合衆国召喚~星条旗異世界にはためく~   作:アスタラビスタ

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3話

中央歴1639年 1月30日

クワ・トイネ公国 マイハーク 第2艦隊司令部

 

マイハーク港に併設されたクワ・トイネ公国 第2艦隊司令部はここ数日間緊張に包まれていた。

事の起こりは6日前に発生したマイハークへの未確認騎侵入であった。

未確認騎は飛竜隊の防空網を歯牙にもかけずマイハークに侵入した事が原因であった。

攻撃こそなかった為、偵察であったと考えられているが、問題なのはロウリア王国でも、列強国であるパーパルディア皇国でさえもあの様なものは保有していないという点であった。

正体不明の存在が公国に侵入したという事実が軍上層部を一種の恐慌状態にさせていた。

それ以来クワ・トイネ公国軍は無期限の警戒態勢を取っており飛竜隊も空中哨戒を増やし、海軍も平時の倍以上の数で哨戒を実施していた。

そしてここ第2艦隊司令部では作戦室に大勢の人員が詰め、各哨戒区域からの定時連絡を受けていた。

そんな作戦室の後方、幕僚達が詰める一角で葉巻を吸っている人物がいた、顎髭を伸ばし前髪を右へと流した面長の男性、第2艦隊司令ノウカであった。

そんなノウカの右後ろに立っていた若い副官が声を掛ける。

 

「司令、いつまでこの警戒態勢を維持するのでしょうか?」

 

「わからん。だがまあ、少なくとも上の連中の不安が解消されるまでという事は間違いない」

 

そこまで言うとノウカは再度葉巻に口をつけ、紫煙を吐き出す。

 

「しっかしまあ、未確認騎がどこから来たのかが全く分からん。少なくとも東方には海が広がるだけ、北東には少しは島嶼があるがそんな所にワイバーンを凌ぐほどの騎を持てるはずもない。残るのは西のロウリアと北の海向こうの列強パーパルディア皇国くらいだ…しかし伝え聞いたところと記録でも彼の国もそんなものは持っている筈もない…」

 

再度葉巻を吸おうとしたところで作戦室内の通信士が声を上げた。

 

「ノウカ司令!」

 

その言葉にノウカは葉巻を灰皿に叩きつけ、通信士に視線を向けた。

通信士は手元の羊皮紙に通信内容を書き取ると足早にノウカの目の前にやってくる。

 

「ピーマ小艦隊からの緊急通信です。『我、未確認の船影を捕捉せり。現在地、マイハーク北方 60km。これより接近し臨検を実施す』以上です!」

 

「船影…未確認騎ではないのか?」

 

報告にノウカは怪訝な表情を浮かべるが6日前の未確認騎の事を考え、この不明船も同じものもではと考えた。

 

「わかった。ピーマ小艦隊であれば司令はミドリであったな、識別ができ次第報告する様に。臨検にあたっては事故や突発戦闘に十二分に配慮する様に、そして不審な点は塵一つ残さない様に指示せよ」

 

「了解致しました!」

 

通信士はノウカからの指示を書き留め、復唱を実施してからピーマへ適切に指示を伝達した。

 

 

 

????年 ?月??日

洋上 USSボノム・リシャール

 

サンディエゴを出港したボノム・リシャールESGは通常の編成よりも極めて軽い編成であり、

強襲揚陸艦USSボノム・リシャールを中心に護衛艦艇として巡洋艦USS ケープ・セント・ジョージ以下駆逐艦USS デューイ、USS ジョン・フィンを加えた 4隻の艦隊であった。

ESGは20kt(約37km/h)の巡航速度で航行を続け、未知の陸地の北方53nm(約98km)の地点まで進んでいた。

そんな艦隊の中心に位置するボノム・リシャール、通称ボニーの艦内通路を一つ星の徽章を付けた男性、ESG司令のブラウン准将が足早に移動していた。

ブラウンはハッチの縁材を跨ぎ、CIC(戦闘指揮所)に入室する。

ブラウンに気付いた先任士官が敬礼を取り、ブラウンも返礼する。

 

「司令官、CIC(戦闘指揮所)!」

 

「ご苦労、状況は?」

 

「サー、5分前に前衛の駆逐艦デューイより複数のスカンク(未確認水上目標)コンタクトを受領しました」

 

先任士官はそう言いながら指揮所正面の大型ディスプレイに目をやる。

ブラウンもディスプレイに目をやる、ディスプレイにはLink16/22を通して得られた僚艦を示す青色の円と艦隊の南方22ni(約44km)の地点に存在する4つの水上目標を示す黄色の四角形が映し出されていた。

スカンク1から4の艦隊は13kt(約24km/h)程でこちらの艦隊に接近を続けていた。

ブラウンは艦隊にかなり近接している事に舌打ちした。

 

「識別は?」

 

「デューイのLAMPS(軽空中多目的システム)が15分待機ですが、それよりも先に目視圏内に入ります。」

 

丁度その時、デューイから映像が届いた事を知らせる通知が来る。

すぐさま映像はディスプレイに回される。

そこには4隻のガレー船が帆を張り、櫂も使いこちらにむけ航行してくる様子が克明に映し出されていた。

事前ブリーフィングで行先の未知の国家が中世レベルの文明であると説明を受けていたブラウンも驚きを隠せないでいた。

 

「驚いたな…ブリーフィングで聞いてはいたが現実に見るとな…」

 

「私は以前第6艦隊に勤務していた際にギリシャ海軍の観艦式で記念艦を見た事がありますが…まさか現役で艦隊を組んでいる様を見るとは思いませんでした」

 

「まったくだ…では諸君、大統領からの命令は現地住民との平和的な接触だそうだ、僚艦に連絡しろ接触は当艦のみで実施すると、僚艦は後方で待機。国務省の連中と学者先生達にも連絡するんだ。一応全艦配置に着かせろ。海兵連中にも武装させるんだ」

 

「イエス、サー!」

 

総員配置を命じる警笛の鈍い金属音が鳴り響き、1-MC*1スピーカーからも全艦放送が鳴り響く。

 

総員配置(GQ)総員配置(GQ)。全員、各自の戦闘配置に就け。これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない」

 

警笛と放送と同時に艦内のいたるところから駆け足の音や、水密扉を閉鎖する音が聞こえて来た。

他にも乗り組んでいた海兵隊員達が装備を手に格納庫に集合し、個人装具のチェックを実施していた。

 

「いよいよファーストコンタクトだぞ」

 

そんな海兵の一団から離れた場所に今回の任務のメインである外交団と意思疎通を行う為の情報を収集する研究・分析チームが居た。

そして外交団のトップである国務省東アジア・太平洋局 国務次官補 チップ・ウィンターズが周りの外交・調査団に対して言う。

 

「相手を招き入れるのはウェルドックで行う。こちらのボートで先導し相手に短艇があればそれで、なければこちらのボートで招き入れる予定だ」

 

そこで一度言葉を区切る。

 

「この接触如何でこの世界での合衆国の身の振り方が変わる、全員それを意識する様に」

 

そこまで言ったところで1-MCスピーカーから再度全艦放送が流れる。

 

「接触まであと5分、接触まであと5分。要員はウェルドックに集合せよ、繰り返す、要員はウェルドックに集合せよ」

 

放送を聞けばチームの全員が立ち上がり、海兵の先導の元2階層下のウェルドックへと向かった。

 

 

 

中央歴1639年 1月30日

クワ・トイネ公国 マイハーク沖合 60km

 

「以上が艦隊司令部からの指示となります」

 

「わかった、副船長聞いた通りだ、未確認船と接触次第臨検を実施する」

 

「了解しました、船長」

 

第2艦隊司令部からの指示を受けたミドリは副船長にそう指示を出す。

指示を出すミドリの顔色は船影発見時に比べ些か悪くなっている様に見受けられた。

それは未確認船に近づくほど悪くなっていった。

それは未確認船を見る者に共通している事であった。

 

「副船長…臨検は私が先陣を切ろう…万が一の事があれば君に指揮を一任する」

 

ミドリのただならぬ様子に副船長は首を傾げていたが、ミドリの視線の先、未確認船を見て理解した。

そう余りにも巨大なのであった、彼らが乗船する軍船ピーマが全長35mそこそこに対して接近している未確認船はまるで城か小島を思わせるほど巨大だったのだ。

ここまで接近するのに予想以上の時間がかかったのは未確認船が余りにも巨大な為に見張りが目測を誤っていたからであった。

 

「副船長、私は夢を見ているのだろうか…」

 

「船長、私にも見えます、間違いなく現実であります」

 

ミドリは気合を入れる様に一度自らの頬を手で叩く。

再度未確認船を見て国籍を示すものがないかを探した。

そして未確認船の甲板上の構造物上に右上が紺色に染められ白色の無数の星、残された部分には赤と白の横縞模様が描かれた大きな旗が翻っているのが見えた。

 

「副船長、あの旗に見覚えはあるか?」

 

「いえ、船長。事前に学んでいる周辺国のどの旗にも一致しません」

 

「ではアレほど巨大な船を持っている国では?」

 

「数年前に海軍の研修でパーパルディア皇国に赴いた際に「100門級戦列艦」と呼ばれる物を見た事がありますが、あの船はそれよりもなお大きいです」

 

ピーマ船員一同と随伴船の乗組員がその巨大さに圧倒されている中、甲高い音が鳴り響いた、ミドリがその音の方を見れば帆も張らずかと言って櫂も使わない小舟が波を切ってこちらに接近していたそしてピーマからある程度距離を置いて旋回し、小舟にのった人間がまるでついてこいと言わんばかりの身振り手振りをしていた。

 

「ついて来いと言ってるのか…副船長、かの小舟について行くんだ」

 

ミドリの指示でピーマは帆を畳むと櫂のみで進み始める。

そして小舟について巨大船の後方に回り込むとそこには巨大な穴があいていた、穴はなんらかの魔術か道具で煌々と明るく照らされており、幾人かの人間も確認出来た。

先導していた小舟はそのまま穴の中へと入っていく。

 

「あそこから入れという事か…副船長、小舟の用意をしてくれ、それと4名ほどつけてくれ」

 

「わかりました船長、お気を付けて」

 

「うむ、これより巨大船の臨検を実施する!私の指示がないかぎり決して攻撃をしないように!所属こそ不明であるがもしやすれば新興国の可能性もある、国同士のやり取りになる可能性もある!高圧的な態度をとる事を厳に禁ずる!」

 

「「了解!」」

 

そう同行する兵士とピーマの乗組員に命じ、用意された小舟に乗り込むと櫂を使い巨大船へと向かっていく。

 

「さて…どうなることか…」

 

*1
戦闘配置・総員配置用の艦内通信網




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