合衆国召喚~星条旗異世界にはためく~   作:アスタラビスタ

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ロデニウス大陸編
1話


中央歴1639年 1月24日

洋上

 

雲ひとつない澄み渡った空を1匹の大きな生物が悠々と飛んでいた。

その生物は全長にして約20mはあり、一対の翼をはためかせ飛行していた。

生物の背には鐙が着けられ、それに鎧を着こんだ人間が騎乗していた。

 

『こちら第6飛竜隊、マールパティマ。哨戒空域に到着した、哨戒を実施する』

 

『司令部了解』

 

クワ・トイネ公国 第6飛竜隊に所属する騎士マールパティマは通信用魔法具…通称魔信を用いて司令部に報告を行う。

マールパティマは愛騎である生物、飛竜に対して指示を出し海岸線に沿う様に東へと飛行していく。

哨戒を開始して10分程経過したとき、マールパティマは北東方向から接近する影に気が付いた。

 

「あれは?」

 

 

 

中央歴1639年 1月24日

洋上 P-8A-ウィスキー4-

 

広大な海原の上空、13,000ft(約4000m)を1機の飛行機が飛行していた。

ボーイング社製の旅客機B737-800を元に制作されたP-8ポセイドン対潜哨戒機だった。

サンディエゴを発進したこの哨戒機「ウィスキー4」はかれこれ2時間程飛行を続けていた。

そして高度を維持しながら対水上レーダー並びにESM(電子戦支援)を使用して情報を集めようとしていた。

 

「SS-3、4、コンタクトは?」

 

「ネガティブコンタクト、なにも映っていません」

 

「EWも同じく」

 

「と、レーダーコンタクト!方位2-2-5、距離150nm(約280km)。・・・陸地です!」

 

TACCO(戦術航空士)、アイ。EW、電波発信はないのか?」

 

「ネガティブ」

 

「パイロット。針路2-2-5に変針、陸地から13nm(約24km)で陸地に沿って飛行してくれ。SS-3、陸地に寄ったらSAR(合成開口レーダー)モードで陸地を記録するんだ。それとEO/IR(電子光学/赤外線)カメラで映像も撮ってくれ」

 

TACCO(戦術航空士)は口元にヘッドセットのマイクを寄せればそう指示を出す。

 

「変針、針路2-2-5、アイ」

 

パイロットは機体を左にバンクさせ、指定された針路に機首を向けた。

そのままの針路で20分程飛行を続けると進行方向に陸地を目視する事が出来た。

 

「本当に陸地だぜ」

 

パイロットは驚きの声を上げる。

本来であればこのような場所に陸地などなく太平洋の大海原が続いている筈だったからだ。

ここに来てブリーフィングで説明された荒唐無稽な話が真実である事を認識したのだ。

そして陸地に向いていた視線を戻すと進行方向に何かを発見した。

 

「なんだ・・あれは?」

 

近づくにつれて大きくなっていく事で姿かたちがハッキリと認識できた。

それは時折羽ばたきながら飛行し、長い胴体と尾を持ったそれこそ映画やビデオゲームでしか見たことのない生物であったのだ。

 

「マイガッ!信じられねえ、ドラゴンだぜ!。TACCO(戦術航空士)! 12時方向にドラゴンだ!」

 

パイロットからの報告にTACCO(戦術航空士)は自席を離れ、コクピットに向かい風防越しにその姿を確認した。

 

「なんてこった・・・、接触にだけ気を付けてくれ。SS-4、カメラで対象を撮影するんだ」

 

ウィスキー4はドラゴンと220yd(約200m)という至近距離ですれ違った。

そのままウィスキー4は陸地にそって西に飛行を続ける。

 

 

 

中央歴1639年 1月24日

洋上 第6飛竜隊 マールパティマ騎

 

接近し次第に大きくなる飛行物体を確認し、それが味方のワイバーンではない事を確認する。

 

「驚いた、羽ばたいてないぞ」

 

マールパティマは魔信を使い司令部に報告を入れる。

 

『こちら第6飛竜隊 マールパティマ。未確認騎を発見。接近し確認を実施する。高度4000m、現在地は…』

 

高度差はなかった為、一度未確認騎の右舷をすれ違い後方から接近する腹積もりであった。

未確認騎はワイバーンと比べて2回りは大きく、爆音とも言える音を響かせていた。

 

「大きい!そしてなんて音だ!」

 

爆音に顔をしかめながらも愛騎を反転させ、その姿を記憶すべく、未確認騎を見る。

大きな白色の胴体を持ち、羽ばたかない大きな翼にはなにか二つの樽型の物体を付けている。

翼の後ろの胴体には星を模した図形が描かれている。

そして再び距離を詰めるべく、速度を上げワイバーンの最高速度235km/hにまで加速するが、未確認騎は既に1kmは先を飛行していた。

空の覇者たる、ワイバーンが追い付けない事に驚愕を隠せないマールパティマであったが、すぐさま司令部へとこの緊急事態を報告する。

 

『緊急!司令部!!未確認騎を要撃するも未確認騎が優速の為追い付けない!対象は『マイハーク』方面に進行中!繰り返す、対象は『マイハーク』方面に進行中!』

 

 

 

中央歴1639年 1月24日

クワ・トイネ公国 第6飛竜隊基地

 

基地の中央にそびえる塔の中程にある魔信室で当直についていた通信員のカルミアはマールパティマからの報告に耳を疑った。

すぐさま基地司令を呼び、司令が詳細を伝える様にマールパティマに命令する。

 

『未確認騎は現在、基地から北東約150kmを高度4000mで飛行中!未確認騎はこちらの倍近い大きさで、羽ばたいていない、速度は目算でもこちらの倍は出ている!』

 

『国籍は!ロウリア王国か?』

 

『国籍不明!至急増援が欲しい!』

 

『了解した、追尾を継続してくれ』

 

司令官は魔信を切ると、基地内通信用魔法具に持ち替え指示を出す。

 

『第6飛竜隊は全騎緊急発進!現在未確認騎が北東よりマイハーク向け侵攻中。発見次第攻撃し撃墜せよ。繰り返す発見次第攻撃し撃墜せよ。』

 

一息にそこまで言い切ると通信員に向き直り指示を出す。

 

「未確認騎が接近していると、マイハーク守備隊にも連絡をするんだ!」

 

通信が基地全体に伝われば基地は蜂の巣をつついた様な騒ぎとなる。

第6飛竜隊の竜騎士たちは宿舎から馬を駆り大急ぎで滑走路に併設されたワイバーンが待機している厩舎へ向かい、愛騎に飛び乗った。

そして準備が出来たワイバーンから次々と飛び上がっていった。

飛び上がった第6飛竜隊所属のワイバーン 12騎は高度4000mへと駆け上がる。

そして全騎が4000mに上がりきった直後に北東の空から報告にあった未確認騎が接近してくるのを確認した。

全騎が横一列に並んだところで未確認騎に対して正対する、既に未確認騎は点ほどの大きさからこぶし大の大きさになるまで接近していた。

 

「なんだあれは!」

 

「古龍とも違うぞ!」

 

さしもの竜騎士達も動揺を隠せないでいた。

部隊長も未確認騎の姿を確認すると一瞬驚くが頭を振って気を落ち着ける。

 

『狼狽えるな!未確認騎が射程に入り次第、導力火炎弾の一斉射撃を実施する。機会は一瞬しかない。各員日頃の訓練成果を見せよ』

 

各ワイバーンの口腔に魔力が集中し火球が形成されている。

一定の大きさまで形成された火球は口腔内で発射される瞬間を待っていた。

しかし未確認騎が距離2kmを切った位置で腹を見せ上昇を始めた、その行動に隊員たちはおろか部隊長でさえも驚きを禁じ得なかった。

既にワイバーンの高度は上昇限度の4000mであり高度を上げていく未確認騎を追尾する事はできなかったからだ。

 

『第6飛竜隊より、司令部。未確認騎を発見するも迎撃に失敗。未確認騎は超高高度に上昇しマイハーク方面に侵攻した。繰り返す未確認騎はマイハーク方面に侵攻した。』

 

 

 

中央歴1639年 1月24日

海岸線 P-8A-ウィスキー4-

 

12騎のワイバーンを高度を上げて躱したウィスキー4は針路をそのままに飛行していた。

その間にもSAR(合成開口レーダー)レーダとEO/IRカメラで海岸線から内陸にかけての地形情報を収集していた。

 

「さっきは驚いたな、なにせドラゴンが10匹は居たもんな」

 

パイロットはそう言いながら、背後に立ったままのTACCO(戦術航空士)に言う。

TACCO(戦術航空士)は先ほど遭遇したドラゴンの集団と最初に遭遇したドラゴンをカメラで撮影した画像を見比べていた。

 

「まったくだ、とはいえあのドラゴン達は統率が取れている様に見えたし、装備も統一されている様だ。おそらく国軍やそれに準ずるものかも知れないな」

 

「そういう分析は本土の情報屋に任せとけば良い、俺たちゃ黙って情報収集に勤しんでましょうや」

 

「それもそうだな…と前方20nm(約38km)、街の様なものが見えるな」

 

TACCO(戦術航空士)は双眼鏡を取ると前方を見る。

海岸線に港湾の様な場所とそれに隣接された城砦と街らしき建造物群が見えて来た。

上空には先ほどのドラゴンの姿は見受けられない様だった。

 

「よし、高度1,300ftまで降下して確認する。一度航過した後反転して再度確認する。そうしたらサンディエゴに引き返そう。SS-4、カメラ頼んだぞ」

 

「高度1,300ft(約400m)、アイ」

 

「SS-4、アイ」

 

TACCO(戦術航空士)の指示でパイロットはスティックを倒し、高度を落とし始める。

そして高度1,300ft(約400m)まで降下すれば海岸線を掠める様に飛行する。

TACCO(戦術航空士)は一旦自席に戻ると、コンソールの画面を切り替えEO/IR(電子光学/赤外線)カメラの映像を確認する。

港湾に隣接した市街地は周囲を高い城壁で囲まれている中世から近世の城郭都市を思わせる。

カメラが市街地から城郭に視線を移すと四隅に建設された塔の屋上や城郭の上に人員を確認する事が出来た。

どの人員も甲冑を身に着け手には弓を持っていた。

そして一様にこの機を見上げている様だった。

 

「ワーオ、本当に中世みたいだ」

 

一度目の航過を終えたウィスキー4は旋回を実施し、二度目の航過で港湾や停泊している船舶の撮影を実施したウィスキー4はサンディエゴへと帰投すべく、北東へと針路を取った。

 

 

 

中央歴1639年 1月24日

クワ・トイネ公国 マイハーク

 

クワ・トイネ公国北東に位置するここマイハークは港湾と各地から延びる街道の結節点という立地から作物や交易品の売買が非常に盛んであり、古くから経済都市として名を轟かせていた。

マイハークの中央部を通るメインストリートには各種問屋や商店、数多くの人や商家の荷馬車が行き交い大変な賑わいを見せていた。

そんな市街地を囲む城郭上を鎧を着こみ、腰には剣と矢筒を携え背中には弓を背負った一団が走っていた。

一団の先頭、齢は20代半ば腰まで伸びる黒髪を一つに纏めた女性、マイハーク防衛騎士団団長 騎士イーネであった。

彼女は第6飛竜隊からの魔信を受け、当直・非番問わず全ての人員を招集し配置につけていた。

配置に着いたイーネは息を整え、肉声と魔信で指示を出す。

 

「間もなく未確認騎がここ、マイハークに飛来する!第6飛竜隊からの報告では未確認騎はワイバーンを遥に凌ぐ速度だ!各員心して掛かれ!」

 

指示を聞いた騎士団員達は弓を持ち矢筒から矢を取り出し、番え北東の空を見上げる。

イーネは城郭と四隅の監視塔に目を向け準備が整った事を確認すると思考を巡らす。

 

(精鋭の第6飛竜隊を躱した未確認騎…北東から飛来したとなれば列強パーパルディアか…それにしても1騎だけとは攻撃か?いや1騎だけとなれば偵察か?)

 

そんな彼女の思考は東側を監視していた騎士団員の声で中断された。

 

「来たぞっ!!!」

 

豆粒ほどの大きさであったそれは瞬く間にこぶし大となりその姿を現していく。

そして接近するにつれまるで威嚇するかの如き爆音を轟かせていく。

爆音に新入りの騎士団員は顔を蒼白にし、他の騎士団員も額に汗を浮かべる。

未確認騎は高度を落としている様であったが、弓の届く距離ではなかった。

 

「早いっ!」

 

ワイバーンよりも更に巨大な白い胴体と羽ばたかない翼を持った未確認騎は、爆音を轟かせ公国の精鋭竜騎士が駆るワイバーンよりも更に早く空を飛んでいる。

そしてマイハークを掠める様にその飛び去っていく。

 

「攻撃はなし…やはり偵察か?」

 

イーネは飛び去っていく未確認騎を目で追いながらそう呟く。

未確認騎はしばらく飛行すると反転し先ほど飛行した経路をなぞる様に元来た方角へと飛び去っていった。

 

「アレは一体なんだったのだ…」

 

イーネのつぶやきは爆音にかき消され本人以外には聞こえる事はなかった。

 

 




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