合衆国召喚~星条旗異世界にはためく~   作:アスタラビスタ

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13話

中央歴1639年 4月13日

洋上 第15駆逐隊

 

 

 

空母打撃群(CSG)から分離した駆逐隊の臨時旗艦を務めるUSSマスティンの戦闘情報センター(CIC)では艦長(CO)のデイン・バイアー中佐がイージス・ディスプレイ・システム(ADS)に映し出される大勢図を眺めていた。

1時間程前から開始された航空攻撃により敵艦隊は500隻以上が撃沈破されていたがそれでもまだ3000隻以上の艦艇が健在であった。

USSマスティン以下4隻の駆逐隊は現在も実施されている航空攻撃と並行して搭載するMk.45 5in(127mm)速射砲による砲撃、搭載するMH-60R LAMPSⅢヘリコプターによる攻撃等を実施する予定であった。

既に艦橋上部のMk.46 mod.1光学方位盤が敵艦隊をとらえていた。

光学方位盤の熱赤外線映像装置が捉えた映像はADSの片隅に映し出される。

航空攻撃により敵艦隊の至る所で黒煙が立ち上り海面にはかつて船であった木片などの残骸が漂っていた。

 

「艦載機連中が大分撃沈した様ですがまだまだ居るようですね」

 

映像を見た先任士官が隣の艦長へとそう言えば、バイアーも同意の声を上げる。

 

「数が多いだけだ。TAO(戦術行動士官)。敵艦隊までの距離は?」

 

「間もなく5nm(約9km)を切ります」

 

「では3nm(約5.5km)を切ったら攻撃を開始してくれ。LAMPSも発艦させるんだ」

 

「イエス、サー」

 

TAOは天井付近に設置された艦内通信用スピーカーの脇からマイクを掴み取り命令を伝えていく。

 

「火器管制。対水上砲戦用意。目標敵艦隊の任意目標。航空管制。LAMPS発艦準備」

 

「対水上砲戦、アイ」

 

TAOの指示に従い光学方位盤を操作する為のUYQ-70コンソールに付いている火器管制オペレーターがコンソールを操作し、砲の射撃指揮を光学照準に設定する。

設定が終われば前部甲板に搭載されたMk.45 Mod.4 5in(127mm)速射砲が油圧の鈍い音と共に旋回する。

砲塔下部では即応弾薬庫からMk.80榴弾とMk.67装薬が揚弾機を駆け上がり全自動で装填される。

薬室内に砲弾が装填されるとコンソール上の射撃可能ランプが点灯し、画面上に射撃可を表す表示がなされる。

 

「TAO。主砲射撃準備完了」

 

同時に艦内通信用スピーカーから通信が届く。

 

『航空管制より、CIC。LAMPS発艦準備完了』

 

「艦長。全準備完了しました」

 

全準備完了を報告するとレーダーオペレータが3nm(約5.5km)を切った事を知らせる。

 

「よろしい。攻撃を開始してくれ。僚艦にも攻撃開始を伝えろ」

 

「イエス、サー!主砲攻撃始め。航空管制、LAMPS発艦を許可する」

 

攻撃許可が下りるとオペレーターはコンソール上のスティックを使い照準を行う。

火器管制装置(FCS)と連接されたMk.45速射砲は俯仰角や追尾を人力で行っていた古い艦載砲とは異なりオペレーターがカメラを通して目標を捉えればFCSが距離、彼我の移動速度や風向き風速といった複雑な要素を計算し俯仰角やリード角を設定・補正を行ってくれる。

これによりオペレーターは目標をカメラの中央に捉え、スティックのトリガーを引くだけで目標を攻撃出来る。

そして敵艦隊外縁部に位置する一隻の帆船に照準を付けトリガーを引き絞った。

Mk.45の薬室内でMk.67装薬が電気点火され18lb(約8kg)の装薬が爆発的に燃焼する。

その圧力により67lb(約30kg)のMk.80榴弾がコンマ1秒以下で2725ft/s(約830m/s)まで加速され25ft(約7.8m)の砲身を駆け抜け撃ち出された。

Mk.80榴弾はライフリングにより回転し姿勢を安定させながら弧を描き飛翔する。

砲弾はそのままFCSの計算通りに飛翔し目標のマスト基部に着弾する。

砲弾は木製の甲板を突き破り船底にほど近い位置で7.75lb(約3.5kg)の高性能炸薬が

炸裂し、帆船はまるで針で突いた風船の如く弾け飛んだ。

帆船を形作っていた木材や鉄、乗組員だったものが爆炎と爆風と共に全周囲にまき散らされる。

そして砲弾の破片も木製の船体を突き破って終わる事なく周囲の帆船の船体やマスト、帆、船員に少なくない損害をあたえた。

オペレーターはその光景をカメラ越しに確認し、TAOへ報告を上げる。

 

「TAO。敵艦撃沈」

 

「そのまま攻撃を続けろ」

 

 

 

中央歴1639年 4月13日

洋上 ロウリア艦隊

 

 

 

「一体なんなのだ!あの船は!」

 

手にしていた望遠鏡を甲板に叩きつけシャークンは吠えた。

30分程前に水平線上に現れた敵船と思しき船は凄まじい速度で艦隊に接近してきたかと思えば船首が煌めき、次の瞬間にはこちらの船が大爆発と共に撃沈されていた。

その攻撃は一度に留まらず、数秒に一回のペースで閃光と轟音が敵船から発せられる度にこちらの軍船が次々と撃沈されていたのだった。

そしてそんな1隻でも脅威な船が全部で4隻もいるのであった。

更にはその内の3隻から巨大な風車の様な物を上に付けた鉄竜の様な物が飛び立ち、その鉄竜の胴体からも上空を飛び回る鉄竜と同じような光る矢が撃ち出される毎に1隻また1隻と撃沈されていった。

無論シャークンもやられるだけではなく、一矢報いるべく足の速いガレー船や小舟での攻撃を命令したが敵船はガレー船よりもなお早く移動し、小舟ならばあの強力な攻撃の的にならないと考えたが、敵船の中央部から低い連続音と共に赤色の筋が凄まじい速度で撃ち出されズタズタに引き裂かれていく有様であった。

 

「なんという事だ……」

 

攻撃を命じた船が何もせぬままに次々と撃沈される光景を見てシャークンは敗北を悟った。

参謀を通して撤退を命じる。

艦隊全艦がゆっくりと回頭していくなかシャークンは攻撃を続けている敵船を睨みつけた。

その視線の先で敵船の船首にある筒がついた物がこちらに向いているのが見えた。

そしてその筒の先が煌めいたのを見た次の瞬間シャークンは轟音と熱波と共に身体が海に投げ出された事を知覚した所で意識を失った。

 

ロウリア王国海軍東方征伐艦隊 4,400隻はクワ・トイネ公国の陸地にたどり着く前に2,000隻近い船舶と数万人の兵員を失い敗走した。

行方不明となった人員にはシャークン将軍の名前もあり、優秀な指揮官を失ったロウリア王国海軍は王都北の港にまで撤退し、完全に制海権を喪失したのだった。

 

 

 

中央歴1639年 4月14日

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

 

 

天守塔に存在する大部屋には重苦しい空気が満ちていた。

その理由は大部屋に居る全ての人間が知っている2日前に開始されたクワ・トイネ公国への侵攻作戦であった。

当初の予定では2日前の時点で国境沿いの街であるギムを攻略し、クワ・トイネ公国の奥深くへと進んでいる筈であった。

しかし生き残って戻った者と偵察部隊の報告によれば、突如として現れた謎の鉄竜と鉄の地竜の攻撃により先遣隊は壊滅し、パンドール将軍率いる後詰の部隊も完膚なきまでに叩きつぶされていた。

それだけに留まらず、王都防衛用のワイバーン発着場を始めとした国内全ての発着場がほぼ同時刻に攻撃されほぼ全てのワイバーンが空に上がる事なく撃破されてしまったのだった。

その攻撃では他にも前線司令部やここ王都の、それも王城内にある防衛騎士団指揮所でさえも攻撃され多くの優秀な将や参謀が命を落としていた。

そして1日前には4,400隻の威容を誇る東方征伐艦隊が2,000隻近い軍船を撃沈され敗走したのだった。

そんな信じられない様な報告をパタジン将軍は額に脂汗を浮かべながら、主君であるハーク・ロウリア34世へと報告していた。

ハーク・ロウリア34世はパタジンの報告を聞くたびに眉間の皺を一層深くし、パタジンの目で見てわかる程の青筋を額に浮かべていた。

パタジンが全ての報告を終え、恭しく頭を下げた所で玉座の肘置きを凄まじい勢いで叩きつけながら立ちあがった。

 

「余を謀っておるのか!!」

 

「その様な事は決してございません。全て確実な報告となります」

 

パタジンのその言葉を聞けば王は力なく玉座に座り込んだ。

パタジンはそれを見て改めて報告を続ける。

 

「現在我が軍は一旦工業都市ビーズル近郊にまで後退させ防御陣地を構築すべく移動しております。敵がここ王都を目指すにしても大軍が通行可能な街道はそこにしかありません。したがって敵軍がビールズに接近した所で残存する戦力すべてを持ってこれを撃破し、しかる後に再度の侵攻を行います。海軍に関しましては当面の間出撃を見合わせます。我が軍が再度国境を越えれば、敵艦隊にも付け入る隙が出来る筈ですのでそれに合わせて出撃致します」

 

「よかろう。パタジンよ次の失敗は決して許されぬぞ覚悟せよ」

 

「はっ!!」

 




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