私達四人はわずかに残った魔女の反応を頼りに街を練り歩く。夕暮れ時、理由はそれぞれだろうが人はそれなりに闊歩していて、これから訪れる夜に怯えるような気配はまるでない。
やはりヤーナムこそが異常だったのだと私は再認識した。人々は家に閉じ籠り、余所者を迫害する。罵声を浴びせ、そのまま死ねと。この街にはそんな景色は一切ありはしなかった。
マミによれば、魔女は人の生命力を奪う事を目的としているらしい。理由はよくわからないが、魔女は事故や争いが起きやすい場所や、治安の悪い路地裏などで出現しやすいらしく、時に病院などでも悪さをするらしい。確かにいくら生命力が弱くても、死にかけの人間を狩るほうがやり易い。
さやかはそんな悪い魔女を止めるマミの邪魔をするほむらについて悪口を言っていた。これは本人達が気が付かなければならない事だが、ほむらからすれば君達が邪魔者なのだろう。
「そういえば、マリアって結局魔法少女ではないんだよね?」
不意に、たまにやたらと鋭くなるさやかが問いかけてくる。私は頷いて、
「そうだね。私はただの狩人だよ」
「よく分かんないけど……なんであんたは魔力が無くても魔女と戦えるのさ?」
それはマミも知りたいようで、先導する彼女は意識を私たちの会話に向けている。
「きっと、呪いさ」
そんな、夢も希望もないような回答にさやかは少し引いていた。まだ啓蒙の低い彼女のために言葉を足す。
「そうさね。私達狩人は古くから……魔女のような人ならざるものと戦い続けてきた。積もり積もった怨嗟が、きっと私達を呪ったんだろうね。今では私のすべては呪われている。結果的に魔女を相手取れるようになったけれど」
そう説明すると、さやかは黙った。きっと思った以上にどろどろとした表現と内容だったからに違いない。
詳しくは違うのだろう。我ら狩人は血の医療のせいで通常の人間とはかけ離れている。遍く血の遺志を集め、自らを人から遠ざける。それに加え、上位者を屠るのだ……それは見方を変えれば、神殺しと同罪。
罪は罰せられなければならない。古狩人達が、あの悪夢で終わらない狩りに勤しむように。私達の罪もまた、力となり、枷となる。
「……ねぇ白百合さん。狩人の事は大体分かったわ。それでいて一つ聞かせて欲しいの。貴女はいつも一人で戦ってきたのかしら」
先を行くマミが、ほんの少し頼りない背中を見せて言った。その意味は私の脳の瞳を持たずしてもよく分かる。
「君と同じさ。戦いでは稀に協力してくれるものもいたが、基本は孤独。一人で狩りを全うしていたよ……まぁ私の場合、住処には家族とすっとボケた振りをした爺さんがいたけれどね」
夢にてお留守番をする人形ちゃんと、狩りになるとやたらアクロバティックになるゲールマンを思い出す。かつて私が狩りを繰り返す前に対峙した際、とんでも無い数殺された。最初の狩人は伊達では無い……が、今では一撃も喰らわずに彼を狩り殺せるようになってしまった。途中で叫ぶ時間が長過ぎるのが敗因だろう。
「そう。貴女にはいるのね……家族が」
マミから少しばかりの失望を感じる。あぁ、マミ。そんなに悲しそうにしないでおくれ。家族が欲しいのなら、もうすぐなれるさ……だからそんなに悲しまないでおくれ。
すっかり辛気臭い話になってしまった。やはり夜が近づいているせいか。通常の人間は、夜がやってきて心の底から喜ぶ人間はいないだろうから。
魔女の気配が近付く。どうやらここは廃ビルのようだ……人がいないのは幸いだ、救出する手間が省ける。
仲間と狩りをする上で面倒なのが、仲間の心配をしなければならないという事だ。今回は戦闘に慣れていないまどか達がいる……更なる非戦闘員がいなくて良かった。まとめて殺してしまっていたかもしれない。
だが、不意に私は誰かの悪夢を感じた。ありふれた悪夢だ……悪夢の本場ヤーナムから来た狩人としてはこの程度悪夢にもならないが、きっと幸せなこの世界では悪夢なのだろう。
気掛かりなのは、この悪夢は誰かによって手が加えられているという事だ。安っぽい悪夢の上から、更なる悪夢が上塗りされていると言った方がいいだろう。
「あ、人が!」
と、悪夢に気を取られている私をさやかが正気に戻した。彼女が指差す廃ビルの屋上を見上げれば、人間が一人自由落下をしてきていた。メンシスの悪夢で足を滑らせた私と似ている。
やはり、正義の味方は私では務まらない。ただ眺めていた私とは違って、マミは瞬時に変身するとその可憐な姿で降ってきた人間をキャッチして見せたのだ。
素晴らしい!あれがマミの魔法少女姿か!黄色を基調としたドレスだが、あれはどちらかと言えば歩兵のような服装だ。
もちろん魔法少女であるから可愛らしい事この上無い。それでも、腹部のコルセットは内臓攻撃によるダメージをいくらか減らせる作りになっているし、何よりあのベレー帽がマミにぴったりフィットしているのだ!ふわっとしたスカートも、啓蒙曰くチラリズムという興奮作用を齎す。
マミに駆け寄る二人に遅れて歩いて近寄ると、彼女は落ちてきた女性の首元につけられている印を見て言う。
「やっぱり、魔女の口付け……」
先程マミが言っていたが、魔女はターゲットにした人間に魔女の口づけという印を残すのだという。それを付加された者は、自殺や殺人、とにかく魔女にとって都合のいい行動をするようになると……
まるで獣だ。やはりどこの世界でも、獣は姿を変えて存在しているのだ。
ならば私の役目は変わらない。獣を狩り、殺し、根絶やしにするのだ。そこに区別は無い。獣に問わず、人に仇なす害虫は潰さねばなるまい。
今でこそ連盟では無いが、その考えに間違いはないのだ。
「この人は……」
「大丈夫、気を失っているだけよ。……行くわよ!」
まどか、やはり君は優しいね。知人か他人かは問題では無い、君はすべての人を愛し、尊重するのだろう。それが災厄を齎すとしても、君は引き返さないのだろう?
駆けるマミを私達は追う。廃ビルの中に入ると、おかしな文字が入り口にあった。これは日本語では無い……ましてやカレル文字のように高度なものでも無い。啓蒙が囁く。あれはドイツ語だと。ただ周りくどいだけなのだ。それにしても、ファウストとは。生まれ変わって強くなったつもりか?くだらない。
マミ達とビル内へ駆ける中、私も狩装束へと身を包んだ。マミほど映える着替えでは無いが……うむ、改善点だ。今度誰かしらの上位者と交信してアドバイスを貰おう。ブチ殺して隠居した月の魔物辺りで良いだろうか。彼は演出が上手いし。
そうしてすぐ、歪んだ空間を発見する。あれが魔女の結界だろう。
「見つけた。今度こそ逃さないわよ」
マミが意気込む。私は頃合いだろうとさやかに渡せなかったレイテルパラッシュを手渡した。わわ、と驚く彼女に軽く説明する。初めての者に技量が必要な仕掛け武器は難しいだろう。
「もし遠距離を攻撃したいなら、そのトリガー付近を握れ。変形する……相手に向けてトリガーを引けば一発は撃てる」
「ちょ、さやかちゃんにはちょっと難しいぞ!?」
「大丈夫さ、君は剣技に長けてそうだからね」
「そうは言っても……おおっと変形したぁ!?」
ガシャン、ガシャンと武器を変形させて遊ぶさやか。凄いと驚くまどかに、彼女用にも選んだ武器を渡す。それはどこか、湖にも似た青いガラスの盾。名前はそのまま湖の盾だ。
まどかは湖の盾を受け取ると、その美しさに目を奪われた。少し神秘が強すぎただろうか。
「きれい……これは?」
「湖の盾、と呼んでいる。もし魔法が飛んできても、それなら耐えてくれるはずだ」
まぁ多少は痛みも感じるが、死ぬほどでは無いだろう。彼女はそれを大事に抱き抱え、さやかと共に結界へと乗り込む決心を付けたように思えた。心構えはもう良いだろう。下手に先延ばししてしまっても、それはそれで躊躇う理由を与えてしまう。
そしてマミを先頭に、二人が結界へと突入していく。私は結界に触れようとして、後ろを振り返った。
「君は行かないのかい?」
入り口で、隠れるように佇む暁美ほむらに語り掛けた。彼女は相変わらずのポーカーフェイスでただこちらを見ていただけだったが、私が行こうとすると一言尋ねた。
「貴女の目的は何?」
その質問に、私は振り返らずに答える。
「君が本当に望むこと」
それだけで、今は十分だ。今の私たちに言葉は必要無い。狩人は狩人らしく、狩りに没頭すれば良い。それが良い狩人の条件だから。君もそうしてきただろう、ほむら。
結界内では昨日私が惨殺した魔女の使い魔達が所構わず襲い掛かってくる。それをマミが先頭に、私が二人を守るようにして進んでいく。
さすがのマミも守りながら進み戦う事に慣れていないのか、後方から迫る使い魔には反応が遅れ気味だった。私は獣狩りの散弾銃でそれらを撃ち落とし、近い敵には落葉で斬撃を見舞う。ちなみに私が落葉を使う最大の理由は、私自身が技量に特化した狩人であったからだ。
今?フッ、もう全部カンストしてしまって筋力や神秘まで同等だよ。血の意志は人形ちゃんを着せ替えるために使者から服を購入するとき以外使わない。あと修理。
「マミ、二人の事は私に任せておくと良い」
使い捨ての長銃で進路上を撃滅していくマミに言う。
「それは頼もしいわね!」
マミも少しは私に対する警戒が薄れているのだろう。背後のことは言わずとも任せっきりにしてくれていた。
ベテランを自称するマミの戦闘力は凄まじいものだ。動きのとろい相手には銃撃を、素早い敵にはリボンによる拘束を、近づかれるなら打撃を、数で押されるならすべてを用いる。彼女ほど完成されている狩人ならば、死なずに悪夢の辺境くらいまで辿り着けるのでは無いだろうか。聖杯は無理だ、あそこは死ぬのが前提だから。
「この!この!近付くなって!」
運良く寄ってきた使い魔に剣を振るうさやか。ああ、やはり戦いを知らぬ者に剣は早かったか。彼女は一心不乱に引け腰で剣を振っているだけだ。使い魔は痛がっているが、死ぬほどでは無い。
「落ち着け。まずはイメージするんだ。そうだね……格好良い、剣士になったつもりで剣を振るってごらん」
彼女には詳しい事を言っても難しいだろう。直感的な教えをもって導く。ゲールマンよ、やはり助言とは難しいものだな。心底説明が苦手な私が助言者にならなくて良かったよ。
「よ、よーし!」
さやかは剣を構え直す。うむ、先程よりはよっぽど良い構えだ。後ろではまどかがキュウべえと盾を構えて応援している。
そうして、にじり寄ってきた使い魔を縦一閃してみせた。勢い良く振り抜かれたレイテルパラッシュ……それを振るう姿は、騎士に見える。ふぅむ、あのレイテルパラッシュ、幾度目かの夜で使ったせいか少し呪われているな。きっと僅かな呪いが良い方に傾いたのだろう、さやかの身体をサポートしてみせたのだ。
「ど、どうだ!さやかちゃんもやる時はやるもんね!」
「す、すごいよさやかちゃん!」
と、そんな中キュウべえは首をこちらに向けてテレパシーを飛ばしてくる。
『あれ呪われてない?』
「……そういうこともあるさ」
人は少なからず呪われているものだ。
キュウべえ曰く、ここは魔女の結界の心臓部らしい。道理でだだっ広い空間であるはずだ……こういう開けた場所は一際大きな獣が出ると相場が決まっている。そこはヤーナムも見滝原も変わらないらしい……都合が良い、これからの狩りに繋がるのだから。
そうして、使い魔に囲まれたおかしな生き物が姿を現す。マミのそれを見る目の色が変わった。ああ、それこそ私が少女に求める要素の一つだ……狩人の瞳。
「見て、あれが魔女よ」
まるで蛞蝓だ。背中に蝶のような翼はあるものの、おどろおどろしい姿は変えられぬ。薔薇が好きなのか身体の所々にそれが備えられており、不快な景色に一役買っている。
私は、脳の瞳を震わせる。あんな恐ろしい化け物を見たいのでは無い。私が見たいのは、本心。その美しくも醜い少女の心なのだ。メンシスの輩のように、脳に瞳を、という言葉を額縁通り受け取るほどアホでは無い。
GERTRUDE
薔薇園の魔女、ゲルトルート。
その性質は不信。彼女は薔薇が愛おしいがために人を信じられず、また自らを愛してくれない人間に絶望した。薔薇の美しさこそ自らの証であり、その維持のためには人の命など取るに足らないものであろう。
一人の、健気な少女が瞳に映る。長い髪の、薔薇を愛せど人の心は愛せなかった哀れな少女が。ああ、可哀想に。君は願いによって美しくなった自分が愛されるのがたまらなく不快だったんだ。
だって、それは本当の君では無い。本当の自分を愛してくれない人間が信用できなかったんだろう?本末転倒とはこの事だ。
でもね。私は愛せるよ。本来の君も、飾らない君も、美しい少女なのだから。
だから君の血の遺志を、私に頂戴?私の夢に、君を呼ぼうじゃ無いか。そのために私は今、でっかい蛞蝓になろうとも他世界に侵入して新たな夜を迎えないようにしている。
さぁ、おいで。大丈夫、私の天国では不信などないさ。
「どこの世界も獣だらけ」
私は呟く。それを聞いていようがいまいが関係はない。まどかはこちらを振り返ったが、それを押し除けるように私は前へと出る。そしてマミと並ぶと、落葉を両手で握り、分割した。
マミはそんな私を訝しむように見た。きっと私の身から溢れ出る呪いに反応しているのだろう。仕方あるまい、狩人は呪いを背負うものだ。
「殺し尽くさねばなるまい……獣であるなら……汚らわしい蟲ども……」
「私が前衛に出るから白百合さんは……」
マミが何を言おうが関係無い。私は一人、魔女が待つ舞台へと先行する。刻むカレル文字は獣、爪痕、左回りの変態。
高い場所から飛び降りたが、獣のカレル文字によって足に負荷はまったく掛からない。そして左回りの変態により高められたスタミナを頼りに、未だ薔薇を丁寧に扱うゲルトルートへと駆け出した。
「白百合さん!?」
私の先行に驚いたマミも続けて来るが、その頃には迎撃してきた使い魔によって彼女は足止めを食らっていた。
そして私は魔女のすぐ手前まで迫る。ようやく彼女も私の存在に気がついたらしく、酷く慌てたように手にしていた鋏を投げつけてきた。
「危ない!」
まどかが叫ぶが、私は難なく横ステップでそれを回避するとゲルトルートの脚であろう部分へ落葉を振るう。高められた技量による一撃は、通常の獣であるならば一撃で真っ二つにできるほどの威力を誇る。
だがさすがに魔女、深い傷こそ負ったものの致命傷にはならないようだ。ならば、もっと攻めればいい。
「白百合さん!連携して……」
マミの言葉を無視して何度もゲルトルートを斬り付ける。さすがに怒った彼女はしなる触手を私目掛けて振るってきた……が。
あまりにも遅い。獣とはこうも遅い生き物だったか。いや違う。彼女は魔女だ。彼女は魔法少女を知っているが、狩人は知らないのだ。
ならばお見せしよう。月の香り……今は百合の狩人の狩りを。その身をもって知るが良い。
「〜〜!」
ゲルトルートの触手を避けるどころか、逆に攻撃する。スパスパと斬られていく触手にも痛覚があったのか、あからさまにゲルトルートは痛がった。
ここを斬るのはもういい。次は跪きやすいように腹部を斬ろう……そう考え、正面へと回る。
「ああもう!勝手にして!」
先走る私に呆れたのか、マミは周辺の雑魚狩りに尽力した。私の邪魔をさせないために……だがマミの脳裏には、そんな自分勝手な狩人があの娘と重なる。
かつて、自分を師と呼んでくれた幼い聖職者と。
そんなことは考えるなと、マミは自分に言い聞かせる。今はとにかく目の前の敵を殺すのだ。
「はっはははッ!」
狩人は狩りを楽しみ酔いしれるものだ。だが私はそれに囚われるなどと愚行は犯さない。バレリーナのように一回転してゲルトルートの腹部を斬りつける。
伊達に私も、地底人だった訳では無い。この落葉には通常強化に加えて血晶石と呼ばれる地底人御用達の武器強化用アイテムも仕込まれている。そのどれもが呪われていてデメリットを引き起こすが、メリットの方が遥かに大きい。
「〜!!!!!!」
そうして、裂かれた腹部を庇うように彼女はより一層項垂れた。ああ、これぞ狩りの醍醐味。内臓攻撃の時間だ。
「ふぅッ!」
すかさず私は落葉を結合し、左手で掴む。そして空いた右腕を思い切りゲルトルートの頭へ突っ込んだのだ。
「うっわマジ!?」
「痛そう……」
まどか達が魔女に同情する。それすらも無視し、私は彼女の頭の中を掻き回し、強引に引き裂いた。爪痕によって大幅に強化された内臓攻撃は容易に彼女の頭を破壊する。
いつものように内臓攻撃によって吹き飛ばされた魔女は薔薇園の壁に激突していく。
「やるじゃない……私も!」
傷ついた魔女を見て、マミは周囲の雑魚をリボンで一掃。すかさず大技に取り掛かる。彼女のリボンは大きな大砲となり、その砲口は未だ動けない魔女に向いたのだ。
良い大砲だ。きっと私が持つものよりも威力が高いに違いない。少しばかり興味はあるが、あれでは狩りに支障が出るだろう。
「ティロ・フィナーレッ!」
マミが謎の言葉を発すると、大砲の撃鉄が火薬を弾いた。
刹那、雷鳴。砲身から放たれた巨大な弾丸はゲルトルートを覆い被すほどに。彼女を喰らい尽くす。まるでアメンドーズのレーザーだ。
必殺の一撃は手負いのゲルトルートを殺すのには事欠かない。結果的に、私が初めて戦った魔女はあっさりと消し墨となってしまった。
━━PREY SLAUGHTERED━━
そうして残ったのはグリーフシードのみ。私はそれを拾い上げると、マミへと投げ渡す。
「これが必要だろう」
彼女がそれを受け取った瞬間、魔女の結界は消え去り元いた廃ビルへと変化した。
ああ、ゲルトルートの血の遺志が私を巡る。君はトドメを刺したマミではなく私を選んだのだね。良い子だ……夢でまた、会おう。それまで私の人形ちゃんと仲良くしてくれ給え。
その間にマミとキュゥベえは二人にグリーフシードの説明をする。魔女の卵……否。あれはそんな生優しいものではない。悪夢が巡り終わらぬように、絶望もまた巡り廻るものだ。そうして星の命は巡るのだから。
マミが自らのソウルジェムを癒す。そして、それを暗闇にいるほむらへと投げ渡した。
「あと一回は使えるはずよ。それとも人と分け合うのは信条に反するかしら?暁美ほむらさん」
そうマミが言うと、ほむらはいつもの澄まし顔でそれを受け取った。さやかがレイテルパラッシュを変形させ、銃撃モードへと移行させる。
「貴女の獲物よ。貴女だけのものにすればいい」
ほむらは拒絶するようにグリーフシードを投げ返した。私は、それをマミの代わりに受け取る。
ほむらとマミは……ここにいる皆が私を注視した。それはどうでもいい、ただこの絶望の卵が私には必要なのだ。
「……白百合、マリア」
「良いだろう?マミもいらない、ほむらもいらない。それならばこの絶望は私が預かろう。それで良かろう、魔法少女達」
僕はそれじゃ困るけどね……とキュゥべぇが愚痴る。まぁ良いではないか。ほんの些細な報酬だ。
マミはどうでも良さげにほむらと対峙する。
「それが貴女の答えなのね……」
ほむらは何も言わずに去って行く。相変わらず仲が悪いのか、さやかは恨み言を言うが……構わないさ。いつか君も、私達の隣に来るのだから。そう、私の啓蒙が囁く。