望郷
「ああ!織莉子!ああッ!嘘だ!ああ!」
避難所として使われている体育館に悲鳴が響き渡る。それは少女の声で、しかし少女が表現して良いようなものではない。悲鳴の中に絶望と怨嗟が混じり、それは体育館に逃げ延びた人々に対しても作用する。
得体の知れぬ不安が彼ら彼女らを襲っていた。一生の内、命の危険が迫る事など現代で何度あるだろうか?その危機が今まさに迫り、挙げ句の果てに少女が泣き叫んでいるのだからたまったもんじゃない。
そして、鹿目詢子とその夫である鹿目知久は目にしてしまった。ボーイッシュな少女が泣き叫ぶ理由、その元凶を。
泣き叫ぶ少女の傍らには、一人の白髪の少女が横たわっていた。腕のない、死体。遠目でも分かる。あれはもう死んでいる。腕を失った肩口から夥しい血を流し、全身は酷く傷ついているようだった。詢子は湧いてくる吐き気を必死に堪え、知久に介抱される。これはこの世界の常人が見て良いものではない。
そのうち、大人が少女らの周りに集まる。救急車を呼べと叫ぶ大人、死体から少女を引き離そうとする大人、集まりだす野次馬を下がらせる大人。その頃にはもうあの泣き喚いていた少女は黙っていた。ただただ放心し、その瞳を虚にして天井を見上げている。きっと大切な友達だったのだろう、その心の痛みは計り知れない。やはり災害というものは人々の生活を尽く捻り潰していくものだ。
ふと、止められなかった愛娘の事を思い出す。もしかすれば自分の娘もどこかでああなっているのかも知れないと考えると、自分がしでかしてしまった事の重大さが今頃になってのしかかって来るのだ。
どうして止めなかったのだと、自らの理性が糾弾する。諸々の恐怖と不安は気丈で勝気な彼女を崩壊するには十分で、気がつけば詢子は震えてその場にへたり込む。
「詢子さん、まどかは!?まどかは今、どこに……」
しかしそう問われれば、詢子はただ震えて外を指差す事しかできなかった。知久の顔色が青ざめていく。
「詢子さんはタツヤを見てて、僕はまどかを……」
探しに行く。それは到底容認できない事実だった。娘に加え夫さえも死地に送るほど彼女は強くは無い。止めようにも、腰が抜け既に大切な娘を送ってしまった彼女に言葉はないのだから。
しかし、そんな彼女にも僅かに救いはあった。
「娘さんなら心配いらない」
不意に、彼女らの背後から声が掛かる。それは突然の神の啓示にも等しい。二人揃って背後を振り向けば、外国人であろう二人の夫婦がそこにはいた。
髭面で、しかしかなり苦労してきたのであろうか。目には並々ならぬ意思が宿っているように感じる。女性の方は黒いドレスのような見慣れぬ衣装を纏い、腕に赤子を抱いている。きっと息子のタツヤと同い年か
少し上くらいだろうか、好奇心旺盛そうな顔で椅子に座るタツヤに腕を伸ばしている。
「あの、まどかを、娘を知ってるんですか!?」
食いつくように尋ねる知久に、男性は頷いた。
「……保護された。心配いらないさ。今は外が危ないから、嵐が止むまで合流はできないだろう」
その言葉がどれほど救いになった事か。気がつけば知久も詢子を抱きしめながらへたり込んでしまった。そしてお礼の一言を述べると、夫婦は頷いた。
「それでなんだが、その、うちの息子が退屈しててね。是非ともそちらのお子さんと遊ばせてやりたいんだが」
別に構わない事だった。きっとタツヤも暇しているだろうし、気が紛れるのであればそれは願ってもない事だ。
女性の腕から子供が飛び出す。銀髪の子供だった。夫婦の髪色とは異なる所を見るに、養子だろうか。しかし顔立ちは男性に似ている。複雑な家庭なのだろうと考えて、尋ねはしない。
子供はよちよちと歩いていくと、タツヤに挨拶してみせた。片腕を上げながらまるで嵐を呼ぶ五歳児のように、よっ!と言って見せたのだ。タツヤもそれが気に入ったのか、よっ!と手を上げる。子供とは純粋無垢な存在だ。初対面でも警戒などせず、ただ波長が合えば意気投合するのだから。
「残酷ですね」
ふと、女性が鹿目夫妻に聞こえない声で男性に耳打ちした。男性はやや険しい表情で息子を眺めながら返答する。
「それも、彼女が望んだ事だ」
上位者とは身勝手なものだ。自らの目的のためならば嘘や欺瞞など日常茶飯事。しかしだ。その嘘で救われる人がいるのであればそれもまた、良いではないか。現に目の前の夫婦は安堵しているのだから。きっと彼らが真実を知ることはない。その前に、世界は変わってしまうだろうから。それで良いのだ。
「タツヤ、ぼくメルゴー!」
「めるろ!めるろ!」
そして子供達は笑う。本当に純粋無垢な子供と、脳に瞳を宿した子供は戯れる。
高まる獣性に心を躍らせながら、雷を纏う刃を振るう。かの黒獣を由来とするその雷は、当たれば炎以上に相手を内側から焼き尽くすだろう。強過ぎる雷は時に炎の威力を超えるものだ。ペースを乱さず、またスタミナの管理を怠らず、一撃、二撃と落葉を振るうのだ。
相手がステップで避ければすかさずエヴェリンの引き金を引く。フリントロックの短銃と侮るなかれ。最早付喪神と化した時代遅れの銃にロックタイムなどあるはずもない。そして撃発すれば即撃ち出される水銀弾は私の神秘に塗れた血を吸い一撃必殺に近い。
影はクレイモアで弾丸を受け止めるが、無傷ではあるまい。骨髄の灰を上乗せされた弾丸は、この世界の対物狙撃銃の一撃を超えるのだから。
「ぐっ!」
剣ごと弾き飛ばされる影を、私は追った。加速の勢いを殺さず、その喉元に落葉を突き立てる。しかし影もまたこれを好機とする。
既の所で一気に影は跳躍する。回転するように、まるで乱舞のように。美しい上がり様だ。
そして両手に掲げるクレイモアに魔力が迸る。月光には遠く及ばないが、それでも並の魔法少女には辿り着けない領域だろう。
「いくら狩人でも三次元的な動きには弱かろう!」
勇しく影は吠えると、そのまま一気に落下して私の頭を勝ち割りにきた。スタミナは十分、加速ステップでその場を離れる。
刹那、影の剣が床を勢い良くカチ割った。ワルプルギスの体内であるというのに、それを構いもせずに床のタイルごと破壊したのだ。同時に魔力が叩きつけた地面から放出される。いくら生命力を上げまくった私でも、あれを直撃したならば死んでいただろう。通常のステップでも魔力の放出を避け切れず、致命傷か。貧者の血晶石が発動するだろうね。
だが隙は大きい。私は夢から悍しいものを取り出す。それは頭蓋。凄惨な実験により頭蓋に穴を開けられた呪詛の塊。我々はそれを、呪詛溜まりと呼ぶ。それを勢い良く投げ付けた。あまりこの手の秘儀は用いたくはないが、相手が相手なので容赦はしない。
ローレンス率いるビルゲンワースが残した負の遺産が影に迫る。
「これは……」
影は焦りもせず、淡々と呪詛溜まりを斬り捨てる。あれは純粋な呪いであり、斬り捨てる事などままならないだろうに、あの影はそれを平然とやってのけた。どうやらあの影も並々ならぬ呪いを背負っているらしい。漁村の呪いが負けるなど。
呪いを斬り捨てた影は大剣にこびり付いた呪いを払うと、言う。
「君は呪いの愚かさを理解していると思っていたが……なんと忌々しい」
そして明確に、こちらを睨んだ。呪いというものを嫌悪しているのだろうか。しかしそれは私とて同じ事だ。呪いなど、いつまでも残しておいて良いものではない。
「ヤーナムで身も心も俗物に堕ちたか。呪いを背負う身でありながら、呪いを行使するなどと」
「それは価値観の違いだ。呪いとは所詮、呪いでしかない。強靭な意志の前には呪いは道具と成り果てるものだ」
「それが例え、人間性の闇であろうともか。それは人の身に余るものだよ、君。人を超え、狩人を超えたとしてもね」
まぁ良い、と影は言い捨て大剣を勢い良く払った。まるで発火ヤスリを用いたように大剣を炎が包む。それは最早炎とは言えぬ、禍々しく吹き荒れる渦。光を持たぬ人間性の渦を纏う剣。
父曰く。古く、人の根源は人間性であったという。火の時代においてそれは最も忌み嫌われ、しかし人はその内に潜む人間性を消し去る事などできない。そして火の時代において人間性とは、深い闇そのものである。光である神々は闇を恐れ、しかし最後には火は燃え尽きて闇の時代……即ち人間の時代が訪れた。そしてそれが当たり前であるならば、人間性の闇というものは目に見えなくなるというもの。
あの影より様々な遺志を感じるのだ。長く、人の営みをその目に刻んできたと。その中で彼女は自らの内に潜む闇を見出したのだと。
単に啓蒙されたのではない。これは
「人が抱く呪いは……人間性のみで良いのだ。宇宙より齎された呪いも、それに付随して得た呪いもまた、人を器にするには大き過ぎる」
距離はある。しかし影はそのままの距離で、届くはずもない大剣を振るう。同時に宇宙より啓蒙されたのだ。行き場のない人間性とは、別の人間性に釣られるのだと。まるで行き場のない子供達のように。
闇が人の持ち物であるならば、雷とは神の得物。私は雷の力を得た落葉で、大剣より伸びる人間性の闇を弾く。
「っ……!」
これは、毒なのだ。人間性とはまさしく深淵。その一端でさえも人を深海の微睡に引き摺るには十二分。そして上位者とは神に近い存在。その性質上深淵とは相入れないのだろう。落葉を介して、その毒は私を蝕む。劇毒よりも優しく、雷よりも暖かな闇。それは人間の根源。
あの影は、何人もの人間を屠ったのだろうか。彼女が振るう闇の炎の中に、数多の遺志が宿っている。私の頭に流れ込んでくるその遺志は、人生そのもの。
安らかに死ねた者、惨たらしく死んだ者、魔女と化した者、信じるもののために火に焼べられた者。その全てが瞳に訴えてくる。
「熱かろう、暖かろう。それは思い出なのだ。君は知らねばならぬ」
一体この使い魔は━━否、この魔女の化身は、どれ程の時を生きてきたのだ。
繰り返すヤーナムの夜において、私はとうに人間が老いて死ぬ時間を通り越している。百年では済まないだろうに。それなのに、この魔女は更に連ねる時を歩んだのだろう。
ジャンヌ・ダルクが焼かれた時も。虚栄の篝火も、王が民衆に打ち倒された時も。彼女はその目で歴史という人の業を見続けてきた。決して歴史では語られぬ人の営みを。その闇を。
「だからこそ、君に返す。私の闇は、君の闇。本当の使命を。打ち捨てられ克服した呪いを思い返せ」
闇を弾く。弾いて弾いて、弾き返す。狂気が高まる。だがそれは決して発狂するようなものではない。
郷愁。懐古。それらが胸を締め付ける。そんなもの、今の私には必要ないのだ。ないのだよ。
「私は」
魔女が剣を振るう間際、エヴェリンを彼女に向ける。
「狩人であり、上位者だ」
決別しなくてはならない。それは過去を捨てるのではない。向き合い、見つめ直さなくてはならないのだ。
引き金を引けば、魔女は態勢を崩した。加速し、近寄り、肩を抱き寄せその顔を見つめる。今にも感情が溢れそうな顔でもって。
それでも彼女は深海のように優しい。そっと私の額に口づけをして、受け入れる。
「それで良いのだ。君は私の、可能性なのだから」
貫手で魔女の心臓を貫く。心臓とは、曰く思いを集める場所。魂の在り処。
「悪夢は終わり……そしてまた、始まるのだ」
残り香を放ち、魔女の化身は離散する。その遍く遺志を私に託して。指輪の意味を、思い出す。ワルプルギスの夜と偽ったかつての少女の全てが流れ込んでくる。
ワルプルギスの夜の使い魔との戦闘を繰り広げていた恭介達。無限とも思える数を屠れば、いくら魔法少女や狩人といえども疲労は隠せない。次第に傷は増え、あれだけ攻勢に回っていた彼らも防御に回ることとなる。
それでも尚、意志は潰えない。遺されたものを守る為、恭介は月光を振るう。不完全ながらも、その光輝く刀身に亡き少女の遺志を感じて。それは最早、呪いに近い。
迫る影を、月光の聖剣が貫く。影が塵と化す前に聖剣を振るって別の影に投げつけ、怯んだ隙に光波を繰り出す。空いた背中を新たな影が斬りつける。それでも止まらず、恭介は月光の奔流で周囲の影ごと消炭にする。
「クソッ……!」
膝をつく間も無く恭介は輸血液を自身に刺して輸血した。
「君、大丈夫かね」
恭介のカバーに回るルドウイークが贋作の聖剣で影を叩き潰す。
「どこもかしこも獣ばかりだ……!」
だが恭介は心折れぬ。彼女が残してくれた月光がそばにある限り。信じるとは、即ちそういう事だろう?
「きゃあっ!」
仁美の叫びが響いた。見れば、影共は寄ってたかって仁美とその魔女の化身を攻撃している。
恭介と杏子がすかさず月光と身を焼く炎で影を殲滅するが、それでも数は減らない。むしろ増すばかり。
「どうすんだ!キリがないぞ!」
「黙れッ!ならば狩るまでだ!」
だが。夢とは醒めるものだ。それは悪夢も例外ではない。ミコラーシュが見せた悪夢でさえ、狩によって目醒めを齎されたのだから。
それは突然の事だった。
「なんだ!?影が消えてくぞ!」
杏子が叫んだ通り、あれだけいた影が一人残らず消えていく。一体何が起こったのか、しかしそれは一つしかない。
「暁美さんがやったんですわ!」
すると、後方からマミと黒尽くめの狩人がやって来る。
「みんな!大丈夫!?」
マミが彼らの身を案じ駆け寄る中、ルドウイークは共にやってきた烏を驚いた様子で見つめる。そしてそれは、烏もまた同様。
「あんた……聖剣のルドウイークじゃないか。なんでこんなところにいるんだい」
「烏羽の……そうか。君もまた、彼女に導かれたのだな」
その少し前。ほむらはようやく、ワルプルギスの夜の脳へと辿り着いた。言い換えるならばそこは深淵。故に暗く、光など届かない。軍用の800ルーメンを誇る明るさのライトですら、足元を照らすのでやっとだ。
深淵に光はいらぬ。ただ人を微睡に誘うのであれば、既に深淵は人間性にとっては太陽そのものなのだから。それで良いのだ。
そして、その中心にはやはり源があるものだ。光が溢れる大元に太陽があるように、勝手に湧く事などありはしない。ほむらはそこに、少女を見た。椅子に座り、ただ眠りにつく幼い少女を。
いや。少女などいやしない。それはそう幻視させるだけの脳。いつぞやのメンシスの悪夢にて見えた脳みそのように、ただ大きいだけの脳味噌。ほむらは得体の知れぬ恐怖に身を包まれるも、その意志の強さで前へと進む。
「これが、ワルプルギスの夜の本体」
こんな、理想も魔法も無い、大きいだけの脳味噌が。今まで彼女を苦しめてきた元凶。
ほむらは軽機関銃を取り出し、その元凶を叩くべく構える。鼓動する脳味噌はうねり、生きている事を感じさせる。あとは引き金を引くのみ。
コツ。コツ。コツ。
音すら飲み込む深淵に、ただブーツの足音だけが響く。それはほむらのものではない。彼女の背後、入り口からやってきたものだ。
敵。勢い良く振り返り、軽機関銃を音の方向へと向ければ、その足音の主は深淵においてもはっきりと姿を現した。同時にほむらは機関銃を下げる。
「白百合マリア……無事だったのね」
百合の狩人。そして月の香りの狩人。狩人にして幼年期を脱した上位者。その本人がそこには佇んでいた。右手に落葉を、左手にエヴェリンを。しかし表情にはいつもの笑みは無い。返り血に身を包み、その血すらも我物とする狩人の業の化身。
彼女はほむらのすぐ側まで歩み寄ると、語った。
「ここから先は、私の役目だ」
そう言って、ほむらを押し退ける。
「何を言っているの?」
「君は戻り給え」
狩人の意志が分からない。ほむらは再度尋ねようとして、狩人により軽機関銃のみが神速で両断される。それは警告だった。
「友が待っている。その最期を、君が見届けるのだ」
「まどかが……?それはどういう事っ、え!?」
深淵がほむらを一瞬にして飲み込む。しかし心配は要らぬ。この闇はきっと彼女を仲間の元へと帰してくれるだろう。最早勝負はついているのだから。
待ってくれる仲間がいると言うことは、素晴らしいことなのだ。
狩人は、私は佇む脳味噌へと歩む。しとしとと脳液で濡れたそれは心地良く。私を待ち続けていた。そんな脳味噌に、私は優しく抱擁してみせた。
帰郷なんだ。私はついに、私を見つけ出してみせたのだ。無数の世界を彷徨い、しかし見つけ出すことは叶わなかった脳味噌が、最後にその主と抱擁を交わしたのだ。
「すべて、長い夜の夢だったのだ」
そう。これは、夢に等しい。長い悪夢の中で、私は本来の私を忘れていた。唯一離さなかった指輪と共に。
「魔法少女の私。今こそ、一つになろう」
抱擁の力を強める。脳味噌が悲鳴を上げる。だがそれすらも無視し、私は脳を力一杯抱き潰した。
これで良い。見たくも無い悪夢からは目覚めなければならない。そうして獣狩りの夜は終わる。死ねると言うことは幸せなのだ。
脳が死に、ワルプルギスの夜が崩れ出す。私はその最後まで死んでしまった脳を抱き続けた。
治療を受ける前に少しばかり時間ができた。少女は特にする事はないが、それでも初めての地なのだからと街を練り歩く。相変わらずヤーナムの民は排他的で不気味だが、それでも構わない。暇潰しくらいはあるだろう。
そうは考えたが、今日はなぜだか店がほぼ閉まっていて買い物どころではない様子だった。何かあるのだろうか。
それでも営業している店を訪ね、食料を買う。非常に不味い。酒を買おうにもここには酒と呼べるような品は無い。あるのは血のような飲み物だけで、間違えて買ってしまった少女はそれを一口飲んで排水溝に流した。
あまりにも今まで訪ねた場所との違いに一人、ベンチに腰掛け途方に暮れる。まだ治療まで時間がある。どうしたものかと悩んでいると、不意に少女の横に人が座ってきた。珍しい事もあるものだ、この街の民は彼女に決して近寄らないというのに。
フードを深々と被り、決して顔は見えないが。それでもその人物は女性であろう。身体付きを見ずとも匂いで分かる。成人はしているに違いない。女は何をするでもなく、じっと岩のように座っている。
しばらく少女は警戒しながらもベンチに座っていると、突然女が寄ってきた。殺気は感じない。だが少女が離れようとすると女は彼女の腕を優しく掴む。
そして、隠れた顔が見えるのだ。見覚えのある顔が。
あの、貴族の娘だ。成長し、麗しい貴婦人となったあの娘だった。
再開の挨拶も交わさず、娘はただ一言だけ少女に忠告する。
青ざめた血を求めよ、狩りを全うするために、と。
それだけ。それのみで、娘は立ち去る。否、煙のように消える。それが幻術であるという事は、それで分かった。
少女はすぐ様懐から紙を取り出し、メモする。幻術を使ってまで会いにきた理由は分からないが、無意味な事ではないのだろう。
それは治療を受ける数時間前。そして、この街が長い獣狩りの夜へと突入する直前でもあった。
どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)
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アニメ本編のみ。あともうちょい
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叛逆。展開は変えるかもしれません
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叛逆後も。クオリティ低し(断言)