全体的にスタイルが良いとは王華談。ミディアムヘアがたまに跳ねてるのが可愛いらしい。
前世では行きすぎたイジメによる階段からの突き落としで命を落とす。
死の恐怖よりも、イジメの中で叶、美咲、そして王華を残して死んでしまう事に申し訳なさを感じながら亡くなった。
仲の良い4人の中でも姉御気質の方であり、大体纏め役をしていたのは彼女である。
宴の翌日、仮設本社内にて私達は机の上に新聞紙を広げてワイワイと眺めていた。
「おお?フランキー1家の事が全く載ってねェじゃねぇか、あれだけ暴れたってのに…」
「ああ、多分青キジだろうね。フランキーを助けに来ただけの人達に罪を被せるのは忍びなかったとか」
「そんな事考える人かしら…」
私の呟きにロビンが反応するが、この流れだと青キジしかそんな情報操作をする人は居ないし…理由は迷宮入りだねこれは。
「何にしても良かった、俺達ァともかく…あいつらこの先、逃亡人生じゃ可哀想だもんな」
「その代わり俺達の事は酷ェ書かれ様だ…!」
私達とは違って、近くの柱に背中を預けて座っているゾロが言うので見てみれば、確かに散々な書かれ様だった。
……?
「あれ、青キジと私が戦ったっていうのは載ってるけど、勝敗までは書いてないね。それどころか…」
「麦わらの一味、大将の力になす術も無く撤退……って何コレ!?」
ナミさんがバン!と机を叩いた。
「…きっと、大将が敗れたなんて大々的に報道出来ないからよ。それこそギリギリ保たれている均衡が崩れかねない…海軍はそう判断したんじゃないかしら」
「キャハ、ま、ロビンの言う通りでしょうね。まさか向こうも大将がやられて帰ってくるなんて思っても無かったでしょうし」
「イリスちゃんの存在自体に大した危険が無いと判断したって証拠でもあるんじゃねェか?青キジ自身で対面した相手だ、イリスちゃんの嫁さんに手を出しさえしなければ、ただの可愛い女の子だからな」
「えへへ〜、そうでしょ?」
サンジには冗談っぽく返したけど…青キジには一応私が別世界から来たって言うのは話してるんだよね。
異世界から来たことは信じては貰えなかったけど、私には過去や未来が分かる能力があるって思ってる訳だし…危険がないと考えるのはおかしいと思うけど…。
ま、いっか。なる様になるでしょ。
「だけど撤退とはいえ、エニエス・ロビーの、しかも『バスターコール』からの撤退よ。もしかしなくても…」
「ああ、こりゃまた懸賞金が上がりそうだな」
「お!おれも賞金首になれるかな!」
「まァ可能性は無くもねェが、大変なのは俺だよ…“巨星現る”だ!」
「何で喜んでんの!?あんた達バカか!!」
そんなナミさんの肩にぽん、と手を置いて親指を立てた。ナミさんだって賞金首になる可能性高いよ!!
「あんたねェ…知らないでしょ?私達、政府の旗撃ち抜いたからね。あれはまぁロビンの為だからその事は良いんだけど、政府に喧嘩売ったってことはあの場にいた全員に懸賞金が懸かるって事なのよ!」
「はは、海賊王になろうとしてる男の
「〜〜っ!!もう!じゃあもし私が賞金首になったら、あんたちゃんと守りなさいよ!」
「え?賞金首にならなくても全力で守るけど」
こてん、と首を傾げるとナミさんはそうだったわね…とため息を吐いて目の前のお菓子を口に放り込んだ。
「船完成まで5日かかるって話だっけ?」
「そうらしいな。船って5日で造れるようなモンなのか…職人ってのァわかんねェもんだ」
そしてそんなプロが仲間になってくれると言うわけか。
頼もしいなぁ…フランキーって見た感じ戦闘も出来そうだし、単純に戦力増強じゃん。
「じゃ、その間ゆっくりお買い物でもする?4人でデートしましょ……って、あれ?ここにあった2億ベリーは?1億しか無いじゃない!もう1つのケースはどこに!?」
「ああ、宴の時によ、肉やら酒やら買うのにやった!」
「やった?私達のお金よ!」
「おれ達の宴会だったじゃねェか」
「な、ナミさん落ち着いて!ほら、後1億は残ってる訳だし!デートしよ!ね!」
ピキ…と青筋を浮かばせるナミさんの腕を抱き締めるように引っ張って抑える。
その瞬間、ナミさんはピタリと動きを止めて、私の胸辺りを凝視してきた。
…な、何でしょうか…、腕を抱きしめてるのに胸の感触が無いって言いたいんでしょうか!
「…あんた、……ああ」
最後にぽつりと、「これはミキータが喜ぶわね…」と言っていたのは気になるけど、まぁそこまで重要な事でもないだろう。
と言うことで、私達は早速それぞれお小遣いを受け取ってウォーターセブンの街へ繰り出した。勿論私はナミさん、ミキータ、ロビンと一緒にね。
***
「イリス、あんたはまずこっちよ」
「えっ」
ちょっと小腹が空いたから水水肉を食べに行きたかったんだけど、何故か私はナミさんに引き摺られてウォーターセブンの一角にある、所謂下着専門店へと放り込まれた。
「え、え?」
「あらナミちゃん、もしかしてイリスちゃんに私達の下着を選ばせてあげるの?良い考えね!!」
「フフ…お願いね、イリス」
ええーーー!?ちょちょちょまままま!!!確かに、私はそういう事を躊躇う必要はもう無くなったよ!だ、だけどなんて言うか…ヘタレはヘタレだし!!恥ずかしいじゃん!!
「そうね、それも楽しそうだから後で選ばせるとして…今回の本命はこっちよ!」
ムニュ。
「……ん?」
ムニュ?
…え、あれ?今ナミさん…私の胸触ってない??
いやそれはまぁいいんだけど…ムニュ?ムニュってなに?そんな膨らみがあるみたいな…はは、あり得ないあり得ない。何たってこの世界に来てからの10数年、私の胸が膨らみを感じる事など一片足りとも無かったんだから!
「んっ…、ナミさん、あんまりその、えっちな触り方は…」
「…イリスちゃん、確認の為よ。こっちに来なさい」
ぐい、とミキータに手を引っ張られて試着室に放り込まれた。
後からぞろぞろと2人が入ってきて、一般的な試着室と比べたら少し広めの室内とはいえ、流石に4人も一緒に入ったら狭いなぁ、ははは。……み、ミキータさん…?目が血走ってません?ロビンさんもなんか、妖しい笑みですね!?ナミさんも何そのにっこり笑顔、逆に怖い!!
「ちょ、ちょっと待って、まさかとは思うけどこの無理矢理な流れ、まさかとは思うけど…!!」
「キャハっ、ま・さ・か・よ♡」
「ひぁ…っ」
ぺろ、と首筋を舐められて飛び上がりそうになる。
もぉ…!胸関係無いじゃん…!
***
「…ふー、スッキリしたわ。でも確かにナミちゃんの言う通り…」
「ええ、イリスの胸が成長してるのよ」
「私は今回が初めてだったから、成長は分からなかったわ」
ビク、ビク、と壁に凭れ掛かりながら息を切らす私の前で、何事も無かったかのように話が再開された。
ミキータに至ってはまだ私をチラ見してはニヤ、と目を赤く光らせている。
うう…過去を受け入れてもみんなにしてやられるのは変わらないのね…ぐすん。
「せ、成長って言っても、ほんのちょっとでしょ?まっ平からちょっと膨らんだかな、くらいの」
「そうね、だけど成長は成長よ」
そもそも成長したのが謎なんだけど…。考えられるとしたら、
そもそも私の体がちっちゃ過ぎる幼児体型な理由も、恐らく死ぬ間際の願いが原因だろうし。
…あ、そっか、それで気付いたけど、
あれ、と言う事はもう
「と言うわけで、今回はイリスの下着を買いに来たってわけ」
「それを言う為に私を犯す必要はあったんですか!」
「勿論よ、あんたの胸が大きくなったとか、そんなの我慢できる訳ないじゃない」
あれ、質問の答えになってないような!!
崩れた服を整えて、揃って試着室から出れば店員に怪訝な顔をされたのでとりあえず笑っておいた。何も無かったですよー。本当はばりばりアレな事してましたけど!
「下着かぁ…。何でもいいけどね、こんなんとかで」
適当に取ったスポーツ用のやつをみんなに見せると、揃って眉間にシワを寄せた。
「確かに今のサイズや、それからイリスの普段の行動からスポーツブラにするのは正解よ。でも…何でもいい訳ないわ!私は脱がした時に視覚的興奮を得たいの!!」
「ナミさん!?大声で何を言ってるの!!?」
「私はこれが良いと思うわ!イリスちゃんが持ってきた奴の黄色版よ!私の髪とお揃いね!」
「私は彼女にはコレが似合うと思うわ」
ミキータはともかく、ロビンそれ布どこにあるの??そんな紐みたいなのでどこを隠すの?ナミさん待って真剣な顔して頷くのやめて。
「…あ、ねぇ、これなんかどう?」
「え?…わぁ、可愛いねコレ!」
ナミさんが手に取ったのは、水玉模様の淡い水色をしたものだった。
どうやら上下セットの物らしく、なんて言うかさっきまでの流れでまさかここまでまともな…というか私の好みドストライクを当ててこられるとは思わなかったからびっくりした。
「私、これにするね!」
「ええ、絶対似合うわ!」
早速受付へ持っていって購入。その後試着室で素早く着替える。
うん、やっぱりこの色は私に似合うなぁ…。背後から感じる3つの視線はこの際気にしないでおこう。
「お待たせー。んー、慣れないから気持ち悪い…」
「すぐに慣れるわよ、じゃあ次は私達の選んでくれる?」
「勿論!とびきり可愛いの選んであげるよ」
ナミさんはやっぱり水玉が似合うよね。ミキータは赤の煌びやかな装飾がついてるのとか似合うと思う。そんでロビンは大人な感じで黒!ギャップを狙って白でも良いなぁ…。
ナミさん達の気持ちも分かったかも…、確かに下着選びって楽しいんだね。
脱がせた時の視覚的興奮…か。自分が選んだ奴を身に付けてくれてるだけでも嬉しいや。
そんな感じで、私達のデートの時間は過ぎていった。
4人でこう、平和に買い物をしてれば前世の友人達を思い出す。あの人達は私の友人ではなく王華の友人だけど…それに、今私の目の前に居るのは友人じゃなくて嫁なんだけど、ね。
一時はどうなる事かと思ったけれど、かなり楽しい時間だった。
みんなで水水肉を食べた時も、適当に街中をぶらぶら歩いたり、ブルを借りて優雅に水上デートと洒落込んだり。
…ああ、本当に…こんな幸せな時間を当たり前のように過ごせるのも、みんなのお陰だなぁ。
あの時、全てを諦めていた私の事を…みんなが諦めなかったから今がある…なんて、いつまで考えてもしょうがないか。
「…ふー」
楽しかった時間は過ぎて、今はもうみんなも寝静まった夜だ。
そんな中、私は1人仮説本社を抜け出して夜風に当たっている。遠くから聞こえる釘を打つ音で、こんな時間になってもまだ作業を続けてくれているんだな、と嬉しく思った。でも暗いから怪我だけはしないようにして貰わないと…。
「イリス」
「…ん、ロビン?どうしたの?」
私と同じく風にでも当たりに来たのか、ロビンも中から出てきて私の隣に立つ。
「あなたが出て行くのが見えたから来たの。…イリス、改めてお礼を言わせて…ありがとう」
「へ?まさか、エニエス・ロビーの事?でもそれは私も助けられたし…」
「それもあるけど、アラバスタで私を助けてくれた事も…私に、あなたの嫁という幸せを与えてくれた事も含めてのお礼よ」
どれもこれも私が好きでした事だから…お礼って言われてもイマイチピンと来ないんだけどね。
…でも、感謝の言葉を伝えたくなるって気持ちは、私もよく分かるから。
「じゃあ、これからも末永くよろしくね?一味の仲間としても…私の嫁としても」
「フフ…ええ、こちらこそ」
くい、とロビンの腕を引っ張れば、彼女は私の意図を察してしゃがんでくれた。
私はそんなロビンの頰に片手を添えて、ゆっくりと顔を近づけて…キスをする。
「ん…」
深くはせず、だけど触れるだけの軽い物でもないソレを2人で何度も、何度も繰り返し夜は更けていく。
…最終的に段々寒くなってきて、キス中に身震いした私を気遣ったロビンが、微笑みながら中に入ることを提案してくれたから戻って寝たけど…最後まで締まらないなぁ、もう。