魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

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交信

 

 

 

 

 魔女とは魔法少女の成れの果て。絶望し、心を濁らせその身を変化させ世に生まれ落ちた哀れな落とし子。世界の法則において、常に一つの事柄に対し相反する物が生まれるように出来ている。プラスがあればマイナスがあり、正があれば負があるように、希望があれば絶望が纏わり付く。その法則は乱れる事はなく絶対なのだ。

 希望によって生まれた少女が絶望によって成長し魔女と穢れていく。それはある種、逃げられぬ法則に則った運命なのだろう。そして私は上位者であり、法則を捻じ曲げてまで狩りを成すもの。故に少女が獣と成り果てる事は許さない。

 少女はその最後まで希望に満ち溢れねばならない。それこそが希望を生み出す魔法少女の役割。美しく、そして時に生のエネルギーを生み出す神聖なものなのだ。

 

 ワルプルギスの夜は、曰く魔女の集合体なのだと言う。膨大な絶望は夢を必要としない。それは形となって現れ、物理として絶望を振りまく存在と化した。ほむらが私のように、何百何千と繰り返しても狩きれない大いなる絶望。絶対的な壁。

 そんな存在ですら、逆位置なのだ。本来の魔女という存在とは逆転した不完全な存在。なるほど、これは骨が折れる。もっとも折れる骨など蛞蝓である私には無いだろうに。

 

 群がる影を落葉ですれ違い様に斬り刻みながら。優雅に、華麗に、少女のように美しく。

 私は狩に冷酷な月の香りの狩人であると同時に、百合の狩人である。唯一覚えている名である白百合の名が示すように、その狩は少女のように潔癖でなければならない。

 

 狩人など、複数の獲物相手には手足も出ないというのに。されど私は戦わねばならぬ。少女達の楽園のために。私が護ろうとしている少女達を安心させるために。優雅であらねばなるまい。それが死と隣り合わせの連続だとしても。

 狩人なのだから。選んだ道なのだから。

 

「神秘が濃いな」

 

 ワルプルギスに近づく度に身体に漲る血の熱みが増していく。それはかの魔女から滲み出る絶望が深過ぎるからだろう。あまりにも深い絶望とは、深い闇である。闇とは即ち、人間の根本である魂の色。古来より人の魂とはそういうものなのだ。

 そしてかつての世界では、その魂の業を用いていたのだから、闇が深まれば神秘が増すのは必然なのだろう。私の存在は人にあらず。神でも無し、しかしただの上位者でも、並みの狩人ですらない。

 すべてを取り入れた者。故に今まで、この世界において私の力は弱まっていた。神秘が薄れれば上位者としての力が弱まり……現代という未来において人間とは己の力を封じ込め……狩り尽くすべき獣が居らぬ世界においては狩人という存在は自己を認識出来ぬ。一度落葉を振るえば、元来神域に至っていた私の剣技により少女の遺志を感じる影は二つに別れ、エヴェリンの撃鉄を弾けば青ざめた最上の血質が水銀弾をコーティングし、口径以上の穴を影に穿つ。

 

「だが……」

 

 呆気ない。実に物足りない。囲まれ四方八方から襲われるなど、それこそ深度の浅い聖杯ですら起こり得る事だ。今の私は敵を一撃で屠れる程の技量を持つ。元より落葉とは技量に依存する剣だ。そして私とは技量に特化した狩人。そんな私に、ワルプルギスの夜の使い魔は完全に力不足なのだ。

 周辺の使い魔を狩り尽くし、私は一度状況を把握するために近場のビルの屋上へと降り立った。そこで私は、ほむらの姿を見る。

 

 ほむらは持てる力の全てを、あの絶望の集合体にぶつけていた。個人が持てる最大火力である無反動砲や対戦車ミサイルといった対戦車火器はもちろん、器用に街の至る所に隠していたミサイル兵器の数々。まるで花火のように一斉に飛び、逆位置の魔女に全てが着弾している。それはもう爽快な絵面だが、きっとあの程度のダメージは蚊に刺されたようなものだろう。もちろんそれだけで諦めるほむらではないが。

 マミも健闘しているようだ。いつもの様に鮮やかに影共を翻弄している。

 

「やはり君達は獣だな」

 

 そんな中、私は姿の見えない少女達を思い呆れた。織莉子とキリカがいないのだ。分かってはいたが、やはりこうも勝手に動かれると疲れるものだ。きっと彼女達は、崇める聖女であるまどかの下へ向かったに違いない。

 この場に連れてくるために。魔法少女にするために。そして、聖女にするために。下らない、そんなものにどんな価値がある?少女は少女のままであるべきなのだ。造られた清廉とは、最早純血とは言えぬ。

 

「やはりあの子を付けておいて正解だったな。……?」

 

 

 ふと。吹き荒れる嵐の中、鐘の音が聞こえた気がした。

 そんなはずは無いと、言えはしなかった。なぜなら私という前例があるから。私がそれを証明してしまっているから。どこかで薄気味悪く笑っているであろう鐘を鳴らす女に怒りを覚えながら、私は無理やり心を落ち着かせる。遅かれ早かれ、このままでは侵入されるのだから、戦いに向けて心を落ち着かせた方が良いだろう。

 

 まぁ、良い。私がやることは変わらぬ。ただほむら達を守り、獲物を狩るのみ。道中侵入者を片付けながらワルプルギスに近寄れば良い。

 それにほら、見給え。私が出向かずとも向こうからやって来るのだから手間が省けた。

 

 

 敵対者 悪夢の主、ミコラーシュ がやってきました。

 

 敵対者 聖歌隊、ヨセフカ がやってきました。

 

 

 深い絶望の色に惹かれ、同郷の狂人達がやって来る。私はいつもの様に薄い笑みを浮かべながらビルを飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天を仰げば。彼女の瞳には宇宙が映る。瞳だけに映っているのではない。それはまさしく、宇宙そのものが空に広がっているのだ。

 嵐など、とうにこの避難所の上にはありはしない。当然であろう、彼女が宇宙と交信するのだ。宇宙の辺境、その中の地球如きがその交信を妨げてなるものか。それは冒涜であるだろう。

 

 ━━宇宙は空にある。かつて異界の聖職者達は超次元的思索の片鱗によって啓蒙された。それは正しく、しかし文面通りの意味ではない。

 そして人を超えた因果を受け継ぐこの少女もまた、宇宙が空にあるという事実を自ら啓いている。あれだけヤーナムにおいて手に入れようとも不可能であった脳の瞳は、弱冠14歳の少女の頭蓋の内に既に開いていた。

 

 くどい事を抜きに、結論から述べよう。鹿目まどかは最早人間の域を超えてしまっているのだ。

 

 

「聖女様、大変お待たせ致しました」

 

 

 一人、避難所の外で宇宙を感じる少女の背後に魔法少女達が現れる。彼女を信じてやまない美国織莉子とその従者である呉キリカ。織莉子は簡易拝礼をすると背後で棒立ちするキリカに合図した。

 キリカは渋々手にする何かをまどかの真後ろへと投げる……それは、ボロ雑巾のように擦れたキュゥべぇだった。

 

 地面に放り出されたキュゥべぇはふらつきながら立ち上がると、未だ彼らに正対しないまどかに言葉を投げかけた。

 

「まどか。やはり君を魔法少女にするのは危険だね。確信したよ、君は僕達インキュベーターだけじゃない、宇宙の脅威にもなり得る。母星とのネットワークを遮断しているのも君なんだろう?正確には君に唆された上位者達だ」

 

 キュゥべぇにしては珍しく、捲し立てるように。しかしそんな彼等にも、あの弱気で臆病だった鹿目まどかは動じない。むしろ少女特有の優しい微笑みを不自然に絶やさずに語るのだ。

 

「今日の星々は異なって見えるね、キュゥべぇ」

 

 その言葉の本質が分かるほど織莉子の脳は啓いていない。ただ、ニュアンスとしては何となくだが理解できるものだ。

 

「宇宙に旅立ったトム少佐は、何で地球に帰ってこなかったんだと思う?」

 

「訳がわからないよ。生憎母星とリンクが切れてしまった僕個人の知識はそこいらの子供と変わらないんだ。君のせいだ、まどか」

 

 あのキュゥべぇが怒っている。キリカの脳が起きている現象に追いつかない。何を言ってもけろりとしていて正論を振りかざすあのキュゥべぇが、こんなか弱そうな女の子に苛つかされているというのか。

 そのか弱そうな女の子がようやく振り返る。胸に手を当て、瞳を閉じて。その姿はまさしく女神。織莉子はもちろん、織莉子以外のものを崇めないキリカでさえもその神々しさに跪いてしまう。

 恐怖も、敬いも、愛らしさも、すべてを抱擁した少女。それが今の鹿目まどかという上位者。

 

 その上位者は、白き宇宙の死者を抱き抱えるとその瞳を開いた。その瞳はいつもの桃色とした優しきものではなく。

 

 

 ━━宇宙よ!(Cosmos!)

 

 

 どこかで、誰かの声が啓蒙される。

 

 

「宇宙から見た地球はどこまでも蒼くて」

 

 

 キュゥべぇはその瞳から逃げる術を持たぬ。恐ろしくて身体が強張る。彼等が精神疾患と呼ぶ感情というものが、全力を以て危険を訴えるのだ。

 

 

「“私達”に出来ることはないんだよ」

 

 

 さぁと、まどかはキュゥべぇに催促する。最早言葉はいらぬのだ。彼女が求めるのは手段。そしてその手段は目の前にあるのだから、手を伸ばさずにはいられない。

 超次元的な思索と可能性を前に、誰しもがそうなるだろう。故にまどかは間違っていない。それは人間として、上位者として正しく幸運なのだ。インキュベーターとて、つい先日まで宇宙の延命の為にこの少女に迫っていたではないか。それと同じこと。彼等に少女を咎める事は出来ぬのだ。

 まさしく因果応報。神々のいた時代であれば赤涙が発動するくらいにはこの因果応報は大きい。

 

 それにだ。これは宇宙の意志でもある。彼女はその遺志に従い、幾つもの次元を超えるに過ぎないのだから。

 

 

「さぁ、キュゥべぇ。私を魔法少女にしてよ。この願いを叶えてよ」

 

 

 迫る。ただただ、少女は言葉のみで彼に迫るのだ。気がつけば、母星とのネットワークが繋がっている。これでもしリンクが切れたままであればこの個体に魔法少女契約を結ぶ権限や機能は持ち得なかったのに、今の状況では目の前の少女を魔法少女に変えてしまえるだけの能力があるのだから……不幸なのだろう。

 加えて、母星にいる彼等の総体は事の重大さに気がついていない。目の前に大きなエネルギー発生源があるのならば利用しない手はないというのが総意な訳であり。

 

 このキュゥべぇに拒否権は無かった。これが絶望と言うものなのだろう。

 ようやく、ようやくだ。今まで少女達を絶望に陥れて来たが、ようやくその絶望というものが理解出来たのだ。理解しなければ良いものを、彼は理解してしまった。

 

 だが、何も上位者すべてが彼女の昇華を望むわけではない。

 

 

「きゅぷっ!?」

 

 

 突如、腕の中のキュゥべぇが消える。無理矢理奪い取られたのだ。

 予知の能力が働かなかった織莉子は驚きながらも態度を変えないまどかを守るべく彼女に寄り添う。そしてキリカは見たのだ。キュゥべぇを奪い去った者の姿を。

 

 

「私の願いは、なぎさちゃんにとっても悪い話じゃないと思うんだけどな」

 

 

 困っているのか笑っているのか、それとも怒っているのか。まどかは首を傾げて襲撃者に微笑んだ。そしてその襲撃者は、身の丈に合わぬ飄々とした無表情でキュゥべぇを抱えている。

 

「別になぎさは、個々人の信条は関係がないのです。なぎさはただマリアのために割りに合わない戦いをしているんですから」

 

 百江なぎさ。私が救い、そして呪いを植え付けた少女。織莉子は再度今の状況を訝しむ。なぜこの子娘が現れるまで予知ができなかったのだと考え、そして導き出す。

 なんて事はない、魔法少女とてキュゥべぇから生まれたのだ。ならばその能力の制御や統制は、ある程度ならばキュゥべぇ達が行えるのではないか。つまりそれは、彼等が組んでいるということに他ならない。

 キュゥべぇは織莉子の予知を阻害したのだ。

 

「珍しく……魔法少女同士の関係に口を出すのね、キュゥべぇ」

 

 織莉子の周辺に水晶が浮かぶ。それは攻撃の予兆。

 

「この問題は最早魔法少女だからと片付けられる範疇を超えている。だから僕個人として対処させてもらったよ。まさか他の上位者の手を借りるなんてね」

 

「織莉子、下がって!キュゥべぇをあのちっこいのから取り返せば良いんだよね!」

 

 織莉子の忠犬は動く。迅速に、そして鮮やかに。その鉤爪でなぎさを狩り取るべく。なぎさは懐からあるものを取り出し、それを掲げる。

 それは遺骨。古い狩人の遺志が滲み出るものだ。

 

「マリア、力を借りるのです」

 

 刹那、遺骨から遺志が滲み出る。キリカが超スピードでなぎさを切り裂く瞬間、なぎさは瞬間移動とも思える速度でその一撃を回避して見せた。

 その光景にキリカは驚く。驚いて、危機を感じた。なぎさが彼女にラッパ銃を向けていたのだ。

 

「うわっ!」

 

 ラッパ銃から流れ出るシャボン玉をキリカは直撃寸前で回避する。だが、このシャボン玉が恐ろしいのは直撃だけではない。

 シャボン玉が破裂すると、そこから溢れた魔力の奔流がキリカを襲った。爆発的な魔力はキリカの身体くらいなら容易に八つ裂きにするほどの威力を持ち合わせている。無論、キリカは回避する術もなく吹き飛ばされる。

 

「キリカ!」

 

 織莉子が叫び、レーザーを発射する直前。まどかが眉を細めて言った。

 

「殺さないで、織莉子さん」

 

「っ!」

 

 レーザー群がなぎさに伸びると、彼女は瞬間回避でそれらを避けて距離を取った。

 

「なぎさちゃんも、キリカさんを殺そうだなんて考えてないから。ね?」

 

 織莉子が倒れたキリカを見れば、彼女は衝撃で気絶しているだけのようだった。殺そうと思えば殺せたはずだ。それをしないのはやはり、彼女のバックにいる白百合マリアの意思なのだろう。

 まどかはゆっくりと織莉子の前へ出るとなぎさに両腕を伸ばした。まるで赤子を受け入れる聖女の如く。だがなぎさには、私から与えられた啓蒙がある。瞳のかけらを持ち得るなぎさには、彼女の抱擁は必要無い。

 

「なぎさちゃん。覚悟はできてるんだよね?」

 

「悪役の台詞なのです」

 

「やだなぁ、そんな訳無いよ」

 

 刹那、なぎさの身体に異変が走る。急激に身体が寒くなり、手足が震えた。これは紛れも無い奇跡だ。前に魔法少女達の争いを止め、私を発狂させたあの奇跡。

 なぎさはすぐにとある薬を飲み干す。光り輝くその飲み物は、私の父からの贈り物。女神の祝福と呼ばれたものだ。それを飲めば、未だ上位者に成り果てていないまどかの呪いなど容易に吹き飛ばせた。

 

「なぎさ!とにかく今は逃げるんだ!今の君に勝ち目はない!」

 

「分かってるのです!」

 

 キュゥべぇの助言に従い、なぎさは遺骨を使って猛急ぎで逃げる。だがそれこそ彼女の勝利だ。だからその勝利を認められるはずがない。

 織莉子は倒れるキリカを抱き、まどかに告げる。

 

「しばしお待ちを。必ず貴女様の下にキュゥべぇをお届けします」

 

「うん、ありがとう織莉子さん。気をつけて」

 

 笑顔で送り出すまどかは、やはりいつものように優しい少女であるが。本質は最早少女ではない。まどかは織莉子の姿を見失うと、やはり空を見上げる。

 今はまだ良い。叶えられるのであれば、それは容易い方が良いのだ。だが、時間が経つにつれ有利になるのはやはりまどか。この宇宙に対する交信はただ啓智を深めるだけのものではないのだ。

 

 やはりこの少女は一筋縄ではいかない。最も穏やかな少女は、今や最も危険な存在へと成り果てているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新たなる思索に心を躍らせてみれば、なんだねあれは。まるで出来の悪いサーカスだ」

 

 男は、頭に奇妙な檻を施した男は呆れた口調で言った。彼の視線の先には未だ暴れ狂いほむらと対峙するワルプルギスの夜が浮かんでいる。

 男は不健康そうな顔を歪ませ、一先ず壊れかけのベンチに腰掛ける。そして思索に頭を巡らせた。

 

「ふむ、獣とは違うし狩人ですらない。しかしそこに集められた仮初の遺志の中に確かに感じるのだよ。見知った啓智がね」

 

 その背後のアスファルト。そこでは麗しい金髪と純白の衣装を真っ赤に染め上げる女もいる。彼女は手にする武器で使い魔を解剖し、未知なる生物に対しての興味を隠せないでいた。

 獰猛な、しかし美麗な笑みを浮かべながらその女は切り刻む。

 

「ああ、何なのかしらこの生き物。でも、こんな生き物で治験が出来るなんて……幸せね、私は」

 

 自分とは異なる狂気に満ちた女を、男はため息混じりに眺めた。

 

「聖歌隊とはここまで野蛮な連中だったか。まぁ良い。ここは我らが故郷に比べ神秘が薄いが……それでも良い思索ができそうだ」

 

 ここにいてはいけない二人。私がヤーナムで出会った者達の中でも、群を抜いて凄まじいインパクトを誇る者達がやってきてしまった。

 

どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)

  • アニメ本編のみ。あともうちょい
  • 叛逆。展開は変えるかもしれません
  • 叛逆後も。クオリティ低し(断言)
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