合衆国召喚~星条旗異世界にはためく~   作:アスタラビスタ

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4話

????年 ?月??日

洋上 USSボノム・リシャール

 

「来たぞ…」

 

ガレー船から出発した手漕ぎの小舟がゆっくりとボニーのウェルドックに入ってくる。

小舟には5人の人影が確認出来た、2人は水夫の様で小舟の後ろに座り櫂を使っており、

その前には革製と思われる鎧と兜を装備し、腰に帯剣した2名の海兵が、そして小舟の舳先に近いところにいる人物は後ろの海兵と違い金属製の鎧を身に着け三角帽子を被っている。

服の装飾からしても士官かそれに準ずる階級を持っている事が伺えた。

遂に小舟がスロープに乗り上げる様にして到着する。

まず先頭の士官とみられる男性が降り立ち、2名の海兵が続いた。

3人はスロープを上り切るとウィンターズら外交・調査団から5yd(約5m)ほど離れた場所で立ち止まった。

相手が立ち止まった事を確認すれば、ウィンターズが一歩足を踏み出す。

このファーストコンタクトを調査団は録画・録音を実施しており、言語研究などの学術研究や政府に対する説明に使用される予定であった。

そしてウィンターズが動いた事で相手の海兵が一瞬身構えるが、士官らしき男性が諌める様に手を上げた。

海兵を諌めた相手の士官も一歩を踏み出し、一度咳払いをすると言葉を発した。

 

「私は、クワ・トイネ公国海軍 第2艦隊所属船、ピーマ船長のミドリです。貴船は現在クワ・トイネ公国の領海に接近しています。貴船の所属並びに航行目的を教えて頂きたい。」

 

相手の言葉にウィンターズら外交・調査団は驚きに包まれていた。

言語学者等は信じられないといった表情を浮かべ、国務省職員も同様であった。

ウィンターズも驚きを隠せないでいたがそれを飲み込み、職務を果たすべく口を開く。

 

「私はアメリカ合衆国国務省 東アジア・太平洋局のウィンターズです。この度は合衆国を代表し貴国と外交関係を樹立する為に派遣されました。貴国外交関係者との対談を希望します」

 

「では貴君は使者という訳ですね」

 

「そのとおりです」

 

「承知致しました…ですが申し訳ない、アメリカ合衆国という国名を私は寡聞にして存じ上げないのですが」

 

ウィンターズの名乗りにミドリはそう言い怪訝な表情を浮かべる。

 

「それに関しましては…信じられないかも知れませんが…我が国は約1週間程前に突然この世界に転移して来たのです。勿論最初は我が国も信じられない状況でありましたが情報収集を実施し客観的に分析した結果として認めざるをえない事なのです」

 

ウィンターズの言葉にミドリは驚きと困惑が混じった表情を浮かべ、後ろの海兵2人も互いに顔を見合わせているのが見えた。

 

「情報収集…では先日我が国のマイハークに飛来した騎は貴国の騎士という事でしょうか?」

 

「騎士…あぁ、我が国の哨戒機の事ですね、それでしたらその通りです。要らぬ困惑を与えてしまい大変申し訳ない」

 

ミドリはしばし考えこむ様にしてから口を開く。

 

「委細承知いたしました。その旨を本国に報告致しますので、しばらくお待ちください。」

 

ミドリの返答にウィンターズら外交・調査団一行は第一関門を突破した事を感じ、安堵の溜息をもらす。

 

「ありがとうございます。それで返答を頂くのに何日ほど掛かりますか?」

 

重要な事であった、文明レベルが15~16世紀と同程度であれば政府中央に情報が渡り、協議が行われ再度こちらに返答が来るまで少なくない日数が掛かるであろう事は想像がついた。

しかしミドリの返答はそれを大きく裏切るものであった。

 

「いえ、本船に戻り次第魔信で艦隊司令部に判断を仰ぎますので、少々お待ち頂ければと」

 

その言葉にウィンターズは何度目かの驚きの声を上げる。

 

「通信手段があるのですね、わかりましたお待ち致します。」

 

 

 

中央歴1639年 1月30日

クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ

 

マイハークから西に400kmほどの距離にある国名を関する公都クワ・トイネ。

その一角、クワ・トイネ首相官邸に隣接された建物内に通称 蓮の庭園と呼ばれる場所はあった。

ここは建物内にもかかわらず正しく庭園といった様相であった。

四方を木々に囲まれ一角にある岩場には水が懇々と涌きだし小さな滝を形成していた。

そして滝から落ちる水は泉へと注がれ、泉にはこの場所の名を現す様に蓮が浮かんでいる。

泉の中央には小島があり、外周とは石橋で繋がれていた。

小島には中央に円卓が鎮座し6脚の椅子が置かれていた。

全ての椅子にはクワ・トイネ公国の国政に係わる者が座っており、会議を行っていた。

議題は数日前にマイハークに飛来した未確認騎に関するものであった。

そして上座に座るクワ・トイネ公国首相であるカナタは報告書を読み終えると口を開いた。

 

「ではこれより政治部会を開始する」

 

その声で隣席と会話していた者は会話を止め、資料に目を落としていた者は視線を上げる。

 

「皆も知っての通り、6日前マイハークに未確認の騎が飛来した、そして皆にも配布されている資料にある件について忌憚ない意見を聞きたい」

 

カナタの左前に座る情報分析部長が挙手し、カナタが促すと発言する。

 

「当、情報分析局の分析担当官によれば、この報告にある未確認騎は西方の大国ムーが開発・保有している飛行機械に類するものではないかとの事です。…しかしムーが保有する飛行機械は最新鋭の物でも最高速度で350km/hほど…今回の未確認騎は報告と飛竜隊の接敵タイミングから計算したところ700~800km/hは超えています。なのでムーの騎ではないと思われます…ただ…」

 

情報分析部長が一度声を区切り再度口を開こうとしたところで橋を駆け足で渡りこちらに来る者が見えた。

外交部の若手幹部であった、彼は息を切らしながらもカナタに寄れば礼を取り、手にした羊皮紙を手渡す。

カナタは若手幹部の息が整うのを待ち、報告を求めた。

 

「はっ、報告します!現在マイハーク北方洋上にアメリカ合衆国を名乗る国家の大型船が到来しました。警戒していた第2艦隊と接触し臨検を実施したところ、かの国の外交官と接触しました。そして現在我が国外交担当者との対談を求めております」

 

若手幹部の報告にカナタは頷けば手渡された報告書に目を通す。

そこには今の報告に加えて、6日前の未確認騎の所属がアメリカ合衆国である事や俄かに信じがたいが転移国家であると自称しているなどという事が記載されていた。

その事をカナタが部会メンバーに伝えると外務卿のリンスイが声を荒げて言う。

 

「アメリカ合衆国ぅ?知らんなそのような国! 転移国家などと嘯く連中など!首相!!会う必要などありません!」

 

他のメンバーにしても怪訝や何を言っているのだという顔をしていた。

カナタはそんな面々の中顎に手を当て考えこんでいた。

現在クワ・トイネは西のロウリア王国から軍事的な圧力を受けており軍の殆どを西へ振り向けていた。

そんな中、東から新たな国が現れた、状況は好ましいものではなかった。

二正面に張り付ける戦力などない。

報告を聞く限り確かに突拍子もない事を言っている、だが現実として超高速で飛行する飛行機械や大型船は存在し、それがかの国の力を示していた。

うまく事を運び友好関係を構築出来ればと考えた。

 

「…わかりました。会談を持ちましょう」

 




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