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洋上 USSボノム・リシャール
ボニーの飛行甲板上ではVMM-161所属のMV-22オスプレイ垂直離着陸輸送機が発艦準備を進めていた。
クワ・トイネ公国側との会談を持てる事が決まった後、数回の連絡を挟み首都近郊の軍の駐屯地までこちらの輸送機にて移動する許可を得られた為だった。
人員としてウィンターズら外交・調査団に護衛として2個ファイアチームを加えた20人となっている。
他にも不測の事態に備え1個中隊と
そんなせわしない飛行甲板をブラウンは艦橋の航空指揮所から見ていた。
見ればウィンターズがちょうど輸送機へ乗り込むところだった。
「何事もなければいいがな」
そんな呟きは回転数を上げていくエンジン音でかき消された。
『ボニー、こちらグレイホークス2、スポット7にて発艦準備完了』
『グレイホークス2、風は左舷から微風。スポット7からの発艦許可』
『グレイホークス2、発艦します』
発艦したMV-22はボニーから
中央歴1639年 1月30日
クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ近郊
公都クワ・トイネから西に4kmほどの平原に公都守備隊の駐屯地はあった。
公都守備隊といっても昨今のロウリア王国との緊張状態により殆どが国境に張り付いている状態で現在残存しているのは300名ほどであった。
そんな駐屯地に外務局の一団が馬車で隊列を組みやって来たのだった。
当然そんな連絡は受けていなかった為、残留守備隊の隊長タハタは困惑していた。
タハタは外務局団に訪問理由を問いただそうとする。
「一体全体外務局の皆様が駐屯地にどういった用であるか」
その質問に外務局団のリーダーヤゴウが答えた。
「お疲れ様です。外務局のヤゴウです。突然の来訪申し訳ない。この後こちらに外国の外交担当者が到着致します。我々はその出迎えになります」
「外交担当者?一体どこからの?」
「私もあまり詳しくは説明を受けておりませんが、相手の国名はアメリカ合衆国という国だそうで、いまマイハークに船でやって来ているそうです」
「マイハーク?反対方向じゃないか。なんだってこんなところに出迎えなんだ?」
タハタの言う事はもっともであった、マイハークに船で来ているのであればマイハーク港に船を停泊させ陸路で公都に向かえば良い筈であり、公都を通り過ぎるこの場所で出迎えというのは些か奇妙な話であった。
ヤゴウも困り顔を浮かべつつも事情を説明する。
「なんでも空路で向かうので開けた場所はないかとの事でして、公都近郊で開けた場所を持った国の施設といいますとこちらの駐屯地が都合がよく」
「空路だと?ワイバーンで乗り付けるつもりか」
「詳しくは分かりませんが類するものかと」
そんな話をしていると東の空になにかが見えた。
しばらく見ていると接近している様で段々と大きくなっていき姿かたちがハッキリと認識出来るほどになった。
太い胴体に羽ばたかない翼があり両端でなにかが回転している様であった。
「なんだあれは!」
「おお!?」
謎の騎は接近するまでは音はわずかであったが駐屯地上空を轟音を轟かせ通過する、そしてあろうことか両端に付いている部分が回転し、前を向いて回転していたものが上を向いて回転する様になっていた。
騎は速度を落とすと駐屯地で最も広い演習場に着地しようとしていた、ワイバーンの羽ばたきより何倍も強い風が吹きつけ辺りに砂煙をまき散らしタハタら守備隊やヤゴウら外務局一行は顔を庇いながら見ていた。
そして着地した騎を見れば回転していた部分が次第に遅くなり風も弱まっていった。
そして回転が止まり、砂煙が落ち着くと謎の騎の胴体の後ろと思われる部位が開く。
中から数人の人間が出て来くると周囲を見回してからこちらを向いた。
ヤゴウは一度唾を飲み込んでから意を決して近づいていき、先頭の男に声を掛けた。
「アメリカ合衆国の皆様でお間違いなかったでしょうか」
ヤゴウの言葉に声を掛けた男はヤゴウに向き直る。
「ええ、私はアメリカ合衆国国務省 ウィンターズです」
ウィンターズと名乗った男はそう言いながら手を差しだしてきた、ヤゴウは手を取り握手する。
「私はクワ・トイネ公国外務局のヤゴウと申します。遠いところをようこそいらっしゃいました」
「こちらこそ突然の来訪申し訳ありません」
「いえいえ、それではさっそく移動しましょう、人数の方は20人とお伺いしておりますがよろしいでしょうか」
「間違いありません。ただお伺いするのはこちらの私を含めた外交担当6名、加えて念のため護衛を4名同行させたいのですがよろしいでしょうか」
ウィンターズはそう言いながら後ろを向く、ヤゴウも視線を向ければ斑模様の服を着用し同じ模様の兜を被った兵士と思われる男たちが8人ほど見えた。
剣や弓を持っていない様であったがどの兵士も黒色の棒なのか分からないものを持ち周囲を見回していた。
「構いません、ただ会談場所への入室は出来かねますそこだけはご理解下さい」
「ありがとうございます」
ウィンターズはそう言うと彼と同じ様な服を着た11人と斑模様の服を着た兵士4人がやってくる。
「では公都へ向かいますので馬車に分乗して下さい」
ヤゴウがそう言えばウィンターズら外交団は3~4人で馬車に分かれ乗っていく。
移動する全員が乗り込んだところで馬車は公都へ向け出発する。
中央歴1639年 1月30日
クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ
クワ・トイネ公国首相カナタは首相官邸内の執務室から正門をくぐる馬車の車列を見下ろしていた。
最後の馬車が正門を潜ったところで執務室の扉がノックされる。
入室を許可すれば秘書官のトワが入室してくる。
「首相、アメリカ合衆国の外交団の方々が到着しました。第一応接室にお通しております」
「わかった、すぐに向かう」
カナタは柄にもなく緊張していた、通常のクワ・トイネの外交手順であればカナタが使節団と会談を持つことなどはありえない事であったがロウリア王国との緊張状態にあり余力がない事に加え、軍務局からの報告にある超高速の未確認騎やマイハーク沖合に来航している超大型船などクワ・トイネとは隔絶した技術力を持っている事を示していた。
北の列強国パーパルディア皇国の様な覇権主義国家であった場合機嫌を損ねればどういた事態になるか分からなかった。
現状幸い軍事力を盾にした恫喝外交を行ってくるようではなかった為、なんとか友好的な関係を構築しておきたい思いがあった。
そんな考えを浮かべながら歩いていたカナタだったがすぐに第一応接室前に到着する、部屋の前には外務卿のリンスイと外務局員数名が待っていた。
「首相、お疲れ様です。」
「ああ、ご苦労」
「しかし態々、首相自ら会談など」
「くどいぞ、リンスイ」
カナタはそう言ってリンスイに厳しい視線を向ければリンスイはバツの悪そうな顔をする。
「…申し訳ございません」
「行くぞ」
カナタがそう言えば扉の前に居た外務局員が扉を開ける。
入室すればテーブルの向こうに座っていたアメリカ合衆国の外交官らが立ちあがる。
カナタらクワ・トイネの面々がそれぞれの席に着いたところで相手に着席を促す。
そして双方が腰を下ろした所でアメリカ合衆国の外交官が口を開く。
「この度は急な訪問にもかかわらず会談をお受けして頂きありがとうございます。私はアメリカ合衆国 国務省 東アジア・太平洋局 次官補代理代行 チップ・ウィンターズです」
「私はクワ・トイネ公国首相カナタです。この度は遠い所をようこそいらっしゃいました」
「私はクワ・トイネ公国外務卿リンスイと申します。今会談での司会進行役を務めさせて頂きます」
そう言いながらリンスイはウィンターズらアメリカ合衆国外交団を見る、クワ・トイネ公国側と比べ装飾などはない装いであるが作りや材質は悪くない事を確認する。
そしてリンスイは早速本題に入る。
「それでは会談に入らせて頂きます。この度の貴国の来訪目的をお伺いしたい」
「承知しました。では資料をご用意しておりますので資料を基に説明を行わせて頂きます」
ウィンターズがそう言うと隣に座っていた国務省のスタッフがケースから資料を取り出し受け取りに来たクワ・トイネ側の外務局員に手渡し、外務局員がカナタとリンスイに配布する。
資料を手にしたカナタとリンスイは渡された紙の白さと薄さに驚く、クワ・トイネ公国では通常羊皮紙を使用しており、この様なものは使用していなかった。
リンスイは驚きを飲み込み資料に目を落とすがすぐに怪訝な顔をする。
「申し訳ないが、この文字は貴国の文字ですかな?我々ではこのような文字は読めません」
その言葉にアメリカ側外交団に驚きが広がる、ウィンターズは驚きを飲み込み口を開く。
「なんと…英語を話されていますので文字も問題なく読めるものかと…」
「我々からすれば貴殿方が世界共通語をはなしている様に聞こえますが」
困惑していたカナタがそう言うとウィンターズは国務省スタッフと顔を見合わせる。
「不思議な事ですね…では口頭で説明いたします。資料の2ページ目の図をご覧ください」
ウィンターズがそう言えばカナタ、リンスイは資料を捲り該当ページの図を見る。
そこには彼らの母国であろう大陸とロデニウス大陸北部の精巧な図が描かれていた。
「では…我がアメリカ合衆国は貴国クワ・トイネ公国の北東約2000kmに位置致します…単位は大丈夫でしょうか?」
アメリカ合衆国はヤード・ポンド法を使用しているが、今回念のためにメートル法に置換した資料を使用していた。
クワ・トイネ側は問題ないという表情をしていた。
「問題ないが、あの海域にこのような大陸が存在するなど聞いたことがないですぞ」
リンスイは資料の図の部分を叩きながら言う。
クワ・トイネ側の認識ではクワ・トイネから北東の海域には無人・有人の群島がいくつかあるのみであった。
「それに関してですが…我々は客観的事実としてこの世界に国土ごと転移してしまったのです」
説明にリンスイは鼻で笑えば強めの語彙で言う。
「はッ!そのようなホラ話を信じろと?馬鹿にするのも大概にして欲しいものですな」
「確かに、我々も元の世界で国ごと転移してきた等と言われれば何をバカな事を思ったでしょう。ですが我々は客観的証拠を集めた上で申し上げております」
そこまで言うとウィンターズは一度言葉を区切る。
「我が国と貴国はまだお互いの国をよく知りません。相互理解を深める為にもどうでしょうか、貴国から使節団を我が国に派遣して頂くというのはどうでしょう?私の百の言葉よりも貴国が信頼して派遣した者が直接見る方が信じていただけるでしょう、もちろん移動手段や滞在に掛かる部分は我が国が責任をもって行わせて頂きます」
ウィンターズの提案にリンスイが更に噛みつこうとしたが、カナタの発言がそれを遮る。
「外務卿。私はこの提案を受けるべきと思います」
「首相…」
「卿も本当は理解しているでしょう。いくら北東の群島群が集まったところで超高速の騎や超大型船など作れない事を。我が国の知りえぬ技術を持つ国が招いて下さるのだ。それにその様な力を持ってして高圧的な態度を取る事なく礼節を持って接しているのだ。私は勿論条件次第ではあるが国交締結も良いと考えている」
カナタはそう言えばウィンターズに問いかける。
「して貴国は国交締結にあたり何か希望事項があるのではないか?」
「まずはこの世界についての情報が欲しいです。我々も手を講じていますが何分転移してきたばかりです。地理情報や把握してる限りの国家に関する情報などです。こちらとしましてはある程度の物品や技術の輸出を考えております…それに希望があれば安全保障に関する条約もです」
物品・技術輸出そして安全保障という言葉にカナタ、リンスイは目の色を変えた。
カナタは確認する様に聞く
「ウィンターズ殿、それは本当ですか?」
「はい、ですが詳細に関しては議会での審議によりますが地球…前世界と同じ事であれば反対は少ないものと思っております」
その言葉にカナタとリンスイは喜色の表情を浮かべる。
クワ・トイネにとってロウリア王国との緊張状態に光明が見えた瞬間であった。
カナタの心はこの瞬間に決まったのであった。
「…ウィンターズ殿、国交締結を前提に使節団の派遣をお受けいたします。リンスイ。早急に使節団の編成をしなさい。大使には全権を委任します」
「はっ。早急に準備致します」
「ウィンターズ殿。よろしくお願い申し上げる」
「こちらこそ、よろしくお願いします。カナタ首相」
そう言って二人は固い握手を交わしあった。
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