合衆国召喚~星条旗異世界にはためく~   作:アスタラビスタ

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10話

中央歴1639年 4月12日

クワ・トイネ公国 国境地帯

 

 

 

進撃を開始したアメリカ・クワ・トイネ陸軍は、アメリカ陸軍 第68装甲連隊第4大隊アルファ(A)中隊を先頭に、クワ・トイネ公国軍西部方面騎士団の騎兵、その後ろに歩兵隊は続く陣形を取っていた。

A中隊はM8 サンダーボルト空挺戦車を駆り、平原をロウリア王国軍へと突き進んでいた。

中隊は中隊長車を先頭に楔型陣形を取っていた。

中隊長であるバノン大尉は車長用キューポラから身を乗り出し、マウントされたブローニングM2重機関銃(HMG)に肘を置き前方を見ていた。

すると装着しているヘッドセットに通信が入る。

 

『ライオン6、こちらパパ・デビル(旅団本部)、送れ』

 

『パパ・デビル、こちらライオン6、送れ』

 

爆撃効果判定(BDA)の結果、現在敵の残存兵力は約5000程度と思われる。また大型の生物と牽引野砲が幾つか残存している事も確認している』

 

『大型の生物ってのは例のトカゲですか?』

 

『その通りだ。現在空軍の近接航空支援(CAS)機が向かっている。ETAまで20分だ。コールサインはホグ。支援が必要であれば規定の周波数でコンタクトを実施せよ』

 

『ライオン6、了解』

 

旅団本部との通信を切ると指揮下の各車に指示を出す。

 

『全車、AMP(先進多目的榴弾)装填』

 

『ロード、AMP、アイ、サー!』

 

指示を受け砲手がコントロールパネルを操作し、AMPを選択する。

砲塔バスケットに沿う様に設置された即応弾薬庫の弾薬がベルトコンベアによって回転させられM1147 AMP砲弾が装填位置に送られる。

弾薬を装填アームが掴み持ち上げ、薬室に押し込み尾栓が閉じられる。

砲手の目の前のランプの一つが緑色に点灯し装填完了を知らせる。

 

『装填完了!』

 

『ようし。全車軽歩兵に構うな、我々の主目標は後続のクワ・トイネ騎兵隊の脅威になるトカゲ共と野砲だ!障害物は踏み越えて行け!』

 

そう言い終わると2km程先に攻撃機隊により吹き飛ばされたロウリア王国軍が見えてくる。

大方は爆撃によって片が付いているが運よく爆撃コースから外れていた部隊などは何とか陣形を組もうとしている所だった。

ロウリア王国軍残存部隊は土煙を上げ接近するA中隊を見れば密集隊形(ファランクス)を組み待ち構える腹積もりの様だった。

バノン大尉はそれを見て号令を掛ける。

 

『全車、攻撃開始!ファイア!』

 

中隊長車のM291 120mmATAC砲が凄まじい砲声と砲煙と共に発砲し、M1147 AMP砲弾が3,600ft/s(1,100m/s)の速度でロウリア王国兵に向け飛翔する。

AMP砲弾は発射前に設定された距離を飛翔するとファランクス隊形を取っていたロウリア王国兵の頭上で炸裂する。

炸裂したAMP砲弾は数千の調整破片を敵兵に浴びせ掛け、盾や鎧を物ともせず十数人をズタズタに引き裂いた。

僚車の砲弾も次々と着弾し、その度に同じ位の敵兵を殺傷していく。

 

『操縦手!そのまま敵歩兵を突破しろ!』

 

バノンの指示で操縦手はギアを更に上げ、敵歩兵に突っ込んでいく。

砲手は同軸機銃を使用し、針路上の歩兵を更になぎ倒していく。

敵歩兵部隊に接近していくと生き残っていた弓兵が矢を射かけてくるがM8空挺戦車の塗装に僅かに傷を付けるにとどまりお返しとばかりに放たれた7.62mm弾を受け倒れる。

A中隊全車は先ほどまでファランクス隊形を取っていた部隊を踏み越え敵陣後方を攻撃すべく前進を続けた。

ロウリア王国兵は突破したA中隊に追いすがろうとするが、それは更に接近してきたクワ・トイネ公国軍騎兵隊によって封じられた。

騎兵隊は西部方面騎士団団長モイジが先陣を切り残存するロウリア王国兵に襲い掛かる。

 

「私はクワ・トイネ公国軍西部方面騎士団が騎士モイジ!!腕に覚えのあるものは掛かってこい!」

 

モイジはそう名乗りを上げれば馬上槍で手近にいたロウリア王国兵を串刺しにし、騎馬でもって敵兵を蹴り飛ばす。

そこへ後続のクワ・トイネ騎兵隊が加わり白兵戦が繰り広げられる。

一方のA中隊は敵陣後方に迫り、地龍と牽引砲を視界に捉えていた。

 

『砲手!弾種AMP!目標敵ランド・ドラゴン(地龍)!』

 

『アイ、サー!』

 

装填完了を確認し、砲手は目の前の ガンナー・プライマリー・サイト(GPS)を覗き込む。

その中に巨大な影が居た、四本の脚を持って大地に立ち、鋭い牙と眼を持った地龍であった。

砲手は目標を照準の中央に捉え、レーザー・レンジファインダー(LRF)を持って測距を行う。

エラーなく測距出来た事を確認すればバノンに対して報告を行う。

 

『装填完了!照準完了!』

 

『ファイア!』

 

バノンはすぐさま発射の号令を掛ける。

砲手がコントローラーの発射トリガーを引き絞ると同時にAMP弾が目標に向けて放たれる。

彼我の移動速度、風向き、大気温度、装薬温度、コリオリ力などを考慮された上で放たれたAMP弾は正確に地龍の頭部へと吸い込まれる様に命中する。

目標に命中した瞬間、信管が作動し均質圧延鋼(RHA)換算で23in(約600mm)を貫通するメタルジェットが地龍の頭を吹き飛ばす。

頭部を丸ごと失った地龍は糸が切れた人形の様に崩れ落ちる。

 

『目標撃破!』

 

照準器越しにそれを見た砲手がそう声を上げる。

しかし撃破した地龍の横に要員が取り付いた牽引砲を発見し、しまったといった声を張り上げた。

 

『前方、対戦車砲!』

 

『攻撃しろ!』

 

バノンがすかさず指示を出すが、敵牽引砲の尾部で円形で幾何学模様が描かれた物が浮かび上がるのが見えた。

 

『操縦手!回避!』

 

バノンがそう声を張り上げ、車内に身体を引っ込めた瞬間、空気を切り裂く音と爆音が轟いた。

何事かと見れば敵牽引砲があった場所が爆炎に包まれていた。

僚車の援護かと周りを見回すと無線から声が聞こえて来た。

 

『ライオン6、こちらホグ 1、大丈夫だったか?』

 

『ハレルヤ!ナイスだホグ1!見事なホール・イン・ワン・ショットだったぞ!』

 

バノンが無線から聞こえた声に返すと同時に頭上を2機のA-10CサンダーボルトⅡ攻撃機が低空を切り裂くように旋回しながら飛び抜けていった。

その姿を見送り、バノンは一息ついた。

既に残りの地龍や牽引砲は僚車が撃破し、残余の敵歩兵もクワ・トイネ公国軍が撃滅し僅かばかりの捕虜を確保していた。

 

ロウリア王国軍先遣隊3万はクワ・トイネ国境越境後僅か2時間にして壊滅したのだった。

 

 

 

中央歴1639年 4月12日

クワ・トイネ公国 沖合

 

 

 

クワ・トイネ沖合 100nm(約180km)をアメリカ合衆国海軍第5空母打撃群(CSG-5)、通称ロナルド・レーガンCSGが20kt(約37km/h)で航行していた。

ロナルド・レーガンCSGは中央にCSG旗艦たるUSS ロナルド・レーガンを配し、周囲をタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 USSアンティータムを防空指揮艦としたタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 2隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 4隻の合計6隻の護衛艦艇が堂々たる輪形陣を組んでいた。

そんなUSSロナルド・レーガンの艦橋内にあるブリーフィングルームでは第5空母航空団隷下の第102戦闘攻撃飛行隊(VFA-102)所属パイロット達が集まっていた。

パイロット達はロウリア王国本土にある航空施設及び指揮統制施設に対する精密打撃を行う手はずになっていた。

そんなブリーフィングも終わり飛行隊長のノーマン・ラトリフ少佐が立ちあがった所で声を掛ける者がいた。

 

「ノーマン」

 

振り返れば同期であり腐れ縁のカディーム・ハマー少佐が片手を上げこちらを見ていた。

カーディムはノーマンの隣にまでやってくる。

ノーマンは改めて歩きだし、疑問の声を投げ掛ける。

 

「どうした?」

 

「いやなに、さっきのブリーフィングでも言ってた相手さんの航空戦力の話だけどな、ワイバーンって奴を落としたらきちんと撃墜スコアに反映されるのかと気になってな」

 

カーディムの言葉にノーマンは呆れた様に溜息を吐いてから言う。

 

「知らないな、だがまあ敵機である以上は加算されるだろうな」

 

「よっしゃっ、なら俺はこの戦争中にエースになってみせるぜ」

 

飛行服の袖をまくり上げそう宣言する。

アメリカ海軍の歴史上WW2以降にエース・パイロットになったのはかの有名なカニンガム・ドリスコル組のみであった。

その為、もし彼が5機撃墜を達成すれば3人目になるという事であった。

2人がちょうどアイランドから飛行甲板に出るとカーディムがこぶしを胸の高さに向けてくる。

ノーマンは溜息を吐いてから自身のこぶしを合わせる。

 

「グッドラック、ノーマン」

 

「お前こそ」

 

そう言って別れた2人はそれぞれの乗機に向かう。

ノーマンは乗機であるF/A-18Fスーパーホーネット戦闘攻撃機に掛けられたタラップを上る。

後席を見れば既に兵装システム士官(WSO)のエヴァ・ディグビー中尉が乗り込んでおりチェックリストを実施していた。

 

「あら、随分と遅かったですね、少佐」

 

「ああ、またカーディムに捕まってたんだよ」

 

コックピットに座りこみ、ヘルメットを装着しながら答える、

 

「なんだ、いつもの事じゃないですか」

 

「まあな」

 

カラー多機能ディスプレイ(CMFD)に目を向ければ既に外部電源によって起動されておいた。

今回の任務は敵施設に対する精密攻撃であり、兵装は自衛用としてAIM-9Xサイドワインダー短距離空対空ミサイル(SRAAM) 2発にAIM-120C-7AMRAAM中距離空対空ミサイル(BVRAAM) 2発、対地攻撃用にEGBU-16ペイブウェイⅡ 1000lb(454kg)レーザー誘導爆弾(LGP) 4発を搭載し、他にも増槽 2個に加えAN/ASQ-228 ATFLIR目標指示器(TGP)を装備していた。

 

「チェック完了です。少佐」

 

「了解した」

 

『ディーバック、エンジン始動許可を求む』

 

プライマリー・フライト・コントロール(プリ・フライ)に通信を繋ぎ、エンジン始動の許可を求める。

直ぐに返信があり、許可を得ればノーマンは愛機の心臓に火を灯していく。

現在配備が進むF-35Cや空軍機のF-15などよりも数割は大きい音を響かせゼネラル・エレクトリック製F414-GE-400ターボ・ファン・エンジンが始動する。

エンジン始動が終わると同時にプリ・フライから1番カタパルトへのタキシング指示が出る。

腕を振る黄色シャツの誘導員の指示に従い、ノーマンは1番カタパルトの射出準備位置へとゆっくりと機体を進ませる。

射出準備位置に着くと数人の飛行甲板員がF/A-18Fの機首の下で前脚をカタパルトのシャトルへと接続させる。

ノーマンも誘導員の指示の下、折り畳まれていた主翼を展張させる。

主翼が展張された所で火器係が兵装の安全ピンのチェックと主翼の固定を確認する。

続いてノーマンは操縦翼面を順番に動かしていく。

それを航空機操作員が目視で確認していく。

方向舵、昇降舵、補助翼、フラップ、スポイラ、エアブレーキ全てが問題なく操作される事を確認すれば航空機操作員が親指を立て異常なしを伝える。

発艦準備が整った所でキャノピーを閉じ、固定を確認する。

機体の背後ではジェット排気デフレクターが立ちあがる。

蒸気カタパルトに原子炉から送られる高圧蒸気が充填され、機体に力が掛かるのをノーマンは感じる。

発艦士官が親指を立てカタパルト側の準備が整った事を知らせる。

着陸灯を点滅させ合図を送れば、スロットルをアフターバーナー位置に入れる。

アフターバーナーの炎が排気デフレクターにより上方向に逸らされていくなか、ノーマンとディグビーは発艦に備える為に射出座席へと身体を押し付ける。

機体の左右で各係員が片膝を突き、右腕を高く掲げながら親指を立てる。

発艦士官はそれを見れば、大仰に腕を振り回し間もなく発艦される事を知らせる。

そして発艦士官が腕を前に突き出し片膝を付けた瞬間、カタパルト係が射出ボタンを押し込む。

機体、兵装、人間を合わせた65,000lb(約29t)150ft(約45m)のレールを疾走する。

戦闘攻撃機は甲板の先で僅かに落ちこむがノーマンは身に染みついた発艦手順を行いF/A-18Fを発射体から飛行機へと変わらせる。

高度を上げていく中で後席のディグビーがぼやいた。

 

「私、発艦のあの瞬間、大っ嫌い」

 




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