魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

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Lazarus
星の訪れ


 

 

 

 

 

 

 ━━それは私じゃないよ。私は世界を売った子なの。

 

 

 

 

 

 

 

 私とあの子はお互いに笑って握手をしたの。こんなに触れたったのはいつ振りだったかしら。それすらも思い出すのに苦労する。長い間、何度も必死に動いて来たから正確な時間なんてもうわからないのよ。

 それから一日を終えてマンションに帰ったのかしら。思えば私はあれ以来ずっと探していたのかもね。本来あるべき姿や、居場所とか。それこそ同じくらい長い年月をかけてね。

 

 この街で、この世界で。私はずっと見ていたわ。大勢の魔法少女達の誕生と終わりをね。

 

 ねぇ、やっぱり私達はお互い孤独に死ぬべきだったのよ。

 もっともっと、貴女があんなになってしまう遥か前にね。

 

 

 

 

 ━━いや、かな。私は……私は自分を見失ってないし。だって貴女の前にいるのはさ。

 

 

 

 

 世界を売った子なんだよ?

 

 

 

 デヴィッド・ボウイ、世界を売った男より。魔法少女まどか☆マギカに合わせて翻訳。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 願いとは、呪いのようなものだ。

 

 かつてビルゲンワースから派生した医療教会は、人を超える者を目指し悪夢に呪われた。その願いの成就の過程には血が流れ、そしてあの漁村は永遠に血に酔いし者達を掴んで離さないだろう。

 結果的に医療教会の願いは頓挫したが。主導したローレンスは最悪の獣と化し、人々と医療教会の為に戦った英雄ルドウイークですらも地に堕ちた。やはり行き過ぎた願いとは呪いなのだろう。何事も、適度であるべきだと啓蒙が囁く。

 

 だから、ほむらの本当の願いもまた。身の丈に合わぬものなのだろうか。最高の友達である鹿目まどかを救うために、時を繰り返し。

 その度に本当の願いは叶わず、まどかの死をその目で何度も何度も何度も、見て来たのだ。それはか弱い少女であった暁美ほむらを変えてしまった。他人を信用せず、重ねた精神の年齢のせいで物事を悲観的に、現実的に捉え過ぎ。

 

 いつしか彼女の友を救う為の行動は、それ以外のものを省みず、また作業化していったのだ。

 

 

 

 

 涙を浮かべて耐えるほむらの過去を、私達は黙って耳にしていた。各々の考えはあるだろう。マミなど涙が堪えきれずに私のスカーフで拭いているくらいだし、仁美もさやかも混乱しているように見えた。終始私を睨んでいた恭介でさえも動揺しているのだろうか。杏子はやはり、彼女にも辛い過去があるためか同情の念を感じる。

 織莉子はその経緯も予知を通して啓蒙していたようで特に驚いてはいなかったが……それでも、今の今までほむらが背負って来た呪いの重さに心を痛めているようだった。元来彼女は優しいものだ。キリカは……まぁ、興味がないようで、心を痛めている織莉子に慌てている。

 

 だが、わかるよ。時を繰り返すという行為の残酷さはね。何をしても無駄と化し、最初から。以前の記憶があるのは自分だけ……となれば、発狂もしたくなるだろう。ほむらが発狂しなかったのは、一重にまどかとの約束があったからに違いない。

 

 ━━騙される前のバカな私を、助けてあげてくれないかな。

 

 ふと啓蒙が、遺志を拾う。それは血の遺志にすらならぬようなものだが。いつしたかも分からぬ約束が、こうしてほむらに纏わりついているのだ。これは最早呪いだろう。

 呪いという力だけ見れば、私も利用はしている。例えば血晶石。私が落葉とノコギリ鉈、そしてエヴェリンに組み込んでいるものは最高峰の呪いが付与された強力なものだ。その呪いを利用し、デメリットはあるが戦いに用いているのだ。手に入れるのは途轍も無く苦労したが……トゥメルのデブ共め。

 

「辛かったね、ほむら」

 

 さやかが声をかける。深く慈愛を持って、そして月光の光を感じさせて。

 ほむらは涙を堪え、首を横に振る。

 

「いいえ。それがまどかのためになるなら、辛い事なんて無い」

 

 まさしく、彼女は鹿目まどかという少女の信奉者だ。だが彼女は気がついていない。彼女の繰り返すという行為がまどかにどんな影響を与えているかを。

 私はいつも通りの微笑を浮かべたまま、ほむらに尋ねる。

 

「なぁ、ほむら。質問を良いかね」

 

「……何かしら」

 

 少し彼女には辛いかもしれないが。それでも越えるべき壁なのだ。私は教えなければならない。因果の強まりを。

 

「ワルプルギスの夜は、君が時を繰り返す度に強くなってはいないかい?」

 

 投げかけられた質問の意図を、ほむらは分からなかった。だが彼女は良い啓蒙を持っている。次第にほむらは顔を青ざめさせると、震え出す。

 

「繰り返す度、まどかは強力な魔法少女と化していかなかったかな?」

 

 ここまで言えば、他の皆にも私が言いたい事が理解できたのだろう。驚いたような表情をして、さやかは私を止めにかかった。

 

「マリア!あんた今は……」

 

「知っておくべきだ。時を繰り返すという事は、因果も持ち越されるのだから。だろう、キュゥべぇ?」

 

 私が玄関の方へ声をかけると、やはりあの白き宇宙の使者はやって来た。いつも通りの不気味な顔に、どこから発せられているのか分からぬ声で。彼を見たと同時に、私以外の全員が気を張り詰めた。

 

「それも啓蒙のなせる技かな。まぁ概ねその通りだよ」

 

 真実を知って震えるほむらに、キュゥべぇは言い放つ。

 

「暁美ほむら、やはり君は時間遡行者だったか。道理でまどかの因果が強大であるはずだ。君が時間を巻き戻す度、その願いの対象であるまどかの因果は指数関数的に増えていくんだから。でも納得したよ、ありがとうほむら。君の行いは、最強の魔法少女を産むのと同時に最恐の魔女すらも産む行為だったんだ。僕らも満足さ」

 

 ほむらが膝から崩れ落ちたと同時に、さやかと杏子は彼女に駆け寄った。そしてすぐさまグリーフシードを取り出して彼女のソウルジェムに溜まった呪いを吸収していく。

 それはそれは、いつ魔女になってもおかしくないほどにどす黒く。しかし友達がそれを許さない。楽になるという行為すらも彼女にはありもしないのだろう。それが運命であるようにも感じる。

 

「君もどうやら、重ねられた因果の中で抗っていたようだね。白百合マリア」

 

 話題をこちらに向けたキュゥべぇを、私は夜空の瞳で屠った。余計な事は言うべきではない。

 

「白百合さん、どう言う事?」

 

 腕の中のマミが問う。まぁ、彼女に言うくらいは良いのかもしれないが。

 

「私もね、ほむらと同じさ。何度も悪夢を繰り返したんだ。繰り返す度に敵も強くなっていってね……彼女と違って、私にはまどかのような存在はいなかったが。ああいや、人形ちゃんがいたから癒しには事欠かなかった……あっ」

 

「誰よ人形ちゃんって」

 

 不味った、ついつい思い出に浸っていらぬことを喋ってしまった。マミには後で説明すると言ってお茶を濁す。今じゃ無くても良いだろうこの話は。

 さて、ループの先輩として私はほむらに助言をしなくてはならないだろう。今の私は少女達の助言者であり、理解者なのだから。ほむらにはいずれ夢に赴いて欲しいが、それは今ではない。

 

「ほむらよ。聞き給え」

 

 私はマミを離し、ほむらに寄る。さやかと杏子は警戒していたがそれは無視した。

 絶望に打ちひしがれ、顔を歪めるほむらがこちらを見た。

 

「時間と因果など、越えるべき壁でしかない。希望があれば絶望もあり、逆もまた然り。ならばね、君は超えられるよ」

 

 根拠の無い助言では無い。

 

「どうして、そんな事が言えるの」

 

「私がいるからね」

 

 笑顔で軽くウィンクする。まるでSF漫画の赤いボディスーツを着た主人公みたいだが、それで良い。ちなみにあの漫画はマミの家で見た。

 

「数百も悪夢を繰り返した私がいるのだ。その全てで、狩りを成就させて来た。立ち塞がる者はなんであろうと斬り伏せて来た。今回もまた、私は斬り伏せるのみさ」

 

 言葉には、魂が宿る。その魂の大きさは、発言した者に依存する。ならば私の言霊は、それはもう大きいはずさ。ほら、ほむらもまたその言霊に心を揺らしているではないか。

 

「それに、今の君には仲間がいる。織莉子もまどかを狙わない。マミも、さやかも杏子も、それに仁美も。君を支えてくれる。恭介だって獣狩りを楽しめるから戦力になるだろう」

 

 あのバカ弟子、欲しい血晶石が揃ったから巨大な敵で試したくて仕方が無いらしいからな。付き合わされたマリアお姉様が星の娘並みに嘆いていたぞ。

 ほむらはしばらく惚けた後、決意を固くして肯く。

 

「君の本当の願いはなんだい?」

 

「私の、本当の願いは……」

 

 そして、暁美ほむらは成長する。良い啓蒙を携えて。それは意思と、かつての友の遺志が齎したものだ。

 

「まどかを、救いたい……!みんなと、あの子を……!」

 

 マミの嫉妬している視線を背に、私はほむらの首元を撫でる。強い子だ、彼女は。更に良い狩人になるだろう。それで良い、戦う意志さえ折れなければ、何度だってやり直せるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある喫茶店で、不釣り合いな客がいる。一方はもうすぐ還暦を迎えそうな外国人男性。私の父。もう片方は中学生のか弱そうな少女。まどかだ。

 二人は机を挟んで向かい合い、互いに無言でコーヒーを飲む。どうやら父はコーヒーが好きらしい、一口ずつコーヒーを口に含む度に唸る。

 しばらくそんな光景が続いた。店員も特に気にしないのは、父が彼らに何かしらの影響を与えているに違いなかった。

 

「リリィは……マリアは」

 

 ようやく、父が声を発した。この不器用な父は、きっとコーヒーを飲みながらタイミングを図っていたんだろう。まどかの瞳が父を捉える。

 

「強い子だ。それこそ、あんなナリに相応しく無いくらい」

 

 父は記憶の中の私を辿る。

 

「幼い頃から、勉強熱心で……少しズボラだったが、それでも知り合いに誇れるくらい良い子だった」

 

 コーヒーを一口、父は飲む。窓の外はいつも通り、人の活気に満ち溢れている。彼の知るヤーナムとは全く違う光景だ。

 

「あの子は……だからだろうな。俺がやった事を知ると、途端に反抗し出して……そのうち全然口を聞いてくれなくなった」

 

 君とは真逆だよ、と。父は自虐的な笑いと共に言った。まどかは啓蒙する。彼が自分を連れてきたのは、こんなありふれた親子のいざこざを言いたいがためではないと。少なくとも、それ程までにまどかの因果は気づかぬ内に彼女の啓蒙を急速に高めていたのだ。そしてその一端は、私と私の父にもある。

 だがまどかは空気が読める子だ。話を合わせる事に今は徹した。

 

「でも、マリアちゃんは強いけど……不器用な子なんです。強いから表には出さないけど、きっともっと皆と素で仲良くしたいなって、思ってると思います」

 

 これから言いたい事を少女に言われ、父は目を丸くした。同時に、目の前の少女の良い啓蒙に上位者の本能として魅了されそうになる。

 

「ああ、あの子は意外に脆くてな。ただ狩りの中であれば折れる事は無いんだが……」

 

「狩人の願いは狩りの成就。上位者の願いは赤子の誕生。でもマリアちゃんは違うんです。もうその二つは成してしまった。だからマリアちゃんには目標が必要だったんです。それこそが強い意志を保つ方法だから。意志さえあれば折れる事は無い。だから……心の奥底に眠る純粋な少女への憧れを支えにしたんです」

 

 突如、この若干十四歳の少女が饒舌に喋りだす。不味いと、父は思った。もしかすれば自らと長く接触した事によって啓蒙が高まり発狂しかけているのかと考えたのだ。

 しかし違う。これは、ただ彼女の因果のみによるもの。発狂などするはずもない。この啓智は、今の彼女が元々持ち合わせているものなのだから。今、彼女の瞳に映る星々は彼女のものである。

 

 つまり。

 

 

 目の前の少女は、自らに課せられた因果の呪いで上位者になりかけている。

 

 

 

 

 

 

 

 パンっと、父は手を叩いて鳴らした。同時にこの空間の濃厚な狂気が鎮まっていく。他に客が近くにいなくてよかった、きっと彼女と父の啓蒙に充てられて発狂死していたに違いなかったから。

 まどかはハッと我に帰る。いや違う、狂気が鎮まっただけだ。父はふぅっと息を吐く。すると少女は何事も無かったかのように話を続けた。

 

「マリアちゃんだけじゃ無くて、ほむらちゃんも……私なんかのためにずっと悪夢にとらわれているんです……だから……マリアちゃんには使命を全うして貰わないと……自分なんだから……相手は……宇宙からの使者を……狩り尽くさないと……淀みを……てぃひ、てぃひひひ」

 

「ああクソ……!おい、これを飲め」

 

 狂気は全く収まっていないようだった。上位者である父が世の理をねじ曲げてまで狂気を収めたのにも関わらず……やはりこの少女は、なるべくして娘の脅威となり得る。だが今は、彼女にとっての友達の父として振る舞うしかない。リュックから鎮静剤を取り出すと、彼女に無理矢理飲ませる。どうやらまどかは鎮静剤の効能を啓蒙されていたようで、濃厚な人血をすんなりと受け入れた。

 

「……不味い」

 

 舌を出して眉をハの字にするまどか。可愛いが、口の中は血だらけだ。まどかはコーヒーを飲むと、一息。

 

「……啓蒙されたんだな、君の友達の……」

 

「ほむらちゃんの事、ですよね」

 

 真剣な面持ちでまどかは言う。

 

「全部、思い出して……私、声が聞こえるんです。自分の声が。世界を跨いで、私の遺志が助言するんです。ほむらちゃんのために、なすべき事をなせって」

 

 父は言葉が出なかった。例え異なる世界の自分とはいえ、まさか数多の死人の声を聞いて無事でいられる人間などいるはずがない。つまりそれは、鹿目まどかという物理的な存在も最早人を超えつつあるのだ。

 

「いつからだ」

 

「今週に入って。でも、まだ皆には黙ってるんです。だから青ざめた血である貴方にも黙っていて欲しいんです」

 

 ギョッとした。この少女と話してから驚かされてしかいないが、自らの存在を言い当てるほどに進化した彼女に今度こそ度肝を抜かれたのだ。

 

 

 

「私の願いを成就するために」

 

 

 

 正気のまま、瞳に宇宙を宿した少女は語る。きっとここで拒否すれば、自らの存在は殺されてしまうだろう。上位者とは、現世に住むものではない。それはある種、精神体に近いのだろう。私という狩人が狩ったのはただのアバターに過ぎない。それでも現実世界に干渉するためのアバターを狩られれば精神は傷付き、当分の間干渉できなくなるが……

 彼女はその、現実と高次元暗黒の線引きすらも凌駕しようとしているのだ。

 

「……お前の願いはなんだ」

 

 静かに、敵意を滲ませながら尋ねる。まどかは笑うこともせず、ただ淡々と言うのだ。

 

 

 

「私の願いは━━━━」

 

 

 

 

 外で、クラクションが鳴る。交差点で飛び出しでもあったのだろう。しかし事故など特に起こらない。見滝原ではよくある光景だった。都会ならば、あり得るものだ。

 父は脂汗を滲ませ、少女の願いを頭の中で反芻した。それは最早人間には過ぎた願いだ。だが、それでも良い。

 

「なら、娘には手を出すな。殺すぞ」

 

「マリアちゃんが、そうしなければ」

 

 上位者相手に人間の少女は一歩も引かない。やはり月の魔物が啓蒙した通りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星の娘は暇である。というか上位者自体思考を巡らすことが仕事のようなものなので、それ以外の時は基本暇。だからこうして星の娘は狩人の夢に居座るし、乳母も赤子が成長してしまってからは基本的にやる事がない。

 椅子にぐでっと座り、星の娘は対面に座る時計塔のマリアを興味なさげに見る。彼女は相変わらず、スマートフォンという俗世に塗れた機器で猫の動画を視聴しては頬を緩ませていた。そこにはかつての凛々しい古狩人はいない。ただの、可愛らしい乙女がいるだけ。

 

「あんたそれ楽しい?」

 

 興味は無いしわかり切っているが尋ねる。するとお姉様はキリッとした表情で星の娘を見据えた。

 

「無論だ。上位者にはこの良さが分からぬか……残念だな」

 

 言うだけ言ってまたマリアお姉様はにこやかに動画を見る。やはり人間というものは愚かだと言わざるを得ない。猫など、どこにでもいるというのに。

 興味など失せている。星の娘は隣で編み物をする乳母に声をかけた。

 

「そういえば、あの坊ちゃんはどうしたの」

 

 乳母は手を止める事なく答える。

 

「お坊ちゃんですか?元気ですよ。今は下界で人間の事を学んでおります」

 

「大丈夫なの?いくら姿を変えられるとは言っても、上位者なのよ。人間なんて近くにいるだけで発狂してしまうわ」

 

 かつて、乳母が育てていた上位者がいる。メルゴーと呼ばれたそれは頭のおかしい学者どもに生まれてすぐに拉致られたが、今ではすっかりと俗世に馴染んでいた。きっとどこかで会うこともあるかもしれない。

 




まどかちゃん啓蒙99くらいありそう
アンケートですが、このままいくと叛逆後も書きそうです

どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)

  • アニメ本編のみ。あともうちょい
  • 叛逆。展開は変えるかもしれません
  • 叛逆後も。クオリティ低し(断言)
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