合衆国召喚~星条旗異世界にはためく~   作:アスタラビスタ

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9話

中央歴1639年 4月12日

クワ・トイネ公国 国境地帯

 

 

 

クサナイ空軍基地を発進した第36戦闘飛行隊(36th FS)のF-16CM 20機は各小隊事に編隊を組み高度16,000ft(約5000m)380kt(約700km/h)で一路国境沿いの街ギムへと飛行していたが、そこへE-3Cセントリー早期警戒管制機(AWACS)から通信が入る。

 

『ローニンよりフィーンド各機、方位2-1-0 距離80nm(約150km) 高度1,000(約300m)に空中目標を確認 機数75 敵航空戦力と思われる。味方地上部隊に接近している、割り当てを送る。迎撃せよ』

 

AWACSからの指示に第36戦闘飛行隊(36th FS)の隊長であるニコラス・ヘニー少佐が答える。

 

『フィーンド1、了解。フィーンド各機、割り当ての目標に対して射程に入り次第スラマー(AIM-120)を発射しろ』

 

飛行隊各機から了解した旨の無線が入る。

ヘニー少佐は目標までの距離が50nm(約90km)を切ると攻撃の為の準備を進める。

Link 16(データリンク)を通じてAWACSから割り当てが送られ、目標情報がカラー多機能ディスプレイ(CMFD)に表示される。

マスターアームスイッチを確認しON位置にある事を確認する。

スティックのボタンを押し込み A/A(空対空)モードを選択し翼端のAMRAAMを選択する。

レーダーをRWS(レンジ・ワイル・スキャン)モードからRWS-SAMモードに切り替え、割り当て目標に対するロックを実施する。

そこまでの一連の操作を終えればヘッドアップディスプレイ(HUD)に視線を戻し、ターゲットボックスをASEサークルに捉え、更にステアリング・キューをASEサークルに収める様に機体を操る。

全ての操作を終えヘニー少佐は無線のプレストーク(PTT)スイッチを押し込み僚機に警告を出す。

 

『フィーンド1、FOX3!』

 

そうコールし、スティックの発射スイッチを押し込む。

回路を通じてAMRAAMに対して点火信号が送られ、固定装置が外されると同時に低排煙ロケットモーターに点火される。

AMRAAMはロケットモーターの力によりマッハ4まで加速し目標に対して飛翔していく。

編隊各機も同様の手順で攻撃を実施し初弾合計20発のAMRAAMが発射された。

HUDの残り飛翔時間が減っていきカウントが0になるとレーダー画面からきっちり20機分のシンボルが消失する。

第36戦闘飛行隊(36th FS)の各機は自機に割り当てられた目標がなくなるまでこの一連の動作を繰り返した。

最後のシンボルが消失した事を確認すればヘニー少佐はAWACSへ通信を行う。

 

『フィーンド1よりローニン。目標空域はクリア、繰り返す目標空域はクリア』

 

『ローニン了解。まもなくゴーストライダーが攻撃を実施する。フィーンド各機所定のポイントで待機せよ』

 

『フィーンド1、了解』

 

通信を終えればF-16CMをバンクさせ事前に設定されていた待機ポイントへと針路を取った。

 

 

一方のロウリア王国軍先遣隊は恐慌状態に陥っていた。

事の起こりは僅かに数分前、クワ・トイネ公国軍の抵抗もなく国境沿いの街ギムへと悠々と進軍を続けている先遣隊の上空を飛んでいた75騎に及ぶワイバーンが轟音と爆発によって次々に墜とされていったのだ。

爆発が上空で起こる度にワイバーンと竜騎士であった物がロウリア王国軍先遣隊の頭上に降り注ぎそれが一層の恐怖と混乱を誘発していた。

段列の最後尾の騎乗でそれを見ていた将アデムは信じられないといった表情を浮かべ墜ちゆくワイバーンを見ていた。

周りでは参謀達が混乱を収めるべく段列へ向け伝令を走らせるなど対応に追われていた。

 

「い、一体なにが起きたというのだ…」

 

狼狽するアデムに参謀の1人が慌てた声で報告を上げる。

 

「申し上げます!上空警戒に当たっていたワイバーン全てが墜とされました!」

 

「ぜ、全騎だと。クワ・トイネの魔導攻撃か?」

 

「それはまだ分かりません」

 

「えぇい!まだワイバーンは代わりがいる!一刻も早くギムへ向かい攻め落とせ!」

 

怒気を浮かべ言うアデムはそう言いながらギムがある東を指さす。

そして気付く、指さした先の空に点の様な物が幾つかあった事に、点は徐々に大きくなっていきそれにつれまるで雷鳴の如き音が響き始めた。

その謎の物体が段列の先頭を飛び越える時にはアデムにもその姿がハッキリと確認できた。

ワイバーンを2回りは大きくした黒色の鉄竜だった。

鉄竜が腹から何か小さい物体を次々と落としていく。

その物体が地面に落ちる度に大魔導を凌駕する爆発が起き兵たちをなぎ倒していく。

現実離れしたその光景にアデムの脳裏に御伽噺に語り継がれる国が過った。

 

「まさか古の魔法帝国――」

 

アデムの意識はそこで途切れた。

 

 

チャーロ少佐率いる第391戦闘飛行隊(391th FS)所属のF-15E攻撃隊の第1波 5機は高度650ft(約200m)270kt(約500km/h)でロウリア王国軍へと進入していた。

チャーロ少佐は多機能ディスプレイ(MFD)を操作しシステムをA/G(空対地)モードに切り替える。

兵装選択でMk.82バリュート付高抵抗爆弾を選択。

投弾モードをシングルに設定し凡そ1秒間隔で投下される様に設定を行う。

次に後席にいる兵装システム士官(WSO)のオコンネル中尉がAN/AAQ-33スナイパーXRポッドを操作し赤外線映像でロウリア王国軍を確認しシステムに目標情報を入力する。

 

『少佐、目標ロックしました』

 

『確認した、爆撃行程に入る』

 

HUD上にTDダイヤモンドのアイコンとそれを切り裂く様に縦線が表示さた事を確認し、縦線がアイコンに沿う様に機体を調整する。

HUD上に投下開始までの残り時間が表示され、カウントが10秒を切った時点でスティックの発射スイッチを押し込み続ける、

カウントが0になった瞬間、爆撃コンピュータが投弾の指示を送りMk.82 500lb(約225kg)爆弾がパイロンから切り離された。

Mk.82は投下された瞬間、尾部からエアバッグ状の減速器を膨らませ機体が安全な距離まで離れる為の時間を稼ぐ。

5機合計65,000lb(約30t)の高性能爆薬がロウリア王国軍に死と破壊を振りまいた。

Mk.82は地面に落下した瞬間に着発信管が起爆信号を送信し爆薬を炸裂させる。

1回爆発が起きるたびに数百人の兵士が爆圧もしくは破片で物言わぬ肉片へと変わっていく。

チャーロ少佐は投弾の度に軽くなる機体を水平に保ちながらMFDの残弾表示を見る、残弾が0になった事を確認すれば、スロットルをミリタリーからアフターバーナー位置に叩き込み、スティックを引き寄せ身軽になったF-15Eをハイレート・クライム(急上昇)させる。

HUDのデジタル高度計が3,000ft(約1,000m)になった所で後ろを振り返れば無数の黒煙が立ち上り数十に及ぶクレーターが見えた。

そして第2波攻撃隊がその隙間を埋める様に同じ量の爆弾を投下していった。

チャーロ少佐はPTTスイッチを押し、報告する。

 

『ゴーストライダー1より司令部。ジャックポット、繰り返すジャックポット』

 

 

 

中央歴1639年 4月12日

クワ・トイネ公国 ギム

 

 

 

ロウリア王国軍が目指していた国境沿いの街ギムの郊外にはアメリカ陸軍の第68装甲連隊第4大隊アルファ(A)中隊に所属するM8 サンダーボルト空挺戦車 13両が出撃の時を今か今かと待っていた。

彼らは空軍がロウリア王国軍に痛撃を加えたのち、クワ・トイネ公国軍と協力し残敵の掃討を実施する手はずになっていた。

中隊を指揮するエディー・バノン大尉は中隊長車のキューポラから上半身を出し、西の方角を見ていた。

そんなバノン大尉に声を掛ける人物がいた。

 

「バノン大尉殿」

 

褐色肌の筋肉質の肉体を鎧に包み、頭頂部に獣の耳を生やした獣人。

クワ・トイネ公国軍西部方面騎士団団長 モイジであった。

バノン大尉はモイジの方に向けば敬礼をし、モイジもクワ・トイネ式の礼を返す。

 

「我が西部方面騎士団は出撃準備を完了した、あとはそちらの合図次第だ」

 

「ええ、もう間もなくかと――」

 

モイジの問いに答えようとした瞬間、頭上をF-15Eの編隊が轟音と共に飛び去っていった。

数十秒後同じようにF-15Eの編隊が飛び越えていき、数舜後地平線の向こうに爆炎が見え、爆発音がギムの街まで届いてきた。

モイジは余りの轟音に耳を押さえ顔をゆがめた。

 

「なんという音だ!これはアメリカの攻撃か!」

 

「その通りです。モイジ団長」

 

爆発音が収まった時、砲手ハッチが開き、砲手が顔を出す。

 

「大尉!司令部からです、ジャックポットだそうです!」

 

その言葉を聞いたバノン大尉は口角を上げ笑った。

 

「モイジ団長、攻撃開始です」

 

「よし、わかった!」

 

バノン大尉からその言葉を聞けばモイジは表情を引き締め、自らの騎士団へと足早に戻る。

その後ろ姿を見送れば、胸元のPTTスイッチを押し込み中隊全車に指示を出す。

 

『全員聞いたな!身の程知らずを国境の向こうに押し返すぞ!全車前進!』

 

 

デトロイト・ディーゼル製ディーゼルエンジンの咆哮と騎馬の嘶きを響かせアメリカ・クワ・トイネ軍は前進を開始した。

 




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