
「んががが!それじゃ競争も何もないれ!」
「ふふ…波に揺られて…先に向こう岸までついた方の勝ち…だよ」
「随分と気が遠くなる話らね…」
あー…でも水の中気持ちいいなぁ…。疲れた体に染み渡るというか何というか…。
「…むむ」
丁度能力が使えない今なら絶好の実験チャンスだと思い、“覇気”を使うイメージを思い浮かべてみる。
……ダメだ、やっぱりうんともすんとも…。能力で私の中に眠るそいつらを倍加してあげないと使えないって事かぁ…。
いつか能力なしでも使える様になれば、絶対便利な力になるのに…。
というか、この先の海を攻略しようと思えば覇気の習得は必須なのでは?と考える。
例えば悪魔の実で1番厄介な種類といえば、やはり
結局青キジと対抗する為に使用した力は“覇気”な訳だし…この先の海ではみんな、当たり前のように“覇気”を使ってくるかもしれないんだよね。
…そんな時にいちいち
「せめて…後2年くらい…修行が出来たらなぁ」
「だったらその修行には勿論、私達もついて行くわよ」
「あれ…ナミさん…もういいの?」
ナミさんがミキータの浮き輪を引っ張って近づいて来た。
ナミさんは首を縦に振って、「聞きたい事は聞けたし、これ以上は野暮かな」と微笑む。天使だった。
「…イリス」
「え?」
「…ん」
「…な、ナミ…ちゃん。な、何を…ぐ、ぬぬ…!」
ちゅ、と触れるだけのキスをかましてきたナミさんは、悪戯が成功した子供の様に無邪気な顔で舌を出した。
「くぅ…ずるいわナミちゃん…私も…私もする…!」
ミキータが必死に顔を動かしているが、能力者ゆえの制限で体が動かない為ヤキモキしていた。
ナミさん…いきなりどうしたんだろう。
「ナミさん…どうしたの…?」
「何だか今、無性にあんたが近くにいる事の喜びを感じたのよ。…本当に怖かったんだから」
浮き輪の上に仰向けで寝る様に浮かぶ私の顔を、ナミさんが頭元から包み込むように手で挟んで額と額をくっつけた。
…う、何この状況…ムラムラしてきた。
「ふぎぎ…!ナミちゃん…!私もぉ…!!」
「あんた…あんまり無理してると落ちるわよ?勿論後でミキータの時間も作ってあげるから」
「あら、なら私は?」
「ロビン!」
コーヒーは飲み終えたのか、流れるように会話に入ってきたロビンが同じように浮き輪を浮かべ、穴の中にお尻を入れる形で座った。
そして、3人の嫁に囲まれる私……ううん、素晴らしい!
「お姉ちゃん達…絶対私達の事忘れてるよね」
「ニャー…」
……わ、忘れてませんとも。
***
結局、あれからサンジが私達に料理を持ってきてくれて、それに釣られたルフィやチョッパー。そして賑やかになる事で更にはガレーラカンパニーの船大工達やフランキー1家まで集まってきて、かなり大きな宴となりみんなではしゃぐ。
コビーとヘルメッポは流石に帰っていたが。
水水肉のバーベキュー…うまぁい!サンジが手を加えてるからかなりのものとなってるし!でもさっきパスタ食べたばかりだから、お腹はあんまり空いてないな…。
「…じゃ今が丁度いいかな、そげキングもいるし」
「?」
私の隣にいたミキータが首を傾げる。
水から出てからというもの、ミキータの熱烈キッスをこれでもかと喰らわされたから何だか恥ずかしい…。
「みんな呼んでくるね。…私の事、話したいから」
「!…分かったわ」
ミキータに微笑みかけて、私は宴の雰囲気を壊さない為にも隅の方にみんなを集めた。
ルフィとチョッパーはどうしてそげキングがいるのか疑問に思っていたが、そこは何とか誤魔化した。別に彼がウソップだよと言っても良かったけど…。
あ、後フランキーも呼んでいる。だって麦わらの一味になるんだし、今話すか後で話すかの違いしかないもんね。
「おーし、いいぞイリス!どんと話してみろ!」
「はは、頼もしいねルフィ。…何から話せば良いのか分かんないけど…そうだね、じゃあまずは私の…“王華”の過去からーーーーー」
ぽつり、ぽつりと私は自分の全てをゆっくりとみんなに話して行く。
前世で起こった事や、今世で前世の記憶が無かった理由。そして私の
全てを話し終えた時、何だか私は胸のつっかえが取れたような…長年溜まりに溜まったしこりが無くなったような、そんな気分になった。
私の話に口を挟む事なく、ただ黙って聞いてくれたみんなには感謝しかない。
「ーーーーと、いう訳です」
「……なるほど」
まず真っ先に頷いたのはルフィだった。意外すぎる。
「不思議体験ってことか」
「アホか!そんな一言で終わるような内容じゃねェだろ!!」
バシーン!とそげップに頭を叩かれたルフィ。
だけどその顔は何とも不思議そうに眉を顰めていた。
「だってよ、それ以外に何かあんのか?イリスはおれ達の仲間じゃねェか!生まれた世界が違うとか、そんな事はおれはどうだっていい!」
「ルフィ…」
「ああ、俺もルフィと同意見だぜイリスちゃん。その別の世界ってのは気になるが…行こうと思って行けるもんでもねェだろ」
「それより俺はお前が生前んな事で悩んでたのに驚いたぜ。女が好きとか、それを気にする時期がてめェにもあったのか」
ルフィもサンジも、そしてゾロも、私の目を真っ直ぐに見つめながら言うその言葉は、私にとって涙の引き金みたいなものだった。
流石に堪えきれなくなって頰から涙が伝う。
「おれはどんなイリスでも好きだぞ!な、そげキング!」
「おお!そうだとも!例え生まれが次元レベルで違うとしても、君は一味の仲間だ!」
「うおぉぉおおん!おめェ…!おめェ…苦労してんだなァ…!!」
…こんな、訳わかんない話を信じてさ。…はは、みんな、バカだよね。
…バカ過ぎて……大好きだよ…!!
「勿論、私もみんなと意見は変わらないわ。イリス…あなたの知る私がどうであれ、私が知る私は今、あなたの横にいる私…。それだけよ」
「キャハハッ!ロビンの言う通りよ?私は仮にイリスちゃんが世界を滅ぼそうとしてもついて行くわ!もうイリスちゃんラブよ!」
「…だって。イリス、良かったわね」
ふふ、と笑ってナミさんが私の頰を撫でる。
ナミさんは…?と尋ねれば、彼女は分かってるクセに、と微笑んで…。
「愛してるわ、あんたがどこの誰だろうと、私はあんたを愛してる。何があったとしても私達だけは、いつまでもあんたの…イリスの味方だし、嫁よ」
「っ…もう、もっと、もっと好きになっちゃうよ…!」
「ふふ…それは良かったわ」
そして私は、ナミさんの胸に飛びついて泣いた。
初めてナミさんと会った時のように…エニエス・ロビーで連行されかけた船の上のときのように…。
私が初めてナミさんと出会った時に、ただ『忘れた』だけの孤独はーーー今、私の中から完全に消えてなくなったのだった。
「でもよ、じゃあそのイリスじゃないイリスってのはなんなんだ?」
一頻り泣いた後、ルフィが首を傾げながら聞いてくる。そうだよね、そこは多分ルフィじゃなくても難しい所だと思う。
「えっと…この世界に来てからの私は前世の記憶が無い状態で過ごしてて、私の心の奥深くにずっと仕舞い込んで、表に出ることがなかった記憶こそが入州…名前は“王華”って言うの」
「なるほどね…。記憶が無い状態で過ごしたって事は、その間の10数年間で似たようで違うイリスとしての人格が生まれたって訳でしょ」
「そう、それが私ね」
そんでもってそのイリスと王華が混ざりかけてたのが、エニエス・ロビーでちょっと不安定だった時の私。
「
出来るだけこの世界を生で味わわせてあげたいんだけどね…。
「その覇気ってのも何なのかわかんねェ」
「覇気はもともとこの世界にある力だよ。私もちゃんと理解してないから説明出来ないや…ごめん」
王華が居れば少しはマシな説明が出来るかも知れないんだけどね。
「それよりルフィ、新しい船はフランキーが造ってくれるんだって」
「え!?ほんとかフランキー!!お前やっぱりいい奴じゃねェか!」
「俺の夢の為だ、感謝される様な事じゃねェ」
「でも私達は感謝するからね!よーし、じゃあ宴再開だよ!行こう、みんな!!」
過去の話は終わったんだ。
『本当の私』は…凄くあっさりと受け入れられ、みんなの心の広さにはそれこそ感謝しかない。
…だから、これから先の“未来”…まず1番の脅威はエースの死。
…それをルフィへの恩返しのつもりで、何がなんでも運命という名のちゃぶ台をひっくり返してやろうと、私は強く決意したのだった。
次回は0.5なので6日の0時に投稿します。その次は7日の0時で、その次からは通常の2日おき更新に戻ります。