魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

2 / 61
感想ありがとうございます。みんなもっとブラボのSS書いてホラ


魔法少女

 

 

 

 高まる啓蒙が私の脳を揺さぶる。まるで初めて大きな獣を見たときのような、宇宙からの言い知れぬ叡智の授与を感じ取った時と同じく……その少女と呼ぶには些か豊満な胸を持つ、しかし確かに少女である彼女。

 一眼見て、その少女が人ならざるものであると啓蒙された。見ただけで脳が震えるのは、大きな獣か……宇宙からの上位者か。経験上はどちらかである。

 そういう点では、この弱気だが勇気のありそうな桃色の少女が抱える、ある意味で使者も同じだろう。

 

 人の身や猫の姿に隠れていても、獣は臭いでわかるものだ。

 

「初めて見る顔ね」

 

 まるで掘削ドリルのようなツインテールを優雅に揺らし、その少女は少し離れた場所で止まった。感じる、この少女は狩りに慣れている。私の持つ落葉に斬られない間合だろう。

 見縊られては困るなぁ……たかだか数メートル、この私が攻撃できないとでも思っているのだろうか。無知が悪いとは言わないが、今まで彼女が相対してきた相手は所詮その程度でしか無い。剣が駄目ならば銃で、銃が届かぬならば神秘で。それが狩人の狩りというものだろう?

 

「ああ、初めて来た場所だからね……無垢な子らも助けられて良かったよ」

 

 そう言って、蚊帳の外である少女達に微笑み掛ける。強いて言えば、この私もこの世界の狩りに関しては思い切り部外者であり、脳の瞳から啓蒙された知識と推測を巡らせているに過ぎない。

 金髪の美少女は警戒を崩さず、だが桃色の少女が抱く猫のような物体を目視すると彼女はやや驚いたように言った。

 

「あなた達……キュゥべえを助けてくれたのね」

 

 キュゥべえ。猫もどきの名前。相変わらず大根役者のような演技で傷付いたフリをしている。私はそれを一瞥すると、無性に内臓を引き摺り出したくなる衝動を抑えた。

 

「呼ばれたんです!頭の中に直接この子の声が……」

 

 桃色の少女が冷めやらぬ興奮のままに言うと、金髪の乙女はふぅんと納得したように彼女達を見た。無論、私も。

 

「その服装、あなた達も見滝原中学ね。二年生?」

 

 そう言われ、私は彼女達の服装が同じであることにようやく気がついた。狩りの事となると途端にそれ以外の事柄がどうでも良くなるのは悪い癖だ。

 青髪の勇ましい少女が、あなたは、と言葉を返す。

 

「そうね、自己紹介がまだだったわね。でも……その前に」

 

 彼女の黄金の瞳が私を射る。二人はただの少女であるから警戒に値しないとして……やはり狩人は狩人を惹き付ける。彼女もまた、私という存在から近しいものを感じ取ったに違いない。

 残念ながら、瞳を持たない彼女では私の存在を看破することはならないが。

 

「貴女も……魔法少女ね」

 

「ん?魔法少女?」

 

 そのメルヘンすぎるワードに、思わず面食らった。いかに脳に瞳を授けられ、宇宙からの高次元的な思考と啓蒙を授けられたとしても、魔法少女というような名前はゴース、あるいはゴスムにも想像できなかっただろう。

 だが問題はそこではない。訝しむ私を見て、目の前の魔法少女(胸を除く)はその瞳を細めた。

 

「惚けても無駄よ。魔女の使い魔に攻撃できる時点で、貴女には魔力が宿っている……それが分からない私じゃない」

 

 魔力。かつての世界に存在していた神秘のような超次元的力。彼女の言葉とは裏腹に、残念ながら私には魔力は宿っていない。

 だが、神秘と呪いであるならば。私という存在は、どの世界に赴いても負けない自信はあった。地下に潜り、上位者を屠り、トゥメル人の内臓を引き裂き、イズを蹂躙し……これで呪われるなという方がどうかしている。

 そして瞳が囁く。私に啓蒙するのだ。先程戦った使い魔と呼ばれる存在や、その親方である魔女には魔力や呪いの力でなければ対抗できないと。

 

「ふむ。君の言いたいことは分かるよ。そうだね……君の求める答えではないかもしれないが」

 

 くすりと笑い、簡易的な礼拝を美少女相手に向ける。

 

「百合の狩人。そう、自称している」

 

 下げた頭の奥底で、私の瞳が魔法少女を突き刺す。

 

「っ……一つ、聞いて良いかしら。貴女は味方ということで……良いのよね?」

 

「美少女にはいつでも味方さ……ましてや君のように勇敢で、孤高で、脆い美少女はね」

 

 エッと後ろで青髪の少女が驚く。目の前の戦乙女には単なる味方であると伝わったようだが、この短髪の少女は鋭いようだ……瞳を持たずして本質を見極めて見せた。

 

「それはともかくとして……あそこで見つめている寂しがり屋さんも、君たちの仲間かい?」

 

 話題を変え、ずっと私達を遠くから見ていた少女を指さした。不思議な視線だ、私には困惑しているのに、他の少女には一定の信頼と呆れを抱いている。

 少女はまだ暗がりから出てこないが、目の前の魔法少女はその存在に最初から気がついていたようだ。

 

「魔女は逃げたわ。もう出てきたらどうかしら?それとも、グリーフシードが欲しいなら追えば良い」

 

 ━━グリーフシード。忌むべき魔女の命は巡り、打ち倒した少女達の心を癒す。その源が、何であるかも知らずに。使用するとソウルジェムの濁りが一定量回復する。

 なるほど、言うなれば輸血液のようなものだろうか。魔法少女も狩人と同じで一筋縄ではいかないようだ……

 

「……」

 

 ようやく少女が出てくる。黒髪の……ああ、なんと美しい少女か。自分を偽り魂は歪んでいて、今にも崩れてしまいそうなのに人間が持つ気高さと希望は捨て切れていない。

 そして、彼女もまた。私と同じく無限の繰り返す時に囚われた狩人だ。あぁ瞳が疼く。強い狩人は好きだ……美しい狩人は、もっと。

 

「私の目的は……」

 

「分からない?見逃してあげるって言っているの」

 

 黒髪の少女の目的が、この汚れた猫であることは分かっていた。そしてこの金色の少女とこの猫畜生が協力関係であることも、瞳を使わずとも分かっている。

 黒髪の少女はやや殺意と焦りを感じさせる視線を金色の少女に向けた。

 

「お互い、無用なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

 

 なるほど、この豊満な魔法少女が強かであるのは胸と腕っぷしだけではないようだ。話術にも長けると……

 だが分かるよ。君は大事なことを失念している。あまりに未知の同業者を警戒しすぎるあまり、その話術は交渉ではなく単なる刺になってしまっているのだ。

 それは、百合天国を目指す私としては好ましくない。

 

「ねぇ、お二人さん」

 

 口下手な二人に代わって私が口を挟む。その場にいた全員が、私を注視した。

 

「可憐な少女同士がいがみ合うのはいただけないな……そういうのは、呪われたヤーナムだけで良いのさ」

 

「いや、さも味方みたいな感じだけど貴女も信用してないわよ」

 

「黒髪の少女よ、今は引いた方がいいだろうね」

 

 掌は返せる時に返す。それが狩りの基本であると思いたい。

 黒髪の少女は素直に背を向けると去っていく……済まないね、いつか君も私の天国に入れてあげるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒髪の少女が消えた事により、一先ず少女達は地底に蔓延ってそうな猫を癒す事にした。金髪の魔法少女……巴マミは、ポシェットに入れていたブルーシートを広げると、その上に皆で座り込んでキュゥべえを修理する。

 私はその光景を、すぐ近くの壁に寄りかかり眺めていた。なるほど、聖歌の鐘のような形で畜生を癒している。あれが魔法少女の力か。次第にあの耳毛なのか腕なのかよくわからない生き物が目を覚ます。

 

「マミ、ありがとう。助かったよ」

 

「お礼はこの子達に言って。私は通りかかっただけだから」

 

 そうマミが言うと、二人……まどかとさやかにとんかつ屋みたいな名前の生き物は向き直って礼と自己紹介をする。

 

「あなたが私を呼んだの?」

 

「そうだよ、鹿目まどか。それに美樹さやか!」

 

 なんで私の名前を、なんてありきたりな問いかけをするさやか達だったが。

 キュゥべえが、本題を告げる。待っていた、この時を。

 

「僕と契約して、まほ」

 

「魔法少女!素晴らしいッ!」

 

「ぎゅえ!?」

 

 驚いたようにキュゥべえが私を仰ぎ見た。赤い宝石のような濁った瞳で、両手を広げる私を見上げるのだ。

 恐れを抱いたように、理解ができないと言わんばかりに、私に驚いた。無理もない、キュゥべえには私を、今の今まで認識できないように細工をさせてもらった。

 青い秘薬……存在を薄れさせ、しかしもうすでに私を認識している三人には効かずに、キュゥべえだけが私を認識していなかったのだ。

 

「陰鬱なヤーナムで、狩人もまたそれと同化するように暗く悍しいものであった。だが、魔法少女!美しい!どれだけ自身が汚れていようとも、少女という美しさがそのすべてを覆すッ!」

 

「き、君は……ッ!」

 

 心あたりが、あるのかね。

 

 そして、人の背景を盗み見ようとするのは感心しないな。

 

 だが、分かるよ。秘密は甘いものだ。だからこそ美しい少女が必要なのさ。愚かな好奇を忘れるような、美しい魔法少女がね。

 

「狩人。そう言えば、君には分かるだろう?キュゥべえ」

 

「じょ、上位者ッ……むぎゅ」

 

 口を滑らせそうなマスコット君の口を塞ぐ。

 

「ちょっと、何よいきなり!ていうか、あんた結局なんなのさ!」

 

「美樹さんに同意ね。良い加減、貴女の事を聞かせてもらえないかしら……あとキュゥべえを返して!」

 

 取り上げられる同類。私は懐から鎮静剤を取り出すと、それを一気飲み。冷めやらぬ興奮を無理矢理鎮めると、改めて自己紹介することに。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。