魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

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本日二話投稿しています


殺す者

 

 

 

 

 

 放課後になるとほむらはまどかと共にマミの家へ行ってしまった。今の所あの桃色の魔法少女がほむらの目的に気がついているようには見えない。そもそも今の鹿目まどかは使命をすっぽかして学生ライフをエンジョイしているのだから気付きようがないのだろう。

 ふふ、円環の理だの深淵だのと言っておいて、結局は彼女も最愛の友と家族が恋しかったのか。それは良い、最後まで黙っていてくれれば事は上手く運ぶだろうからね。

 

 私はと言えば、とある人物を誘ってゲールマンが管理している花畑のテラスでお茶をしていた。その人物とは鹿目まどかの双子の弟━━と嘯いている男、鹿目タツヤ。毎回のように悪夢狩りに着いて来てはキュゥべぇと共に解説をする熱い男。傍らには彼が所属している弓道部で扱うであろう日本式の弓が、袋に入れられて立て掛けられている。

 タツヤには紅茶の良さはわからないようで、砂糖をドバドバいれてその味を安っぽくすると言う。

 

「やっぱり男らしく無いよな!こうやってさ、調味料全部ブッ込んでこそ浪漫だよな!」

 

 私もそこまで健康に詳しい訳では無いが、それでも糖尿病が心配されるほどに砂糖を入れまくる。これではお茶会に誘うのは無理だろうな。

 私は紅茶を飲み干すと、紅茶というよりは砂糖を飲んでいるタツヤに語りかける。

 

「君は、まどかの弟で合っているよね」

 

「ん?そりゃそうだろ、リリィちゃんだって知ってるだろ?」

 

 男からちゃん付けされるとゾワっとするが、私は落ち着いた素振りで質問した。

 

「いつから君はナイトメアの事を?」

 

 そう尋ねればタツヤはう〜ん、と唸った様子で深く考え出した。

 

「そうだった、まだリリィちゃんが転校してくる前だったな。ありゃいつだったか……あぁそうだ!今年の初めくらいだったかな、姉ちゃんが夜中にこっそり抜け出してるのを見つけてな!ツケていったら巴先輩達と珍妙な奴らと闘ってて、こりゃいかん!男たるもの闘えずとも女の子放って暮らしてられるかってんだ!ってな訳で何かできる訳じゃねぇが、ナイトメア退治に付き合わせてもらってるぜ!まぁ、毎回姉ちゃんには帰ってくれって言われてるがな!」

 

 ガハハと気持ちが良いくらい笑うタツヤ。相変わらず情報量が多い奴だ。ヤーナムでは見ないタイプだったから嫌いな訳では無いが、それでも喧しい。

 ちょっと疲れ気味に私は次の質問をした。これもこの悪夢を醒ますためだ。そして次の質問から核心に迫っていく。

 

「なら……なぜ君は、魔法少女でも無いのに悪夢共が見えるのだい?」

 

 今まで奇妙な程に誰もその点に触れなかった。気が付かなかった。きっと何かしらの呪いが掛けられているんだろう。誰もその事実に到達する事はないように。それはこの偽の街を産み出した魔女によるものか。

 タツヤは俯くと、プルプルと身体を震わせた。もしや都合の悪い事を聞かれて正体を現しかけているのか。ならば狩るまでだが。そしてクワっと目を見開き、その瞳に宿す熱い炎を私に向ける。

 

「その血の運命ってやつさ!きっとな!」

 

「は?」

 

 頭の悪い解答に私は心の底から腑抜けた声を出す。

 

「巴先輩曰く姉ちゃんは素質のある魔法少女らしいじゃないか!ならその双子の弟である俺にも何かしらの因果があるに違いない!そっちの方がジャンプ漫画っぽいだろ!?」

 

 なんて子供染みた事を言うんだコイツは。そのうちタツヤは聞いてもいない彼なりの考察をベラベラと喋り出す。そのほとんどが突拍子もない妄想でしかないのだが。

 

「そのうち俺にも力が目覚めてサ!スタンドとか出せるようになったりして」

 

「分かった、わかったから黙ってくれ」

 

 熱意が溢れ出るタツヤを強制的に鎮める。本当にコイツはまどかの弟か?いや待てよ、彼女も魔法少女に対する憧れをノートに書き記していたな。あのイラストは可愛かったが。

 私は溜息を一つ吐いた後、新たに質問をした。しかしこのまま行けば彼の熱意に私が負けてしまう。一人だけ世界間違えてないか。

 

「私の記憶だと、鹿目タツヤは赤子だったのだがね」

 

 それは質問というよりも呟きに近い。そして案の定タツヤも首を傾げた。

 

「おいおい、俺が赤ん坊なら姉ちゃんも赤ん坊にならんとおかしいだろ。リリィちゃん最近おかしいぞ、言動も厨二病っぽいし。ほむほむもイメチェンしたしさ、なんか流行ってんの?」

 

「黙れ小僧」

 

 人を厨二病なんて言うな。ヤーナムではこれが普通だ。むしろ厨二病と言うならマミこそ患者だろうに。クソ、上位者たる私がたかが一人の男子に掻き乱されるとはね。

 やはり正攻法では拉致があかない。私の感が外れればタツヤは発狂してしまうが、最終手段を取ろう。私は疲れた表情で懐から蛞蝓を取り出す。それは秘儀に用いる神秘の塊。宇宙との交信に用いられる貴き精霊。

 聖歌隊はそれを、彼方への呼びかけと呼んでいた。

 

 その蛞蝓を、タツヤに投げ付ける。べちょっとタツヤの胸元に精霊がこびりついた。

 

「うわっ!蛞蝓!うわキモッ!」

 

「失礼な。それは貴い精霊だぞ。……ふぅん、なるほどね」

 

 立ち上がって慌てふためくタツヤ。それは仮に、蛞蝓が精霊でなければ正常な反応だったはずだ。

 だが精霊とは神秘の写し。神秘が薄い現代人、それも啓蒙のないものであればその啓智に脳が追いつかず発狂をしてしまってもおかしくはない。なのにも関わらず、タツヤは変わらない。

 

 何も、変わらない。慌てるだけ。それはあってはならない事。つまりタツヤは、ただの人間ではない。

 

「タツヤ」

 

 精霊を引き剥がしテーブルの上に置くタツヤに、私は声をかける。

 

「やはり君は、その頭の内に瞳を宿しているね」

 

 これで辻褄が合う。魔法少女でもないのに悪夢を視認できるのは、彼の啓蒙が瞳を宿す程に高いから。それ程の啓蒙であれば精霊など取るに足らない。

 それだけの啓蒙があれば、私達を騙すことなど容易いのだ。啓蒙とはまさしく啓智。宇宙との交信に他ならないのだから。

 

 タツヤはぴたりと動きを止め、今までの熱さが嘘であったかのように瞳を冷酷に開いてみせた。その瞳は絶えず私を見ている。ある種狂気に染まった━━あぁ、それこそ瞳を携えたまどかのような、そんな目で。

 それでいて深く暗い人間性とはまた異なった何かを抱いている。それが何かが私にも分からないが。鹿目まどかの弟であればできてしまうのではないかと思えて仕方ない。

 

 フッと、タツヤは落ち着いたように深々と椅子に腰掛けた。そして冷笑を向けると言うのだ。

 

 

「ほう。貴公、自らを取り戻したか」

 

 

 その声は、タツヤのものであり彼のものではない。まるで他人の声が重なったような、そんな声色。

 

「君は誰だ?タツヤじゃないな」

 

 私の質問に、タツヤではない何かは答えた。

 

「誰でもない。タツヤでもあるし、そうじゃないかもしれない」

 

 謎かけのように。はぐらかすように。しかしそれは真実なのだと啓蒙される。気がつけば私はテーブルの上の精霊を握っていた。いつでも隕石を彼に叩き落とすために。

 

「狩人、落ち着けよ。俺はただ楽しんでいるだけだ」

 

「どう言う意味だ?」

 

「お得意の啓蒙とやらで察すれば良い。貴公もまた、俺と同じ。他人の(ソウル)を糧に生きる人ならざる者。貴公の父もまた同じか。だがそれよりも俺の方が根源に近いが、な」

 

 宇宙のすべてが、私に警鐘を鳴らした。今すぐに目の前の男を狩ってしまえと慌てている。宇宙はその正体を知っている。魂を喰らい、自らの糧とする者。それは確かに私や父である薪の王(月の魔物)と似通っているが……その存在はもっと悍しい。

 まどかよ、君の弟はなんてものを呼び寄せたのだ。

 

「落ち着けと言ったはずだぞ貴公。確かに貴公らの(ソウル)は貪ってみたいが……フン、俺はそれよりも先のものを見据えている。よく言うではないか、敵の敵はなんとやらとな」

 

 戦う意思はない。しかし俺は負けないのだと、暗に言っている。それは正しいのだろう。これほどまでに宇宙規模で脅威を感じる事など今までになかった事だ。まどかの時も宇宙はその存在に恐れ慄いていたが、この比では無い。

 服の下が冷や汗に塗れる。と、目の前の男が口を開いた。

 

「赤子とは、何をしでかすか分からんな。まさか瞳を得ただけでなく、そのソウルのみで世界を旅するとは」

 

「なに?」

 

 男は鼻で笑い、懐かしむように語る。

 

「元はと言えば、貴公の父が原因だ。あの舞台装置が来た日、俺と上位者の赤子を引き合わせただろう?メルゴーと言ったか。奴は俺に啓蒙を授け、俺はそれを増やし、精神だけが成長した。ろくに喋れず、オムツが取れたばかりの子供だったが、それでも柔軟過ぎる赤子の脳は思索するには事欠かなかった。故にだろうな、俺が円環の理を忘れなかったのは。あぁ、姉と言うべきか」

 

 つまり。彼は改変前の世界において赤子のまま瞳を授かり。他世界へとその魂だけを転送して旅をしたのだと、そう言う事なのか。

 察した私を、男は頷く事で肯定した。

 

「やはり貴公も上位者、思索に事欠かぬな。その通り、俺はあの世界で(ソウル)の業を手に入れ、全てを制した。古き獣も、偽りの王も須く」

 

 それは悪魔を殺す者(Slayer of The Demons)。火の時代、その前の灰の時代よりももっと前。ソウルという、血の遺志として変化したものの根源の時代にいたとされる魂を貪る者。あぁ、分かった。あの熱さも、この冷酷さも、彼のものではない。貪った誰かの(ソウル)がそうさせているだけなのだ。

 彼はまさしく(ソウル)の器。メルゴーめ、なんて奴を産み出したのだ。

 

 考察する私に、しかし目の前の悪魔(デーモン)は諭す。

 

「まったく、勝手に思索し身構えるのは結構だが、今の俺は鹿目まどかの弟である鹿目タツヤだ。それにここには俺の(悪魔)はいない。ならば剣を携える事などない。そうであろう。そういうところだぞ、上位者よ」

 

「……だが、敵にならないという保証もない」

 

「然り。その時は貴公も俺も、そして(薪の王)もいつものように戦えば良い。まぁ、そうだな。この平和で美しい世界を潰すのは容易いが、それでもあの少女が夢見た世界であるのなら……俺は手を出さん」

 

 彼の脳裏に浮かぶのは、河川敷で出会った黒髪の少女。そしてつい最近転校してきた魔法少女。

 

「俺はただ、少女達の幸せな世界を見たいだけだ。そして家出娘の姉と、暮らしたいのだ」

 

 悪魔殺しは驚くほど朗らかな笑みでそう言った。きっと、いくら魂を貪ろうとも根は変わらなかったのだろう。それは確かに私が良く知る鹿目タツヤの笑顔だった。

 私はふぅっと息を吐き捨てると言う。

 

「一先ずは、そう言う事で納得しておこう」

 

「おう。貴公もまた、少女達のために戦う気高き狩人だろう。貴公が築く百合の園、楽しみにしている」

 

 どこまでも上から目線で語るこの男。だが不快感は無い。宇宙は相変わらず殺せと私に叫ぶが、この男は殺せど殺せど蘇るのだから意味はないだろうに。

 私はポッドから紅茶を淹れると、一気に飲み干した。

 

「いつか、私は君の姉を狩るかもしれない」

 

「ふむ。その時は俺が壁となるだろうな」

 

 いつか来るかもしれないその時を、私は想像する。それは最も悍しい者同士の戦いになるに違いない。

 




どうしてもタツヤに役割を持たせたくて書いてたらとんでもないことになりました(他人事)
メルゴーから啓蒙を授かる→赤子の脳は柔らかく、故に得た啓蒙をフルで活用する→鹿目の因果も相まって瞳が開花する→色々考える内に分身して他世界に侵入する手段を獲る→デモンズソウル→主人公に成り代わる(容姿はどうとでもなる)→ボーレタリア蹂躙を繰り返す→偽の見滝原が生まれ、双子の弟として介入する→今
正直無理矢理感半端ないですがご了承ください。叛逆後の事を考えたら彼がいないと盛り上がりに欠けるので……

どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)

  • アニメ本編のみ。あともうちょい
  • 叛逆。展開は変えるかもしれません
  • 叛逆後も。クオリティ低し(断言)
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